欧州委員会プレスリリース 2012年10月3日
ナノ物質:技術躍進のために
ケースバイケースの安全アプローチ


情報源:EUROPEAN COMMISSION Press Release
Brussels, 03 October 2012
Nanomaterials: Case by case safety approach for breakthrough technology
http://europa.eu/rapid/pressReleasesAction.do?reference=IP/12/1050&format=HTML&aged=0&language=EN&guiLanguage=en

訳:安間 武 (化学物質問題市民研究会
掲載日:2011年10月6日
このページへのリンク:
http://www.ne.jp/asahi/kagaku/pico/nano/eu/121003_EC_nano_case_by_case_approach.html

【ブリュッセル 2012年10月3日】 ナノテクノロジーは、今日大きな進展を遂げており、”市場の流れを変える(game changing)”技術的躍進と経済成長の再生をもたらす可能性を持っている。この事実を認識し、欧州委員会は本日、『第二次ナノ物質規制レビューに関するコミュニケーション(Communication on the Second Regulatory Review on Nanomaterials)』を発表したが、それはまた、ナノ物質の安全な使用を確実にするためのEU法を改善するための欧州委員会の計画を含んでいる。

 このコミュニケーションは、数十年間安全に使用されている日常的な物質(例えば、タイヤ中のカーボンブラック)、又は食品中の抗凝血剤)から高度に精緻な産業用材料、腫瘍の医療まで、ナノ物質の多様な特性とタイプを強調した。一方、ハザード特性に関する情報が増大しているが、それらはナノ物質を一般化し、具体的なリスク評価を特定することは困難である。

 従って、全てのナノ物質をひとつのカゴにいれるよりむしろ、曝露とハザードの両方の潜在的なリスクの指標に基づく、ケースバイケース(1件づつ)のリスク評価アプローチが適用されるべきである。本日のコミュニケーションは、欧州委員会委員 Antonio Tajani(アントニオ・タヤーニ産業・起業促進担当)、Janez Potocnik(ジャネッツ・ポトクニック環境担当)、John Dalli(ジョン・ダリ健康と消費者担当)、及び Maire Geoghegan-Quinn(モイラ・ゲーガン・ クイン研究・イノベーション担当)により共同で発表された。

ナノ物質は評価が必要である

 現在の知識と、”新規の及び新たに特定された健康リスクに関する科学委員会(SCENIHR)”及び独立系のリスク評価者らの意見(訳注1)に照らせば、ナノ物質は、あるものは有害かもしれず、あるものは、そうではないかもしれないというに通常の化学物質/物質に似ている。可能性あるリスクは、特定のナノ物質と用途に関連する。従って、ナノ物質はリスク評価が必要であり、それは適切な情報を使用して、ケースバイケース(1件づつ)で実施されるべきである。現在リスク評価手法は、たとえスク評価の特定の面に関する作業がまだ必要であるとしても、適用可能である。

 重要な課題は主に、ナノ物質のハザードに関する検出、特性化、有効性が確認された手法、及び情報の完成を確立し、ナノ物質への曝露を評価するための手法を開発することである。

 最近のナノマテリアル定義(訳注2)は、適切な場合にはEU法体系の中で統合されるであろう。欧州委員会は現在、検出、測定、及び監視手法に関して、またこの定義の適切な実施を確実にするための確認に関して取り組んでいる。

REACH はナノ物質管理の最良の枠組み

 全体として欧州委員会は、REACHはナノ物質が物質又は混合物の場合、リスク管理のための最良の可能性ある枠組みを提供するものであるが、枠組みの中でのナノ物質のためのもっと具体的な要求が必要であることが証明されていると確信している。欧州委員会は、REACH附属書(Annexes)のある部分の修正を思い描いており、ECHAに対し2013年以降に登録のためのガイダンスを開発するよう促している。

次のステップ

 ナノ物質に関する情報の利用可能性を改善するために欧州委員会は、存在するなら国家レベル又は分野レベルの登録を含んで、関連する全ての情報源を参照するウェブ上のプラットフォームを構築しようとしている。並行して欧州委員会は、そのような目的のためのデータ収集の必要性の綿密な分析を含んで、透明性を増し、規制監視を確実にするための最も適切な手法を特定し開発するために影響評価(impact assessment)を立ち上げるであろう。この分析は、既存の届出、登録、又は認可スキームの範囲に現在入らないようなナノ物質を含む。

背景

 ナノ物質は、その小さな粒子サイズのために特定の特性をしばしば持つ物質である。ナノ物質の世界市場は、200億ユーロ(約2兆円)相当の市場で1,100万トンが見積もられている。ナノ物質分野の現在の直接雇用はヨーロッパで推定30万〜40万人規模である。それは、カーボンブラック(主にタイヤで使用)又は合成アモルファスシリカ(ポリマーフィラーとしてタイヤの中だけでなく、歯磨きペーストや食品パウダー中の抗凝血剤(anticoagulant)としての使用を含んで様々な応用範囲で使用されている)のような過去数十年間に使用されてきた物質に支配されていた。

 過去数年間、多くの新たなナノ物質関連の応用が開発されている。それらには 、日焼け止め中のUVフィルターや防臭衣料品のような多くの消費者製品がある。しかし、腫瘍治療、電気自動車用リチウムイオン電池、太陽光パネルなどの多くの医療及び技術用途もある。これらの応用は、大きな技術的躍進をもたらす可能性があり、従ってナノ物質は重要な可能性を秘めた技術として特定されている。ナノテクノロジーによって支えられる製品は、世界で2009年の2,000億ユーロ(約20兆円)から2015年までに2兆ユーロ(約200兆円)の成長であると予測されている。

 ナノ物質の便益は、医療における生命救助から消費者製品の単純な改善への革新創出までの広い範囲にわたる。同様に有害な特性と労働者、消費者、及び環境への曝露は、何も懸念がないものから対応がなされる必要のある潜在的なリスクまで広く異なる。欧州連合はこれらに焦点を合わせて対応するためのツールを持っている。

 更なる情報:
Communication on the Second Regulatory Review on Nanomaterials and staff working paper. Europa website on nanotechnology http://ec.europa.eu/nanotechnology/index_en.html

More information on nanomaterial review

MEMO/12/732
Nanomaterials: Commission proposes case by case approach to assessment


訳注1
2009年1月19日 新規の及び新たに特定された健康リスクに関する科学委員会(SCENIHR) ナノテクノロジー製品のリスク評価 エグゼクティブサマリー及び委員会の意見

訳注2


化学物質問題市民研究会
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