「日本政府に水銀輸出禁止法の制定を求める市民団体共同声明」に対する
環境省の口頭回答とそれに対する市民団体の意見


環境省の口頭回答とそれに対する市民団体の意見(PDF版)
日本語版英語版
 英語版は、海外 NGOs 賛同団体を通じて
国際 POPs 廃絶ネットワーク(IPEN)やゼロ・マーキュリーワーキング・グループ(ZMWG)などの
国際的環境ネットワークにも発信されました。


2009年10月15日付け政府宛共同声明(HTML版)
http://www.ne.jp/asahi/kagaku/pico/mercury/CSO/cso_joint_statement.html

掲載日:2009年11月30日
このページへのリンク:
http://www.ne.jp/asahi/kagaku/pico/mercury/CSO/091120_MoE_Reply_to_CSO_jp.html



 2009年10月15日に私たち市民団体は、国内54団体、海外60団体の賛同を得た「日本政府に水銀輸出禁止法の制定を求める市民団体共同声明」を日本政府に提出しましたが、その中で私たちは下記のことを要求しました。
  1. 「水銀輸出禁止法」を早急に制定すること
  2. 回収水銀等、国内で発生する余剰水銀を国内で安全に永久保管すること
  3. 「国際水銀条約」、「アジアの水銀保管能力向上のためのさらなる取り組み」及び「世界水銀パートナーシップ」の実現に向けて、国際的なリーダーシップを発揮すること
 この市民団体共同声明について協議するために、私たちは2009年10月28日及び11月20日の2回、環境省と話し合いを持ちました。私たちは環境省に書面による回答を求めていましたが、11月20日の話し合いの席で、環境省は口頭で回答しました。

 下記に環境省の口頭回答の内容と、それに対する意見を示します。

1.環境省の口頭回答

 水銀による健康と環境へのリスクを低減するという観点から、施策の検討が必要であり、国際貿易の削減や保管も検討すべき施策の一つとして認識している。

 我が国では水銀の鉱出はなく、技術開発により水銀利用も減らしており、我が国からの輸出も金属鉱石や廃製品等に含まれる水銀の回収・再利用によるものである。

このため、
  • 輪出の管理等により貿易が削減されれば、国内に余剰水銀が蓄積することから、その長期保管を国内において適切に行うことが必要である。
  • 水銀回収の経済的インセンティブがなくなり、現行の回収システムが適切に機能しなくなることから、回収の継続のための費用負担について検討が必要である。
  • 代替選択肢のない製品の生産等のために新たな水銀鉱出を招かないよう、回収水銀の活用についても検討が必要である。
 このため、各方面の意見を聴きながら、政府部内で今後できる限り早期に、水銀回収及び長期保管の仕組み等について十分に検討し(保管技術、保管場所、費用負担のあり方等の検討)、併せて水銀輸出の問題について検討したい。

 また、今後とも、水銀に関する国際的な法的拘束力のある文書の制定や世界水銀パートナーシップの廃棄物分野の活動等に積極的に取り組んでいきたい。

2. 環境省回答に対する私たちの意見

(1) 市民団体共同声明に対する回答を環境省からいただき、ありがとうございます。私たちは、国際的な法的拘束力のある水銀に関する文書を確立するための努力を続けるという環境省の立場を歓迎しますが、私たちが提起した非常に重要な点には回答していないと考えます。

(2) 環境省は、水銀輸出禁止法を制定するという明確な意思表示及び約束をしていません。日本の水銀輸出を禁止するという論点の核心に対する環境省の回答が、単に水銀輸出の問題を"検討する"というだけでは不十分です。私たち自身がまさに水俣の経験を有しているにもかかわらず、また日本の主要な貿易パートナーであるアメリカと欧州連合が水銀輸出を禁止したにもかかわらず、日本はまだ世界の主要な水銀輸出国です。

(3) 日本の水銀輸出は管理されていません。すなわち、誰がどこでどのように日本からの水銀を使用しているのかに関して適切な説明がありません。環境省がこの問題解決を長期間、長引かせることは許されません。それは日本の輸出水銀が世界の環境を悪化させるであろうプロセスに使用され、最終的には日本人にも影響を与えている可能性が高いからです。

(4) 私たちは日本が直面している課題をよく知っています。環境省が水銀禁止に積極的でない理由は、それが余剰水銀の長期保管に関わるからであり、そのことについて環境省は保管技術、保管場所、費用負担、責任などの難しい問題を考慮しているように見えます。しかし、日本が水銀を輸出すれば、いずれ環境を汚染して、それがめぐりめぐって日本を汚染することになると信じます。日本が積極的に水銀輸出の禁止をせずに、水銀問題を解決することを期待するような政策を採るということは理に適ったことではありません。

(5) 私たちはまた、環境省が日本の余剰水銀の全てを日本で安全に長期保管すると述べなかったことを非常に懸念しています。たとえ余剰水銀の長期保管に困難があっても、それらを他の開発途上国に押し付けることは許されません。

(6) 日本は、国内での長期保管という問題を次の原則に基づいて解決する必要があります。すなわち、汚染者負担の原則、環境正義、予防原則、拡大生産者責任です。さらに日本は水銀輸出禁止について、欧州連合とアメリカが2008年に採択した時と同様に、国内での長期保管も含めて制定すべきです。

(7) 日本政府は水俣病の被害を教訓として水銀汚染防止のリーダーシップをとるべきです。私たち市民団体は、共同声明に述べられている「水銀輸出禁止法の制定」、「余剰水銀の国内長期保管」、及び「世界の水銀削減目標を達成するための国際的なリーダーシップの発揮」という日本政府への要求を再度、強く確認します。

以上
共同声明呼びかけ人:
 安間 武(化学物質問題市民研究会)
 中地重晴(有害化学物質削減ネットワーク)
 中下裕子(ダイオキシン環境ホルモン対策国民会議)

連絡先:
 安間 武(化学物質問題市民研究会)
 〒136-0071 東京都江東区亀戸 7-10-1 Z ビル 4 階
 化学物質問題市民研究会 安間 武
 TEL/FAX 03-5836-4358
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