欧州労働組合連合(ETUC)
2009年3月31日初版/2010年7月13日更新
労働組合優先リスト(2.2)
情報源:European Trade Union Confederation (ETUC) 31/03/2009
updated on 13/07/2010
Trade Union Priority List
http://www.etuc.org/a/6023

訳:安間 武 (化学物質問題市民研究会
掲載日:2009年4月13日
更新日:2012年4月7日
このページへのリンク:
http://www.ne.jp/asahi/kagaku/pico/eu/reach/union/090331_ETUC_Priority_List.html


 労働組合優先リストの目的は、REACHの実際的な実施、特に非常に高い懸念物質(SVHC)、すなわち、労働組合の観点から候補リスト及びその後の認可リストに優先的に含められるべき物質を提案することによって、認可手続きに貢献することである。欧州労連(ETUC)は、この改革(REACH)を支持することについて非常に明確な立場をとってきた。それは、より安全な物質を開発するよう産業界に働きかけることにより、REACH は欧州産業の競争力の向上と、労働者、消費者、及び環境の保護の改善の両方を促進するからである。

 非常に高い懸念物質(SVHC)について、労働組合優先リストはまた、REACH第57条の中で明示的に述べられている特性だけでなく、”同等の懸念”があるとみなされる(すなわち第57条(f)によってカバーされる)追加のハザード特性も考慮した。したがって、労働組合優先リストで非常に高い懸念物質(SVHC)とみなされる化学物質は、規則 1272/2008のAnnex VI にリストされる発がん性・変異原性・生殖毒性(CMRs)カテゴリー 1A, 1B, 又は2(訳注1)、 、国際がん研究機関(IARC) によって分類されるクラス 1, 2A, 2B(訳注2)、OSPAR 条約の枠組みの中にリストされ、また新規及び既存の化学物質に関する欧州技術委員会によってリストされた難分解性・生物蓄積性・有毒性(PBT) 物質(訳注3)、 内分泌かく乱物質のための共同体戦略にリストされた既知の及び疑われる内分泌かく乱物質、ベラら(Vela et al (2003))によってリストされた神経毒性物質、規則 1272/2008のAnnex VI リストされた感作性物質、及びフリードへルムら(Friedhelm et al. (2006))によってリストされた”REACH アレルギー物質(REACH allergens)”。

 労働組合優先リストに含まれる全ての化学物質は、ESIS(欧州化学物質情報システム)にリストされた、又は2010年までに公表されたSIEF(物質情報交換フォーラム)よってカバーされ、最初の登録期限までに登録されることが予想される高生産量化学物質(HPVC)であり、その結果、それらはまた、認可リストで最終的に優先付けられるべき基準と合致する。しかし、労働組合リストがさらに進んでいるのは、化学物質の本質的な(生態)毒性学的特性を参照することにより化学物質をランク付けること、及びEUレベルで認識されている職業疾病の原因となる化学物質を特定していることである。

 スコアによって高生産量化学物質(HPVC)をランク付けするための欧州リスク・ランキング手法(European Risk Ranking Method/ EURAM)は、非常に高い懸念がある化学物質(SVHC)とみなされる全ての化学物質をカバーするよう調整された。最高点(10点)はCMRs カテゴリー 1A 又は 1B、最低点(7点)は感作性物質、神経毒性物質、及び疑われる内分泌かく乱物質である。

 労働組合の観点から、候補リストに含まれるべき最も緊急な SVHC は、SVHC として特定されるべき基準を長期にわたって満たしてきた化学物質及び、特に、職業病に関する欧州委員会勧告により共同体レベルで認知された職業関連疾病を引き起こすことが知られている化学物質である。

 結果としての労働組合リストは、 スコアによって順序付けられた334 のHPVC/SIEF 項目によりカバーされる586物質を含む。これらの項目のうち209は認定された職業病の原因物質として特定された物質又はそのグループであり、63項目は職業病を引き起こすと疑われている物質又はそのグループである。

 職業病に関する利用可能な情報は項目毎に述べられているが、スコアリングは物質の本質的な特性だけに基づいており(すなわちハザード・ベース)、ランキングには影響を与えない。しかし、ETUCは、SVHCに関連する職業病は、候補リストに含めること及び認可リスト中で優先させることが考慮されるべきことを提案している。

 欧州労連(ETUC)は、労働組合リストの化学物質を候補リストに含めることは、職業的ユーザーが彼らの用途に関するもっと多くの情報を入手しやすくなると信じる。もし、それらがその後、認可リスト中で優先付けられるなら(又は制限対象となるなら)、より安全な代替物質の開発を促進し、化学物質関連の職業病と、共同体、労働者及び産業自身にかかコストを削減するであろう。

更なる情報:

訳注:関連情報
ケムセック(ChemSec) 2009年3月31日 労働組合 労働者保護のための有害化学物質リストを発表

訳注1:EUによる分類と表示/CMRのカテゴリー分類
  • CLP-Regulation (EC) No 1272/2008
  • REGULATION (EC) No 1272/2008 OF THE EUROPEAN PARLIAMENT AND OF THE COUNCIL of 16 December 2008
    ANNEX VI - Harmonised classification and labelling for certain hazardous substances
    Table 3.1 - List of harmonised classification and labelling of hazardous substances
  • Commission Directive 2001/59/EC of 6 August 2001 classification, packaging and labelling of dangerous substances(CMRのカテゴリー分類)

    指令67/548/EECのCMRカテゴリー1、2とCMRカテゴリー3の分類は、2015年6月1日以降は、規則(EC) No 1272/2008においてCMRカテゴリー1A、1B、2に分類される。
    http://j-net21.smrj.go.jp/well/reach/qa/204.html

    Carcinogenic substances
     Category 1 (1A):ヒトへの発がん性が知られている物質
     Category 2 (1B):ヒトへの発がん性があるとみなされるべき物質で、十分なデータがある
     Category 3 (2):ヒトへの発ガン性の懸念がある物質であるが、データが十分ではない
    Mutagenic substances
     Category 1 (1A):ヒトへの変異原性が知られている物質
     Category 2 (1B):ヒトへの変異原性があるとみなされるべき物質で、十分なデータがある
     Category 3 (2):ヒトへの変異原性の懸念がある物質であるが、データが十分ではない
    Substances toxic to reproduction
     Category 1 (1A):ヒトへの生殖能力を損なうことが知られている物質
     Category 2 (1B):ヒトへの生殖能力を損なうことがあるとみなされるべき物質で、十分なデータがある
     Category 3 (2):ヒトへの生殖能力を損なうことの懸念がある物質であるが、データが十分ではない
訳注2:IARCによる人に対する発ガン分類
Complete List of Agents evaluated and their classification
  • グループ1:発がん性がある
  • グループ2A:おそらく発がん性がある
  • グループ2B:発がん性があるかもしれない
  • グループ3:発がん性を分類できない
  • グループ4:おそらく発がん性はない
訳注3:OSPAR 条約
訳注4:REACH Annex XV 書類一式
附属書のリスト(環境省訳)
  • 附属書I 物質評価及び化学物質安全性報告書の作成のための一般的な規定
  • 附属書II 安全性データシートの編集に関する指針
  • 附属書III 1 トン〜10 トンの量で登録する物質に関する基準
  • 附属書IV 第2 条(7)(a)に従う登録の義務の免除
  • 附属書V 第2 条(7)(b)に従う登録の義務の免除
  • 附属書VI 第10 条に記す情報の要件
  • 附属書VII 1 トン以上の量を製造又は輸入する物質の標準的な情報の要件
  • 附属書VIII 10 トン以上の量を製造又は輸入する物質の標準的な情報の要件
  • 附属書IX 100 トン以上の量を製造又は輸入する物質の標準的な情報の要件
  • 附属書X 1000 トン以上の量を製造又は輸入する物質の標準的な情報の要件
  • 附属書XI 附属書VII から附属書X までに規定する標準的な試験計画の適合化に関する一般的 な規定
  • 附属書XII 川下使用者が物質を評価し、化学物質安全性報告書を作成するのため一般的な規定
  • 附属書XIII 難分解性、生物蓄積性、毒性物質及び極めて難分解性で高い生物蓄積性を有する物質 の特定のための基準
  • 附属書XIV 認可の対象となる物質のリスト
  • 附属書XV 一式文書
  • 附属書XVI 社会経済分析
  • 附属書XVII ある種の危険な物質、調剤及び成形品の製造、上市及び使用の制限
訳注:関連情報


化学物質問題市民研究会
トップページに戻る