国際環境法センター (CIEL)
2014年4月2日
CIELと欧州のパートナー
EU当局の会議でナノ物質の規制に関する見解書を発表


情報源:Center for International Environmental Law (CIEL), Aprilr 2, 2014
CIEL and European partners* publish position paper on the regulation of nanomaterials at a meeting of EU competent authorities
* ClientEarth, The European Environmental Bureau, European citizen's Organization for Standardisation, The European consumer voice in Standardisation - ANEC, and Health Care Without Harm, Bureau of European Consumers
http://www.ciel.org/Chem/Nano_2Apr2014.html

訳:安間 武 (化学物質問題市民研究会)
http://www.ne.jp/asahi/kagaku/pico/
掲載日:2014年4月12日
このページへのリンク:
http://www.ne.jp/asahi/kagaku/pico/nano/CIEL/CIEL_140402_NGOs_position_paper.html

 声明 2014年4月
 ナノ物質は同一組成のバルク物質とは異なる。それらはサイズに起因する新規な特性を利用するために特に操作されている。欧州委員会のナノ物質に関する2012年第2回規制レビュー(訳注1)は、他の物質と同様に、あるものは有害であるが、一方、他のものは安全かもしれないと考えている。したがって、EU市場に出されている全てのナノ物質は、その新規な特性に由来する潜在的なリスクの評価を含んで、徹底的なリスク評価を受ける必要がある。

 現状のEUの法律は、市場にある全てのナノ物質がその物質のバルク形状のものとは別に評価されることによって安全であるということを保証していない。したがって、我々は欧州委員会に対して、ナノ物質の潜在的なリスクに目を向ける既存の法的枠組みの包括的な改訂のための具体的な提案をするよう求める。

1. ナノ物質は他の物質とは異なる

 我々は、EUの法律が、ナノ形状の物質はそれらのバルク物質とは違い、異なる本質的な特性を持つという事実を考慮していないことを懸念している。したがって、我々はこの原則が、REACH、そして分類、表示、包装に関する規則(CLP)及び他の全ての関連する法律の中で明示的に確立されるべきことを求める。適切な検討を確実にするために、欧州委員会のナノ物質に関する定義提案(訳注2)で定義されている市場にある全てのナノ物質について包括的な物質特定及び特性化データの提出が求められる。

 同様に、我々は欧州委員会とEU加盟国に対して、REACHの下に収集されたバルク形状に関する情報に基づき、段階的導入物質(訳注:既存物質)に対して認められた遅延からナノ物質が利益を得ることがないことを確実にするよう要求する。

 さらに、ナノ物質はその特性のために、一般的にそれらのバルク物質よりもはるかに活性であり、それによってナノ物質の有害影響は等価質量のバルク物質に比べてリスクが増大する。したがってナノ物質の登録のための現在のREACHの閾値はもっと下げなくてはならない。

 2018年以前に、年間10kg以上製造される市場にある全てのナノ物質は、ナノ形状に特化した完全な登録書類一式に基づき、ECHAに登録されなくてはならない。

2. ナノ物質のリスクが評価されなくてはならない

 REACH登録要求が発効してから6年が経過しているのに、これまでにわずか 9 物質しかナノ物質として登録されていないが、既存の目録に示されるとおり、もっと多くの物質がすでにEU市場に出ている。さらに、これらわずかなナノ物質の登録一式書類の品質の悪さのために、そのリスクを適切に評価することができない。全てのナノ物質が有害であるというわけではないと仮定する欧州委員会のナノ規制レビューの結論を確認するために、関連するEU法規は、全てのナノ物質はその有害特性について適切に評価されることを確実にするよう修正されるべきである。

 ナノ物質の新たな特性について懸念があるのだから、REACHの下にナノ物質の全ての登録一式書類は、化学物質安全評価を含まなくてはならず、また発がん性、変異原性又は生殖毒性を持つと分類される物質(CMRs)に現在求められるものと同じ情報提出要求を満たさなくてはならない。

3. ナノ物質は徹底的に評価されるべきである

 市場にある全てのナノ形状物質について包括的で最新の登録一式書類によって示されるナノ物質の徹底的なリスク評価において、ECHAは組織的に全てのナノ形状物質に対する要求への遵守をチェックすること、及びそれらの同定及び特性化の記述における不確実性のためにナノ形状の物質を含めているのかが疑われる全ての一式書類の遵守をチェックするよう我々は求める。さらに、共同体ローリング行動計画(CoRAP)((訳注3)リストは、ナノ形状であると特定された全ての物質を含むべきであり、評価は遅滞なく実施されるべきである。

4. ナノ物質に関する情報は収集され、広められなくてはならない

 EUの全ての市民は、どの製品がナノ物質を含むかを知る権利、またそれらの健康と環境へのリスクおよび全体的な暴露レベルについて知る権利を持つ。ナノ物質の周囲には不確実性があるのだから、欧州委員会は、市場にあるナノ物質の徹底的なリスク評価行うにあたり、公衆は知る権利及び情報に基づき選択する権利を行使する立場にあることを保障しなくてはならない。

 したがって、ナノ物質とナノ物質を含む消費者製品の公的にアクセス可能な目録が欧州レベルで確立されなくてはならない。さらに、具体的なナノ表示又は宣言の要求が、既存の義務の下に求められる食品、化粧品及び殺生物剤に加えて、全てのナノ含有製品(洗剤、エアゾール、スプレー、塗料、医療機器など)についても確立されなくてはならない。

5. REACH実施活動はナノ物質に取り組まなくてはならない

 ”ノーデータ、ノーマーケット”というREACHの基本原則は、一貫して実施されなくてはならない。したがって、有害性(ハザード)とリスクを評価できる意味のある最小限のデータなしに市場に出ているナノ物質は、実施活動を通じて市場へのアクセスを拒否されるべきである。それまでは、EU加盟国及び製造者が、ナノ物質の評価、製造、使用及び廃棄にあたり予防的アプローチを用いるよう我々は求める。


訳注1
Stakeholders' Response to the Communication on the Second Regulatory Review on Nanomaterials, Brussels, 23 October 2012

訳注2
欧州委員会2011年10月18日 ナノ物質の定義に関する勧告

訳注3
ECHA プレスリリース 2012年2月29日 REACH 物質評価を開始  最初の物質リストを発表
ECHA プレスリリース 2014年3月26日 ECHA 2014年から2016年の物質評価計画を採択



化学物質問題市民研究会
トップページに戻る