ECHA プレスリリース ECHA/PR/09/01  2009年1月14日
認可リストに含まれるべき物質に関する
パブリック・コンサルテーション


情報源:ECHA Press Release, Helsinki, 14 January 2009
PUBLIC CONSULTATION ON INCLUSION OF SUBSTANCES IN THE AUTHORISATION LIST
http://echa.europa.eu/doc/press/pr_09_01_consultation_substances_authorisation_20090114.pdf

訳:安間 武 /化学物質問題市民研究会
http://www.ne.jp/asahi/kagaku/pico/
掲載日:2009年2月8日
このページへのリンク:
http://www.ne.jp/asahi/kagaku/pico/eu/reach/ECHA/090114_ECHA_Press_PC_Authorisation.html


 欧州化学物質庁(ECHA) は本日、認可対象となる物質のリストに含まれるべき物質(Annex XIV 又は認可リスと)の最初の勧告に関するパブリック・コンサルテーションを発表した。関心ある団体は、2009年4月14日までに、ECHA ウェブサイトにある関連ウェブ書式を使用して、コメントを提出することができる。

 勧告案に関するパブリック・コンサルテーションは REACH の Annex XIV(認可リスト)に物質を含めるための手続きの一環である。手続きの概要についてはこの文書の添付1を参照ののこと。

パブリック・コンサルテーション

 関心ある団体は下記に関してコメントすることができる。
  • 下記に示す7物質に関するECHAの勧告案、及びそれらを Annex XIVに含めることの理由
  • これらの物質を優先するためのECHAの正当性
 関心ある団体は、特に認可要求から免除されるべき用途に関しコメンとするよう要請されている。コメントにはECHAウェブサイト上のウェブ書式が使用されなくてはならない。コメントの期限は2009年4月14日である。

ECHAの勧告案

 入手可能な情報の評価に基づきECHAは、候補リスト(2008年10月28日発表)上にある15物質のうち7物質を優先することを勧告する。優先される物質は下記の通りである。
  • ムスクキシレン
    (5-tert-butyl-2,4,6-trinitro-m-xylene (musk xylene))
  • 短鎖型塩化パラフィン
    (Alkanes,C10-13,chloro (short chain chlorinated paraffins; SCCPs))
  • ヘキサブロモシクロドデカン(異性体混合物)
    (Hexabromocyclododecane (HBCDD) and all major diastereoisomers identified)
  • 4,4’-メチレンジアニリン (4,4’-Diamino diphenyl methane (MDA))
  • フタル酸ジ(2-エチルヘキシル)
    (Bis (2-ethylhexyl) phthalate (DEHP))
  • フタル酸ブチルベンジル
    (Benzyl butyl phthalate (BBP) )
  • フタル酸ジ−n−ブチル
    (Dibutyl phthalate (DBP))
 最初の勧告案中にECHAはさらに下記を提案する。
  • 認可申請は、上記の物質が REACHのAnnex XIV(認可リスト)に含まれた後、24〜30ヶ月の間に提出されなくてはならない。
  • これらの物質は、リストに含まれた後、42〜48ヶ月後には使用することができなくなる。
 ECHA は、コンサルテーション文書中に述べられているように、現行法令である上市と使用に関する制限指令(76/769/EEC)に規定されている特定の条件の下に認められる、優先物質の用途のための免除を含めることを提案する。

 ECHA は、候補リスト上にある物質に関する入手可能な情報を、REACH規則にリストされている、1) 物質の固有特性、2) 用途の特徴、3) 認可対象用途に供給される量−に関連する3つの優先規準に照らして評価した。物質の優先に関する全体的な結論を得るために、”証拠の重みアプローチ”が用いられた。いくつかの物質については、その物質を認可制度の下に置くことの法的有効性もまた考慮された。その方法論はコンサルテーション文書に述べられている。

 今回のコンサルテーション中に受領するコメントに基づいて、ECHAは勧告案を修正するかもしれない。この手続きで加盟国委員会(Member State Committee)の意見を考慮するであろう。その後、ECHA勧告は最終決定用に欧州委員会に提出される(このプレスリリースの添付を参照のこと)。

 現在、優先付けられていない8つの物質は、今後、ECHAによって優先付けを検討されるかも知れない。Annex XIV(認可リスト)にまだ含まれていない候補リスト上のどの物質も、将来優先付けられることがあり得る。

さらなる情報


添付1:認可手続きとは実際、どのようなものなのか?

 認可手続きには4つのステップがある。産業側は3番目のステップに義務がある。しかし、全ての関心ある団体はステップ1と2に情報提供する機会を持っている。

ステップ1:非常に高い懸念の物質の特定(当局による)

 非常に高い懸念のある物質は以前に記述された規準に基づき特定されることができる。これは、Annex XVにしたがって書類一式を準備することにより、加盟国当局又はECHA(欧州委員会の代理)によって実施される。関心ある団体は、書類一式が準備された物質に関しコメントすることができる。特定するための手続きの結果が特定された物質リストであり、それらは優先のための候補(候補リスト)である。このリストは、ECHAにより公開され、定期的に更新される。

ステップ2:優先付けのための手続き(当局による)

 候補リスト上の物質は、どの物質が認可対象となるべきかを決定するために優先付けられる。関心ある団体はこの手続きの期間中にコメントを提出するよう要請されている。特定するための手続きの最後に、次の決定がなされる。
  • その物質は認可対象となるのか、ならないのか
  • リストに含まれる物質のどの用途が認可を必要としないのか(例えば、他の法令により確立された十分な管理がすでに実施されているため)。
  • その物質は認可なしには最早使用することができなる期限(sunset date)
ステップ3:認可のための申請(産業による)

 認可のための申請は、認可要求から免除されないそれぞれの用途のために設定されている期限内になされる必要がある。それらには次のことが含まれる。
  • 認可システムに含まれるべきとする理由となったそれらの特性に関連するリスクをカバーする化学物質安全性報告書(もし、登録の一部としてすでに提出されているのではなければ)
  • 可能性ある代替物質又は技術の分析で、適切なら、研究開発の将来展望、又はすでに行われているならそのような代替の開発状況を含む。
 もし、代替の分析が、適切な代替があることを明らかにしたなら、申請者は、どのようにして代替を実現するのかを説明する代替計画を提出しなくてはならない。入手可能な代替の適切性は、その代替が全体のリスク削減をもたらし、技術的にも経済的にも実現可能であるかどうかを含めて、全ての関連する局面を考慮に入れて評価される。

 申請者は社会経済的分析を申請に含めることができるが、リスクの適切な管理を実証することができず、適切な代替が存在しない場合には、ひとつを申請に含める必要がある。

 費用はそれぞれの申請毎に支払われなくてはならない。

 すべての申請に対して、ECHAは専門家の意見を提供する。申請者者これらの意見にコメントすることができる。

ステップ4:認可のための申請(欧州委員会による)

 認可は、もし申請者がその物質の用途によるリスクが適切に管理できることを実証できた場合に与えられる。”適切な管理の経路”は閾値を決定することができない物質、及び難分解性・生体蓄積性・有毒性を持つ物質(PBT )、及び高難分解性・高生体蓄積性(vPvB)をもった物質には適用されない。

 たとえリスクが適切に管理されなくても、それが社会経済的便益がリスクに勝り、適切な代替物質又は技術が存在しないなら、認可は与えられるであろう。

 川下ユーザーは、認可された用途のためにのみ、そのような物質を使用してもよい。

 そのために、川下ユーザーは:
  • その用途のために認可が与えられた会社から物質を得なければならない。川下ユーザーは認可条件を守らなくてはならない。そのような川下ユーザーは、ECHAに対し認可された物質を使っているということを届け出なくてはならない。
  • 川下ユーザー独自の用途については、川下ユーザー自身で申請しなくてはならない。
見直し
 全ての認可は1件づつ慎重に設定されるある期限の後に見直しが行われる。


訳注
 2008年10月28日発表の高懸念物質候補リスト15物質のうち、今回、認可候補となった7物質を示す。

物質名CAS No.EC No.SVHC の根拠認可候補
アントラセン
Anthracene
120-12-7204-371-1PBT 
4,4’-メチレンジアニリン
4,4'- Diaminodiphenylmethane
101-77-9202-974-4発がん性 2
フタル酸ジ−n−ブチル
Dibutyl phthalate
(DBP)
84-74-2201-557-4生殖毒性 2
塩化コバルト
Cobalt dichloride
7646-79-9231-589-4発がん性 2 
五酸化二ヒ素
Diarsenic pentaoxide
1303-28-2215-116-9発がん性 1 
三酸化二ヒ素
Diarsenic trioxide
1327-53-3215-481-4発がん性 1 
二クロム酸二ナトリウム
Sodium dichromate
7789-12-0
10588-01-9
234-190-3発がん性 2
変異原性 2
生殖毒性 2
 
ムスクキシレン
5-tert-butyl-2,4,6-trinitro-m-xylene
(musk xylene)
81-15-2201-329-4vPvB
フタル酸ジ(2-エチルヘキシル)
Bis (2-ethyl(hexyl)phthalate)
(DEHP)
117-81-7204-211-0生殖毒性 2
ヘキサブロモシクロドデカン(異性体混合物)
Hexabromocyclododecane
(HBCDD)
25637-99-4
及び
3194-55-6
(134237-51-7,
134237-50-6,
134237-52-8)
247-148-4
及び
221-695-9
PBT
短鎖型塩化パラフィン
Alkanes, C10-13, chloro
(Short Chain Chlorinated Paraffins)
85535-84-8287-476-5PBT, vPvB
トリブチルスズオキシド
Bis(tributyltin)oxide
56-35-9200-268-0PBT 
ヒ酸鉛
Lead hydrogen arsenate
7784-40-9232-064-2発がん性 1
生殖毒性 1
 
フタル酸ブチルベンジル
Benzyl butyl phthalate
(BBP)
85-68-7201-622-7生殖毒性 2
加盟国の関与なしで特定
ヒ酸トリエチル
Triethyl arsenate
15606-95-8427-700-2発がん性 1 


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