EurActiv 2008年9月18日
最初の REACH リストは短すぎるが定期的に更新される
第一次候補リスト提案の16物質は12物質に削減か?

情報源:EurActiv, 18 September 2008
First REACH list to be short but regularly updated
http://www.euractiv.com/en/environment/reach-list-short-regularly-updated/article-175484

訳:安間 武 /化学物質問題市民研究会
http://www.ne.jp/asahi/kagaku/pico/
掲載日:2008年9月29日
このページへのリンク:
http://www.ne.jp/asahi/kagaku/pico/eu/reach/euractiv/080918_REACH_SVHC.html


 EUにおけるのREACH規制承認のために提出されるべき有害化学物質はわずか12物質になるかもしれない−とEU化学物質庁ディレクター、ギールト・ダンセットは、NGOらが認可のための公式なREACH基準に合致する物質として約270物質のリストを発表した会議で述べた。
背景:
 2006年にEUの法案REACHが採択されたことを受けて、欧州化学物質庁(ECHA)は現在、公衆の健康と環境に関する懸念の原因となる化学物質の候補リストを取りまとめ中である。EU加盟27カ国は、がん、出生障害、その他深刻な健康障害を引き起こすような、また環境中に残留し我々の体内に蓄積するような非常に高い懸念のある物質(訳注:以降、高懸念物質(SVHC))のリストに含める物質を提案する責任がある。2008年6月初旬の締め切りまでに、加盟国は16物質を指名した(訳注2)。さらに、欧州委員会は欧州化学物質庁(ECHA)に5つの他の物質に関する書類を準備するよう要請した。

 候補リスト上の化学物質は優先リスト(priority list)に載せられるべき物質であり、それらは認可される前に、特別な審査を受ける必要がある。優先リストは候補リストに基づき起草され、2009年6月中に発表されることになっている。

この件に関する更なる情報:
LinksDossier: Chemicals Policy review (REACH)
LinksDossier: Implementing the EU's new chemicals law (REACH)

他の関連ニュース:
Chemical activists question EU scientific risk assessments
EU environment legislation 'slow or incomplete', says review
Trade Unions call for REACH amendment to cover nanomaterials
US eyes REACH-style law for chemicals
REACH: EU firms urged to register chemicals
公益団体とNGOが共同で、REACH規則の下で優先的に代替されるべき約270物質のREACH SIN リストを作成した(訳注1)。

 国際化学物質事務局(ケムセック ChemSec)のディレクター、パール・ロザンダーは、このリストについて、”認可のための公式なREACH基準に合致する物質を特定するためになされた初めての共同取り組みの結果”であると述べ、メーカーに対して、発がん性、残留性、生物蓄積性のある化学物質をより安全なものに代替するするための先を見越した取り組みを行うよう促した。

 'Subsitute it now'(今すぐに代替を!)を意味するSINリストは、数百の高懸念物質を特定しているが、これらの物質を特定するための提案をする欧州化学物質庁(ECHA)の加盟国委員会(MSC)は、現在までのところ最初のリストとして16物質を特定しただけである。

 同委員会は、16物質のうち4物質については満場一致で同意を得ることが不可能であったで、このリストについて議論するために来週、会合を開くことになった。したがって10月中旬に発表されることになっている最終リストは12物質だけを含むことになるであろうと、欧州化学物質庁(ECHA)のディレクター)、ギールト・ダンセットは述べた。

 REACHは、体験による学習(earning-by-doing)であり、欧州化学物質庁(ECHA)は少なくとも年に1回はこのリストを更新し、新たな物質を加えることを望むと述べた、”私は候補リストは生きたリストであるということが明白になることを望んでいる”とダンセットは付け加えた。彼によれば、”制限と認可を混ぜることは非常に複雑となり賢明なことではないので、当局は何が最良のリスク管理の選択肢であるか−制限か認可か−を注意深く検討すべきである”。

立場:

 このリストは短すぎないかと問われて、欧州化学物質庁(ECHAのディレクター)のギールト・ダンセットは、”確かに短い”が、それは作業が始まったばかりであり、誰もが新たな大変な事務手続きを確立し、精通するよう努力しており、限られた人材で化学物質のテストに対処しているからであると述べた。彼はまた、作業手順を合理化する必要があり、さもないと新たな事務的作業負担はシステムに過大な負荷をかける”ことになると述べた。彼は、SIN リストとについてはコメントしなかった。

 SIN リスト上の全ての化学物質は、”危険であり、REACHの候補リストに載る価値がある”とアメリカの国際環境法センター(CIEL)化学物質プログラムの政策顧問ダリル W. ディッツは述べた。

 ディッツは、このリストの目的は、”産業側が賢明な選択”をし、危険な化学物質を規制前に代替の開始ができるよう産業界に指針を与えるものであると述べた。このリストは、川下化学物質ユーザー(自動車、電子機器、建設、消費者製品、おもちゃ、食品など)に早期警告を与え、彼らの解決方法とより安全な化学物質を提供する供給者を見つけるための時間を与えるものである。このリストを見て賢明な会社は、10年したらこれらの化学物質ではよい商売にならないことを理解し、新たな計画に着手するであろう”と彼は付け加えた。

 ディッツはまた、最初のREACH候補リストはその特性によって定義された化学物質に関するものであることを強調した。たとえ、それらががんや出生障害を引き起こし、又は残留性があっても、”それらの全てが禁止されるというわけではなく、それらはその特性を特定されたということである”。彼によれば、多様な会社とNOGは、最も危険な化学物質は代替される必要があるということについて合意している。しかし、会社が代替に慎重になるのは通常のことであり、それはひとつの物質を廃止すれば、他の物質の安全性も確保しなくてはならないからであるとディッツは述べた。

 より安全な製品を求める予測される消費者の要求は、いくつかの会社に革新と競争力の両方を既にもたらしているとし、”最終ユーザーや消費者に最も近い会社は、状況を変えなくてはならないということを知っている。彼らはすでに公益団体にアドバイスを求める方向に変わっている”ということをケムセック(ChemSec)の上席政策顧問ナルドノ・ニンプノは認めた。

 欧州化学工業会(Cefic)は、REACHにおける高懸念物質を特定する責任は、”欧州化学物質庁(ECHA)とEU加盟国だけにある”と言及した。したがって、”公式プロセス以外で発表されたどのようなリストも、混乱を招き化学物質法令の中心としてREACHを確立するのに役立たない”と信じる。

 SIN リストは、特定の権益団体からの提案であり、REACH全体の法的デザインの一部ではない。それは潜在的にバリューチェーン(訳注:特定の業界のサプライ・チェーンを形作る製造業から小売店までが構成する、それぞれの企業の様々なビジネス・プロセスの最終的な付加価値が連鎖する一連の活動/ 出展:マーケッティングキーワード辞典)を通じて混乱をもたらすことになる。

次のステップ:

2008年10月22日:第一次候補リスト発表の目標期限
2009年6月:第一次優先リスト提案の発表
2009年秋:最終優先リストの発表



訳注1
訳注2


化学物質問題市民研究会
トップページに戻る