WWICS 2008年1月28日ニュース
EPA ナノテク情報のギャップを埋めるための第一歩を踏み出す
安全に対する信頼を確実にするために、更なる行動が緊急に必要である

情報源:Woodrow Wilson International Center for Scholars
Project on Emerging Nanotechnologies
EPA Takes First Step In Filling Nanotech Information Gaps
Additional action urgently needed to ensure confidence in safety
January 28, 2008
http://www.nanotechproject.org/news/archive/epa_takes_first_step_in/

訳:安間 武 (化学物質問題市民研究会)
http://www.ne.jp/asahi/kagaku/pico/
掲載日:2008年2月3日
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http://www.ne.jp/asahi/kagaku/pico/nano/wwics/080128_EPA_Nano_Stewardship_Program.html

 【ワシントンDC】 米EPAは本日、連邦官報に有害物質規正法(TSCA)の下にナノスケール物質スチュワードシップ・プログラムの立上げ計画について発表した(訳注1)。この計画は、産業界、非政府組織(NGO)及びその他のグループに人工ナノスケール物質に関する安全データを自主的に提出する機会を提供することによって積極的な第一歩を踏み出すものである。

 新興ナノ技術プロジェクト(PEN)のディレクター、デービッド・リジェスキーによれば、”スチュワードシップ・プログラムの下で得られる情報は政府当局がこの新しい物質によってもたらされるリスクとベネフィットをよりよく理解するのに役立つが、この自主的プログラムは実質的には産業側が参加することになんらインセンティブを与えない。これらの物質の安全性に関する公衆と市場の信頼を確実にするためには、迅速な行動が、今、必要である。EPA当局は、2005年にスチュワードシップ”・プログラムを立ち上げる意図を初めて表明したが、ほとんど3年遅れた現時点において、その行動の必要性ははるかに大きくなっている”。

 元EPA高官でPENの上席顧問であるJ.クラレンス・デービスによれば、”スチュワードシップ・プログラムを開始することはEPAが直面している情報ギャップのある部分を埋める方向の積極的措置である。しかし、ナノ物質の重要な新規利用規則を普及させるようなTSCAの改訂と、この自主的プログラムとの間に相互作用がなくてはならない。逐次アプローチではナノ物質の規制ははるか先のこととなり、二つの取り組みを同時に行うより生産性が低くなる”。

 この自主的プログラム発表の中で、EPAはまたTSCAの下で何が新規化学物質と見なされるかということに関して方針を変えることはないと述べている(訳注2)。昨年打ち出されたこの方針では、サイズはナノ物質とみなすための決定要素であるにも関わらず、EPAはTSCAの下で新規化学物質かどうかを決定するときにサイズを考慮しないと述べている。ある物質がTSCAの下で新規であるとみなされると、その物質によって及ぼされるリスクを決定するために広範な初回テストを行わなければならないことになる。

 デービスは次のように付け加えている。”EPAの現在の監視アプローチはナノ技術を取り扱うためには不適切である。EPAが、ナノスケール物質の新しい生物学的及び生態学的な特性を認識する方向に早急に動くことが重要である。それは、EPAのコンセプト文書の中には述べられていないことであるが、TSCAの’新規用途’条項を適用することで可能となる。EPAによって概要が述べられたアプローチでは、またTSCAの中にある弱点のために、EPAはどの物質がナノ物質なのかを特定することもできないし、それらが危険をもたらすかどうかを決定することもむずかしい”。

 PENの科学顧問アンドリュー・メイナードは次のように述べている。”EPAのアプローチは、同一分子を持った異なるナノ構造は異なるハザードを示すことを示唆する既存の科学的研究を無視するものである”。2007年5月に、デービスはEPAのナノテク対応を初めて深く分析した報告書 『EPA とナノ技術:21世紀の監視』の著者である(訳注3)。このPENの報告書は http://www.nanotechproject.org/124/ で入手可能である。(訳注:このURLはリンク切れ。 http://www.nanotechproject.org/file_download/files/Nano&EPA_PEN9.pdf からpdf版を入手できる。)

 その報告書はナノ技術の監視を改善するために、EPA、議会、大統領、国家ナノ技術イニシアティブ、及びナノ産業がとるべき25以上の措置を勧告している。



訳注1:連邦官報
訳注2:ナノ物質(サイズ)と新規物質
訳注3:クラレンス・デービスの報告書
訳注4:関連資料


化学物質問題市民研究会
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