NGOs連合 2008年5月21日 プレスリリース
EU 水銀の封じ込めを決定

情報源:Environmental and Health NGOs Press Release May 21, 2008
EU set to lock down mercury
http://www.euractiv.com/29/images/NGOs-on-2ndReadingPlenary-HgExportBan_PR_tcm29-172576.doc

訳:安間 武 (化学物質問題市民研究会)
http://www.ne.jp/asahi/kagaku/pico/
掲載日:2008年8月29日
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http://www.ne.jp/asahi/kagaku/pico/mercury/Env_NGOs/080521_Env_NGOs_Press.html


【ブリュッセル/ストラスブルグ 2008年5月21日】 NGOs連合は、議会が水銀輸出に関しEU全域で禁止を実施すること及び余剰水銀を安全に保管することについて合意を見出したということを非常に喜んでいる。

 第二読会での投票で、欧州議会は理事会が既に合意している妥協修正案を採択した。”最後の土壇場で、かろうじて交渉決裂の恐れを回避した”と欧州環境事務局(EEB)のゼロ水銀キャンペーン・プロジェクトのコーディネータであるエレーナ・リンベリディ−セッチモは述べた。もっと厳格な規制を見たかったが、二つの機関の合意はEUにおける水銀の封じ込めに向けた非常によい第一歩である”。

 既に議会によって支持されていたことであるが、医療用及び研究用の例外はあるものの、妥協案は水銀原鉱、塩化第一水銀及び酸化水銀の輸出禁止を含んでいる。水銀濃度が少なくとも95%以上の他の物質との混合物もまた禁止された。

 NGOsは、努力の結果、今回の禁止が規制の重大な抜け穴になるところであったこれらの化合物を最終的に含めることができて喜んでいる。この抜け穴を塞ぐということは、塩化第一水銀から回収できる年間50〜100トンの水銀がEUから世界の市場に輸出されないということを意味する。

 廃棄物と考えられる金属水銀の保管は地下の塩鉱と硬い岩床の中で暫定的あるいは永久的に行われることになる。さらに、暫定的保管は地上でも可能である。液体水銀の永久地下処分場へのドアは開かれているが、水銀が適切な地下設備で処分される前に、液体水銀を固体化合物に変換する技術的進展があれそれらを考慮しなくてはならない。環境的に安全な固化プロセスがすぐに利用できるなら、人と環境の長期間の安全を確保するために、そのような非常に有毒な物質が見えない場所で処分される前に、水銀固化を義務づけることをNGOsは希望する。

 今回、EU域内での販売が禁止される水銀含有製品の範囲を広げることと及び輸入禁止など、いくつかの主要な禁止が妥協案に盛り込まれなかった。これらの主要な点は今後数年で見直されることになっており、欧州委員会は2013年5月までにこの規則の改正を提案する。

 ”我々は、欧州では禁止される水銀含有製品(訳注:例えば水銀体温計)が輸出禁止に含まれなかったことが残念である。それは、公衆の健康を損なうダブル・スタンダードであると信じるからである”とヘルスケア・ウイズアウト・ハーム・ヨーロッパのリゼッタ・ファン・ブリエは述べた。”しかし、我々は、この有害な液体を使用することを止める必要性を認める国が増えているので、この禁止により始まった推進力がその使用を抑制することになるであろう”。

 議会と理事会は輸出禁止の実施時期を早め、2011年3月15日とした。

”遅いより早い方がよい” と、POPsと戦う連合(Association for the combat against POPs (ACPO))ブラジルのズレイカ・ニクツは述べた。”EUは最終的には、職人的で小規模な金鉱山で水銀が不注意に使用され、そのほとんど全てが環境中に入り込み、魚や人を汚染しているブラジルのような途上国に容易に水銀が届くドアを閉ざした。我々の地球の健康と環境をよりよく守るために、そして水銀に関し世界的に法的強制力のある協定に向けて、他の諸国もこの例に倣うべき時である”。

 NGOsは、環境理事会に対して合意された議会の法案を支持するよう、また欧州委員会にはこの決定を速やかに公式発表し実施するよう求めている。


記者への注記:

 2008年5月17日、欧州議会環境委員会に送付されたポジション・ペーパー全文は下記にて入手できる。
http://www.eeb.org/publication/documents/080317_NGOsLettertoENVI-2ndRead-Hg-export-ban.pdf

 水銀は長距離移動する地球規模の汚染物質である。最も有毒なメチル水銀は上位捕食魚中に蓄積し、魚を食べることで我々の体内に摂取され、胎児や小さな子どもに最悪の影響を及ぼす。
 更なる情報は、ゼロ水銀キャペーンのウェブサイト http://www.zeromercury.org と、"Stay Healthy, Stop Mercury" の http://www.env-health.org/r/145 を参照のこと。

Elena Lymberidi-Settimo, EEB Zero Mercury Project Coordinator, elena.lymberidi@eeb.org, T: +32 2 289 13 01 GSM: +32 496 532818 Lisette van Vliet, Health Care Without Harm Europe, Toxic Policy Adviser, lisette@env-health.org, T: +32 2 234 3645; GSM: +32 484 614 528 Vanessa Bulkacz, EEB Press & Publications Officer: press@eeb.org; Tel: +32 (0)2 289 1309

NGOs連合は下記団体からなる。

  • 欧州環境事務局(European Environmental Bureau (EEB), http://www.eeb.org)は、欧州加盟国、加盟予定国、及び周辺諸国を拠点とする145の環境市民団体の連合である。その組織は地方や国レベルのものからヨーロッパ及び国際的なものまでの範囲に存在する。EEB の目指すところはヨーロッパ人の環境を保護し改善し、ヨーロッパ市民がこの目標を達成するためにその役割を果たせるようにすることである。

  • ゼロ・マーキュリー・ワーキング・グループ(Zero Mercury Working group)、http://www.zeromercury.orgは、EEB、Mercury Policy Project/Ban Mercury Working Groupによって 2005年に創立され世界中から40以上の公益非政府組織の国際的連合である。このグループの目指すところは、EU及び全世界で環境中の水銀を最小に低減するために、我々が管理することができる全ての源からの水銀の排出、需要、供給を”ゼロ”にすることである。

  • 健康環境連合(Health and Environment Alliance (HEAL))、http://www.env-health.org は、健康と福祉を改善する手段として環境保護を唱道する国際的な非政府組織である。メンバー団体と組織は、健康、環境、女性、健康専門家、その他を代表している。このグループは、非政府組織、医師団体、看護師及びその他の医療関係者、大学・研究機関、及びその他の非営利組織を含む、41の多様な会員団体(6国際組織、11欧州ネットワーク、及び24国/地方組織)を擁する。

  • ヘルスケア・ウイズアウト・ハーム・ヨーロッパ(Health Care Without Harm Europe (HCWH), http://www.noharm.org)は、病院とヘルスケア機関、医療及び看護専門家、地域団体、健康被害者、労働組合、環境及び宗教組織の国際的な連合である。HCWH は、環境的に持続可能であり、最早、公衆の健康と環境に対する危害の源とならないようにするために、患者の安全と介護に関し妥協することなく世界中で医療産業を変革することにささげている。


訳注:関連情報






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