第6回政府間化学物質安全性フォーラム
IFCS/FORUM-VI報告書エグゼクティブサマリー 2008年9月24日
工業ナノ物質に関するダカール声明

情報源:IFCS/FORUM-VI/07w, 24 September 2008
Intergovernmental Forum on Chemical Safety
Sixth Session - Forum VI Final Report
Executive Summary
Dakar Statement on Manufactured Nanomaterials
http://www.who.int/ifcs/documents/forums/forum6/f6_execsumm_en.pdf

訳:安間 武 (化学物質問題市民研究会)
http://www.ne.jp/asahi/kagaku/pico/
掲載日:2006年9月26日
このページへのリンク
http://www.ne.jp/asahi/kagaku/pico/nano/IFCS/IFCS_2008_Dakar.html


序文
  1. IFCSは、セネガル政府の招きによりダカールにおいて2008年9月15〜19日、第6回政府間化学物質安全性フォーラム(第6回フォーラム)」を開催した。

  2. 工業ナノ物質及びナノテクノロジーの潜在的な便益、新たな機会、課題、有害性(ハザード)、リスク、倫理的及び社会的問題が認識され、これらについての意識を高めることの必要性もまた認識された。

  3. ナノテクノロジーの安全面に目を向けることの必要性が認識された。ナノテクノロジ−は100nm以下のサイズで設計された材料、ディバイス、及びシステムの可視化、特性化、及び、製造に関わる。本声明においては、ナノ物質の安全面についてのみ、焦点をあてることが同意された。

  4. 現在実施されている政府間及び国際組織の活動、及び国家政府及び非政府組織の関連する国家及び地域の活動が考慮された。工業ナノ物質の環境、健康及び安全に対する潜在的なリスクを特定するための現在の取り組みはまだ完全には決定的ではなく、したがってその取り組みは世界的に拡大され、支援される必要がある。

  5. 工業ナノ物質を取り扱う活動が多くの国家及び地域にあることを認めるが、その急速な発展にもかかわらず、多くの諸国には包括的な政策の枠組みがない。包括的な世界的政策の枠組みが欠如していることもまた、言及された。

  6. 工業ナノ物質に対する子ども、妊婦、女性、及び老人などのグループの特別な脆弱性が認識され、彼らの健康を保護するための適切な安全措置を取ることの必要性が強調された。

  7. 持続可能な開発と2020年目標を達成すべき汚染防止に対する工業ナノ物質の寄与を確実にするための必要性が強調された。リスク評価とリスク管理戦略をこの分野の作業に適切に織り込むことの必要性が強調された。

  8. 人の健康と環境に関する潜在的なリスクのより良い分析を支えるための研究と研究戦略のための要求が認識された。

  9. 発展途上国及び移行経済国の工業ナノ物質に対処するための特別の必要性と能力が言及された。

  10. 工業ナノ物質のリスクの最小化を達成するために、工業ナノ物質を受け入れる又は拒絶することの権利が認識された。
フォーラムは下記を勧告する:
  1. 政府及び産業は、工業ナノ物質のライフサイクルを通じてリスク管理の一般原則のひとつとして予防原則を適用すること。

  2. 政府と利害関係者は工業ナノ物質の潜在的な便益とリスクを検討するための取り組み又は対話を立ち上げる又は続けること。

  3. 政府及び政府間組織、大学、民間企業、及びその他の利害関係者らは、一般大衆が意識を高め情報に基づく意思決に利用できるよう、工業ナノ物質のライフサイクルに関連する使用とリスクに関する情報に一般大衆が容易にアクセスすることができるようにすること。

  4. 市民社会の能力は、工業ナノ物質に関連する意思決定に効果的に参加できるようにするために強化されること。

  5. 研究者と学界は、特に、子ども、妊婦、及び老人などの脆弱なグループのために、ナノ物質の潜在的なリスクを効果的に評価するために必要な知識を増やすこと。

  6. 政府と産業は、実世界の条件下で工業ナノ物質の全ライフサイクルを含むリスク評価の知識のギャップを埋めることを継続して行うこと。

  7. 産業は、工業ナノ物質に関連するリスク評価、リスク防止措置の選択、及びリスクの監視を含む労働安全衛生プログラムを開発するときには、労働者及びその代表を関与させること。

  8. 特に危険な工業ナノ物質のために、あるいは工業ナノ物質の環境及び人の健康への影響について不確実性がある場合には、労働者の暴露と環境への放出を防止するあるいは最小にするための措置が取られること。

  9. 工業ナノ物質を扱う研究者は、既存及び計画中の研究プログラムに関して、環境、健康、及び安全専門家、及び医学界と協力すること。

  10. 人の健康と環境に対する潜在的なリスクに関する効果的な研究戦略を開発し、資金調達し、共有することを継続すること。

  11. 川下ユーザーは、全サプライチェーンを通じて化学物質等安全データシート(MSDS)を通じて工業ナノ物質の健康と安全リスク及び新規特性について情報を与えられること。

  12. 産業界は、職場の監視を含んで工業ナノ物質の環境と健康及び(労働)安全の分野に関する責任あるスチュワードシッププログラムの中でコミュニケーションと意識の向上を継続し、あるいは取り組み、さらに産業界と他の利害関係者との間の協力的取り組みに着手すること。

  13. 政府と利害関係者は、工業ナノ製品に関する安全情報を推進し共有すること。

  14. 諸国及び組織は、工業ナノ物質のリスクに関連する科学的、技術的、法的、規制的政策の専門的知識を築くことを目的として発展途上国及び移行経済国を支援するために、資金的支援を考慮しつつ、パートナシップを構築すること。

  15. 各国政府はその能力に応じて、全ての利害関係者とともに国家の行動規範の作成準備に協力し、また国際組織の支援を得て、時宜を得た方法で世界の行動規範を開発する実行可能性を評価すること。

  16. 政府は、現在の法的枠組みを変更することの必要性を探求しつつ、ナノ物質製造に関する関連情報を交換すること。

  17. 国際標準化機構(ISO)は、サイズを含むがそれに限らずに工業ナノ物質の現在実施されている明確な定義の開発を促進すること。

  18. 製造者は、製品ラベルを通じて、またもし適切ならウェブサイトとデータベースを通じて、消費者に潜在的なリスクについて知らせるために、工業ナノ物質の内容について消費者に適切な情報を提供すること。

  19. 政府、政府間、国際組織、及び非政府組織、産業、その他の利害関係者は、これらの勧告を支持すること。

  20. 国際組織及びその他の関連組織は、政府がこれらの勧告を実施するためにどのように支援するかを検討すること。

  21. 国際化学物質管理会議の第2セッション(ICCM2)(訳注:2009年5月開催予定)は、将来の行動のためにこれらの勧告を考慮すること。

訳注:関連情報



化学物質問題市民研究会
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