IPEN 水銀 INC2 報告書 2011年2月 INC2 で何が起きたのか? 情報源: IPEN Mercury INC2 Report February 2011 What Happened at Mercury INC2? http://www.ipen.org/ipenweb/documents/work%20documents/inc2_finalreport.pdf 訳:安間 武 (化学物質問題市民研究会) Translated by Takeshi Yasuma Citizens Against Chemicals Pollution (CACP) http://www.ne.jp/asahi/kagaku/pico/ 掲載:2011年2月17日 このページへのリンク: http://www.ne.jp/asahi/kagaku/pico/mercury/IPEN/INC2/What_Happened_at_Mercury_INC2_jp.html Abbreviations (略語)
■1月23日(日)水俣サイドイベント テクニカル・ブリーフィングの後、化学物質問題市民研究会(CACP/日本)とゼロ・マーキュリー・ワーキング・グループは、水俣の悲劇に関するサイドイベントを開催したが、それは大成功であった。IPENはこのイベントに資金的及びその他の支援をした。このイベントは、安間武氏による概要説明、アイリーン・スミス氏による写真エッセーと説明、谷洋一氏による現在の水俣の法的闘争の説明、そして水俣被害者、坂本しのぶさんの発言−で構成されていた。 部屋は各国政府代表であふれ、多くの人々がすみずみまで立って傍聴した。翌日の主要紙はこのイベントを大きく報道した。このイベントは本会議に向けての素晴らしい口火を切り、現在の水俣の悲劇について各国政府代表者らに大いに関心をもたせる役割を果した。下記ウェブサイトで写真を見ることが出来る。 http://www.ne.jp/asahi/kagaku/pico/mercury/INC2_Report_master.html ■フィッシュ・アクション 各国政府代表者らに知ってもらうために、IPENは本会議二日目の昼食時に約300個の美味しいツナのカナッペを用意して代表者らに振舞った。またツナ・カナッペとともに代表者らに、子どもと妊娠可能年齢の女性はビンナガマグロを週に1回、食べただけでも水銀の勧告レベルを超えるらしいことを強調したポストカードを手渡した。化学物質問題市民研究会の安間節子さんは魚のコスチュームと羽織を用意し、このイベントに”日本風味”を添えた。 下記にて写真とプレスリリースを見ることが出来る。 IPEN(写真) http://www.ipen.org/hgfree/media.html#Fish%20Action 化学物質問題市民研究会(写真) http://www.ne.jp/asahi/kagaku/pico/mercury/INC2_CACP/INC2_Photos.html プレスリリース(英語版) http://www.ipen.org/hgfree/media/IPEN%20Fish%20Action%20Press%20Release%20English%2011125_2.pdf プレスリリース(日本語版) http://www.ne.jp/asahi/kagaku/pico/mercury/INC2_NGO/IPEN_Fish_Action_100125_jp.pdf ■水俣条約命名に関する声明を日本の環境副大臣に手交 本会議中、短い休憩があり高官がひな壇を離れる機会があった。近藤昭一環境副大臣が他の人々とともに建物の出口に向かってホールの廊下を歩いてきた。彼が出口への角を曲がったときに水俣病被害者の坂本しのぶさんが、大勢のテレビカメラや報道カメラに囲まれて副大臣を待ち受けていた。彼女は条約の命名に関する水俣病被害者の声明を直接、副大臣に手渡した。水俣の被害者/支援者のグループは、”この悲劇にきちんと向き合い、本質的な解決の道筋が示されない限り反対する”としている。この声明の英語版及び日本語版を下記から読むことが出来る。 http://www.ne.jp/asahi/kagaku/pico/mercury/INC2_NGO/Minamata_Statement_110123_en.pdf http://www.ne.jp/asahi/kagaku/pico/mercury/INC2_NGO/Minamata_Statement_110123_jp.pdf ■”水俣を敬う”署名式典 水俣被害者への連帯を示すために、IPENは、”水俣を敬う”とする声明を起草し、1月24日朝に行なわれたIPEN共同議長による署名の式典で、この声明を水俣被害者坂本しのぶさんに手渡した。 この声明は、下記ウェブページで読むことが出来る。 (英語版) http://www.ipen.org/hgfree/media/honoring%20minamata%20statement.pdf (日本語版) http://www.ne.jp/asahi/kagaku/pico/mercury/INC2_NGO/IPEN_Honoring_Minamata_Statement_jp.pdf この儀式で、IPENの共同議長マリアン・ロイドスミスとオルガ・スペランスカヤは公式にこの声明書に署名したが、この声明は、起草後1週間も経たずに世界42カ国、72 のNGOsから支持を得た。(もしあなたの組織がこの声明に賛同署名をしたいと望むなら、どうぞIPENに連絡してください。ipen@ipen.org) またこの式典では、IPENの様々な地域のメンバーが連帯の挨拶をし、それぞれの国や地域の経験に基づき、どのように水俣の悲劇に関連しているかを述べた。
IPEN 連帯声明署名式スピーチ マニー・コロンゾ氏 GAIA、マニラ、フィリピン 2011年1月24日 千葉、日本 (英語版) http://www.ne.jp/asahi/kagaku/pico/mercury/INC2_NGO/Manny_Statement_110124_en.pdf (日本語版) http://www.ne.jp/asahi/kagaku/pico/mercury/INC2_NGO/Manny_Statement_110124_jp.pdf 私は、国際POPs 廃絶ネットワーク(IPEN)からこの有意義な集会に参加し、連帯のことばを述べる機会を与えていただいたことを感謝します。 私は、私たちの友人である坂本しのぶさんが、経験した苦しみ、生き残ること、そして不正義に対して勇気ある闘いをしていることに敬意を表したいと思います。 しのぶさんは、幼稚園の先生になるという彼女の夢を実現することはできませんでしたが、彼女は、被害、抵抗そして希望についての水俣の永遠の物語の教師になりました。 私たちの集合意識(collective conscience)をとがめ、私たち全てのINC2 参加者、特に政府代表者が耳を傾け最大限の責任をもって行動を起こすよう我々が希望する、心を動かされずにはいられない正義のための訴えを、水俣から千葉(幕張)に伝えて下さりありがとうございます。 何千人も何万人もの人々が被ったまだ知られていない悲惨と企業によりもたらされた苦しい化学物質の病弊はまだ完全には解決されていないという中で、もし、将来の水銀条約に水俣の名前が付けられるなら、この切迫した恥ずべきにせのものの正義に対して警告を与えていただき、ありがとうございます。 私たちは、人の健康と生態系を水銀汚染から守るという世界の合意と約束と、外交会議を2013 年に主催し、条約を水俣条約としたいとする日本政府の願望は、名誉ある補償と健康福祉の支援システムはもとより、被害者が集うホーム、企業責任、水俣及び不知火海の浄化、など水俣病被害者の要求にきちんと対応するために、真の迅速な行動をもたらすでしょう。 私たちの友人である安間武さんがINC1 において、”私たちは水俣に真の栄誉を与え敬意示す以外になすべきことは何もない”と発言したとおりです。 ”アリガトウゴザイマス”。水俣の経験、ボパールの経験、そして多くの化学災害の経験が、条約交渉のどの過程においても響きわたりますように。 ■水俣を敬う連帯リボン 水俣の人々との連帯の周知をはかり、その連帯を示す取り組みとして、IPENは数百のオレンジとブルーのリボンをINC2参加者に着けてもらった。ブルーは水俣の人々が生計を依存している水俣の海を表し、オレンジは警告のサインであり、汚染された海のために漁業が危ういことを示すものである。オレンジ色の警告表示は、”漁業禁止”のサインであり、水俣の地域社会に水銀レベルが危険であったことを示すものである。
水俣の悲劇と闘いについて水俣地域のリーダーたちと協力しながら世界に広めていくために、IPENは”水俣を敬う 連帯声明”への署名拡大を継続する。さらに、我々は、水俣ブルー&オレンジ連帯リボンをもっと広めていくつもりである。 ■IPENブース IPEN は会議場展示エリアにブースを構え、多くの興味深いポスターや資料を展示した。多くのIPEN参加団体が、ブックレット、ポスター、ステッカーなどを持参してこのブースに展示した。ブースには次のようなIPENのブックレットやコピーなどが置かれた。
■INC2における水俣 日本政府版 水俣に関する日本政府の公式なプレゼンテーションでは、近藤昭一環境副大臣、宮本勝彬(かつあき)水俣市長、金子スミ子さん(語り部)の挨拶と語りが行なわれた。近藤副大臣は、日本政府は水俣被害者と地域社会の支援を続けてきたと述べた。彼は、日本政府は条約交渉委員会事務局に対し500,000USドル(約4千万円)の貢献をし、条約に”水俣条約”と命名するとの政府の約束を繰り返した。オープニングでは水俣の悲劇の歴史を述べるビデオの上映が行なわれた。そのビデオは、サイトは浄化され、水俣は現在”グリーン都市”であると主張した。開会式におけるこの主張は、サイトはまだ汚染されている(訳注)、汚染地域全体の健康調査は行なわれていない、補償は不完全である、責任あるチッソは責任を回避するために分社化することが許された、被害者が地域社会で安心して暮らしていける医療や福祉の仕組みはまだ確立されていない−と水俣被害者/支援者の代表が発表した内容と際立って対照的である。 (訳注):2010年9月 熊本・水俣訪問記(1) 百間排水口と(2) 水俣湾埋立地(安間 武) ”広さ58.2haの埋立地の下には、水俣湾海底から集められた水銀濃度25ppm以上の未処理汚泥約151万m3がありますが、"エコパーク水俣"がこの巨大な汚染を隠蔽するように百間排水口近くから親水護岸まで広がっています。水銀で汚染された汚泥は浄化処理されることなく、単に汚染場所が移動しただけです。汚染汚泥はスティール・パイルによる護岸で封じ込められていますが、スティール・パイルの寿命は50年と言われています。この埋立工事が1977年から1990年の間に行なわれたことを考えれば、このまま放置することはできません。 ■事務局のドラフト・エレメント文書 INC1で、代表者らはUNEP事務局に包括的なドラフト・エレメント・ペーパーを作成するよう要請した。このペーパーは、政府によって提出された資料とともに、INC1で述べられた見解に基づいている。UNEP事務局としてのドラフト・エレメント・ペーパーの大志を制限するこの取り決めは、設計において制約をうけた。対照的に、ストックホルム条約では交渉の間に、議長が政府とともに同等のペーパーを開発したが、それはもっと説得力のあるドラフトに向けて門戸を開いていた。 IPENは、事務局のエレメント・ペーパーは、”志に欠ける”と述べた。IPENの見解によれば、事務局のドラフト・エレメント・ペーパーに含まれる措置は不適切であった。下記は、これらの項目に関し会議においてなされた議論についてのIPENの懸念と意見の例である。 ■国家実施計画(NIPs) IPEN:IPENは、もし計画がないなら行動はないと信じる。国家実施計画(NIPs)は、国の批准、国の資源の包括的な理解の確立、及び、NGOsやその他の利害関係者の関与の機会の提供を国が準備するにあたり、大きな価値がある。ドラフト・エレメント・ペーパーは、国家実施計画(NIPs)の作成は自主的であることを提案している。このことは、国家実施計画(NIPs)の作成は、条約を遵守するための活動とはみなされず、自動的には資金援助の資格は得られないかもしれないことを暗示する。 INC2: 日本及びEU加盟国を含むいくつかの資金提供国は、国家実施計画(NIPs)は任意(optional)であるべきとするドラフト・エレメント・ペーパーに同意した。中国は、”柔軟性”があるべきと述べて同意したように見え、全ての計画義務はひとつに統合されるべきであると所見を述べた。アメリカとカナダは、この議題は後日議論することを提案した。対照的に、カンボジアやチリーのような国は 義務的な国家実施計画(NIPs)を支持した。 ■”許さない(not allow)” IPEN:IPENは、禁止(ban)、禁止(prohibit)、させない(prevent)のような明確な言葉を望む。”許さない(not allow)”は、物質の禁止に関わる他の法的文書の中でかつて使用されたことはなく、正確な法的意味を持たないかもしれない。 INC2: この言葉の使用に関してコメントした政府はないが、プライベートにはいくつかの国と地域のリーダーは、禁止(prohibit)のようなもっと明確な言葉が望ましいと述べた。 ■水銀添加製品 IPEN: この問題は製品中の化学物質、及び情報の開示(すなわち、知る権利)をテーマに活動している全てのNGOにとって重要である。条約が水銀を含む製品を取り扱うことが出来る二つの方法としてポジティブ・アプローチ又はネガティブ・アプローチがある。ポジティブ・アプローチのデフォルトは、条約にリストされている製品(例えば温度計)を除いて全ての水銀添加製品の使用を許すことである。ネガティブ・アプローチは、時限付きの免除を受けて条約にリストされている特定の製品を除いて全ての水銀添加製品をデフォルトとして禁止する。ポジティブ・アプローチは公共分野(すなわち、政府)に対し、どの水銀添加製品が廃止又は禁止されるべきかを要求する負担を負わせる。ネガティブ・リスト・アプローチは、民間分野/産業にどの製品が水銀を含んでいるかを開示する負担を負わせる。ネガティブ・リスト・アプローチでは、産業側は、継続使用のための時限付き免除のための事例を作成する負担を負う。 IPENは、市場に対し水銀廃止の強いメッセージを伝え、また、新たな水銀含有製品の製造と販売を思いとどまらせるので、ネガティブ・リスト・アプローチを望む。対照的に、ドラフト・エレメント ・ペーパーは、条約にリストされているものを除いて、全ての水銀含有製品の製造と使用を許すポジティブ・リスト・アプローチを提案している。 INC2:多くの国は、廃絶すべきとする明確で強いメッセージを送るために、条約が水銀含有製品に対してネガティブ・リスト・アプローチを使用すべきということに合意した。このような国には、アフリカ地域グループ(53カ国)、EU(27カ国)、ノルウェー、フィリピン、スイスが含まれる。これらの諸国のいくつかは拡大生産者責任を含める必要性について述べた。中国と日本は、何が”水銀添加”か、及び何が微量汚染かについてのガイダンス又は定義が必要であると述べた。 他の諸国はポジティブ・リスト・アプローチを望んだ。これらの諸国にはオーストラリア、カナダ(国内ではネガティブ・リストを使用しているにもかかわらず)、中国、ニュージランド、アメリカである。これらの諸国が支持する理由は、コスト効果と水銀を含む製品を特定する多くの取り組みに投資しなくてもよいからである。このグループの1カ国は、ネガティブ・リスト・アプローチは”過度に規制的”であると述べた。 ラテンアメリカ・カリブ海諸国グループ(GRULAC)は、彼らがハイブリッド・アプローチと呼ぶものを提案した。この提案は、実際にはポジティブ・リスト・アプローチを使用するが、製品の3つのカテゴリーを作り出す。すなわちエッセンシャル・ユース(代替がないか、あっても高価);過渡期(廃止までの時間);及び禁止である。この提案に関心があるとカナダとインドネシアが述べた。 アマルガムとワクチンについてもまた、製品に関する議論が行なわれた。国際歯科研究協会(International Association for Dental Research)は、水銀含有アマルガムの安全性を強調し、彼らの使用のための許可免除を求めた。タバコ産業の主張が想起されることであるが、世界歯科連盟(World Dental Federation)は、水銀条約は”個人の決定”を制限すべきではないと述べた。対照的に、水銀を使用しない歯科医(World Alliance for Mercury-Free Dentistry)と国際口腔医学毒性学会(International Academy of Oral Medicine and Toxicology)は技術的に実行可能な代替の利用可能性とともに、アマルガム汚染を強調した。 CoMeD とSafemindsの両団体は、体内に直接水銀を注射することへの予防的懸念に言及し、また代替について強調しつつ、この問題に関するインターベンションを行なった。 ■製造プロセス IPEN:IPENは水銀使用製造プロセスの廃止のために、世界的な期限が確立されるべきであると信じている。さらに、ドラフト文書にリストされたたった二つのプロセスではなく、水銀を使用する全てのプロセスが条約によって対応されるべきである。事務局のドラフトは、水俣病をもたらしたプロセスである水銀使用のアセトアルデヒド製造の期限又は禁止を含んでいない。最後に、条約は外交会議開催日を期限として新たな施設(及び既存施設の拡張)の建設を明確に制限すべきである。 INC2: ノルウェーは廃止の期限、水銀を触媒として使用する他のプロセス、及び新規施設の建設又は既存施設の拡張の禁止を提案した。EUやアメリカなど他の諸国はエレメント・ペーパーにリストされている二つのプロセス、塩素アルカリプラントと塩化ビニルモノマー製造(VCM)の水銀使用廃止に集中した。VCM の本場、中国は代替が入手可能となるまで水銀を使用するVCM 製造は使用を許されるべきであると述べた。 議論における最大の”抜け穴”は、VCM 製造による水銀汚染の程度であった。UNEP によれば、VCM はASGMとほとんど同じくらいの水銀を使用する(ASGM:806トンに対してVCM:770トン)。しかし、入手可能な公開データはないので、VCM 製造からの放出は、目録ではゼロであるとカウントされている。VCM 製造は世界の主要な水銀汚染源である。 プロセスと製造に関する事務局フォーカル・ポイントは Gillian Guthrie (Jamaica) と Nina Cromnier (Sweden)である。このトピックに関するコンタクト・グループがINC3で確立されるであろう。 ■小規模金採鉱(ASGM) IPEN: 事務局ドラフトは、二番目に大きい大気放出源である ASGM に対応するために自主的措置だけを提案したが、これは締約国のASGMへの取り組みを遵守体制の外に置き、これらの活動が条約の資金メカニズムからの支援の資格をなくすようなものである。条約はその領土内にASGMを有する各締約国に対し、ASGMにおける水銀使用を最小にし廃絶することを目的とする包括的な行動計画を開発し、実施するよう求めるべきである。最悪の実施法(訳注:全鉱石アマルガム化など)は禁止されるべきである。 INC2: 多くの諸国はASGM への対応を強制的義務とすることを支持した。これらの諸国は、アフリア地域グループ(53カ国)、EU(27カ国)、ノルウェー、フィリピンである。対照的に、チリーはASGM対応には自主的アプローチを要求した。ラテンアメリカ・カリブ海諸国グループ(GRULAC)とインドネシアはASGMにおける水銀使用の漸減を唱えた。スイスとパプアニューギニアは自主的及び義務的アプローチを要求した。責任ある採鉱連合(Alliance for Responsible Mining (ARM))は、禁止すると採鉱労働者の脆弱性が増大するので、ASGMでの水銀の継続使用を唱えた。 本会議での議論に続いて、共同議長をDonald Hannah (New Zealand) と Felipe Ferreira (Brazil)とするコンタクト・グループが設立された。このコンタクト・グループはASGMの定義、貿易の制限、条約の範囲、行動についての自主的/義務的について議論した。このグループ会合は1回開かれただけであり、多くの問題は未解決のまま INC3 での討議に持ち越された。 約20カ国とNGOs 10団体がコンタクト・グループの討議に参加した。ASGMの定義についての議論で、全ての参加者は、エレメント・ペーパー中での定義から、”インフォーマル”と”原始的(rudimentary)”という言葉を取り除くことに合意した。カナダ、コロンビア、責任ある採鉱連合(ARM)及び Artisanal Gold Council は、ASGMの定義にフェアー採鉱、フェアートレード、グリーンゴールドのような言葉を加えることを提案した。他の諸国は、女性や子ども労働者を含むASGMの実態を反映したもっと単純な定義を望んだ。この定義は、共同議長及びUNEPによって、参加者からのいくつかのインプットを考慮しつつ、さらに検討が行なわれるであろう。 コンタクト・グループはまた、次のような文言をエレメント・ペーパーに入れることを議論した。”第12条及び第13条に従い、小規模金採鉱のための、水銀汚染サイトからの廃棄物を含む水銀廃棄物の回収、リサイクル、又は埋立を防ぐこと”。これに対して、責任ある採鉱連合(ARM)、Artisanal Gold Council、及びゼロ・マーキュリー・ワーキング・グループ(ZMWG)は、採鉱者が移行期間及び供給制限に対処するのを支援するために、水銀リサイクルは許されるべきであると提案した。 もうひとつの論点はASGMにおけるいくつかの実施の禁止に関連していた。国連工業開発機関(UNIDO)の支援を受けて共同議長は、ASGM分野における4つの最悪の実施方法の禁止を含めることを提案した。それらは、" 全鉱石アマルガム化、アマルガムの開放燃焼、水銀の後のシアン化物の使用、アマルガムの屋内燃焼である。ほとんどの参加者は同意したようにみえたが、賛成しないも者もいた。 コンタクト・グループ参加者はまた、ASGMに関する国家行動計画はが開発され、何とか国家実施計画に統合すべきであるということに同意した。インドネシアは、行動計画は各国の特定の問題と能力に適応させるべきであると提案し、EUとアメリカは、特定の時間の枠組の中で水銀使用を廃止するための移行プロセスを提案した。ブラジル、インドネシア、マリ、タンザニアは、情報へのアクセスとともに、能力構築、技術移転、財務スキーム、及び管理措置を計画に含めることを支持した。IPENは、締約国が採鉱者と地域社会の健康及び環境を守る措置、及び活動の外部化されたコストをカバーするメカニズムを提案した。 最後に、このグループは水銀貿易とASGMとの関係について議論した。 マリとタンザニアは不法な移動に関してコメントし、水銀貿易に関与する諸国で輸出入禁止を実施する必要性を支持した。対照的に、インドネシアは、”水銀貿易の禁止”ではなく、”水銀貿易の管理”を提案した。アメリカは締約国間の協力をどのように実施することが出来るかを詳しく調べるための議論を提案した。 ■大気放出 IPEN: 条約は、専門家グループがその仕事を遂行できるために十分なガイダンスを持つようBATを定義しなくてはならない。大気、水、土壌への放出は、全ての媒体への放出を規制するためにBATを利用する単一の条項に統合されるべきである。さもなければ、条約は大気から水及び/又は土壌への媒体シフトを促すことになる。”大排出者”にだけ計画を求めるドラフト・エレメント・ペーパーの二段階アプローチは、全ての締約国が計画を開発し実施する義務を持つよう、削除されるべきである。各締約国は、全ての媒体への水銀放出を削減し廃絶するための国家目標を採択し、そのようにするための計画を開発し実施すべきである。BEPガイドラインもまた設定されるべきである。これらのガイドラインは、社会的コストと、石炭使用の問題(採鉱、汚染、炭素)のために石炭より再生可能なエネルギー使用の考慮を含むであろう。 INC2: ドラフト・エレメント・ペーパーの中で、大気放出は土壌及び水への放出から分離した条項で規定されている。多くの諸国は、大気放出は、ひとつの場所からもうひとつの場所へ汚染がシフトすることを回避するために土壌と水から分離すべきではないということに同意した。それらの国には、アジア太平洋地域(5カ国)、ブラジル、及びモロッコがある。中国は、後にコンタクト・グループでこの懸念を強くくりかえした。ブラジルは、大気、水、及び土壌への放出に関する分離した条項を統合するというIPENの提案を支持した。対照的に、EUは、大気汚染は優先事項であり、その概念は”希釈”であるべきではないと主張してこのアイデアを拒否した。カナダとアメリカは水と土壌への放出に関する条項を削除することに同意し唱道するように見えた。 水銀の大気放出源は石炭燃焼を含み、それがいくつかの国の反発を招いた。インドは自主的な削減を唱えた。中国は同意し、”冗談”として、中国が使用すれば価格が上昇するであろう、よりクリーンな燃料を輸入する代わりに石炭を使用しているのだから中国に感謝しなくてはならないと述べた。多くの諸国は石油と天然がスは条項の一部であるべきと述べたが、それらの諸国には、ラテンアメリカ・カリブ海諸国グループ(GRULAC)(20カ国以上)、アフリカ(53カ国)が含まれる。イラン、カタール、アルジェリアは同意しなかった。インドネシアは、石油とガス産業からの水銀放出の問題は大気ではなく水と土壌であると主張した。他の排出源には、非鉄金属精錬及びセメント製造がある。中国は、鉄鋼は非鉄金属製造源リストから除外されるべきであると唱えた。EUは、住居暖房からの水銀をリストに含めることを主張した。中国は、住居暖房のためのBAT/BEP に何が規定されるのかに関してEUに説明を求めることにより反応した。アメリカは、リストは点源だけにするのがよいとして ASGM を含めることを拒否した。 BAT/BEP の議論は、既存の施設のためのBATを求める主張(EU、ノルウェー、アメリカ)及び排出制限値を求める主張(ノルウェー、アメリカ)があった。インドはBATを既存施設に適用することを拒否したが、BATは新設施設を含むことが出来るかもしれないと述べた。ラテンアメリカ・カリブ海諸国グループ(GRULAC)は、 BAT/BEP はもし経済的に実行可能なら推進されるべきこと、及び異なる排出源は異なる期限が対象となることを述べた。オマーンは BAT/BEPを定義することを支持した。カナダは BAT/BEP の採用における柔軟性を問い、南アフリカはフリーサイズのアプローチを拒絶した。インドは個々の国が自身のBAT期限を決定する柔軟性を強調した。アメリカは、相乗便益に言及した BAT/BEP 定義を開発することを主張した。 二層の排出者を持つべきとするエレメント・ペーパーの提案は反感を招いた。EUは、”著しい排出者”の規制は世界の水銀大気放出の60%を捉えることを提案した。ノルウェーは、このアイデアを支持したが、中国はこの措置に明確に反対し、セクション全体を削除することを提案した。南アフリかは、自主的な目標を望んだ。インドは多くの開発途上国では全ての人の電気利用の確保がまだ出来ていないと主張して、強制的な目標を拒否した。アフリカと日本は、”大排出者”という言葉のより明確な定義を望んだ。インドネシアは、事務局はさらなる議論をする前に全ての国の水銀放出を見直すべきであると述べた。 本会議に続き、コンタクト・グループが共同議長 John Roberts (UK) と Wijarn Simayacha (Thailand)の下に設立された。このコンタクト・グループで、インドは大気放出に関する説明責任に強く反対し、ブラジルと中国がインドを支持した。既存と新設の施設を分離する努力もあった。インドは、他の開発途上国からの支持を得て、既存施設に関連する問題及び、どのような管理を実施するにも高いコストとなることを強く主張した。 ■北極 北極の水銀汚染に対する特別な脆弱性が主に(北極協議会の代理としての)デンマークとイヌイット北極会議(ICC)によるインターベンションを通じて明らかにされた。デンマークは、この地域への水銀の長距離移動と、食物連鎖中の生物蓄積と生物濃縮のために水銀摂取が高いことに言及した。グリーンランドのICCからのパーヌナ・エジデ氏はイヌイットへの水銀の長距離移動の重要性について発言した。ICCは、北極の水銀の90%以上が人間由来であることに言及した。イヌイット(及び他の北極先住民)の食物は、魚や海洋哺乳類からの水銀で汚染されている。 ICC は Alaska Community Action on Toxics (ACAT)の支援を受けて、持続可能で再生可能なエネルギー資源を強調しつつ、水銀の大気放出に関する強い法的拘束力のある条項をもった大志のある条約を開発するよう各国代表者らに強く促した。 ■廃棄物 IPEN: 条約は、単純にこの責任をバーゼル条約に委任せず、廃棄物に関する特定の条項を持つ必要がある。バーゼル条約は、水銀廃棄物に関する国内の取り扱い、収集、又は輸送をカバーしていない。 INC2: この議題のいくつかの局面は議論を複雑にした。それらはバーゼル条約の役割についての混乱;廃棄物、保管、及び汚染サイトの間の関連;及び金属水銀は商品か廃棄物かに関する意見の不一致;である。多くの諸国は水銀廃棄物の責任はバーゼル条約に完全に委任することに賛成のように見える。ラテンアメリカ・カリブ海諸国グループ(GRULAC)(20カ国以上)とカナダは特に突出しており、GRULACは水銀条約における廃棄物に関する条項を削除することを提案した。アフリカとフィリピンは廃棄物投棄についての懸念を表明した。いくつかの諸国は水銀条約とバーゼル条約の間の関連に関して事務局ペーパーを改善するよう訴え、これはINC3で生成されるであろう。 商品か廃棄物かに関する疑問に関し、スイスは条約は4つの状況に対応すべきであると述べた。廃棄物としての金属水銀;廃棄物になる製品;商品としての金属水銀;許可されている製品。中国は石炭灰が廃棄物とみなされるのかどうかの懸念を表明した。 本会議での討議に続き、コンタクト・グループが共同議長 Abiola Olanipekun (Nigeria) と Katerina Sebkova (Czech Republic) の下に廃棄物と汚染サイトを議論するために設立された。このグループは様々な問題を討議し、金属水銀は廃棄物と保管の両方に関する条項の一部であるべきと結論付けた。代表者らは水銀条約はバーゼル条約と重複すべきではないことに同意したが、水銀条約に対するバーゼルの関連性について多くの誤解があった。同グループは、水銀条約の下での廃棄物に関するガイドラインの開発はバーゼル条約との協議の下に行なわれるべきことに同意した。将来の議論に含まれるべき問題には汚染サイトをどのように扱うか、及び金属水銀の廃棄物から商品への移行が含まれる。 ■汚染サイト IPEN: ドラフト・エレメント・ペーパーは水俣のような汚染サイトへ対応するためにどのような措置も条約遵守体制と資金メカニズムの外側に置かれることを示唆しつつ、自主的な措置だけを提案している。水俣湾のような汚染サイトから公衆を守る義務を含まない世界水銀規制条約が水俣条約と名命されて採択されることは非常に皮肉なことである。条約は締約国に汚染サイトの目録を作り、浄化の優先順位をつけることを求めるべきである。汚染サイトが特定され次第、直ちにそれらに対応し、汚染源を最終的に決定してそれに取り組み、短期的及び長期的な健康影響を評価してそれに対応し、公衆への周知を図り、リオ原則13に従い責任と補償を実施し、時宜を得たやり方で汚染サイトの浄化を行なうべきである。 INC2: 諸国は汚染サイトについて何かがなされる必要があるということには同意したが、それらが自主的であるべきなのか義務的であるべきなのかについては反応が様々であった。EU(27カ国)とアメリカは、エレメント・ペーパーによってとられている自主的アプローチを支持しているように見える。ナイジェリアは義務的行動を支持した。この問題は上述したように廃棄物を含むコンタクト・グループでさらに討議されることになった。 ■リンク UNEP Governing Council Decision 25/5 http://www.chem.unep.ch/mercury/mandates.htm (日本語訳)UNEP 第25回管理理事会 決議 25/5 化学物質管理 III 水銀 http://www.ne.jp/asahi/kagaku/pico/mercury/UNEP/GC_Decision_25_5_Mercury.html INC2 meeting documents http://www.unep.org/hazardoussubstances/Mercury/Negotiations/INC2/ INC2MeetingDocuments/tabid/3484/language/en-US/Default.aspx IPEN Views on the Mercury INC2 Elements Document http://www.ipen.org/hgfree/inc2.html (日本語訳)IPEN 2011年1月 水銀 INC2 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http://www.ipen.org/hgfree/media/IPEN%20Fish%20Action%20Press%20Release%20English%2011125_2.pdf 水銀汚染魚警告:缶詰のツナが国際水銀条約交渉の政府代表に提供される http://www.ne.jp/asahi/kagaku/pico/mercury/INC2_NGO/IPEN_Fish_Action_100125_jp.pdf NGO reports on INC2 including photos 水銀に関する第2回政府間交渉会議(INC2)参加報告 http://www.ne.jp/asahi/kagaku/pico/mercury/INC2_Report_master.html An NGO Introduction to Mercury Pollution (English and Russian with other languages in progress) http://www.ipen.org/hgfree/ CACP report on Minamata and the global mercury treaty http://www.ne.jp/asahi/kagaku/pico/mercury/Shiryou/Minamata_and_Global_Hg_Treaty_en.pdf 報告書「水俣と世界水銀条約」 http://www.ne.jp/asahi/kagaku/pico/mercury/Shiryou/Minamata_and_Global_Hg_Treaty_jp.pdf CACP factsheet and presentation on Minamata Disease JAPAN’S MINAMATA LEGACY AND THE NEED TO BAN ITS HG EXPORT http://www.ne.jp/asahi/kagaku/pico/mercury/Shiryou/Japan_mercury_export_ban_en.pdf 日本の水俣の悲劇と水銀貿易禁止の必要性 http://www.ne.jp/asahi/kagaku/pico/mercury/Shiryou/Japan_mercury_export_ban_jp.pdf Minamata and Mercury Issues in Japan http://www.ne.jp/asahi/kagaku/pico/mercury/Shiryou/Mercury_Issues_in_Japan_en.pdf 水俣病と日本の水銀問題 http://www.ne.jp/asahi/kagaku/pico/mercury/Shiryou/Mercury_Issues_in_Japan_jp.pdf IPEN Views on a Global Mercury Treaty (Arabic, Bahasa, Chinese, Czech, English, French, Japanese, Portuguese, Russian, and Spanish) http://www.ipen.org/hgfree/inc2.html Mercury free campaign map http://www.ipen.org/hgfree/ Earth Negotiations Bulletin on INC2 http://www.iisd.ca/mercury/inc2/ UNEP mercury programme page http://www.unep.org/hazardoussubstances/Mercury/tabid/434/language/en-US/Default.aspx IPEN mercury-free campaign http://www.ipen.org/hgfree/ |