2009年2月3日 作成:スイス及びアメリカ
第2回国際化学物質管理会議(ICCM2) 喫緊の政策課題
2009年2月20日までのコメント用
ナノテクノロジーと工業ナノマテリアルに関する
情報文書案 (ドラフト)


情報源:
平成21年2月27日第5回 SAICM関係省庁連絡会議
配布資料1−2 喫緊の課題(emerging policy issue)について 別添3
DRAFT FOR COMMENT BY 20 FEBRUARY 2009
Emerging policy issues
Draft information document on nanotechnology and manufactured nanomaterials
http://www.env.go.jp/chemi/saicm/conference/mat5-1-2.pdf

訳:安間 武 (化学物質問題市民研究会)
http://www.ne.jp/asahi/kagaku/pico/
掲載日:2007年4月20日
このページへのリンク
http://www.ne.jp/asahi/kagaku/pico/nano/ICCM/ICCM_nano_draft_information_dcument.html

訳注:この文書は、2009年5月にジュネーブで開催される第2回国際化学物質管理会議(ICCM2)用文書として、2009年2月3日にコメント用に発表された。この文書にコメントを反映して大幅に修正された公式文書が 「第2回国際化学物質管理会議(ICCM2)/SAICM 喫緊の政策課題 ナノテクノロジーと工業ナノマテリアルに関する背景情報」 として、2009年3月25日に発表されている。

1. はじめに

 ナノテクノロジーは多くの潜在的な便益と広範な経済分野に新たな機会もらすことが期待されている。この背景文書は人の健康と環境の安全の考慮と潜在的な環境的便益に焦点を合わせるが、しかるべき状況のもとでは他の論点にも目を向ける。この文書の目的は現在の最新の技術についての意識を高めることである。この文書は更なる情報として主要文書の参照リストがつけられている。将来の可能性ある共同行動のりストも示している。

 ナノテクノロジーは、医学からエネルギーまで多くの経済分野に多大な変化をもたらすことが期待される特別の技術である。それは多くの新規な材料、デバイス、及び製品の製造に貢献するであろう。検討中の応用分野によって、産業用試作及びナノテクノロジー商業化の開始のための時間軸は異なる。塗料、コーティング、化粧品のような第一世代のあるものはすでに商品として市場に出ている。医薬品、診断、及びエネルギー貯蔵と製造のような複雑な製品も開発中である。

 多くの研究がナノテクノロジー市場の経済的見通しの見積りを試みてきた。例えば、ナノエレクトロニクス(半導体、超コンデンサ、ナノストレージ、ナノセンサー)の分野は2015年には約4,500億ドル(約45兆円)に相当する。ナノ材料(粒子、コーティング、構造)に関する同様な見積もりも、2010年には約4,500億ドル(約45兆円)になるとしている。

 活性ナノスケール構造及びナノシステムに基づく更なるナノ対応製品が将来開発されるであろう。そのような開発は、技術の現代化及び人と機械/製品のインターフェースの変化に関する革新を伴うであろう。

 ナノテクノロジー及び工業ナノマテリアルの機会と課題に関する現在の議論は第一世代ナノ製品に焦点を当てている。科学に基づくリスク評価と潜在的なリスクの適切な管理を通じて工業ナノマテリアルの責任ある開発を可能にする政策の枠組みを開発することは政府の責任である。

2. 工業ナノマテリアルの可能性あるリスクについての知識レベル

2.1 人の健康と生態系へのリスク

 工業ナノマテリアルに便益をもたらす同じ独特の特性を持つものはまた、人の健康と環境に及ぼすナノ粒子の影響について疑問を提起する。潜在的なナノ粒子の毒性の評価は複雑であり、多分、サイズや形状、さらには電荷、面積、反応性、及び粒子表面上のコーティングのタイプのような表面特性など、様々な物理化学的特性によって支配されている。ナノ粒子からなる製品はますます数が増え、人の暴露及びナノサイズ粒子の環境中への放出の可能性もまた増大するかもしれない。しかし、我々は白紙の状態から始めているわけではない。例えば、吸入した粒子は肺や動脈にダメージを与えることが数十年前から知られており、最近の研究は超微粒子物質によって特定影響が引き起こされるかもしれないことを示している。しかし、工業ナノマテリアルは自然の又は非意図的ナノスケール粒子物質と同じなのか違うのか、さらにはそれらは同一組成のバルクスケールのものとどの様に違うのかが現在の研究の関心ごとである。我々はナノマテリアルが人の健康と環境にどのように影響を与えるのかについて理解し始めたばかりである。

 ナノ粒子の用量や元素組成に加えて、それらの表面積、表面の機能、凝集の傾向、粒子の形状、及びそれらの表面電荷のような要素が体内の分布とそれらの可能性ある毒性に決定的な役割を果たすかもしれないということを知り始めている。しかしほとんどのナノ粒子については、それらが体内に取り込まれ、分布され、代謝され、蓄積され、分泌されることがあるのか、それはどのように行われるのかについてまだ明確ではない。動的なモデルの開発が影響を受ける目標器官における粒子の現実的な用量の見積もりに役立つことができる。様々なナノ粒子に対してどの暴露経路が妥当なのかを理解することは、ある目標器官が除外され、従って毒性テストの優先度を決めるのに役立つ。もうひとつ複雑なことは、粒子そのものに加えて、それらの分解製品の潜在的な人と生態系への影響もまた、それらの他の汚染物質との相互作用とともに、考慮されなくてはならない。

 生態系へのナノ粒子の潜在的な暴露を理解することは、当面の研究として重要なことである。例えば、肺は吸入ナノ粒子にとって重要な目標場所である。肺は広大な暴露面積を持ち、吸入され堆積されたナノ粒子は、空気血液関門を通じて血流中に入り込むことができる。しかし、我々は、そのような粒子は凝集塊(aggregate)または凝集体(agglomerate))傾向があるので、どの大気浮遊粒子が実際にナノスケール粒子として吸入されることがありえるか、まだわかっていない。肺に加えて、皮膚は、化粧品、日焼け止め、ナノ粒子をしみこませた衣類などの皮膚暴露を通じてナノ粒子が浸透する可能性がある。損傷のない健康な皮膚は効率的にまた効果的に(日焼け止め中の TiO2 のような)ナノ粒子から体を保護することを研究が示している。しかし非常に特別な工業的粒子は健康な又は破壊された皮膚のバリアを浸透するかもしれず、皮膚浸透に関する一般的な結論はまだ存在しない。しかし、もしある粒子が暴露をもたらすことがあるなら、我々は、ナノ粒子暴露による脂質過酸化(lipid peroxidation)を通じて生じる酸化ストレス、炎症性反応、細胞膜破壊を報告している動物又は培養細胞を用いた予備的な研究の有害性の発見を考慮する必要がある。

 他の暴露経路に関し、ナノ粒子の経口摂取は今日まで、適切にテストされていない。ある科学的研究は、ナノ粒子は摂取されても腸を通じて効率的に排泄されると報告している。小さな粒子(100nm以下)については、腸壁を通じての吸収が増大することがラットの研究で観察されている。ナノ粒子が、非テスト条件下で、血液脳関門、胎盤、あるいはその他のバリアを貫いて移動できるサイズで、生物システムに入り込むことができるかどうかわからない。あるナノ粒子は、嗅覚神経から中枢神経系に直接移動することができるかもしれないことを多くの研究が示しているが、血液脳関門の通過は、器官間の転移に関するデータが異なるアプローチに基づいており、人工的なテスト条件に基づいており、それらの発見は再現性がなく、従って推論的なものであると考えるべきである。

2.2 労働安全衛生

 工業ナノマテリアルに関して、人の安全と健康を考慮する時に、職場は基本的に重要である。職場は最初の人暴露源であり、、そこでの装置などで比較的高い暴露の可能性がある。現在の我々の知識によれば、ナノ粒子への労働者の暴露は、製品を作る過程でナノ粒子を取り扱うことを通じて、及び、非意図的な副産物としてナノ粒子が生成される作業を通じて、主に起きる。

 より大きな粒子に比べて、ナノ粒子の特定の物理的化学的特性は予期しない安全リスクを引き起こすことができる。最も重要な物質安全に関わる危険は、火災又は爆発、及び予期しない触媒作用の増大のリスクである。粉塵中では 、粒子のサイズと関連する比表面積が爆発能力にとって重要である。基本的に、粒子が小さいほど粉塵爆発のリスクは大きくなるであろう。しかし、多くの粒子の物理化学的特性はまだ部分的にしかわかっておらず、従ってこれらのリスクを見積もることは難しい。現在までのところ、ナノ粒子は大部分、まだ比較的少量で製造されているだけなので、これらの危険性は多くの工業ナノマテリアルについて比較的低いとして分類されている。

 現代的な工業的ナノ物質の健康リスクに関するどのような疫学的調査も、まだ行われていない。職場の濃度が測定され始めているが、局所的及び時間的濃度プロフィールの現在のモデルが新たなナノ粒子の場合にも適用できるのかどうか明確ではない。現在、ナノ粒子を測定するための、及びそれらへの暴露を見積もるための手法に関する国際的な標準はない。

 職場における暴露を低減するための証明された戦略が、ナノマテリアルに適用されようとしている。適切な保護措置が労働安全衛生の専門家らにより職場の暴露評価の一部として評価され定義されている。いくつかの諸国では、未知の特性を持った新たな物質は潜在的に危険であるとして扱われるべきとする原則を適用している。組織的な保護措置が第一にとられ、密閉系システムのような技術的保護措置、及び粉体を形成する調剤の代替などによって支援されるべきである。個人保護装置は時にはこれらの保護を補完することができるが、一般的にはそれらにとって替わるべきものではない。多くの研究が技術的保護システム及び個人保護装置の正しい使用がある種の粒子から製造労働者を保護するために有効である[1]。

2.3 環境的リスク

 現時点においては、ナノマテリアルの生態毒性及び環境的挙動(運命、移動、変換)に関し、比較的少ない研究しか実施されていない。現在までのところ、いくつかの研究があるナノマテリアルのある水生生物への毒性影響を報告している。しかし、これらの研究の多くは、不適切に特性化されたテスト材料、不十分に定義された用量測定、又はテスト方法が確認されていないことなどを含む理由によって、限定されている、あるいは予備的なものとして考えるべきである。

 ナノマテリアル又はナノマテリアルを含む製品の製造、使用、及び処分の段階で生じる可能性ある環境的影響の信頼性あるどのような見積もりも存在しない。特に、環境中でナノマテリアルを測定する適切な手法が欠如している。同様に、たとえあっても、ほんのわずかな研究しか副産物及びナノマテリアルの製品分解に関して実施されていない。大気中又は水溶液中のマイクロメータ範囲の粒子の挙動の基本的な側面は明確に記述されている、あるいは新しいモデルが開発されるべきかどうかを決定する試みがなされている。現在までのところ、ナノ粒子の生物蓄積性及び食物連鎖中での蓄積の可能性を探査する研究はほとんどない。しかし、ナノ粒子は環境中の生物によって取り込まれることを示す調査がある。我々は、一方で脂溶性ナノ粒子の脂肪組織中での蓄積とその結果としての食物連鎖中での濃度を検討しなくてはならないが、他方、生態系中及び生物中の難分解性ナノ粒子について、もし分解又は排泄の経路がないのなら、その蓄積についても検討しなくてはならない。

 もっと多くのことがわかるまで、きちんとしたリスク評価を実施するための科学的情報及び方法論の基礎が足りない。いくつかの大規模なプログラムが様々な国及び国際的なレベルで進行中又は計画中である。これらはナノマテリアルに関するリスク研究の異なる側面を扱うであろう。そのような状況において、この最も重要な問題を扱うために調整された戦略的なアプローチをとることが極めて重要である。

3. 政府間及び国際間組織の活動

 OECDは、その化学物質委員会(Chemical Committee)のひとつの関連団体として、工業ナノマテリアルに関する作業部会(Working Party on Manufactured Nanomaterials (WPMN) )を立ち上げている。WPMN の目的は、その加盟国、非加盟国、NGOs、産業、及び IGOs の間の工業ナノマテリアルの人の健康と環境的安全の側面において国際的な協力を推進することにある。下記 8 つのプロジェクトが WPMN の作業計画である。
  • OECD人健康と環境的安全性(EHS)研究に関するデータベース開発
  • 工業ナノマテリアルに関する EHS 研究戦略(労働安全衛生を含む)
  • 代表的な工業ナノマテリアルの安全性試験
  • 工業ナノマテリアルとテストガイドライン
  • 自主的制度と規制制度に関する協力
  • リスク評価に関する協力
  • ナノ毒性学における代替試験の役割
  • 暴露測定と暴露低減
 OECDの科学技術政策委員会はナノテクノロジーに関する作業部会(WPN)を立ち上げた。その目的は、ナノテクノロジーの責任ある開発と使用に目を向けることにあり、ナノテクノロジーの発展に関する公衆の認識と他のテクノロジーとの収束を考慮に入れ、法的、社会的、倫理的問題を忘れることなく、潜在的なナノテクノロジーの便益を社会にもたらすことである。下記は、WPN の作業計画である。
  • 統計と測定
  • 影響とビジネス環境
  • 国際的研究協力
  • 社会への働きかけ(Outreach)と公衆の関与
  • 政策戦略に関する対話
  • 世界の課題に対するナノテクノロジーの貢献
 ISOは、ナノテクノロジーに関する技術委員会229を設立している。現在、次の4つの作業部会が設立されている。「用語・命名法」、「計測計量・特性評価」、「健康・安全・環境」、「マテリアルのスペック」。次の二つの文書が発表されている。
  • ISO/TR 12885:2008 Nanotechnologies -- Health and safety practices in occupational settings relevant to nanotechnologies
  • ISO/TS 27687:2008 Nanotechnologies -- Terminology and definitions for nano-objects -- Nanoparticle, nanofibre and nanoplate.
 4つの作業部会には約30の作業項目があり、現在開発中である。ISO/TC229 もまた討議されている。

 OECD のWPMN と WPN、及び ISO/TC229 は、双方の事務局及各国代表を通じて、日常的に調整されている。

 UNESCO 科学技術倫理プログラムは、科学と技術およびその応用に倫理的反映をするために1998年に科学的知識技術倫理に関する世界委員会(COMEST)とともに創設された。このプログラムは、民主的な規範構築のプロセスを推進し支援することにより、倫理的枠組みにおける科学と技術の検討を推進することである。このアプローチは、UNESCOの理念である”文明と文化の一般的に共有される価値と尊厳を敬うことに基づく真の対話”にその基礎を置いている。従って意識を高めること、能力の構築、及び標準化は、この分野及び他の全ての分野に置けるUNESCOの戦略の主要な推進力である。

 UNESCOは、ナノテクノロジーの最新技術を討議し、その定義をめぐる議論を検証し、関連する倫理的及び政治的問題を調査するために、ナノテクノロジーの著名な専門家を招聘した。2006年の報告書『The Ethics and Politics of Nanotechnology (ナノ技術の倫理と政治)(訳注1)』は、ナノテクノロジーの科学は何かを概説し、国際的社会が近い将来直面する倫理的、法的、及び政治的問題を示している。UNESCOは最近、『Nanotechnologies, Ethics and Politics (ナノテクノロジー 倫理と政治)』という一冊の本を出版した。この本の目的は、一般公衆、科学界、特別な関心を持つグループ、及び政策策定者に、ナノテクノロジーについての現在の考え方に顕著な倫理的問題を知らせ、これらの利害関係者の中でナノスケールテクノロジーについての実り豊かな分野間の対話を鼓舞することである。

 ナノテクノロジーと工業ナノマテリアル関するIFCS/FORUM-VI 総会が、第6回政府間化学物質安全性フォーラム(2008年9月15〜19日、ダカール、セネガル)の期間中に開催された。その目的は、参加者に工業ナノマテリアルのもたらす新たな機会、新たな課題、及び新たなリスクの可能性について意識を高めるための情報交換である。同フォーラムは21項目の勧告からなるダカール声明を採択した(訳注2)。

 FAO と WHO は合同専門家会議を開催することを計画しているが、その目的は、食品の安全に関する問題を含んで知識のギャップを特定し、現在のリスク評価手順を見直し、その結果、今後の食品安全研究を支援し、ナノ粒子から生じるかもしれない潜在的な食品安全リスクを評価するための適切で正確な方法論に関する世界的なガイダンスを開発することである。「食品と農業分野におけるナノテクノロジーの適用に関するFAO/WHO合同専門家会議:潜在的な食品安全影響」は、2009年6月1〜5日、ローマで開催される予定である。FAO/WHOは、その会議のための専門家と情報を求めている。

 長年、政府間組織は化学物質の健全な管理のための政府間プログラム(IOMC)を通じて、化学物質の安全に関して協力してきた。IOMC は多くの機会にナノマテリアルの安全について討議してきた。

4. 潜在的な健康と環境便益

 他の商業的用途に加えて、工業ナノマテリアルは環境的便益をもたらす多くの適用の道が見出されそうである。これらのあるものは、現在、商業的開発が行われており、それらには次のようなものが含まれる。
  • エネルギー産業での利用、例えば、もっと効率的なバッテリー技術、もっと効率的な太陽光の集光、及びもっと軽くて強い風車
  • 環境汚染をを直接低減するための利用、例えば、有機塩素による汚染土壌の改善、都市のNOxレベルを低減するための自己洗浄(self-cleaning surface)作用の応用
  • 微粒子の排出低減とと燃費の向上のたに燃料添加物として利用
  • もっと有毒な化学物質の代替としてのコーティングでの利用
  • 飲料水の浄化(”WPNプロジェクト F−地球的規模の課題:水の浄化”により詳細にカバーされている)
 潜在的な環境的便益を達成するために、工業ナノマテリアルの商業的導入を考慮するときに、諸国はそのような利用の潜在的な健康又は環境影響もまた十分に考慮するべきである。

5. 将来の可能性ある共同行動

 特に行動を起こしていない政府は、ナノテクノロジーと工業ナノマテリアルの自国の状況への関連性を検討したいと望むかもしれない。これは、例えば、ナノテクノロジーの考慮をナショナル・プロファイルに統合することによって実現できる。

 工業ナノマテリアルの環境健康安全、及び環境的に有益な応用に関して、学界、産業界、及び政府が実施中の広範な活動がある。関連する利害関係者はこの情報をできるだけ多く、クリアリングハウスを通じることを含めて、公開することを考慮すべきである。これに関する進捗は、国際ナノテクノロジー協議会(ICON)、NIOSH ナノ粒子情報ライブラリー、OECD WPMN の人の健康と環境の安全(EHS)研究に関するデータベース公開データベースなど多くの団体によってなされている。政府間組織もこれに関して顕著な貢献をすることができるかもしれない。

 いくつかの政府は、ナノテクノロジーに基づく新たな応用に焦点を合わせた研究と開発に向けて相当なリソースを投入している。そのような政府は、そのような応用のためのリソースのレベルと、環境健康と安全影響を理解するための研究に向けたレベルとを適切にバランスさせることを検討したいと望むかも知れない。政府はまた、移行経済国における活動を含めて、途上国や、持続可能な開発に関する世界サミットのヨハネスブルグ実行計画が求める活動に合致するために有用かもしれないナノテクノロジーの応用に関する研究に資金を当てることを検討したいかもしれない。

 OECDは、二つの作業部会(WPMN と WPN)を非メンバー国及び他のオブザーバーの積極的な参加のために開放してきた。今日までにアルゼンチン、中国、インド、ロシア、タイを含む多くの非OECD諸国が、相互利益のもとに参加している。いくつかの途上国は、そのような参加を促進するために、OECD事務局にリソースを提供している。それぞれの作業部会によって探査されている問題に関心を持つ非OECD諸国又は他のオブザーバーはOECD事務局にコンタクトし、それらの活動に参加したいと望むかも知れない。同様に、ISO TC229にまだ参加していないが、参加することに関心のある国、NGOs、及び産業は自国の国家基準組織又はTC229 自身にコンタクトしたいと望むかもしれない。

 工業ナノマテリアルの潜在的環境便益に関心を持つ国、NGOs、産業及びIGOsは、2009年6月1〜2日にチェコ共和国プラハで開催予定の工業ナノマテリアルの潜在的環境便益に関するOECD会議に参加することを検討したいと望むかもしれない。

 工業ナノマテリアルの健康、環境、安全への影響に関する調査を続ける一方で、政府と産業は労働者と消費者の暴露及び環境への放出を防止する又は最小にするための措置を、特に有害な工業ナノマテリアルについて、又は工業ナノマテリアルの環境と人の健康への影響に関して不確実性がある場合、考慮すべきである。適切な場合には、全サプライチェーンを通じて化学物質安全データシート(MSDS)又は他の手段により川下ユーザーに知らせる措置がとられるべきである。

6. 参照

国際組織
国家政府及び政府機関
Others
原注[1] Hullmann A. Measuring and assessing the development of nanotechnology; Scientometrics
70(3): 739-758, 2007



訳注1
UNESCO 報告書 2006年6月 ナノ技術の倫理と政治

訳注2
第6回政府間化学物質安全性フォーラム IFCS/FORUM-VI報告書エグゼクティブサマリー 2008年9月24日 工業ナノ物質に関するダカール声明

訳注:関連情報
第2回国際化学物質管理会議(ICCM2)喫緊の政策課題 ナノテクノロジーと工業ナノマテリアルに関する可能性ある共同行動を提示する文書案/ナノテクノロジーと工業ナノマテリアルに関する共同行動についての決議案



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