Environmental Health News (EHN) 2020年7月3日
医療機器と医薬品中の
ホルモン模倣化学物質の危険性

メグ・ウィルコックス
我々は健康を強化しようとして、我々に害を及ぼす化合物にさらされる可能性がある。
新しい研究によると、医師はこの隠れたリスクを認識して患者に説明する必要がある。


情報源: Environmental Health News (EHN), July 3, 2020
The danger of hormone-mimicking chemicals in medical devices and meds
By Meg Wilcox
In an effort to bolster our health, we may be exposed to compounds that harm us.
New research says physicians need to recognize and explain this hidden risk to patients.

https://www.ehn.org/endocrine-disruptors-in-medicine-2646307813.html

訳:安間 武(化学物質問題市民研究会)
http://www.ne.jp/asahi/kagaku/pico/
掲載日:2020年7月22日

このページへのリンク:
http://www.ne.jp/asahi/kagaku/pico/edc/USA/200703_EHN_The_danger_of_hormone-mimicking_chemicals_in_medical_devices_and_meds.html

Credit: Homedust.com/flickr
 新しい研究によると、医薬品および医療機器中の内分泌かく乱化学物質への暴露は非常に過小評価されており、医師はこれらの暴露について患者に説明する倫理的義務を負っている。

 シカゴにあるイリノイ大学校の研究者によって執筆されたその論文は、医薬品や医療処置で使用される多くのプラスチック機器(カテーテルや血液バッグなど)中の内分泌かく乱物質の存在とその潜在的な健康への影響に関する科学文献をまとめたものである。 このような化学物質は、体のホルモンを模倣することができ、不妊、がん、心臓病、脳卒中、神経発達障害、免疫系機能障害など、多くの健康への影響に関連付けられている。

 内分泌学会の『Journal of Clinical Endocrinology&Metabolism』に本日発表されたこの研究(Unwitting Accomplices: Endocrine Disruptors Confounding Clinical Care 無意識の共犯者:内分泌かく乱物質が医療を困惑させる)は、健康管理機器中で見つかったこれらの化学物質が疾患を促進するだけでなく、治療の有効性を阻害している可能性があるという強い証拠を発見し、この情報を患者に開示しないことは 医療倫理の中核に違反していると結論付けている。 著者らは、これらの医薬品や治療法の救命と健康促進の利点を認めているが、リスクと利益を比較検討する必要があると述べている。

 シカゴにあるイリノイ大学医学部の内分泌学者である筆頭著者のロバート・マイケル・サーギスは、”医師が実際に何かをすることに対してこの倫理的義務がある”と述べた。

 ”健康管理はこの暴露の実例になる”と彼は付け加えた。 ”それは、空気中や水中の汚染物質だけではなく、また身体手入れ用品だけではない。今では、医師が実際に患者に対して行っていることである”。

 しかし、多くの医師は内分泌かく乱物質のリスク、または医療における問題の程度に気づいていないと、サーギスと同僚は警告した。

 ”彼らの言うことは正しいし、ここには倫理的な問題がある”と、研究に関与していない「 Science and Environmental Health Network(SEHN)」の科学ディレクター、テッド・シェトラー(訳注1)は述べた。

 医療機器の化学的危険性は”終わらせたくない話”である。塩ビチューブには可塑剤フタル酸ジエチルヘキシル(DEHP)が含まれていたので、医療機器からそれを取り除くために「 Health Care Without Harm 」と行った 20年前の活動を思い出した。

 新しい研究レビューで下記の様な事実が再確認された。
  • フタル酸ジブチル(DBP)およびフタル酸ジエチル(DEP)は、市販薬や処方薬中に広範に見つかり、一般にオメプラゾールなどの胃腸障害の薬に添加される。

  • パラベンは、抗菌作用のために薬物に添加され、フルオキセチン(プロザック)、イブプロフェン、アセトアミノフェンなどの多くの薬物で同様に見つかった。

  • パラベンは、広範な抗菌作用のため、静脈内用液、超音波ゲル、ヘパリンロック液に導入されている。

  • フタル酸エステルは、カルディゼム CD のいくつかの strengths で発見されたが、すべてではなく、ひとつのバタフライ採血キットは、他よりもはるかに高いレベルのパラベンを放出し、より安全な選択肢が可能であることを示唆している。

  • 研究では、シリンジ、気管内チューブ、血液バッグ、カテーテルなどの医療機器からのフタル酸エステル、ビスフェノールA(BPA)、パラベン、ペルフルオロアルキル物質(PFAS)、およびトリクロサンの放出が記録されている。フタル酸エステル類は、医療用プラスチックの重量の30〜40%を占める。

  • 新生児集中治療室(NICU)の一般的な 52 品目に関する 2019年の研究では、5分の 3 が BPA を含み、5分の 4が パラベンを含んでいることがわかった。
 研究の多くは、医学的介入後に尿中の内分泌かく乱物質代謝産物を検出した。

 これらの化学物質が健康に影響を与えるプロセスは複雑でしばしば時間遅れがあり、これらの暴露を健康の評価項目に関連付けることができた研究はほとんどなかった。 しかし、サーギスは、人々が特定の薬物療法を受けたときに甲状腺ホルモンが変化することを発見したある研究を指摘した。

 新生児集中治療室での内分泌かく乱物質への暴露は”最も懸念”があるとサーギスは述べた。”それは、子どもたちは我々がこれまでに見た中で最も脆弱な患者の一部であり”、そして彼らは内分泌かく乱物質を含むことが判明しているプラスチック器具を使用する多くの医学的介入を受けているからである。発達中の内分泌かく乱物質への低レベル暴露は、後年の人生への影響に関連する。

 著者らは、我々の知識はいくつかの既知の内分泌かく乱物質と限られたセットの医療機器に限定されているため、これらの医療暴露によるリスクは過小評価されている可能性が高いと強調する。

 彼らは医師にこれらの化学物質を患者にさらすことの彼らの役割について学ぶよう呼びかけ、彼らに倫理的義務に忠実に従い、患者とリスクについて議論するよう要請する。 彼らはまた、規制当局や製造業者に対し、医薬品や医療機器中の内分泌かく乱物質を特定して排除し、より安全な代替品を開発するよう求めている。

 シェトラーは意識向上が重要であることに同意しているが、”その点でできることは限られているため、規制当局は本当に介入して仕事を行う必要がある”と述べた。

 サルギスは適切な医療の重要性を強調した。 ”これらの機器と医薬品が命を救い、健康を向上させる。これは、私たちが行っていることを振り返り、より良い方法で前進する方法を特定しようとする瞬間である”。

 我々の目標は、”最善を尽くしているかどうかを確認することである。本質的に私たちが求めているのは、使用する医薬品と医療機器が内分泌の健康を確実に保護できるようにするシステムへの移行である”。


訳注1:関連情報


化学物質問題市民研究会
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