REACH Q&A
(ECB 2007年2月版) 情報源:European Chemicals Bureau (ECB) Questions and Answers on REACH February 2007 http://ecb.jrc.it/documents/REACH/REACH_PROPOSAL/Questions_and_Answers_on_REACH.pdf 訳:安間 武 (化学物質問題市民研究会) http://www.ne.jp/asahi/kagaku/pico/ 更新日:2007年2月16日 このページへのリンク: http://www.ne.jp/asahi/kagaku/pico/eu/reach/eu/07_02_eu_reach_qa.html 訳注:本文中、青文字の部分がECB 2007年2月版で変更された部分です。 削除部分は特に表示していません。 変更前の欧州委員会 REACH Q&A(理事会合意ベース/2006年3月版)(当研究会訳) 欧州委員会と欧州連合理事会は2006年12月18日に下記を採択した。
免責事項: この文書は情報目的としてのみ発行されており、どの部分いついてもこの規制(Regulation)又は指令(Directive)に関する法的解釈ではない。 目 次
1. 予防原則 (問い) 1.1. 予防原則は提案の中で明示的に述べられているか? (答え) Art. 1(3)で明示的に述べられている。 Art. 1(3):REACH 規制は予防原則で補強されている。 Art. 1(3)脚注がCOMMUNICATION FROM THE COMMISSION on the precautionary principle (COM(2000)1)を参照している。 訳注: ■予防原則に関するECコミュニケーション COM2000(当研究会訳) (問い) 1.2. 規定は予防原則によってどのように補強されるのか? (答え) REACH規制は予防原則に基づいており、その要求は予防原則に関する欧州委員会からのコミュニケーション(COM(2000)1)に述べられている原則を履行することである。 どのように予防原則が履行されるかについての例を以下に示す。
2. 登録 2.1. 登録とは何か? (問い) 2.1.1. どのくらいの数の物質が登録されることになるのか? (答え) 欧州委員会は約30,000物質が登録されると見積っている。(中間体を除く)。この見積りは産業界組織によって裏付けられている。これらの物質の多くは複数の会社によって製造及び/又は輸入されるので、もっと多くの登録受付がある可能性がある。欧州委員会はその計画の過程で、REACH手続きの最初の11年間に約80,000件(中間体を除く)の書類が受け付けられるであろうと仮定している。第11条によって要求されるデータの共同提出はこの数を大きく変えることなないように見える。個々の登録者はやはり書類を別々に提出しなくてはならないからである。しかし欧州委員会はこの数を見直し中である。 (問い) 2.1.2. 100,000以上の既存化学物質中の約30,000化学物質が登録されると規制案に述べられているが、これらの化学物質のリストを我々に提供していただけるか? (答え) 生産量1トン以上の既存物質の数は30,000と見積もられている。欧州既存化学物質目録(EINECS)は、目録が編集された時点で市場に出ていた100,000以上の既存化学物質をリストしている。EINECSは、欧州委員会の Official Journal of the European Community に発表されている (OJ EC, C 146A of 15 June 1990:また http://ecb.jrc.it/existing-chemicals/ も参照のこと)。これらの物質のうち、1トン以上製造又は輸入される物質のみが登録される必要がある。今日、市場に出ている全ての物質について正確な量については承知していないので、登録されるであろう全ての物質のリストを欧州委員会が用意することは不可能であり、もし製造者(輸入者を含む)がこれらの物質の製造又は上市を続けたいなら、その決定は彼らの決定にゆだねられる。しかし、EUの既存化学物質データーベースIUCLID(International Uniform ChemicaL Information Database)にリストされている物質は、年間10トン以上市場に出ている既存物質をよく示しており、これらは登録の必要があるであろう。このデータベースの内容についてはウェブサイト http://ecb.jrc.it/esis/ を参照のこと。 EINECSに関わる物質の製造者及び輸入者は REACH 発効後 12〜18ヶ月の間に事前登録(preregister)をしなくてはならず、化学物質庁(Agency)は、発効後19ヶ月以内に全ての事前登録物質のリストを公表するであろう。(参照 Art. 26(4)) 訳注: ■日本および海外における新規化学物質の届出制度の概要については社団法人 日本化学物質安全・情報センター(JETOC)の下記ウェブサイトを参照: http://www.jetoc.or.jp/existinfo.html ■EINECS(European Inventory of Existing Commercial Chemical Substances) 1971年1月1日から1981年9月18日までの期間にEC域内に上市された約100,000種の化学物質がリストされている。 EINECSにリストされていない化学物質は新規であるとみなされ、届出の対象となる。 ELINCSにリストされていても、その物質を以前届け出た者でない限り、その物質をEC域内に上市しようとする新たな輸入業者または製造業者は届出をしなくてはならない。 Existing Chemicals ■ELINCS(European List of Notified Chemical Substances) 1981年11月以降にEC域内に届け出られ上市された届出化学物質のリスト、約3,000種。 New Chemicals (問い) 2.1.3. どの物質が登録を免除されるのか? (答え) ある物質は完全にREACHから免除され、したがって登録の対象とならない。これらには放射性物質、非分離中間体、廃棄物、通関中のもの、及び加盟国がもしそのように選択すれば、防衛関連物質(Article2)。 ある物質は完全にREACHから免除される。
Articles 2.9 と 6.3 に従ったポリマー(このQ&Aの 2.10 を参照のこと)
製造又は輸入量が1トン未満の物質は登録の必要がない。(注意:認可、制限、又は分類と表示に関しては生産量ベースの免除はない。) 免除に加えて、指令67/548/EEC(訳注:危険物質指令)にしたがって届けられた物質は登録されたと見なされる。しかし、もし届け出られた物質の生産量が上位の生産量閾値に達したら、下位生産量閾値の全ての情報と共に、上位追加情報を提出しなくてはならない。一般に、殺生物剤と殺虫剤もまた登録されているものと見なされ、更なる登録は要求されない。 (問い) 2.1.4. 既存物質に関する現状のEU規制は免除リストとして Annex II があり、ブドウ糖のような物質が挙げられている。REACH 規制案のAnnex IV も同じ免除リストである。どのような基準が背景にあるのか説明いただけるか? (答え) 規制 793/93はその詳説の中で、”そのような情報を用意する要求は、その物質の固有の特性に基づき、そのリスクが最小であると一般的に認められるような物質には適用されるべきではない”と述べているが、これがリストの背景である。欧州委員会は、1995年の規制 793/93の Annex II を改訂することを考えたが、専門家の検討の結果、そのような追加は正当化されないと感じた。2002年、欧州委員会提案のREACH のAnnex II (現在はこの規制の Annex IV)はインターネット・コンサルテーションにかけられた。そこでも、このリストに物質を追加することの正当性についてコメントは得られなかった。理事会での協議のにおいて追加が再度検討され、パルプ繊維が追加された。 注意:欧州委員会はREACH発効後1年以内にAnnex IV とAnnex V の見直しを行い、その見直しは鉱物学的プロセスから導き出される物質を考慮し(見直しはArticles 2(7)(a) と (b)、 及び これらの物質へのAnnex XI を十分に考慮する)、物質は必要があればコミトロジー手続き(訳注)を経て Annex への追加又は削除をすることができる。 訳注: コミトロジー手続:欧州委員会が加盟国の代表等からなる専門委員会のようなものを設けて、事実上その場で内容を決定し、欧州委員会指令として採択するプロセス。手続き的に議会や理事会の審議プロセスを経ない。 (問い) 2.1.5. 化学物質はその生産量又は輸入量にしたがって登録されるべきと理解しているが、川下製品中の化学物質の量はどのように算出するのか、特にオリジナルの化学物質そのものではない川下製品の場合はどうか? (答え) 塗料、接着剤などの化学物質調剤(混合物)に含まれる物質の割合を計算することは比較的容易である。現在のEUの法の下では、輸入される調剤の成分は、既存物質規制(規制793/93)、新規物質届出(67/548/EEC)、分類と表示及び安全データシート法(指令1999/45/EC 及び 91/155/EEC)に基づくデータ提出に関する既存の義務に合致することがすでに求められている。 成形品中に含まれる物質の計算はもっと大変かもしれない。暫定戦略(Interim Strategy)の下に作成されているガイダンスはこの問題に対応するであろう。(ガイダンス作成の詳細については、http://ecb.jrc.it/REACH/参照。)成形品中に含まれる物質の登録又は届出義務は、一連の条件が揃った場合にのみ生じるということに留意すべきである。1トンの閾値というのはこれら条件の中のひとつの条件に過ぎない。しかし、もし他の条件のうちのひとつが合致しなければ(例えば、登録については物質は使用中に意図的に放出されない、又は 届出については article 57 の基準に合致せず、article 59 (1)によって特定されず、したがって登録又は届出義務は生じないので、正確な量(トン)を知る必要はない。 (問い) 2.1.6. 製造者は、多くの化学物質を含む調剤の登録をどのようにすればよいのか? (答え) REACHにおける登録は物質だけであり、調剤や成形品ではない。調剤や成形品に含まれる物質は潜在的に登録の対象である。しかし、化学物質安全報告書(CSR)の全て又は一部が他の物質に関連するなら、それはそれらの他の物質に使用することができる。例えば、もし暴露シナリオ(ES)が調剤中の全ての危険物質(年間10トン以上)のリスクをカバーするなら、そのような暴露シナリオ(ES)は全てのこれらの物質に使用することができる。 注:調剤の安全データシート(SDS)が作成される時に、登録者は、調剤中の個々の物質毎ではなく、調剤のための化学物質安全性評価を行うことを選択してもよい。しかし、関連部分は提出しなくてはならないが、これは登録の一部として提出はされないであろう。 (問い) 2.1.7. 川下ユーザーがプラスチック、布、おもちゃなどの完成品を用途として、化学物質を登録するために、もっと細かいルールはあるのか? (答え) ない。しかし、登録者がある物質を年間10トン以上製造又は輸入するなら、化学物質安全報告書(CSR)を用意する必要がある。この化学物質安全報告書(CSR)は、製造者又は輸入者に対し川下ユーザーによって特定された用途をカバーする必要があり、その用途には成形品(例えば、プラスチック、布、おもちゃ)の製造における物質の使用を含む。特定された用途に対し、化学物質安全報告書(CSR)はまた、物質の製造者または輸入者が勧告する川下ユーザーによって実施されるべき廃棄物管理措置をカバーしなくてはならない。化学物質安全報告書(CSR)はまた一般的に、調剤中又は成形品中(例えば、プラスチック、布、おもちゃ)の物質の消費者用途及びその後の廃棄処理をカバーすべきである。欧州委員会は、加盟国や関係団体とともに、CSR作成支援のための技術ガイダンスの作成を計画している。(ガイダンス作成の詳細については、http://ecb.jrc.it/REACH/参照。) さらに、成形品中の物質の登録のための特定のルールがある(article 7 及び この書類の 2.9 項)。 (問い) 2.1.8. 調剤の輸入者は、危険調剤指令(1999/45/EC)及び SDS指令(91/115/EEC)で定義される物質だけを登録すべきなのか? (答え) REACHによれば、1トン以上の調剤中に存在する全ての物質は、それらが分類されているかどうか(classified or not)に関係なく登録する必要がある。単独物質又は調剤中の量が輸入者年間当たり1トンの閾値を越える場合には、技術書類一式が、そして、もしその量が10トンを超える場合にはCSRが必要である。CSRは、調剤中の物質の濃度が 1999/45/EC で規定する濃度以下なら作成する必要はなく、またその物質が分類されていない(not classified)又は PBT/vPvB でなければ暴露評価をする必要はない。 注:REACH は現在の指令のSDS要求を継承する。 (問い) 2.1.9. ある製造工場では、ラバー(=ポリマー、エラストマー)に添加剤(多くの調剤)を混ぜ合わせて混合物とする。この混合物をA工場で製造し、一部をさらに加工してひとつの成形品を製造し、他の部分はB工場に輸送するとする。この場合、この混合物を登録する必要はあるか? また、工場Bが同じ会社かどうかで、何か差異はあるのか? 登録が必要なら、化学物質安全性評価のためにどのような情報が使用されなくてはならないのか(個別物質、個別調剤、混合物)? (答え) 我々は工場A及び工場Bは欧州共同体内にあると仮定する。 A工場で製造される混合物は調剤であり、これらは登録されるべきではない。この調剤になる個別の物質は製造者によって登録される必要がある(製造/輸入量が1トン以上の場合。ポリマーは免除)。もしA工場では単に混合だけで、物質を製造していなけられば、A工場は川下ユーザーであり、したがって登録は要求されない(このQ&Aの 4. 川下ユーザーも参照のこと)。A工場は、製造者からの情報(SDS)に基づき、調剤のリスク評価を行うべきである(もし、供給者によってこの用途のための分析が行われておらず、川下ユーザーは実施せず、又は川下サプライチェーンに少なくとも特定されたリスク管理措置を勧告しないなら)。 このことは、A工場が成形品を製造するのか又は調剤をB工場に販売するのかに関係なく適用される。川下ユーザーとしてB工場がこの調剤を受け取ったたら、同様にその用途が供給者により実施された分析によりにカバーされており、それを実施し、サプライチェーンの下流に少なくとも特定されたリスク管理措置を勧告するか、あるいはリスク評価を自身で実施することを確実にすべきである。 A工場とB工場が同一の会社かどうかは問題ではない。 注:添加剤中の物質は登録の対象となる。もしA社がその添加物を輸入しているのなら、A社は年間1トン以上輸入される物質(添加剤中の物質)を登録する責任がある。 (問い) 2.1.10. 調剤の輸入者は、登録すべき全ての物質が申告されており、そのことを知らされるということをどのように保証されるのか? (答え) 現在、ある場合には、どのような物質がEU以外の製造者によって供給されているのかを明確にすることは難しいということを我々は認める。しかし、既存の共同体の法の下でも(例えば、調剤の分類と表示)、輸入者は法の遵守を確実にするために、輸入しようとしている調剤にどのような物質が存在するのかということを知る必要がある。 REACH規定の遵守を確実にするために、サプライチェーンの中でのコミュニケーションを改善することは、産業界の仕事である。 (問い) 2.1.11. 明確な製品グループ毎の登録ができるようにする必要がある。現在、我々の数百の製品は”化学的には同類”であるが、商品としては異なっている。産業界によって定義された製品グループはほとんどなく、したがって、例えば用途に基づく製品グループがあれば、問題解決となり、金と労力の節約となる。 (答え) REACHは、物質の広い定義、例えばこの状況で役立つ広範な構成要素を許している。REACHは、その規制の中の物質の定義を適用しつつ、物質毎の登録を要求している。もしひとつの物質が複数の製造者または輸入者によって製造又は輸入されるなら、登録は共同で提出されなくてはならない(Article 11 参照)。しかし、会社は真の理由(例えば企業秘密)をもってこれをオプトアウトし、分離して登録することができる。さらに、Annex XI では、類似した特性を持つ物質については同じデータを共有できる物質のカテゴリーを作ることが許される。この場合、化学物質安全報告書(CSR)の大部分は、そのカテゴリー中の物質の全てをカバーすることができる。 注:化学物質庁は最初の登録期限である3年半前に物質のグループ化に関するガイダンスを作成するよう作業中である。 注:調剤として理解される製品(物質の混合物)は登録する必要はない。登録は個々の物質だけである。 (問い) 2.1.12. 鋼鉄又はその他の合金を登録する義務はあるか? (答え) 合金は、たとえ調剤の特性が常に単純に成分の特性に合致しなくてもREACHの下では調剤である。調剤合金は登録する必要はないが、もし、それらの成分金属が1トン以上製造/輸入されるなら、登録されなくてはならない。 しかし、調剤中の濃度が art 14(2) に規定される濃度限界以下ならば、化学物質安全報告書(CSR)は必要ない。もしある成分についてCSRが必要なら、chemical matrix 中でそれらの成分が接合される方法が考慮されるべきである。 注:欧州委員会はこの件について、産業、加盟諸国、及び他の関連する利害関係者と密接に協力して、合金中の金属のような特別な調剤中の物質の評価を含んで、調剤に関連するREACHの下での要求(特に、暴露シナリオを織り込んだ安全データシート)を満たすためのガイダンスを開発するであろう。そのために、欧州委員会は、REACH実施プロジェクト(RIPs)の枠組みの中で行われる作業に前面的にに責任を負い、全体のREACHガイダンス一式の中にこの件に関する必要なガイダンスを含めるであろう。このガイダンスはこの規制の運用が始まる前に入手可能となるであろう。 (問い) 2.1.13. 流体ガラス材と固体ガラス製品は、REACHの下では物質か、調剤か、成形品か? (答え) たとえ、金属合金に相当する特殊なものであっても、流体ガラス材(ガラスの製造過程)は調剤である。鉱物であり、プロセス中に化学的に変化しない流体ガラス材中のこれらの物質は登録する必要はない。使用されるその他の物質、例えば着色/脱色剤、コーティング剤、製品潤滑剤などのガラス改良剤などの物質は登録が必要である。ガラスは最終的な形(例えばビン)が出来上がった時に成形品となるが、更なるプロセスのために冷ましてガラスの塊となったものは依然として調剤である。 (問い) 2.1.14. 金属は登録する必要があるか? (答え) ある。金属はREACHの対象である。金属は、1967年以来、EUの法の下では化学物質と見なされており、国際的にもそのように認められている(例えば、国連の分類と表示に関する世界的に調和されたシステム(GHS))。しかし鉱物類(minerals)と鉱石類(ore)は、化学的に変化しなければ登録から免除される。 (問い) 2.1.15. 物質XはREACHの下ではどのように扱われるのか? (答え) 我々はREACHの下で、個々の化学物質の状況についての問い合わせに対し、詳細に回答する立場にない。その理由は:
すでに、様々な手順に関する非常に簡単なこのリストは、REACHの施行に先立ち、そして科学的評価を行うのに適切な情報を入手する前に、化学物質の判断を開始することは得策でないということを例示している。 2.2. 誰が登録するのか (問い) 2.2.1. 誰が物質を登録できるのか(物質自身又は調剤中の物質) (答え) EUの製造者、輸入者、及びEUに拠点を置く非EU製造者の代理者(以下、代理者(only representative)と呼ぶ)。 (問い) 2.2.2. 我々は多くのEC諸国で同じ製品を製造しているが、国毎ではない、”汎ヨーロッパ”登録手続きとは何か? 汎ヨーロッパで登録すると登録料は安くなるのか? 何か制限はあるのか? (答え) 登録は欧州化学物質庁に送られるので、すべての登録が”汎ヨーロッパ”である。我々はこの質問を”異なる加盟国で製造するひとつの物質はひとつの登録でカバーすることができるのか”という意味に解釈する。REACH はそれぞれの製造者と輸入者に登録を求めるが、同一物質の登録については共同提出(joint submission)を求めている。主登録者が全ての登録者のために危険情報を提出し、もし、会社が個々の物質について化学物質安全報告書(CSR)を選択すれば、それも同様である。しかし、会社は真の理由(例えば企業秘密)をもってこれをオプトアウトすることができる。しかしもちろん、物質(substances)を登録しているということを念頭に置く必要がある。調剤と成形品(製品(Products)は REACH で使用される用語ではなく、異なった状況で物質、調剤、及び成形品を指すために使用されることがある。)はREACHの下で登録対象ではない。 (問い) 2.2.3. コンソーシアムを組むと会社はどのような恩恵が得られるのか? (答え) データの共同登録原則の下では、会社がオプトアウトしなければ、物質の危険情報の提出はただひとつであり、もし会社が選択すればCSRも同様である。登録料は、REACH発効後1年の間に欧州委員会規制によって設定されるが、提出が共同なのか分離なのかを考慮する。また、登録書類の作成の労力を他社と共有することで節約できる。しかし複数の登録者間の協力を管理するするためにリソースが必要である。 (問い) 2.2.4. 会社は新規参入者の登録を排除するためにコンソーシアムを利用できるか? (答え) できない。共同提出がなされた後に物質を製造又は輸入する会社は、オプトアウトを望みそれを正当化するのでなければ、公正な財政的補償と引き換えに、その共同提出された危険情報を使用しなくてはならない。 (問い) 2.2.5. 非EU企業がEUの企業と共同で登録することはできるか? (答え) できない。EU外の製造者はREACHでカバーされない。しかし、非EU企業が製造した物質の輸入者又はそのような非EU企業の代理者(only representative)は、もしオプトアウトを選択しなければ、他のEU製造者、輸入者、又は代理者(only representative)と共同で危険情報を提出しなくてはならない。彼らはまた、CSRの共同提出を選択してもよい。 (問い) 2.2.6. EUに所在しない産業連合体(industrial associations)が、特定の産業のために共同で登録することができるか? (答え) 産業連合体は、会社が登録書類を作成するために非常に貴重な支援をすることができ、手続きを調整する手助けができる。彼らはまた、危険データの共同提出の準備に関し、他の会社と討議する代表会社として指名を受けることができる。しかし、実際の登録は製造者又は輸入者によってなされねばならず、産業連合体がすることはできない。 登録者は、輸入者及び代理者(only representative)の場合、常にEU内に設立されている必要があることに留意すべきである。代理者の場合、当局が物質の実際の取り扱いに関する十分な知識を持った人とコミュニケートできることを確実にするために、特定の要求が満たされる必要がある。 (問い) 2.2.7. 基本的な化学物質はヨーロッパの製造者によって登録されるであろう。なぜ国際的によく知られた化学物質でもやはり輸入者によって登録されなくてはならないのか? もちろん、量などのある種の開示は必要であろうが。 (答え) ひとつの理由は、”ただ乗り”をなくすためである。なぜ、EUの製造者はある物質の登録のコストを払わなければならず、輸入者は登録料なしの特典を得るのか? もうひとつの理由は、これらの物質の使用は、輸入者又はその顧客にとって特有であるかもしれないので、輸入者が輸入する物質の安全使用に責任を持つことを確実にするためである。さらに、もし非EU製造者がEUに輸出する物質の登録のために代理者(only representative)を指名することを決定すれば、その輸入者は川下ユーザーとみなされるべきである。 (問い) 2.2.8. 同じ製品を異なる第三国の異なる製造者(複数)から輸入する時、EUの輸入者は異なる製造者のために繰り返しの登録をする必要があるのか? 関連する所有権は誰に属することになるのか? (答え) その必要はない。もし同じ物質なら(*)、彼らは輸入する物質ごとに登録する。会社は他の登録者とテストデータ(非動物テストデータは情報要求に合致するために調査を必要とする潜在的な登録者の要求によってのみ)を共有しなくてはならないが、公正な金銭的対価で補償されなくてはならない。REACHは、他の法と衝突することはない。登録から12年後には、提出されたデータ(すなわち強固な(robust)調査概要又は調査概要)は、同一物質の他の登録者も自由に利用可能である。 (*)物質特定に関するガイダンスは今後開発される。(ガイダンス作成の詳細については、http://ecb.jrc.it/REACH/) (問い) 2.2.9. グループ会社とその支社、及び持ち株会社は、登録所有権を共有し、ひとつの登録料を払うということは可能か? (答え) REACHは製造者または輸入者であるそれぞれの法人にある情報を登録し(グループの一部であるか又は本社及び子会社であるかに関係なく)、登録料を支払うことを求めるが、同一物質の全ての製造者および輸入者によってひとつの危険情報を提出することを求め、もし会社が選択すればCSRも同様であるが、会社は真の理由(例えば企業秘密)をもってオプトアウトすることが許される。 化学物質庁(Agency)は会社、特に中小企業(SMEs)を支援するために、オプトアウトに関するガイダンスを作成するであろう。 (問い) 2.2.10. 非EUの調剤又は成形品の製造者が代理者を指名してもよいのか? (答え) できる。代理者(only representative)は、非EUの物質(物質自身、調剤中、又は成形品中)の製造者、調剤の処方者、又は製品の製造者によって指名されてもよい。代理者が指名される場合には、輸入者は川下ユーザーとみなされるべきである。 (問い) 2.2.11. 従来の独占代理者(sole representative)の役割と、Art. 8 で述べる代理者(only representative)の役割の違いは何か? (答え) 代理者(only representative)は物質の実際の取り扱いに関する十分な背景とそれらに関する情報を持っている必要があるが、独占代理者(sole representative)は、非EU製造者によって指名されなくてはならないというだけのことである。 (問い) 2.2.12. なぜ、非EU製造者は代理者を使用すべきなのか? (答え) 非EU製造者は、代理者を指名するのか、又は輸入者に物質の登録をしてもらうのか自由に選択できる。代理者を選ぶことで、製造者は登録手続き全体を管理することができ、輸入者に潜在的に微妙な情報を開示することを回避することができる。また、EU輸入者にとって、代理者は好都合である。輸入者は代理者のおかげで、REACHの下での登録者としての責務から開放され、川下ユーザーとしてみなされる。 (問い) 2.2.13. Art 8 は、代理者に非EU製造者の責務を代行する権限を与えるのか? (答え) そうではない。非EU製造者は義務がないからである。しかし、個々の輸入者が登録者として行動し、個別の登録をし、そしておそらく、非EU製造者と連絡を取って必要な情報を集めるのではなく、非EU製造者は、EUに輸入される総量をカバーする登録義務を満たすために、誰か(代理者)を指名することができる。そのような場合には、非EU製造者からの輸入者はもはや輸入者としての登録義務はなく、川下ユーザーとしてみなされる。 (問い) 2.2.14. 代理者を通じての非EUの化学物質製造者は、REACHの下で輸入者に課せられる全ての義務が求められるのか? (答え) 代理者はREACHの下で関連する全ての義務を守る責任を有する。さらに、代理者は、EUに拠点を持たなくてはならない。 (問い) 2.2.15. 代理者は製造者の”代理”を意味するのか? (答え) 第三国の製造者は登録することができないので、事実上、代理者(only representative)は物質の輸入者を代理する。 (問い) 2.2.16. Article 8(3)は、輸出者は、”同じサプライチェーン中の輸入者”に代理者の指名を伝えなくてはならないと規定している。これらが意味することは何か? (答え) 共同体外の輸出者が代理者を指名した場合には、その物質の輸入者はREACHの下で登録者としての義務から開放されるが、川下ユーザーとみなされる。輸入者はだれが登録者の役割を演ずるのかを知る必要がある。代理者は、他の非EU製造者が製造する同一物質の登録を行う義務はないということに留意すべきである。もし輸入者が多くの非EU製造者から物質を入手するのなら、その輸入者はやはり登録者であることが求められる。 ”同じサプライチェーン”の概念は、ひとつの物質が製造者又は輸入者からひとつの川下ユーザー又は複数の川下ユーザーに移動し、さらにそれから川下ユーザーに移動し、おそらく調剤又は成形品に取り込まれ、それが小売業者に届いて消費者に提供されるまでの概念である。 2.3. 要求される情報 2.3.1. 純度が変更(物質の品質向上)されるたびに新たな登録が要求されるのか? 革新を阻害しないか? (答え) 物質及び変動する成分に関連して、何を登録するかは登録者にまかされている。この規制中の詳細説明(Recital)45 は、未知のあるいは変動する成分、複雑な反応生成物又は生物学的成分は、もし同じ分類であることを登録者が保証するなら、単一物質として登録することができることを明白にしている。 もし、登録が、不純物のレベルを狭い範囲で、又はひとつの数値で定義しているなら、登録は更新されなくてはならない。しかし、もし、既存の化学物質安全報告書(CSR)が依然としてリスクは適切に管理されているということを示すなら、必要な更新は成分の変更だけである。 (問い) 2.3.2. もし、20の製造者と輸入者が同じ化学物質を年間50トンのレベルで製造又は輸入しているとすれば、これらの登録はAnnex X で求められる情報を提出することが要求されるのか? (答え) 登録についてはその必要はないが、化学物質庁(Agency)はそれを物質評価の対象とすることを求めるかもしれない。化学物質庁(Agency)は、総トン数を根拠にその物質のリスクに疑念を抱き、物質評価巡回計画のためにその物質を特定するかも知れない。その後、評価に当たる加盟国の所管当局(Competent Authority (CA))はその疑念を明確にするために、その物質に関する更なる情報の必要性を特定することができる(これは例として挙げられているAnnex X のことごとくのテストではないように見える)。情報要求は、化学物質庁(Agency)と全ての他の加盟国、及び登録者らがコメントすることができるよう合意手順に則る必要がある。 (問い) 2.3.3. Article 11 と Title III は成形品の製造者と輸入者に適用されるのか? (答え) その通り。Article 11 と Title III は、物質が放出されることが意図されている成形品の製造者と輸入者に適用される。成形品中の非常に高い懸念のある物質については、もし化学物質庁(Agency)が登録を要求すれば、がArticle 11 と Title III は適用されることがあり得る。 (問い) 2.3.4. 輸入者は、EUに輸入しようとする調剤又は成形品の中に含まれる物質についての情報を持っていないかもしれない。 (答え) 今日の化学物質法規制の下では、調剤の輸入者は輸入する調剤中の物質に関する情報を用意する義務があり、この点に関しては従来となんら変更はない (1981年以降上市された物質のための指令67/548/、及び既存物質のための規制793/93)。REACHは、人間の健康と環境のためのリスクを適切に管理するために、現在のデーダのギャップを埋めることを意図している。 輸入者はまた、危険物質・調剤の上市・使用制限に関する理事会指令76/769/EEC 及び危険調剤指令19994/45/ECに示される既存市場と使用制限を遵守しなくてはならない。 (問い) 2.3.5. 化学物質製造者は、ユーザーから連絡された特定の用途について登録することを拒否できるか(特定用途)? (答え) 製造者と輸入者は、もし、川下ユーザーが製造者/輸入者に、用途の一般的な概要を記述する形で、暴露シナリオを準備できる適切な情報を知らせた場合には、知らされた登録用途をカバーする責務がある。 用途は順次、物質のサプライチェーンの上流に知らされることに留意すること。したがって、川下ユーザーはその用途を彼の供給者に知らせるが、その供給者自身もまた川下ユーザかもしれず、彼がその物質の暴露シナリオを準備するか、又はそれをさらに彼の供給者に依頼するかもしれない。明らかに製造者又は輸入者はそのようなチェーンの最終リンクである。 しかし、下記のような状況においては、製造者/輸入者(M/Is)は暴露シナリオ(ES)でその用途をカバーする責務はない。
後者の場合には、このことは一般的更新義務(See Article 37.3)の一部として報告されなくてはならない(in Annex VI, Section 3.7)。しかし、川下ユーザーは健康と環境の保護を示し、暴露シナリオを実施し、要求があれば、化学物質安全報告書を化学物質庁に届け出るために、化学物質安全報告書を自分で作成することができる。そうでない場合は、その物質をその用途で供給できないかもしれない。 この問題と製品チェーンの複雑さはガイダンスを開発する際に注意深く考慮されるであろう。 2.4. 化学物質安全性評価/化学物質安全性報告 (問い) 2.4.1. 年間10トン以上の非段階的導入物質(訳注:新規物質 non phase in substance)は、製造者又は輸入者にREACH発効60日後の適切な時期に化学物質安全報告書(CSR)を出すよう求めているとのことであるが、このことは正しいかどうか確認してほしい。 (答え) そうではない。非段階的導入物質の登録要求の時期は変更され、現在はREACH発効の2007年6月1日から12ヶ月後となっている(article 141 (2))。製造者又は輸入者は、技術文書及びもし要求されているならCSRの提出後3週間以内に化学物質庁(Agency)から反対の指示がなければ、非段階的導入物質を製造又は輸入することができる。 (問い) 2.4.2. 段階的導入物質(phase in substance 訳注:既存物質)については、CSRは、物質の登録が年間10−100−1000トンの区切りで要求されるとのことであるが、このことは正しいか。 (答え) その通りである。これはまた非段階的導入物質にも適用される。 (問い) 2.4.3. もし、関連すれば発効20日後から全ての物質/調剤(段階的導入及び非段階的導入)について、強化された(enhanced)安全データシート(SDS)が要求されるとのことであるが、これは正しいか? (答え) 我々は、あなたが意味する”強化されたSDS”とは暴露シナリオ(ES)を付属として含めたSDSのことであると理解する。 暴露シナリオ(ES)は下記の場合にのみ要求される。
供給者は、川下ユーザーに供給される安全データシート(SDS)への付属書 の中に関連暴露シナリオを入れなくてはならない。 REACH のTitle IV (訳注:サプライチェーンでの情報)は発効後速やかに適用されるが、物質が登録されるまで、SDSに関連暴露シナリオを添付することは必須ではない。したがって段階的導入物質については、必要なら、生産量に応じて発効後3年、5年、6年、又は11年で、暴露シナリオ(ES)がSDSに付属されなくてはならない。 (問い) 2.4.4. 物質と調剤 化学物質安全性評価(CSA)/化学物質安全性報告(CSR)/暴露シナリオ(ES)の要求によれば、調剤を評価する義務はない。物質の評価だけが求められている。 調剤の処方者(例えば川下ユーザー)は、(年間10トン以上製造/輸入される物質に対し)安全データシート(SDS)にカバーされない用途に対して暴露シナリオを作成しなくてはならない。処方者は、製造者/輸入者から(異なる)物質のSDSをいずれ提供される。処方者は、川下ユーザーに供給する調剤のためのSDSをどのようにして作成するのか? 注意:REACHが発効した時には、調剤の安全データシート(SDS)は、今と同じように、調剤の安全使用を記述すべきなのか? 言い換えれば、CSR/暴露シナリオ要求は、調剤のSDS要求と矛盾するように見える。 同様に、物質毎の評価は、化学物質(物質と調剤)が安全に使用されることを要求する指令98/24に従っていない。処方者は何をすべきか? 調剤を供給する処方者は調剤を評価する必要があるのか? (答え) 化学物質安全性報告(CSR)及び暴露シナリオ(ES)に関するREACH要求は、物質レベルで実施されるべき評価を要求しているだけである。しかし、ある調剤中のひとつの物質の使用に関連する暴露シナリオが、同じ又は異なる調剤中のもうひとつの物質のためにも適用されることは可能である。 安全データシート(SDS)に関連するREACH要求は、SDSが調剤の安全使用に関する指針を与えるということである(今日と同じ)。しかし、もし調剤のSDSが要求されるなら、供給者はその目的のために調剤のための化学物質安全性評価(CSA)を行ってもよい。 川下ユーザーは、調剤のためのSDSを準備するにあたり、まず最初に物質の製造者又は輸入者が下記両方の物質の用途を評価したかどうか検討する必要がある。
次に、処方者は自分の調剤の意図した用途が、受領した暴露シナリオ(ES)によって適切にカバーされていることをチェックしなくてはならない。
もし川下ユーザー(DUs)によるその物質の年間使用量が1トン以下ではないなら、暴露シナリオ(ES(s))を含んで、そのCSRは調剤の分類に寄与する個々の危険物質の用途をカバーすべきである。もし使用量が1トン以下で免除を適用する場合には、化学物質庁(Agency)に届け出なくてはならない。もし、処方者が1トン以下免除に頼る場合でもその物質の用途を検討し、さらなる下流のサプライチェーンへの適切なリスク管理措置を特定し、適用し、勧告する必要がある。 処方者は、調剤の安全データシート(SDS)の中に、処方者が勧告する更なる川下サプライチェーンで実施されるべきリスク管理措置を文書化しなくてはならない。 注:しかし、調剤中に存在するArt. 14(2)で参照されている濃度限界以下の物質に対しては、処方者はなんら義務を負わないことに留意する必要がある。 年間10トン以上製造/輸入される物質に対しては、製造者/輸入者によって作成される化学物質安全報告書(CSR)及び川下処方者によって実施される追加作業(異なる暴露シナリオからの情報を統合すること又は自身で化学物質安全報告書(CSR)を作成すること)は、 Dir. 98/24の要求を遵守する雇用者を支援するに十分な品質を備えた安全データシート(SDS)でなくてはならない。 (問い) 2.4.5. Article 14によれば、現状の分類と表示(C&L)の基準に該当すれば、年間10トン以上製造される物質に対して、完全な化学物質安全性評価(CSA)が、実施されなくてはならない。Annexes IX 及び X によれば、環境毒性テストのあるものは、直接的又は間接的な暴露が起こりそうもなければ免除されるかもしれない。このことは、例えば、生体蓄積、陸上生物への影響(短期的及び長期的)、鳥類への影響、などに関わることである。 暴露評価をせずに暴露が起こりそうもないと文書化することはできず、暴露評価は(分類と表示(C&L)の基準に該当する)有害物質だけに求められ、有害物質でないものには求められない。このことは、これらのテストは非有害物質に対しては常に要求されるが、有害物質に対しては免除されであろうということを意味するのか? そのようなテストは要求されないという示唆である理解することができるが、データ要求についてこのように解釈すべきとはどこにも述べられていない。 (答え) 暴露がない又は有意ではない、又は直接又は間接暴露が怒りそうもないということに基づく免除(Waiving)は、Annexes IX と X の中で規定するあるテストについて明示的に許されている。他のテストについては、化学物質安全性評価の結果に基づく免除の参照がある。 もっ具体的には Annex XI section 3 によれば、暴露ベースの免除は Annex VIII, section 8.6 と 8.7、Annexes IX 及び X のテストに対し可能である。適切な正当化と文書化が暴露評価に基づいてなされなくてはならないと言うことが明確に述べられている。したがって、その物質の使用がなぜ暴露を引き起こさないのか(例えば密閉系)、又は選択されたリスク管理措置により暴露は起こりそうにないと言えるのかが示されなくてはならない。有害物質に対しては、このことはどのみち化学物質安全性評価(CSA)の中の暴露評価によってカバーされる。他の全ての物質に対し、暴露評価が実施される必要がある。 暴露ベースの免除をどのように適用するかの問題は、化学物質安全性評価をどのように実施するか及びREACHの情報要求をどのようにして満たすかについて述べている RIP 3.2 と RIP 3.3 プロジェクトに向けられる。 もし、この質問が有害性に関するデータ収集に向けられているのなら、この時点では”非有害性物質”という言葉には意味がない。もし登録者が物質が有害であることを示すデータを持っていないのなら、彼は、テストの免除を正当化する暴露評価を実施するか、又はテストそのものを実施するか、どちらかを選ぶことができる。もし、テストを実施して有害性がないことを示せるならば、暴露評価を実施する必要はない。本質的なことは、登録者はテスト実施/免除の問題をどのように扱うかについて商業的選択を行うことができるということである。 欧州委員会は、RIP 3.3 の結果を考慮して、Annex XI.3 の適用のための適切な正当性を定義する基準のための提案を発効後18ヶ月以内に行うであろう。 (問い) 2.4.6. 化学物質安全報告書(CSR)と安全データシート(SDS)の違いは何か? (答え) 化学物質安全報告書(CSR)は、化学物質を安全に使用することができることを示すツールを産業側に提供する文書である。製造者と輸入者は、年間10トン以上の物質に対し化学物質安全報告書(CSR)を用意することが求められる。川下ユーザーは、製造者又は輸入者に対し、彼らの化学物質安全報告書の中で川下ユーザーの用途に言及するよう要求してもよい(特定使用と呼ばれる)。あるいは、川下ユーザーは、自分たちの用途を製造者又は輸入者に明かさず、その場合には彼らの用途はSDSに付属する暴露シナリオの中ではカバーされず、自分たち自身で化学物質安全報告書(CSR)を準備してもよい。 安全データシート(SDS)は、物質の特性及びそれらの安全な使用方法に関する情報の概要である。それらは、下流サプライチェーンに安全情報を伝達する方法として長年、確立されたものである。REACHは現状の安全データシート要求を継承するであろう。さらに、化学物質の特性と用途に関するもっと多くのデータを確立し、化学製品チェーンにおける情報交換を促進することによって、REACHは安全データシート(SDS)の品質を向上することが期待される。この品質向上はまた、化学物質庁の公開討論(the Forum of the Agency)によって推進される加盟国レベルでの施行に依存する。物質を市場に出すことに責任ある人は、危険性分類の基準に該当する物質又は調剤、又は PBT 又は vPvB のための安全データシート(SDS)を用意することが求められる。 注意:安全データシート(SDS)は、生産量に関係なく、この規制のArticle 31 の条項にしたがって要求される(現状の要求と同じ)。 (問い) 2.4.7. 化学物質安全報告書(CSR)中の全ての情報はサプライチェーンに届かなくてもよいのか? (答え) ある場合には多くの情報が関連するので、常に完全な化学物質安全報告書をサプライチェーンに送ることは実際的ではないであろう。安全に関する情報は安全データシートによって供給され、それについては産業側はすでに熟知している。しかし、すでに今日、多くの製造者/輸入者は彼らの化学物質の安全使用に関する情報を法律で厳密に求められる以上に彼らの顧客に提供しており、このことはREACHが発効した後も歓迎されるべきことである。 (問い) 2.4.8. 安全データシートについて、今日批判されていることは何か? (答え) 今日、安全データシート(SDS)に向けられる批判の多くは、物質の有害特性に関する情報が得られないということである。年間10トン以上製造又は輸入される物質の安全データシートを化学物質安全報告書の情報の基礎とすることで、REACHは、高品質の安全データシートを作成する前提条件を著しく向上させることになるであろう。完全な Annex VII を伴って登録される年間1トン〜10トン、製造又は輸入される優先順位の高い物質に対して、その最小のデータ要求もデータ品質の標準レベルを確保するものでなくてはならない。 安全データシート(SDS)の品質はまた、化学物質庁の公開討論(the Forum of the Agency)によって推進される加盟国レベルでの施行に依存する。 ある物質の安全データシートに含まれる情報のあるものはまた、(Annex VI Section 5 で規定されているように)、登録書類中に示されなくてはならなず、またこれは物質評価の過程で検証されることがあり得る。 (問い) 2.4.9. 物質の登録段階で提出された情報の所有権に関する懸念。暴露シナリオは安全データシート(SDS)に付属すべきものであり、したがって公開されるべきである。 (答え) 暴露シナリオは安全データシート(SDS)の付属書でまとめられなくてはならない。その所有権はそれを書き、暴露シナリオを記述した化学物質安全報告書(CSR)を所有する人に帰属する。このことは、製造者/輸入者の顧客ではない(又は、もはや顧客ではない)川下ユーザーは、暴露シナリオを法的には使用できないことを意味する。 2.5. 登録の優先度 (問い) 2.5.1. 人間の健康と環境に対する化学物質のリスクは必ずしも生産量に比例するわけではない。なぜ登録要求は量に基づいているのか? (答え) 生産量は暴露量の代用として使用される。それにより、法的確実性を伴う登録のための、明確で強制力のある優先度の設定を行うことができる。REACH手続きにおける登録以降の段階は生産量によって決定されないことに留意すること。例えば、有害性が疑われるものの評価、非常に高い懸念のある物質の認可。 (問い) 2.5.2. なぜ、もっと多くの優先度設定がないのか? (答え) 優先度はREACHのシステム全体を通じて設定されている。例えば、 登録は生産量と有害性によって優先度が設定されている。 注:少なくとも3年以上連続して輸入又は製造されている段階的導入物質については、年間量は直近3年間の平均製造又は輸入量をベースに計算されなくてはならない。
2.6. テスト結果の相互承認 (問い) 2.6.1. どこの国のどの試験所又は研究所がテストデータ又は情報を提出するために認定又は指定されているのか? 欧州委員会は認定又は指定され試験所又は研究所の詳細リストを作成しようとしているのか? (答え) REACHは適切な情報を提供する責任は産業側にあるとしている。どのような試験所も認定又は指定されることはない。新たな毒物学的又は生態毒性学的テストと分析は検査機関における業務管理基準(GLP)又は欧州委員会によって認められた他の国際的基準にしたがって実行される必要がある。 REACHはテストプログラムとしては意図されていない。新たなテストはそれがやむをえない場合にのみ実施し、入手可能な情報は可能な限りどこのものでも利用すべきである。登録者は登録に使用するために何が合理的なデータであるかについて決定しなくてはならない。Annex XI はどのようなデータが受け入れられるのかについての一般的なルールを設定している。さらなる情報要求に関するガイダンスが作成される。ガイダンスの作成に関する詳細:http://ecb.jrc.it/REACH/ (問い) 2.6.2. REACH体制の下では、既存の有毒物質と生体毒性情報、及び疫学的評価結果は十分に考慮されるべきことが規定されている。どのような情報が受け入れられるのか? (答え) Annex XI が使用することができる情報について詳しく述べている。登録者は入手可能な情報を評価し、それが適切なら、その使用を決定しなくてはならない。 さらなる情報要求に関するガイダンスが作成される。ガイダンスの作成に関する詳細:http://ecb.jrc.it/REACH/ 2.7. 完備性チェック (問い) 2.7.1. 欧州委員会はデータの完備性チェックをどのように行うことを考えているのか? (答え) これは要求される全ての情報が提出されていることを確認するための登録書類の完全に自動的なチェックであるが、品質のチェックではない。これは、例えば、情報があるかどうかの簡単なチェックであり、テスト提案、規制の軽減表明(derogation statement) 又は 免除表明(waiving statement)が存在するか、又は Annexes VI から X までの全ての情報要求が満たされているかどうかのチェックである。完備性チェックの結果は化学物質庁によって登録予定者に送られる。化学物質庁による登録拒否の決定は自動的なチェックではなく手動によるチェックである。これらの決定は上訴手続きの対象である。拒否の決定がなされたら、加盟国(MSs)によってそれが実施される。 欧州委員会は登録者が書類を提出する前にその完備性をチェックすることができるツールをITシステム内に用意するつもりである。 2.8. 費用 (問い) 2.8.1. 製品が第三国の貿易会社を通じてEUに輸入される場合には、費用はどのように分担されるのか? (答え) 輸入される物質(物質自身、又は調剤中又は成形品中の物質であるかは関係ない。(成形品中の物質のための基準物質 Article 7)を参照のこと)の登録に責任があるのは輸入者か非EU製造者の代理者だけである。提案されている規制案では、登録費用がサプライチェーンでどのように回収されるべきかについては記述されておらず、このことは市場によって解決されるべきことである。 (問い) 2.8.2. 登録済みの化学物質に対し、後続の登録者は最初の登録費用を分担しなくてはならないが、この分担の割合はどのくらいなのか?、そして川下ユーザーに関しては、初期の登録費用の分担はどのようになるのか? ひとつの化学物質のひとつの用途について数百、数千、あるいはそれ以上の川下ユーザーがいるであろうが、もし、彼らがそれぞれ初期費用の半分を負担しなくてはならないとしたら、それは明らかに不合理であり、化学物質庁と最初の登録者は莫大な利益を得ることになる。 (答え) 他の登録者又は他の複数の登録者によってすでに登録された物質を登録しようとする登録者は、たとえ共同提出された危険情報を使用しても(データの費用支払いはTitle IIIで規定されていることに注意)、最初の会社に登録費用の分担金を支払う必要はない。個々の登録者は登録時に化学物質庁に登録費を支払わなくてはならない。費用のレベルは、登録される量、危険データが共同で提出されるのか又は分離して提出されるのか、又は会社が中小企業(SME:登録費用が免除される)かどうか、に依存するであろう。 川下ユーザーは物質を登録しないので、直接このシステムに関係しない。 注:川下ユーザーは化学物質庁への物質の届出を求められるかもしれない。しかし、そのような届出は費用とは関係ない。 2.9. 成形品 (問い) 2.9.1. 成形品中の新規物質の届出に関する危険物質指令67/548/EECの下で、既存の要求に関連する成形品中の物質に対する要求はどうなっているか? (答え) ”決定のためのマニュアル”(http://europa.eu.int/comm/environment/dansub/mdeurolook.pdf)に記述されている成形品中の新規物質の届出に関する危険物質指令67/548/EECの下でとられるアプローチは、次の2つの設問に目を向けている。 (i)当該品の使用中に物質の放出はあるか? もしあるのなら (ii)ユーザー又は環境の暴露を防護する対策があるか? もしなければ、届出が必要。 成形品中の新規物質の届出が必要な実際的な(”決定のためのマニュアル”からの)例:
もし、認可の候補としての基準に合致し、そのように特定されつつある非常に懸念の高い物質が成形品中に0.1%以上の濃度で含まれている場合、もし製造者または輸入者が合理的に予見できる廃棄を含む使用条件の下で物質への暴露を防ぐことができないなら、又はもしそのような物質の製品中での年間使用量が1トン以下なら、届出が求められる。化学物質庁は届け出られた物質の登録が求められるかどうか決定することができる。さらに、安全ネットとして、化学物質庁はまた、特定の条件が合致するなら、成形品中に含まれるどのような物質の登録をも要求することができる。 2.10. ポリマー (問い) 2.10.1. REACHではポリマーはカバーされているのか? (答え) ポリマーは、登録と評価から免除されるが、やはり認可と制限の対象である。 しかし、年間1トン以上製造又は輸入されるモノマーとして使用される物質は登録されなくてはならず、要求される化学物質安全性評価を通じて、ポリマー製造者及び用途のような特定された用途のリスクは評価されることができる。 さらにこの規制の article 6(3) はモノマー、及び製造又は輸入されるポリマー中に含まれる他の物質の登録を求めている。ポリマーのリスクを決定するたにモノマー情報を使用するという概念は多くの原則に基づいている。
2.10.2. 67/548/EEC (Art. 13(2))とREACHの違いは何か? 67/548/EEC (Art. 13(2)):欧州既存化学物質目録(EINECS)にない物質を2%以上の結合した形で含むものを除くポリマー REACH:単量体単位(monomeric unit)及び化学的結合物質の形の2重量%以上のモノマー又はその他の物質 (答え) 言い回しは 同じ原則に基づいているが、ポリマーのリスクの評価に関連して同じ影響を持つ。指令指令67/548 は欧州既存化学物質目録(EINECS)にない2%以下のモノマーを含むポリマーの届出を免除している。REACHは、単量体単位(monomeric unit)の形で2%以上ポリマー中に含まれているなら、そのモノマーの登録を要求している。 (問い) 2.10.3. 実際に何が登録されるべきか−モノマー/又はポリマー? (答え) モノマーは登録される必要があるが、ポリーマーは必要ない。登録に求められていることは、もしArticle 6(1) or 6(3)中の他の条件が合致していればポリマーを生成する(building block of the polymer)モノマーである。ポリマーに含まれる他の物質もまたもし、Article 6(1) or 6(3)中の条件が合致していれば登録される必要がある。このことの大きな利点は、サプライチェーンで一度モノマーが登録されれば、その登録によって有効にカバーされる多くの(様々な分子量をカバーする)ポリマーがあるということである。 (問い) 2.10.4. モノマーの登録に責任があるのは誰か? ポリマー製造者/化学物質供給者? (答え) もし、モノマーがEUで製造されるなら、モノマー製造者が登録に責任がある。もし、モノマーが単体又はポリマーの一部として輸入されるなら、輸入者が登録に責任がある。しかしポリマー製造者又は輸入者は、ある条件下でのみ(すなわち、そのポリマーが未登録のモノマーを2%以上含んでおり、年間生産量が1トン以上の場合)、モノマーを登録しなくてはならない。2.10.7.も参照のこと。 注:すでに登録済みのモノマーを使用しているEUのポリマー製造者は、もし暴露シナリオ(ES)が要求されるなら(2.3.5 も参照のこと)、モノマーの安全データシート(SDS)に添付されている暴露シナリオ(ES)によって用途がカバーされているかどうかチェックしなくてはならない。カバーされていない場合には、もし Article 37(4) の要求(例えば、その用途が1トン以下又は供給者がCSRの作成を求められないなら)を満たさないなら、供給者にこの用途を知らせるか又は自身でCSRを作成しなくてはならない。 (問い) 2.10.5. 未登録のモノマーについて、サプライチェーンの中で登録者が特定されていない。これは誰かがすでに登録したモノマーは登録義務から免除されるということを意味するのか? (答え) ポリマーの製造者又は輸入者は誰でも未登録のモノマー物質の登録を提出しなくてはならない。 (問い) 2.10.6. ”からなる(onsists of)” という用語は、ポリマー製造で2%以上使用されるモノマーを意味するのか、又は、モノマー単体として2%以上ポリマー中に存在するモノマーを意味するのか? (答え) 2%限度は最終ポリマーに含まれるモノマーを指し、混合反応時に存在し、最終ポリマーには存在しないモノマーは考慮しない。この要求は、欧州既存化学物質目録(EINECS)にない2%以下のモノマーを含むポリマーは届出から免除するという指令Directive 67/548を反映したものである。 注:EUで製造されるモノマーは、もし年間1トン以上使用されるなら登録の必要がある。 (問い) 2.10.7. プラスチック産業は粒状プラスチック原料を大量に輸入している。輸入後の唯一のプロセスはそれらを溶かして最終製品にするだけである。粒状プラスチック原料は、ポリマーと様々な添加剤、着色剤などからなっている。これらの粒状原料は、ポリマーと考えるのか、あるいは調剤か、又はそれ以外か? (答え) 他の物質(着色剤、安定剤、等)と混合されたポリマーを含む輸入粒状原料は調剤であると見なされる。しかし、ポリマーは免除されるので、(ポリマー中のモノマーの登録に関するarticle 6(3)が適用されるかもしれないが)、”他の物質”だけが登録が必要である。 (問い) 2.10.8. ポリマーの輸入者に、海外で製造された未登録モノマーを登録することを求めることは:
ポリマーは登録を免除されている。REACH規制のArticle 6(3)の草稿を作成時、欧州委員会は、理事会指令92/32/EEC のArticle 13(2)で述べる見解を引き合いに出した。これはモノマー又はその他の物質は、ポリマー中に2%以上結合した形で含まれ、かつEINECSに記載されていなければ、新規物質として届出られなくてはならないと要求している。 ポリマー中の成分に関する必要な情報を輸入者が容易に入手できるよう、REACH規制のArticle 8 は、現状の新規物質共同体法規制である理事会指令 92/32/EECのrticle 2(1)(d)の同じ概念と同様に、”非共同体製造者の代理者”を選べることを導入した。この規定は、商業的に微妙なビジネス情報を保護するために製造者の法的利益に目を向けることを目的としている。またArticle 6(2)は、実際には非域内製造者はそうではないが、モノマーを”中間状態”であると主張する域内モノマー製造者がモノマーの登録コスト低減による利益を受けない様にしている。このようにして、ポリマー中のモノマーを登録することによる結果生ずるコストは、域内及び非域内製造者が同じ法的要求に基づくことになる。 したがって我々は、ポリマー及びモノマーに関するREACH規制の規定は、そのような物質の輸入者に同一の土俵を提供し、Article 6(3) はそれに関連して困難を生ずることはないであろうと考える。 2.11. 中間体 (問い) 2.11.1. 非分離中間体はどのようにカバーされるのか? (答え) 非分離中間体(それらが製造され、使用される装置から、サンプリングを除いて、決して離脱することがない物質)はREACHから除外されている。 (問い) 2.11.2. 現場分離中間体はどのようにカバーされるのか? (答え) 製造現場で使用される分離中間体は登録されねばならないが、情報要求は製造者が現に保有している、又はTitle III のデータ共有条項を通じて得ることができるものに限定される。これらの限定された要求は、製造者がその物質が全ライフサイクルに中、技術的方法で厳密に収容されて厳重に管理された条件の下でのみ製造され使用されるということを確認する限り、適用される。それらは書類又は物質評価(article 49)又は認可の対象とはならない。もし、これらの物質が認可物質と同等のリスクを及ぼすという証拠があるならば、その製造現場のある加盟国の所管当局(Competent Authority)は追加データを要求することができる。 (問い) 2.11.3. 輸送分離中間体はどのようにカバーされるのか? (答え) 現場に輸送され使用される分離中間体は、”通常”の物質が登録時に要求されるより低い情報が要求される。それらは評価の対象となる。 (問い) 2.11.4. 認可システムは異なる中間体をカバーするか? (答え) 中間体としての用途は認可対象とはならないが、制限は適用することができる。 3. データの共有 (問い) 3.1. なぜ動物テストのデータを共有することが義務なのか? (答え) 登録者毎にテストを行うことが許されたら、非常に多くの数の実験動物が不必要に犠牲となるからである。テスト結果は会社に所有権があり、テスト結果を所有する者は、そのデータに対し公正な対価を得る権利が与えられる。 (問い) 3.2. なぜ全ての結果は共有することができないのか? (答え) 全てのテスト結果はもちろん自主的ベースで共有することができる。 我々は登録者に対し、動物テストの数を制限することは社会の関心事なので、動物テストの結果を共有するよう義務付けることはできる。 他のテストにはその共有を求めるためにそれほど強い理由は存在せず(健康と環境の保護、及びコスト削減は述べられている)、ある場合には、データを共有することは適切ではない又はコスト効果がない(例えば、物理化学的テスト)。これらのケースでは、REACHはそれを要求するかどうかの決定をテストを必要とする登録者に任せている。したがって、テストを実施した登録者は、もし要求があれば、それを共有しなくてはならない。 (問い) 3.3. テストの費用分担は釣り合っているか? (答え) テスト結果が共有される場合、それから便益を得る共有者は誰でも対価を支払うべきである。REACH文書は費用分担は公平で透明で非差別的な方法で実施されるべきことを求めており、化学物質庁によって採用される費用分担ガイダンスが役に立つかもしれない。もし参加者の間で自主的な合意に達しなければ、費用は等分に分担される。テストのためのコストがどのように文書化されるかを決定し合意することは登録者らに任されている。しかし、登録者は要求されるデータに対応した対価を支払うべきである(例えば、低生産量製造者は高生産量の登録に必要なテスト費用を共有しないであろう)。 (問い) 3.4. コンソーシアムが物質、ポリマー、又は中間体を登録したいと望んだら、コストを負担せずに登録を得ようとする”無賃乗車”をどのようにして防ぐことができるか? (答え) REACHは、脊椎動物によるテスト情報及び、潜在的な登録者からの要求に基づく他の情報を強制的に共有するよう求めている。どちらの場合も公正な対価の支払いを見越している。コンソーシアムで登録者に要求される情報は広く変動するであろうということを念頭に置く必要がある(例えば、異なる生産量、用途、入手可能な情報、等)。データが”無料で入手”できるようになるのは、それが登録書類として化学物質庁に提出されてから12年後のことである。REACHは、現在、構築されているので、”無賃乗車”は問題にならない。 4. 川下ユーザー (問い) 4.1. 川下ユーザーが化学物質安全性報告(CSR)を実施しなくてはならない責務が生じる規定量はあるのか? (答え) ある。もし、物質又は調剤の使用が年間合計1トン以下の場合には、川下ユーザーはCSRを準備する必要はない。 川下ユーザーは暴露シナリオで述べられている条件外で使用する場合にはCSRを準備することが求められる。実際には、これは、川下ユーザーが供給者に用途を知らせたくないと望む場合である。川下ユーザーは下記の場合にはCSRを準備することを求められない。
(問い) 4.2. 製品及びプロセス研究開発(PPORD)のための登録の一般責務からの免除に関し、川下ユーザーはどのように届出を行えばよいのか? もし用途が特定されていない場合、彼らは供給者からどのように物質を入手することができるのか? そして川下ユーザーは化学物質庁への届出のために必要な情報を供給者に開示しなくてはならないのか? あるいは、川下ユーザーの研究に対する保護はないのか? (答え) Article 9 にある製品及びプロセス研究開発(PPORD)ための登録免除は、自身で又はリストされた顧客とともに研究を行う製造者及び輸入者のためのものである。したがってこれらの用途のためのこれらの物質は登録は必要なく(そして川下ユーザー要求は適用されず)、商業ベースでサプライチェーンにおいて他者に供給されることはない。 Article 37(4)(f)の製品及びプロセス研究開発(PPORD)のための免除はPPORDのための物質を使用する川下ユーザーに対し、人の健康と環境へのリスクが適切に管理される場合に適用される。しかし、物質が年間1トン以上使用される場合には、川下ユーザーは化学物質庁に届出なくてはならない。 (問い) 4.3. 現在、市場にある物質や調剤の非常に多くは製品安全データシート(MSDS)又は安全データシート(SDS)の精度が悪い。指令2001/58/ECの枠組みの中で、特に、購入した物質及び調剤のすでにカバーされている意図された用途を確かめるという川下ユーザーの観点で、どのような修正が期待できるか? (答え) REACHは、指令91/155/EEC(及びその最新修正)2001/58/ECを廃止し、この指令の全ての規定をREACHに移し、REACHの下で入手可能となるより大きな情報を反映するために、いくつかの変更をAnnexesに示した。 現在のSDS制度に対する変更のひとつは、PBTs 又は vPvBs である物質、又はそれらを0.1%以上の濃度で含む調剤に対して求められるということである。 川下ユーザーは物質供給者である製造者、輸入者、又は川下ユーザーに物質の用途を書面によって知らせる権利を持っている。物質が年間10トン以上製造又は輸入され、SDSが求められる場合に、供給者がもしその用途に合意するなら、彼が作成する化学物質安全性評価の中で特定した用途のための暴露シナリオを準備しなくてはならない。この暴露シナリオは、川下ユーザーに益するようSDSに付属すべきである。後者の点がSDS規定になされた修正のひとつである。 (川下ユーザーがその用途を明かさないという選択肢を選んだために)川下ユーザーに供給される安全データシート(SDS)が彼の用途のための暴露シナリオを含んでいない場合には、Annex XIIにしたがって川下ユーザーが自分で化学物質安全性報告(CSR)を用意する必要がある。 安全データシート(SDS)は要求されない(例えば、危険ではない)が、登録しなければならない、又はリスク管理措置が求められる物質に対しては、Article 32 がサプライチェーンの中での情報交換のための情報要求をリストしている。 (問い) 4.4. どのようにして川下ユーザーはREACHによってカバーされる物質についての情報を得るのか? (答え) 彼らは主に供給者から、強化された安全データシートの使用を通じて、情報を得る。もちろん、彼らは化学物質庁が公開している情報や、データベースや文献中の他の既存データを利用することができる。 候補リスト中の非常に高い懸念がある物質と特定された物質を0.1%以上の濃度で含む成形品のユーザーは、彼らの安全な使用に関する情報を得るであろう。 (問い) 4.5. 川下ユーザーは彼が受領する上流の(新しい)情報を次に伝えることが求められる。したがって川下ユーザーは、同じ物質を製造している供給者1(年間10〜100トンの供給者と仮定)に、彼が供給者2(年間1000トン超の供給者と仮定)から受領したデータ/情報について知らせることが求められる。供給者1は、登録する時に、供給者2によって川下ユーザーに供給された安全データシート(SDS)を作成するために実施された調査内容を含む全ての入手可能なデータを使用する必要があるか? (答え) ある物質を登録する場合には、登録者は、上位の生産量帯域でのみ要求される情報を含んで入手可能な全ての情報を使用することが求められる。他の登録者によって年間1000トン超ですでに登録されている物質を、年間10〜100トンで登録しようとする登録者は、インターネットを通じて自由に入手できる有害特性に関する情報を使用する義務がある。しかし、この生産量帯域では要求されないテストに関しては、彼はそのテスト費用を分担する義務はない。 川下ユーザーは、供給者2からの情報を供給者1に知らせる義務はない。安全データシートの情報はインターネットで入手可能であり(article 119 (1) 及び 119 (2)(d))、この方法で更新された最新の登録情報が使用されるべきである。 (問い) 4.6. Art. 32(1)(a)によれば、安全データシートを作成する必要のない物質又は調剤のサプライチェーンの全ての当事者は、可能ならば、物質の登録番号を提供しなくてはならない。このことの厳密な解釈は、調剤中の非常に低濃度の非危険物質でも供給者はこの物質を顧客に明らかにしなくてはならず、したがって製品に関する詳細を提供しなくてはならないということになるのか? (答え) Article 32 は、入手可能で関連するリスク管理(しかしSDSは必要としない)に関する情報があれば、この情報はサプライチェーンの後続の関係者に示されることを求めている。そのような場合、登録番号が入手可能なら提供すべきである。このことは後続の関係者が必要な管理を行うことを可能とする。さらに、調剤中のある有害物質はその濃度が限界以下なのでSDSに含まれていないかもしれず、このことはこれらの物質に関する必要な情報がサプライチェーンの川下に伝達され適切なリスク管理措置が特定され適用されることを可能にする。しかし、供給者者は調剤中の非有害物質の実際の濃度に関するデータを供給する必要はない。 5. 物質の評価 (問い) 5.1. 登録(完備性チェック)と書類評価との厳密な境界はどこにあるのか? (答え) 登録は完備性チェックを含むが、それ自身は、書類一式に要求される全ての情報が含まれているかどうかの自動チェックであり、内容の品質チェックは行っていない。 書類評価は、生産量帯域毎に登録された書類の少なくとも5%の登録書類の選択された要素の品質チェック、及び、Annex IX と X にリストされたテストのための全てのテスト実施提案の評価を行う。 (問い) 5.2. 書類評価の期間中、テスト実施提案に関しては迅速な決定が必要である。 (答え) 提案はテスト実施提案の評価の期限を想定している。(新規物質の場合180日、既存物質の場合は2年から4年で、生産量帯域依存する。) 登録者は、登録期限以前に全てのテストを済ませてしまうことを義務付けておらず、Annex IX と X に示されるテストのための実施提案を提出することだけが求められていることに留意すべきである。化学物質庁から実施許可を得た後に、改めてテストデータの提出期限を与えられる。 (問い) 5.3. 物質評価の下では、どの物質が評価されるのか? (答え) 化学物質庁は、物質評価のための優先物質基準を作成しなくてはならず、基準に基づいて、及びその物質が健康又は環境にリスクを及ぼすと疑われる場合には、共同体評価巡回計画のために物質を選定する。循環計画は当初は3年間であり毎年更新され、最初の計画はREACH発効後4年以内に作成される。加盟国(MS)はそのリストから物質を選定する。この計画は、化学物質庁と加盟国に対して自身のリソースを準備し、市民に対して物質評価が実施されているということを示し、ビジネスに対てし彼らの物質がいつ評価されるのかはっきりしたことを示すことに役立つ。1か国を越える加盟国がひとつの物質の評価を望んだ場合の解決方法も含まれている。 (問い) 5.4. 欧州化学物質庁による評価の優先度はどの基準に基づいているのか? (答え) 物質評価の優先度が作成されるが、それはリスク−ベースであろう。 (問い) 5.5. 評価の決定:異なる組織間で期限内に決定の合意がなされなかった場合にはどうなるのか? (答え) 評価タイトル内で様々な当事者(当局、登録者、川下ユーザー)に対し期限が設定されている。テスト実施提案の評価のために、化学物質庁は180日以内(非段階的導入物質)、又は5.5年、9年、又は15年(段階的導入物質、いつテスト提案を含む登録が提出されるかによる)以内にその行動を完了させなくてはならない。 化学物質庁は書類評価を12か月以内に完了しなくてはならない。加盟国は12か月以内にどのような物質の評価も完了させなくてはならない。もし、当局が期限内に登録者又は川下ユーザーに追加情報を要請する決定ドラフトを作成しなければ、評価は終了したとみなされる。しかし、登録者及び川下ユーザーが約束すべきことを含んで、化学物質庁のこれらの期限付き決定のために加盟国委員会に合意手続きがある。もし、これらの期限内にコメントが出されなかったなら、当局は決定を行うことに着手する。 (問い) 5.6. 評価手続きは貿易障壁とはならないか? (答え) 評価は、さらなるテスト実施が必要かどうかの結論が出るまで、会社に対し影響を与えない。さらなるテストが必要な場合には、他の全ての加盟国と化学物質庁は提案草稿について協議し、もし解決することのできないコメントがあれば、最終決定に合意するために委員会手順(a committee procedure)に基づき処理される。化学物質庁には基準を作成して整合性を確保する役割がある。化学物質庁は、もしコメントが届かなければ担当加盟国により準備された決定を採用する責任がある。もし、その評価が、制限のようなREACHの他の部分でなされるべき更なる措置を示した場合には、影響を受ける会社や他の利害関係者との協議を含む他のプロセスが必要となる。このプロセスの最中は、その物質は市場において影響を受けない。 6. 認可 6.1. 認可手続 (問い) 6.1.1. どの物質が認可対象となるのかについて産業側が予測することは可能か? 基準は十分に明確か? PBTs と vPvBs はどのようにして特定され、合意されるのか? ”同等の懸念ある物質”(“substances of equivalent concern”)はどのようにして特定され、合意されるのか? (答え) 認可対象となる物質グループの特定は明確に定義される。CMR(発がん性・変異原性・生殖毒性)物質については、現状の法律(指令67/548/EEC)の中で既に確立されており、 PBT(残留性・生体蓄積性・有毒性)と vPvB (高残留性・高生体蓄積性)物質についての基準は Annex XI に含まれている。他のどのような物質に対しても、CMRs、PBT 及び vPvB 物質と同等なレベルの懸念(equivalent level of concern)を引き起こす、人又は環境に対する確実そうな(probable)深刻な影響を示す科学的な証拠が存在しなくてはならない。 (訳注1) 訳注1:”同等の懸念”対し、ヨーロッパの環境団体は懸念を持っている。 ![]() しかし、産業界に対しより確実さを提供するため、全ての物質は開かれたプロセスを通じて特定され、Annex XIVにその物質を含めるとする決定は最終的には欧州委員会により、コミトロジー手続きにしたがってなされる。 この決定の準備は次のようになされる。 認可手続きのための物質を特定する書類は、欧州委員会に求められれば、加盟国又は化学物質庁のいずれかによって準備される。全ての書類は公開され、利害関係のある団体によるコメントが求められる。リストされた非常に高い懸念の特性のいずれかを持つとして特定された物質は化学物質庁が作業プログラムの対象とする物質を示す候補リストに含まれる。次に化学物質庁は Annex XIV に含める物質を欧州委員会に勧告する。優先度は通常、PBT 又は vPvB 特性を持つ物質、又は拡散的用途を持つ物質、又は高生産量の物質に与えられる。 これらの物質は、最終的にAnnex XIVに含められる。 (問い) 6.1.2. 認可システムは物質の数、用途、及び関係する企業のために、うまく機能しないのではないか? (答え) 多くの物質が認可の範囲に入るが、それらの全てが同時に扱われるわけではない。 化学物質庁は、主にリスクに基づき(用途、生産量、PBT/vPvB 特性)、認可のための優先物質のための勧告をするであろう。物質の優先順位を決める場合には、化学物質庁は実行可能性を考慮することを念頭に置かなくてはならない。認可システムは条件付きで免除することを許す。したがって、用途又は用途のカテゴリーをカバーする一般的免除を可能とする。 このシステムはまた、複数の用途、物質又は申請者をカバーしつつ、認可のためのグループ申請を許す。 (問い) 6.1.3. Article 60(2)の下で認可付与の目的のための”適切に管理される”とは何か? (答え) Article 60 (2)の下で認可付与の目的のための”適切に管理される”という表現は Annex I , point 6.4 で次のように述べられている。”人間と環境の暴露は、人間に対する導出無影響レベル(Derived Noeffect levels (DNELs))及び予測無影響濃度(Predicted No-Effect Concentrations (PNECs) )を越えていなければ適切に管理されていると見なすことができる”。CMRs 、及び同等の懸念影響を持ち、影響閾値がない(すなわち、人への影響が観察されそうにないレベル)物質、及びPBTs/vPvBs(Annex XIII の基準を通じて、又は Article 57(f) を通じて)については、リスクの適切な管理に基づき、認可は与えられないと明示的に述べられている。欧州委員会は内分泌かく乱物質特性を持つものとしてArticle 57(f)の下で特定される物質を含めるかどうかについてREACH発効後6年以内に見直しをする。 欧州委員会は、REACH発効後12ヶ月以内にAnnex I を見直す。その目的のために、発がん性物質及び変異原性物質の閾値を確立するための方法論がREACH実施プロジェクトの結果を考慮して開発されるであろう。article 13(3)にしたがって、Annex I section 6.4は、発がん性及び変異原性物質の用途の認可の脈絡に用いられるべき閾値を可能とするこれらの方法論に基づき、修正されるかもしれない。 (訳注2) 訳注2:”適切な管理”と”閾値の設定”対し、ヨーロッパの環境団体は懸念を持っている。 ![]() ![]() (問い) 6.1.4. 認可の申請はグループ化して、一緒に提出できるのか? (答え) 認可申請のグループ化は規制の中では可能である。グループは、製造者、輸入者、川下ユーザー、物質、及び用途、又はこれらのグループの任意の組み合わせが可能である。 これは費用を最小にしシステムが処理を迅速に行うことを可能にする。 (問い) 6.1.5. 少量の高懸念物質はREACHではどのように取り扱われるのか? (答え) 認可は非常に高い懸念のある全ての物質を量に関係なく対象とする。このことは少量の用途もまた認可の対象となることを意味する。しかし、もし特定の物質が非常に低い生産量(年間1トン以下)のために、EUで登録されたことがなく、テストもされたことがないなら、その有害特性は知られていないかも知れず、認可対象のために優先されることはありそうにない。 登録の生産量に基づくシステムは、実行可能性と、全ての物質を対象とすることとのトレードオフに基づく。安全ネットは加盟国の所管当局である。もし所管当局が潜在的に非常に高い懸念ある特性を持つ物質を特定したなら、所管当局はそれらに注意を向け、それらは認可の対象となると提案することができる。 認可は、他の基準とともに、生産量に基づく優先度決定プロセスを含む。これは多くの場合、少量物質は初期の段階では認可に選定されないということを意味する。 (問い) 6.1.6. 認可の決定:欧州委員会が期限内に決定しなかった場合はどうなるのか? (答え) 期限は、いつまでに申請がなされねばならないか、及び、いつから物質の使用は認可なしには許されないか−として定義される。それにもかかわらず重要な点は、禁止はデフォルトとしてあるのではなく、そのような申請に関する決定は常に欧州委員会によってなされるということである。期限が過ぎたなら、article 56(1)(d)の条項が適用される、すなわち、決定がなされるまで市場に出すことができる。 (問い) 6.1.7. もし申請者がSEAを提出することを決めたら(SEAは適切な代替物質がない場合にのみ適用)、代替分析を常に提出すべきなのか? (訳注:SEA = Socioeconomic Analysis 社会経済的分析) (答え) 申請者は常に、適切なら関連する研究開発活動についての情報を含んで、認可申請に代替の分析を含めなくてはならない。もし申請者が適切な代替を特定しているなら代替計画を提出しなくてはならないが、代替分析と代替計画(及び社会経済的分析(SEA))を含めるかどうかを決めるのは申請者次第である。しかし、 Art 60(4) に基づいて認可を得たいと望むなら、そのような認可をサポートするために必要な申請情報に含めることは申請者にとって有益である。 (問い) 6.1.8. 代替計画はいつ提示する必要があるのか? (答え) もし申請者が適切な代替を代替分析の中で特定しているなら、申請者はまた代替計画を提出しなくてはならない。(この情報は認可のための検証期限の長さに影響を与えるであろう。) (問い) 6.1.9. SEA(社会経済的分析)委員会の役目。もし、どのような情報も得られず、又はSEAのための情報だけしか得られなかった場合には、SEA委員会はどうするのか? もし同意できないSEAを受け取ったらどうするのか? 適切なデータ/分析が欠如している場合、SEA委員会は制限提案を拒否できるのか? 又は認可するのか? これらの疑問に答える時に、決定のために非常に限られた時間で決定しなくてはならないことを考慮すべきである。 (答え) 認可: SEAが認可申請に含まれている場合にのみ、SEA委員会は見解を出すであろう。申請者がSEAを用意しない限り、社会経済的要素は考慮されない。SEA委員会は申請に述べられている当該用途に関連する社会経済的要素を評価しなくてはならない。 制限: SEA委員会は、提案された制限と関連する社会経済的影響に関し、Annex XV dossier(書類)の関連部に基づいて、常に見解を出すであろう。見解を出す時に、SEA委員会は関連団体によって供給されるどのような情報をも考慮しなくてはならない。この決定プロセスのための情報を供給するかどうかを決めるのは産業側及びその他の関連団体次第である。 社会経済的分析に関するガイダンスが作成されるであろう。(ガイダンス文書の作成に関する詳細: http://ecb.jrc.it/REACH/) (問い) 6.2. 代替 (問い) 6.2.1. 代替はどのように推進するのか? (答え) REACHシステムは代替に動機を与えるために、少なくとも4つの方法を講じている。
6.2.2. 代替は会社に対し追加コストを及ぼす。 (答え) 認可対象となる物質は、がん、遺伝子変異、出生障害等を引き起こす物質や、環境中に蓄積し残留する物質など、非常に高い懸念がある物質である。これは社会全体にコストを及ぼし、欧州委員会影響評価は、REACHから得られる著しい潜在的な健康利益を、がんを削減するだけでも30年間で500億ユーロ(約7兆円)になると指摘している。 もし、会社がこのリスクを適切に管理できなければ、リスクを管理できるよう、これらの物質を代替するか、プロセスを変える方法を検証する必要がある。 もし、代替物が現状では入手できない場合、申請者は代替計画を提出してもよい。適切な代替が入手可能かどうかの評価は、申請者による代替の技術的及び経済的実現可能性を考慮しなくてはならない。 代替は必ずしも長期的なコストと結びつくわけではない。代替は革新の引き金となり、新たな市場の機会をもたらすことができる。 (問い) 6.2.3. 代替の原則がNGOsの圧力で誤用されないことを、どのようにして確実にすることができるか? (答え) ひとつの物質を他の物質に代替する、又はプロセスを替えるということを決定するのは容易ではないということを認識することは重要である。同時に代替は産業がその事業の本質的な一部として行う開発の一部である。NGOs又はその他は入手可能な代替があると指摘するかもしれないが、代替の実施可能性は申請者の特定な技術的及び経済的状況を考慮しなくてはならない。したがって、欧州委員会が認可又は制限の手続きにおいてある決定をする前に、化学物質庁委員会は、その代替に関する情報を含んで全ての情報を評価し、また定義された場合には(in defined cases)、代替に対する適切性に関する委員会の意見を出すであろう。。認可を与えるかどうかの最終決定は、コミトロジー手続を通して欧州委員会によってなされる。 (問い) 6.2.4. 労働者の保護。代替は強化されるのか? (答え) REACHは、職場で使用される物質の有害性についてもっと情報を入手できるようにし、よりよい安全アドバイスを提供することで、労働者の保護を向上させるであろう。もし職場で発がん性物質が使用されることとなったら、雇用主は使用する前に発がん性物質指令(2004/37/EC))階層 (すなわち、除去、代替、管理) を適用すべきである。このような場合、雇用主が代替について考慮するプロセスは、もし必要なら代替分析に役に立つであろう。職場で発がん性物質を使用する雇用主は、もしそれが Annex XV に含まれているなら、認可を求める、又は、その用途に対し認可が与えられたら Art. 66 の規定を使用することが必要である。 (問い) 6.2.5. 代替計画の内容は何か? (答え) 物質を代替するための計画は、申請者により提案される活動の工程表(タイムテーブル)を含む。さらに、代替の分析は適切なら、申請者が製品の代替に向けてとろうとする作業、目標達成に向けての研究開発、及び実現のための工程を示す。このタイミングは、例えば見直し期間の長さを設定する時に考慮されることができる。RIP 3.7 この領域のガイダンスを開発するであろう。 7. 分類と表示 (問い) 7.1. REACHにおける調和した分類と表示の範囲は非常に限定されている。もっとエンドポイントをカバーするよう拡張されるべきである。 (答え) この規制の文言はこの件に関する欧州委員会の提案を、ケースバイケースで正当化された場合には、CMR又は呼吸器系過敏症(respiratory sensitisers)以外の影響の分類と表示を含むよう、拡張した。完全な調和は下記の検討に基づきやはり求められない。
7.2. なぜ評価において、全ての産業側の分類表示提案の適合性チェックを必須としないのか? (答え) 産業側に責任を置くことの結果として、当局の役割を変更する必要が出てくる。当局はもはや産業側の書類を系統的にチェックし応諾することはしない。それをやるとその責任を当局側に置くことになるからである。当局にとって、分類と表示を提案する提出書類中の特定項目に明らかに同意できない場合、それを評価し明示的に見解を述べることだけが必要である。物質の分類と表示(C&L)は Annex VI point 4 にも規定されている。この情報を書類評価の対象とすることもでき、したがって分類表示の危険物質指令67/548/EEC Annex VI への適合性チェックもそこで行うことができるが、必須ではない。 (問い) 7.3. なぜ、分類と表示のための世界調和システム(GHS)はREACH 規制に含まれないのか?
欧州委員会はGHSを実施するための提案を準備している。欧州議会と理事会が第一読会で合意に達することができればGHS条項の段階的導入はREACHの関連条項、特に分類と表示インベントリーと一貫性を持たせることができるであろう。 8. 欧州化学物質庁と所管当局 (問い) 8.1. 将来の欧州化学物質庁の業務は何か (答え) 新たな化学物質庁の役目は、REACHがよく機能し、全ての利害関係者からの信頼を確実にしつつ、REACHの技術的、科学的そして事務的側面を管理することである。 化学物質庁はREACHシステムの中心である。それは登録プロセスを管理し、書類評価(遵守チェック及びテスト提案の評価)を受け持つであろう。それはまた、欧州委員会、加盟国、及び専門技術を持ったその他の関係部署を支援し、物質評価の調整を行い、IT基盤を確立して運用することに重要な役割を演じる。それは意志決定に大きな力を持ち、司法的検証は上訴審議会(Board of Appeal)によって行われる。 専門委員会を通じて、欧州委員会に下記を勧告する:
さらに、化学物質庁は加盟国の”実施の場”のレベルを均一化することを支援する。特に:
8.2. 化学物質庁はどのように組織されるのか? (答え) 化学物質庁は、欧州委員会の提案に関する理事会(Management Board)によって指名される理事長(an Executive Director)をもって設立され、全ての加盟国の代表、欧州委員会によって推薦された6人の代表、及び欧州議会によって推薦された2人の代表からなる理事会に対して責任を持つ。 全ての加盟国は化学物質庁のリスク評価及び社会経済分析委員会への委員任命のための推薦を行うために招待される。理事会は必要な能力を有するメンバーを指名する。その目的は、適切な推薦をした全ての加盟国からの委員を委員会に出席させることである。 各加盟国は加盟国委員会へのメンバーを1人、フォーラムへのメンバーを1人指名しなくてはならない。 (問い) 8.3. 会社は認可と制限の下での化学物質庁の決定に対し、どのように法的に異議を申し立てることができるか? (答え) 化学物質庁は認可及び制限手続きの下で決定することはない。REACHでは、会社が制限又は認可の手続において化学物質庁が作成した見解草稿を見ることが許される。もし会社がその草稿にコメントがあれば、化学物質庁はそれらのコメントが最終見解にどのように反映されるかを示さなくてはならない。 欧州委員会はコメント及びそれらがどのように反映されたかを見る。その後、欧州委員会はコミトロジー手続きによって最終決定を行い、その最終決定の理由を述べなくいてはならない。理由表明の中でコメントがどのように反映されたかを述べるであろう。 会社は欧州委員会の決定を覆すために欧州司法裁判所に提訴する権利がある。 (問い) 8.4. 会社は登録と評価の下での化学物質庁の決定に対しどのように法的に異議を申し立てることができるか? (答え) 特別の上訴審議会と手続が確立されることが予想される。 (問い) 8.5. 化学物質庁のデータベース及び情報へのアクセス 許可の管理はどのようになっているのか? 登録者、化学物質庁、及び各国当局との関係 (答え) 手続きは Article 118 の中で確立されており、そこでは情報公開に関する規制1049/2001に従い、非機密情報に対する要求は化学物質庁に直接向けられることになっている。化学物質庁は、関連団体が商業的に問題があると宣言しない限り、要求があれば、この情報を公開する。化学物質庁のこの件に関する運用の詳細は、REACHの運用が開始する前に管理委員会によって採択されるべき実施規則に基づく。所管当局の責任はTitle XII (訳注:情報)に記述されている。 9. 実施 (問い) 9.1. 欧州委員会は、REACHの開発時に、どのような実施のためのメカニズムを検討したのか? (答え) REACHは、期待される能力を持った関係者と実施時に必要なことの両方を念頭に置いて開発されている。サプライチェーンの関係者、特に小規模企業はリスク管理の能力を持っていることを期待される(このことは現状の規制でも求められることである)が、リスク評価の能力は必ずしも必要としない。このことはまた、検査官にも求められる。化学物質の有害性及び潜在的リスクに関する知見は一般的に製造者と輸入者、及び各国機関/当局が有している。暴露シナリオは、リスク管理措置を含む使用の条件であり、実施される時には、物質の安全な取り扱いと使用を確実にするものである。したがって、サプライチェーンのリスク管理者がこれを理解し適用できるということが構成要素の一部となる。また、リスク管理の中で規定されている検査官も実施に参加できる。検査官には毒物学の深い知識が求められるわけではない。したがって検査官は、CSR/SDS 又は、実際には川下ユーザーによって展開されるCSR に記載されている暴露シナリオが実施されているかどうかチェックすることができる。各国の機関はこの情報に完全にアクセスすることができ、各国の機関は、暴露シナリオを適用することで生成される放出が十分に低いことをチェックすることができる。この概念は、現状の法規よりも容易に実施可能であり、より良い保護を実現できる。 (問い) 9.2. 欧州委員会は、REACHの分類と表示に関する規定の実施についてどのような展望を持っているのか? (答え) 分類と表示情報を含むデータベースは、危険物質の分類と表示とともに、それらを製造又は輸入している全ての会社の名前と住所を含んでいる。供給者とは異なる分類又は表示をする全ての川下ユーザーも記載されるであろう。したがって検査官の責任は、製品上及びSDS中の分類/表示に関し、産業界のリスト上の情報が本当に正しく会社の実施に反映されているかどうかをチェックすることである。分類と表示目録が分類/表示基準に違反していないかのチェック、登録の推進、又は調和分類の候補を見つけることが各国当局の責任となるであろう。したがって、各国当局(産業側の分類/表示のレビュー)と検査当局(産業側が彼ら自身の分類/表示を実施していることのチェク)の間に明確な責任分担がある。 10. 規定の見直し (問い) 10.1.1. REACH規制によれば、1-10トン範囲の物質の化学物質安全性評価を実施する義務を拡張するのかどうかは、12年後に見直される。なぜこの見直しをもっと早くすることができないのか? (答え) 化学物質安全性評価を実施する義務を1-10トン範囲の物質にも拡張するのかどうかについての修正された見直し期限は12年後であるというのは事実である。しかし、発がん性、変異原性、又は生殖毒性として分類される物質(CMR物質 カテゴリー1及び2)については、この見直しはREACH発効後7年後に行われる。 11. 審理される権利と提訴の権利 (問い) 11.1. REACH規制のどこで、会社は審理される権利を与えられているか? (答え)
11.2. いつ、産業側は提訴できるのか? (答え) 会社は、化学物質庁の決定に対し、特に下記の決定について、化学物質庁の上訴審議会(board ofappeal)に提訴できる。
12. REACH 及び他の共同体法令と国際条約との関係 12.1. 廃棄物法 (問い) 12.1.1. REACH の下では廃棄物はどのようになっているか? 廃棄物はREACHの下では物質、調剤、あるいは成形品ではない。しかし、REACHは物質のライフサイクルをフォローしており、登録者が化学物質安全性評価(CSR)を実施する時には、廃棄段階を考慮しなくてはならず、また、化学物質安全性報告(CSR)の中で廃棄物管理措置に目を向けなくてはならない。これらの措置は、安全データシート(SDS heading 13)によりサプライチェーン中に伝達されなくてはならない。しかし、廃棄物処理はREACHの下では川下ユーザーではなく、したがって廃棄物処理業者は廃棄段階でその物質をどのように扱うのかに関するSDSを受け取らない。 もし、廃棄物の回収により異なる物質、調剤、又は成形品の製造という結果になるなら、REACHの規定はこの異なる物質、調剤、又は成形品に適用される。 (問い) 12.1.2. プロセス廃棄物を登録する義務はあるのか? (答え) ない。廃棄物はREACHの下では物質、調剤、あるいは成形品ではない。もしプロセス廃棄物が廃棄物として管理され処理されるなら、登録の必要はない。製造される物質が登録時にCSRを要求されるなら、その物質のCSRの中でプロセス廃棄物に起因するリスクが記述されなくてはならない。 しかし、プロセス廃棄物が他の物質を生成するために使用される、又は、物質として又は調剤の中で市場に出されるなら、それはREACHの対象となる。 (問い) 12.1.3. 廃棄物処理からの残渣を登録する義務はあるか? (答え) 残渣が廃棄物である限り、すなわち、それらは廃棄され処理される(例えば、埋め立て又は岩塩鉱での保管)ものなら、それらはREACHの対象とならない。残渣が他の物質として又は調剤として使用されるなら、REACHの対象となる。 (問い) 12.1.4. より高い純度に蒸留された廃棄溶剤は登録する義務はあるか? (答え) ある。物質の製造者は製造方法、又は原材料の由来に関わらず、登録を行わなくてはならない。しかし、もしその溶剤製造者が廃棄溶剤を蒸留し、その廃棄溶剤の蒸留物が彼の登録に含まれているなら、新たな登録を行う必要はない。 (問い) 12.1.5. 輸入した古紙又はスクラップ金属中の物質を登録する義務はあるのか? (答え) 古紙及びスクラップ金属は、REACHの下では調剤でも成形品でもなく、したがって、それらに含まれる物質は登録する必要はない。しかし、もし、その廃棄物が年間1トン以上の新たな物質を作るために使用されるなら、これらの物質はその製造者により登録される必要がある。 (問い) 12.1.6. Article 7 は、リサイクル物質から作られる成形品の製造者又は輸入者に適用されるか? 例えば、古紙からの新聞用紙の製造又は輸入。 (答え) 適用される。 注:新聞紙から物質が放出されることは意図されていないので、もし条件が Art. 7 para 2 を満たしていれば、 ほとんどの場合、Art. 7 の下に物質の届出だけが求められるはずである。 (問い) 12.1.7. 廃棄物処理業者はREACHの下では川下ユーザーか? (答え) 廃棄物の処理そのものは、物質又は調剤の用途ではなく、したがって、廃棄物処理業者はREACHの下では川下ユーザーではない。 (問い) 12.1.8. 廃棄物は認可から免除されるのか? (答え) 免除される。廃棄物はREACHの下では物質、調剤、あるいは成形品ではない。 しかし、変換プロセスにより生成され、市場に出され、又は使用される異なる物質、調剤、及び成形品という形でリサイクルされた製品に対しては、それらに含まれる物質により認可が適用されるかもしれない。 (問い) 12.1.9. 制限は廃棄物に適用されるのか? (答え) 適用されない。廃棄物はREACHの下では物質、調剤、あるいは成形品ではない。 しかし、異なるリサイクル物質、調剤、及び成形品という形でリサイクルされた製品は、他の物質、調剤、及び成形品のように制限が適用される。 12.2. 国際条約とプログラム (問い) 12.2.1. 欧州委員会は現在の国際的な化学物質管理体制を考慮しているか? それらは有害な化学物質の有害影響を効果的に防いでいるか? それらはREACH体制の、又はその一部の、ベースとなるのか? (答え) 我々は既存の国際プログラムを考慮しているし、それらから示唆も受けている。しかしそれら自身だけでは要求される保護レベルを十分に満たすことはできない。既存の体制は人間の健康と環境のために必要な保護を提供しなかった。我々は、REACHがこれらの活動に大きく貢献し、既存のシステムと矛盾しないと信じている。我々はGHSを実施し、REACH発効と時期が同じになるよう計画している。 (問い) 12.2.2. その他関連する国際的な活動があるか? (答え) 関連するその他の国際的活動分野として、持続可能な発展のための世界首脳会議(WSSD)、特に WSSD 実施計画;国連環境計画(UNEP);国際的な化学物質管理に対する戦略的なアプローチ(SAICM)は2006年2月6日に採択(http://www.chem.unep.ch/saicm);OECD:高生産量化学物質(HPV)の系統的なテスト・評価のための共同行動計画の展開等がある。さらに新たなIUCLID (IUCLID 5)はOECDとの協力の下に開発中である。IUCLID 5 は、REACHと整合する国際的に受け入れられているデータ形式、及び、REACH登録時やOECD諸国での様々な他の法規に対する報告用に使用されるべきテンプレートを含むであろう。 13. 競争力 13.1. 機密 (問い) 13.1.1. REACHは化学物質の公開リストに関わる機密をどのように確保するのか? REACHは透明性をどのように確保するのか? (答え) 化学物質庁が公開する最初の物質リストは事前登録された物質のリストである。このリストは物質名だけからなり、それを製造又は輸入する会社名はない。このリストの目的は、REACHに導入計画がある物質についての概要を与えることである。 REACHは、化学物質について、特に安全と環境への側面に関し、特定の情報を公開する。しかし、また産業側の企業秘密保護のための合法的権利も尊重する。 REACH規制は下記を含む。
商業的に繊細な情報はどのように保護されるのか?
REACHは調剤の正確な処方の公開を求めるのか? 正確な処方を公開することは一般的に該当者の商業的利益の保護を損なうものとみなされる(Article 118.2)。情報を入手可能にするに当たり、欧州環境庁は商業的利益の保護に関する ECJ's jurisprudence を十分に考慮する。 13.2. 中小企業 (問い) 13.2.1. 中小企業に対し、異なる要求が導入されることはあり得るか? (答え) 中小企業(SME)はEUの化学産業の重要な一部であり、その理由のために我々は提案が彼らにもまた実行可能となるよう全力を傾けた(例えば、登録料の低減)。安全は重要な関心事であるので、REACHの情報要求は会社の規模に関係なく、化学物質の生産量、用途、そして特性に関連し、会社の売上高や従業員数には関連しない。 (問い) 13.2.2. 大企業と中小企業では資金力、技術、及び人材の点において大きな差がある。中小企業はREACHの事務処理において大企業より大きな困難に直面するであろう。欧州委員会大企業と中小企業との異なる利害のバランスをどのようにとったのか? (答え) 多くの場合、中小企業は他の会社に比べて年間1-10トンレベルの登録が多いと考えられる。したがって、彼らはREACH発効後11年年間は登録しなくてもよく、登録料も安くなるであろう。これらの生産量に対する情報要求はもっと生産量の多い物質に比べて軽く、化学物質安全報告書(CSR)の作成も必要ない。研究開発の免除は延長されており、革新を、特に特殊化学物質分野における革新を推進している。現状の規制では新規物質は年間10kgから登録が必要であるのに反し、REACHでは年間1トン未満は登録が必要ない。これもまた、中小企業の負担を減らすことになる。 ほとんどの中小企業は川下ユーザーである。REACHは彼らに対する負荷を軽減するよう設計されている。 (問い) 13.2.3. どのように中小企業の利益に目が向けられているのか? (答え) 製造者としての中小企業は多くの措置によって恩恵を得る。
13.3. 貿易問題 (問い) 13.3.1. REACHが発効すると、化学物質貿易に影響を与えることは必然であり、貿易不均衡をもたらし、貿易論争となるかもしれない。欧州委員会はこれらの潜在的な問題をどのように解決しようとしているのか? (答え) 我々は、貿易論争が生じる理由がみつからない。REACHは、完全にWTOと整合するよう設計されている。インターネット・コンサルテーションはTBT Art. 2.9.1.の下に事前にWTOに知らされている。REACH規制は、2004年1月24日にTBT 協定の下にWTOに通知されている(通知 G/TBT/N/EEC/52)。コメントに対する当初の期限は通知後90日に設定された。WTOのいくつかの国のメンバーからの要求によって欧州委員会はその期限を2004年6月21日(すなわち、150日)に延長した。アメリカ、日本、カナダ、中国、ブラジル、オーストラリア、チリー、シンガポール、台湾、タイ、キューバ、アメリカ化学産業協議会(ACC)、及びアジア太平洋経済協力会議(APEC)化学ダイアローグ運営委員会からコメントがあった。欧州委員会は2004年10月28日にこれらのコメントに回答した。 訳注3(参考) ![]() (問い) 13.3.2. REACHの実施に当たり、発展途上国に猶予期間を与え、モントリオール条約のオゾン層保護に関する規定の実施におけるように資金的、技術的支援を与えることは可能か? (答え) 猶予期間を与えることはできない。我々は物質の出所で差別することはできない。支援は、例えば、技術支援プログラムなどが可能かもしれない。化学物質庁の役割は、欧州委員会の要求に基づき、発展途上国の遂行能力という観点で支援するということを留意する必要がある。このことは今後、欧州委員会が検討するであろう。 (問い) 13.3.3. 欧州連合(EU)はREACH 規制が貿易に与える負の影響をどのように低減しようとしているのか? (答え) 広範なガイダンス、ソフトウェア・ツールなどが入手できるであろう。もし会社が、登録しなければならない量の物質を製造しているなら、その安全使用を示すために必要なリソースを準備すべきであると我々は考える。もしそれができないなら、彼らはそのような物質を製造すべきかどうかの疑問を呈する人がいるであろう。 (問い) 13.3.4. EUから輸出される物質はREACHの対象か? (答え) 対象である。原則として製造はREACHの対象範囲であり、登録は特にこれにあたる。 (問い) 13.3.5. REACH体制が発効した後、非EU諸国からEUへ輸出される化学物質に与える負の影響を取り除くアイディアは何かあるか? (答え) 会社は準備を入念にすべきである。サプライチェーンにおける情報伝達が重要となる。REACHの展開における高度な透明性と対話がこのこにと関して役に立つであろう。 13.4. 革新 (問い) 13.4.1. REACHはどのようにして革新とより安全な発展を推進するのか? (答え) 産業の競争力を強化するために、REACHの目標のひとつは研究開発と革新を推進することである。 例えば、:
(問い) 現在、製造及び輸入されている単体物質及び調剤中の物質に関し、川下ユーザーがREACHの自分たちへの影響を見積もるために、化学物質の全ての製造チェーンにおいて関連する詳細を入手することが可能か? 川下ユーザーには不明の他の化学物質によって(EU域内又は域外で)製造される化学物質はどのようにして見積もることができるか? (答え) 欧州委員会は、各産業分野や個々の物質に及ぼす影響評価を実施する立場にないし可能でもない。しかし、欧州委員会は2003年ののREACH規制に関し、広範な影響調査を実施した。主要文書及び背景文書は欧州委員会の下記ウェブサイトで入手可能である。 http://europa.eu.int/comm/enterprise/reach/eia_en.htm そこにある非常に多くのデータもまた、特定のケースにおけるREACHの影響に関する考えを広げたいと考える人々のための役に立つ出発点となるであろう。 REACHの影響に関する利害関係者との議論の後に、欧州委員会は、”欧州委員会REACH影響評価(Commission's EACH Impact Assessment)”に参加した。それは、2004年3月3日付けの欧州委員会(企業総局及び環境総局)と産業界(UNICE/CEFIC))の合意メモに基づいて実施された。この調査は、商業的な理由で市場から潜在的に消える物質、革新、及び新規加盟国への潜在的な影響を把握するためにビジネス・ケーススタディ・アプローチが採用された。 合意メモに基づき二つの調査が実施された。UNICE/CEFIC 産業界コンソーシアムのための KPMG による調査は、最初の二つの分野に焦点を当てた。この調査は4つの川下分野(すなわち、自動車産業、電子産業、軟包装産業、無機物質産業)及び中小企業6社を含んだ。 共同研究センター(JRC)の調査は新規加盟国へのREACHの潜在的影響を実施したが、それには新規加盟国の化学産業の一般的調査と新規加盟3ヶ国における特殊化学産業に与える影響に焦点を当てた調査の二つが含まれる。 欧州委員会は2003年のREACH規制に関する影響調査から下記の結論を導いた。
この調査の結果とその結論は意思決定プロセスに影響を与えた。例えば、理事会における満場一致の合意として政治的合意文書は10トン以下の物質のための登録システムに変更を導入し、さらに100トン以下の物質への要求にも変更を加えた。このグループのための平均登録コストは、テストを要求する物質の数を大きく削減したために、大幅に低減されるであろう。政治的合意はまた、中小企業の登録料の低減と技術的支援(help desk arrangement)も含んでいる。 付属:略語 C&L classification and labelling 分類と表示 CMR substances that are carcinogenic, mutagenic, toxic for reproduction 発がん性・変異原性・生殖毒性 CSA chemical safety assessment 化学物質安全性評価 CSR chemical safety report 化学物質安全性報告 DNEL(s) derived no effect level(s) 導出無影響レベル ES exposure scenario 暴露シナリオ PNEC(s) predicted no effect concentration(s) 予測無影響濃度 DU downstream user 川下ユーザー GLP good laboratory practice 検査機関における業務管理基準 M/I manufacturer / importer 製造者/輸入者 PBT substances that are persistent, bioaccumulative and toxic 残留性・生体蓄積性・有毒性 vPvB substances that are very persistent, very bioaccumulative 高残留性・高生体蓄積性 RMM risk management measures リスク管理措置 SDS safety data sheet 安全データシート SIEF substance information exchange forum 物質情報交換フォーラム 訳注:ANNEX タイトル(参考用)
定義 (参考用) ■訳注:2004年11月22日付で発表されたQ&A(Questions and Answers on REACH Part II 22.11.2004)には”定義”が あったが、2005年3月の合意ベースQ&Aから削除された。しかし参考のためにここでは残しておくこととする。 REACHに対し、下記の定義が適用される。
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