市民団体共同声明「水銀輸出禁止」への
環境省回答と当研究会コメント


オリジナル:Response to the Joint Statement (No. 2), 22 June 2012
To: Mr. Takeshi YASUMA (Citizens Against Chemicals Pollution (CACP)) From: Teruyoshi HAYAMIZU, Director, Environmental Health and Safety Division, Environmental Health Department, Ministry of the Environment, JAPAN (pdf)

掲載日:2012年7月22日
安間 武 (化学物質問題市民研究会)
http://www.ne.jp/asahi/kagaku/pico/
このページへのリンク:
http://www.ne.jp/asahi/kagaku/pico/mercury/CSO/2012_Export_ban_MoE_reply_jp.html


■環境省回答の要約
(文責:当研究会)必要に応じて、オリジナル(英文)を参照ください。
 この声明については、同様な要求が2009年10月にすでに提出されている。今回の貴要求は次のようにまとめることができると考える。

@)水銀禁止法を制定すること
A)余剰水銀を長期間、安全に保管すること
B)水俣を敬うことになる強い効果的な国際水銀条約を実現するための指導力と、アジア地域の水銀保管能力を高める努力を示すこと

 以前の貴要求に対して既に答えたように、我々は2009年以来変わらない次のような見解を持っている。

  • 人の健康と環境への水銀によるリスクを削減するために、環境的に適切な保管と国際貿易の削減を含む政策を考慮することが必要であると認識している。

  • 日本では、一次水銀採鉱は行なわれておらず、技術開発により水銀使用を削減してきた。日本から輸出される水銀は鉱石中及び廃棄製品中に含まれる水銀の回収及びリサイクルから供給される。

  • これらの理由のために:
    @)もし、水銀貿易が輸出管理の導入のために削減されたなら、余剰水銀が蓄積するであろうから、日本で長期間、水銀を適切に保管する必要が出てくるであろう。

    A)この場合には、水銀回収の経済的な動機がなくなり、現状の回収システムは適切に機能しなくなるであろう。したがって、回収システムを継続するためには、将来コスト負担を考慮することが必要になるであろう。

  • したがって、我々は、様々な見解を聞きながら、できるだけ早く、水銀輸出の問題と共に水銀回収のメカニズムと長期保管システムに関し(技術、場所、コスト負担、等)、政府部内で徹底的な検討を行いたい。

 上述の通り、我々は、水銀条約に関する政府間交渉の進展を考慮しながら、この問題に関する国内政策を検討したい。

 効果的な国際水銀条約の実現に向けて交渉を促進するために、日本は地域コーディネータとしてアジア太平洋地域での討議の先頭に立ち、また、様々な会合における討議に積極的に参加している。アジア太平洋地域における水銀保管の課題に関して、我々は国連環境計画(UNEP)による研究調査の結果に基づき将来の課題として、このことを検討したい。


■環境省回答に対する当研究会のコメント
  1. 今回の私達NGOsの声明は、2009年10月に発表した声明とほぼ同様であり、私達はこの2年の間に、日本政府がアメリカやEUと同じく、リーダーシップを発揮して、水銀輸出禁止の方向に強くかじを切ることを期待した。しかし今回の環境省の回答は、2009年の回答と同じであり、全く失望した。今回の環境省の回答に対する当研究会のコメントも、2009年のNGOsのコメントと同じである。

  2. 環境省は、水銀輸出禁止を直ちに実施しない理由を、余剰水銀の長期保管の検討の必要性と、水銀回収システム継続のためのコスト負担を考慮することの必要性を挙げてげている。

  3. しかし、日本政府はINC4における水銀廃棄物の保管に関するコンタクト・グループの会合で、日本は地震国であるが、水銀保管に関しては技術的に解決できると明言した(6月28日)。

  4. また、水銀回収システムのコスト負担は、汚染者負担原則及び拡大生産者責任に基づき、日本の余剰水銀の排出に責任がある非鉄金属採鉱業者、精錬業者、及び水銀含有製品の製造者が負担すべきことは明らかであり、水銀汚染をもたらす可能性のある余剰水銀の輸出で回収コストを賄おうとする現在のシステムは許されない。

  5. 一方、日本の水銀輸出は管理されておらず、最終の行き先がどこで、誰が、どのように使用しているのか把握していない。

  6. 引き続き、日本政府に対して、これ以上遅らせることなく、速やかに水銀輸出禁止に必要な措置をとることを要求するものである。
(文責:安間武)



化学物質問題市民研究会
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