EurActiv 2008年5月22日
欧州議会
EUの水銀輸出禁止に合意


情報源:EurActiv 22 May 2008
Agreement reached on EU mercury export ban
http://www.euractiv.com/en/environment/agreement-reached-eu-mercury-export-ban/article-172579

抄訳:安間 武 (化学物質問題市民研究会)
http://www.ne.jp/asahi/kagaku/pico/
掲載日:2008年8月16日
このページへのリンク:
http://www.ne.jp/asahi/kagaku/pico/mercury/EU/080522_EU_mercury_export_ban.html


 環境・健康NGOらによって基本的には歓迎されたように、欧州議会は昨日、2011年までにEUからの全ての水銀輸出を禁止し、余剰水銀の保管の安全を改善する妥協案を支持することを採択した。

 5月21日の第二読会での採決で、欧州議会は欧州閣僚理事会における加盟国外交官が既に合意に達していた妥協案に正式な承認を与えた。

 EUの27加盟国の法制度に直接適用される規則(regulation)であるこの文書は、6月5日の会議で最終的に形式承認を受けるために各国の環境大臣に送付される。

水銀輸入は依然として可能

 欧州委員会の声明によれば、妥協案では二つの水銀化合物−塩化水銀(mercurous chloride)と酸化水銀(酸化水銀)−を輸出禁止物質に加えている。また妥協案は輸出禁止と保管義務を2011年3月までに実施することとしているが、これは当初の案より数ヶ月、早くなっている。
 また水銀混合物の輸出も95%以上水銀を含んでいれば禁止される。

 しかし、欧州議会による水銀輸入禁止要求は現実的ではないとして否決された。そして、輸出禁止の範囲をEUでは既に禁止されている水銀含有製品(訳注:例えば水銀体温計)にまで広げることもまた却下された。

保管は安全になされるべき

 保管に関しては、最終的に処分されるまで水銀廃棄物は人の健康と環境にとって安全な方法で保管されるべきことが合意された。そのような保管場所として、廃止された岩塩鉱山、地下の深い岩盤、又は地上の特別な安全保管施設などがある。

 しかし環境団体が失望していることは、液体水銀の永久地下処分の可能性がまだあるということでる。しかしこれは液体水銀を個体化合物に転換する技術が開発されて初めて、実施されるべきことである。NGOは、”もし環境的に安全な固体化プロセスがすぐに入手可能なら、それを必須の要求とする”ことを望んでいる。

立場:

 欧州委員会委員長スタブロス・ディマスはこの合意を歓迎し次のように述べている。”この極めて有害な化学物質の輸出が禁止されること、及び、現在市場に出ている水銀は安全に保管されるべきことは絶対的に重要なことである。この危険な物質の排出削減に他の諸国が追従するような事例を作ろう”。

 環境・健康NGOsらはこの結果に基本的には満足したと述べた。”もっと厳格な規制を見たかったが、二つの機関の合意はEUにおける水銀の封じ込めに向けた非常によい第一歩である”と、欧州環境ビューロー(EEB)のゼロ・マーキュリー・キャンペーンのプロジェクト・コーディネータであるエレーナ・リンベリッド-セッティモは述べた。

 しかし、ヘルス・ケア・ウイズアウト・ハーム・ヨーロッパのキャンペイナーであるリセット・バンビレは、体温計などEUでは既に禁止された水銀含有の医療機器は新たな制度の下でも輸出することができるという事実は遺憾であるとして、”公衆健康を損ねるダブル・スタンダートであると信じるので、ヨーロッパで禁止されている水銀含有製品が輸出禁止に含まれなかったことは残念だ”と述べた。

次のステップ:
  • 2008年6月5日:環境理事会は形式的な最終合意
  • 2013年3月まで:欧州委員会は可能性ある更なる提案をもってこの規則の見直しを発表



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