IPEN プレスリリース 2021年6月29日
プラスチック・リサイクル政策は、
大量の有害廃棄物を生成する

次の10年間のプラスチック廃棄物の爆発的増加に対応できる
提案又は使用されているシステムはない

情報源:IPEN Press Release June 29, 2021
Plastic Recycling Schemes Generate High Volumes of Hazardous Waste
No System Proposed or in Use Can Meet Next Decade's Explosion in Plastic Waste
https://ipen.org/news/plastic-recycling-schemes-
generate-high-volumes-hazardous-waste


訳:安間 武 (化学物質問題市民研究会)
http://www.ne.jp/asahi/kagaku/pico/
掲載日:2021年7月5日
このページへのリンク:
http://www.ne.jp/asahi/kagaku/pico/kaigai/kaigai_21/210629_IPEN_
Plastic_Recycling_Schemes_Generate_High_Volumes_of_Hazardous_Waste.html



 【スウェーデン、ヨーテボリ】本日発表された新しい報告書によると、プラスチック廃棄物を管理するためのケミカル・リサイクル、プラスチックから燃料への変換、及び焼却への大きな投資は、大量の非常に危険な廃棄物と有害物質の排出を生み出している。

 報告書「プラスチック廃棄物管理の危険性(Plastic Waste Management Hazards)」は、機械的及び化学的両方のリサイクル計画への現在の投資が、増大する世界的なプラスチック汚染問題にほとんど影響を与えず、それらが配置されている地域社会で有害化学物質への曝露を増加させている状況の詳細な説明をする最初の研究である。

 報告書の共著者で IPEN の POPs ポリシー・アドバイザーであるリー・ベルは、次のように述べている。”プラスチック廃棄物の現在の管理方法では、世界で拡大しているプラスチック汚染の危機を緩和することはできない。ほとんどのプラスチック製品に含まれている有害な添加物のために、どの様な方法でも著しく有害な危険を生み出す。業界の様々なリサイクル計画の擁護は、プラスチック規制をかわすよう設計されたマーケティング戦略と、拡大するプラスチック汚染問題を抑制するための取り組みである。我々の地域社会や海洋に溜まっているプラスチック廃棄物に対する唯一の解決策は、プラスチックの生産を必須な用途に限定し、有害化学物質のプラスチックでの使用を排除することである”。

 プラスチック汚染の問題は現在ひどいものであるが、今後ますます深刻化するでろう。報告書によると、石油化学産業が、燃料から化学薬品やプラスチックの生産に移行することにより炭素制約の環境に適応するにつれて、プラスチックの生産は指数関数的に増加すると予想される(2016年の3億3,500万トンから2050年までに18億トン)。報告書はまた、1950年代以降に生産された 83億トンのプラスチックの約4分の3が廃棄物になり、現在のやり方が変わらない限り、1億800万トンのプラスチック廃棄物が主に低所得国で2050年までに埋め立て、投棄、または公然と焼却されるであろうことを明らかにしている。

 インターナショナルペレットウォッチ(IPW)と国際汚染物質廃絶ネットワーク(IPEN)が発表したこの報告書では、プラスチックのリサイクルの 4つの側面について検討した。

 ケミカルリサイクル:ケミカルリサイクルでは、化学薬品や熱を使用して廃プラスチックを分解し、新しいプラスチックの製造に使用できる原料やポリマーを作り出す。報告書では、これらの燃焼及び化学的プロセスがどのように危険なダイオキシン類を排出し、粗製の汚染された炭化水素燃料[訳注:廃プラスチック油]を生成し、大量のエネルギーを消費するかについて詳しく説明している。
 さらに、このアプローチを使用して製造されたプラスチックは、価格で未使用プラスチックと競合できないために粗燃料として燃焼される可能性が高くなる。化学物質のリサイクルは、大量の有害廃棄物の流れを生み出す可能性があり、このプロセスで生成された燃料は、燃焼時に内分泌かく乱化学物質やその他の有害な添加物を大気中に放出する。化学リサイクルの支持者は、汚染物質や有害な添加物は処理中に廃プラスチックから「分離」できると主張しているが、これには新しい大量の有害廃棄物の流れが含まれる。

 プラスチックから燃料へ:プラスチック廃棄物の備蓄が世界中で前例のない速度で増加するにつれて、多くの支持者は、化石燃料の「代替」として、また石油、ガス、石炭の採掘を相殺するために、プラスチック廃棄物に由来する燃料の採用を推進している。現実には、結果として得られる製品は、炭化水素燃料であり、あるいは財政的、規制的、または補助金の目的であり「廃棄物」ではなく「製品」としてブランド変更されたプラスチック廃棄物の再パッケージ化された形式である。報告書は、これらのやり方は非効率的で、汚染されており、非経済的であると結論付けている。同様に、焼却炉やセメントキルンでのプラスチック廃棄物の燃焼から「代替燃料」または「ごみ固形燃料」としてエネルギーを回収すると、有害な排出物、有害な灰、高強度の炭素放出、及び資源の浪費が生じる。

 機械的リサイクル:プラスチックのごく一部だけが、従来の機械的リサイクルによってリサイクルされることになる。リサイクルされるほとんどのプラスチックには、最終的なリサイクル製品を汚染する有害な化学添加物が含まれており、新しいプラスチック製品の製造に使用することが難しく、品質が低下するため、ほとんどが燃やされるか埋め立てられる。その結果、臭素化難燃剤や残留性有機汚染物質(POPs)の添加剤で汚染された大量のプラスチック廃棄物が、多くの場合発展途上国の埋め立て地や焼却炉に送られる。プラスチックの取り扱い、洗浄、及び研磨のプロセスは、作業者を危険な粉塵や蒸気にさらす。プロセス全体で、リサイクルの有害な影響を処理する責任が、プラスチックの生産者から、リサイクルできない、または管理が難しい多くのプラスチックの処理に苦労しているリサイクル業者に移る。

 プラスチック中の化学添加物:現在のリサイクル方法において極めて危険なプラスチックへの添加剤には、着色剤、可塑剤、UV安定剤、及び完成したプラスチック製品に特定の特性を付与するために使用されるその他の化学物質が含まれる。これらの化学物質の多くは有害である。たとえば、広く使用されている UV 安定剤である UV 328 は、世界で最も有害な化学物質のひとつとして特定されており、ストックホルム条約によって規制される POPの候補としてリストされている[訳注:UV 328]。この化学物質はプラスチック廃棄物に広く行き渡っており、インターナショナルペレットウォッチ が実施する監視プログラムにより、世界中の海や海岸でその存在が検出されている。

 報告書の共著者であり、有害化学物質とプラスチックに関する主要な国際科学者である Professor Shige Takada[訳注:高田秀重教授]は、次のように述べている。”我々は、世界中の海、海岸線、及び孤立した極地でプラスチックの有害化学物質を発見している。魚や海鳥は、これらの有害な紫外線安定剤で汚染されたプラスチック廃棄物を飲み込み、食物連鎖の中で蓄積す。それは非常に懸念されており、国際的に禁止されなければならない。我々の調査によると、プラスチック廃棄物は不活性ではなく、有害な添加物を何千マイルも輸送し、世界の生態系に影響を与えている”。

 報告書は、次の 3つの推奨事項で締めくくられている。
  1. 政府は、プラスチック産業が生産できる量を劇的に減らすことによって、プラスチック廃棄物から発生する有害廃棄物の増加量を制限することを認め、直ちに行動しなければならない。国際条約はこれを達成することができる。

  2. 政府は、環境に配慮した方法で、プラスチック廃棄物の既存の備蓄(管理された、管理されていない、埋め立て地)を管理しなければならない。

  3. 政府は、将来生産されるどのようなプラスチックについても、環境に配慮した持続可能な管理システムを開発するよう業界に働きかけなくてはならない。これには、富める国はもちろん低所得国においても、有害性のないポリマーの再利用とリサイクルを最大化する設計、生産、及び廃棄管理システムの実施を含まなくてはならない。

編集者及び記者は、質問があれば、また報告書作成者へのインタビューを希望するなら、BjornBeeler(Bjornbeeler@ipen.org)またはLee Bell(leebell@ipen.org)に連絡いただきたい。

IPW
 インターナショナルペレットウォッチ(International Pellet Watch / IPW)は、日本の東京農工大学を拠点とする世界的な監視プログラムであり、世界の海洋の汚染傾向を監視するように設計されている。 IPW は、2006年以来、残留性有機汚染物質と内分泌かく乱化学物質(EDCs)の世界的な監視を行っている。http://pelletwatch.org/

IPEN
 IPEN(International Pollutants Elimination Network)は、スウェーデンで公益非営利団体として登録されている 124か国にある 600を超える公益 NGOs の世界的環境ネットワークであり、最も危険な物質を排除及び削減して、すべての人のために有害物質のない未来を築くために取り組んでいる 。http://www.ipen.org


訳注:廃プラスチック油
訳注:UV 328 訳注:高田秀重教授


化学物質問題市民研究会
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