AllAfrica / UN News Service 2016年8月7日
有害廃棄物投棄から10年
被害者らは’真相を知らず’と国連人権専門家ら


情報源:AllAfrica / UN News Service, 7 August 2016
Cote d'Ivoire: 10 Years On, Survivors of Toxic Waste Dumping
'Remain in the Dark,' Say UN Rights Experts
http://allafrica.com/stories/201608180955.html

訳:安間 武 (化学物質問題市民研究会)
http://www.ne.jp/asahi/kagaku/pico/
掲載日:2016年8月25日
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http://www.ne.jp/asahi/kagaku/pico/basel/news/160817_AllAfrica_Cote_d'Ivoire_10_Years_On.html


はじめに

 コートジボワールでの有害廃棄物の不法投棄の10週年を前にして、国連の専門家グループが本日、コートジボワール政府、全ての責任ある各国政府、及び国際的コミュニティに対しこの機会を利用して、事件の現在進行している人権への影響に目を向けるよう促した。

 国連人権高等弁務官事務所(OHCHR)の報道発表で、専門家らはまた、この投棄の背後にいるイギリス・オランダの多国籍大手商社トラフィグラに対して、投棄された廃棄物の内容と特性、及び現在進行しているらしい健康と環境への影響について同社が持つすべての情報を開示してこの調査を支援するよう求めた。

 国連人権高等弁務官事務所(OHCHR)は、2006年8月19日に貨物船(タンカー)プロボ・コアラ号がアビジャン(訳注:コートジボワールの最大都市)に500トンの有害廃棄物を投棄したことに言及した。トラフィグラの所有物であるこの有害物質はまた、同市の周辺の18か所に投棄されたが、他の多くの可能性ある投棄場所について、今日では不明である。トラフィグラは、オランダでの適切な廃棄のためのコストは高いので、オランダ国内では有害廃棄物の処分を行わないことに決めていた。

 公式の推定によれば、15人が死亡、69人が入院、その他10万8千人以上がプロボ・コアラ号事件の後、治療を受けた。

 ”10年経過して、投棄の犠牲者とアビジャンのその他の住民は、現在進行している彼らの健康への脅威について知らずにいる”と専門家は言い、彼らはその有害廃棄物の中に何が入っていたのか;その投棄場所は適切に浄化されたのか、;そしてその廃棄物は水供給系又は食物連鎖中に入り込んだのかどうかということについてさえも、知っていないとと言及した。

 ”有害物質が水中や土壌中に残留し続けることによる有害影響を考えれば、食品の安全と将来の世代の健康にとって現実の懸念である”と、専門家らは付け加えた。

 専門家らは、コートジボワール政府は、この事件の10周年の機会をとらえて、この事件の長期的な健康及び環境への影響に目を向け、公衆健康専門家及びより広い国際的コミュニティらからの追加的な財政的技術的支援を求めるよう促した。

 彼らは、コートジボワールのような紛争終結国では国際的コミュニティが支援をすることがもっと重要であると強調した。これらの出来事に彼らの果たす役割があるなら、トラフィグラが登録しているオランダとイギリスの両政府は特にそのようにする責任がある。

  2015年3月、トラフィグラのロンドンを拠点とする関連会社がその廃棄物をアビジャンに投棄することをイギリスで謀議していたかどうについて犯罪捜査をすることをイギリスが拒否したことに言及しつつ、専門家らは、この行動と情報の欠如によって、その投棄により影響を受けた人々は見捨てられ、さらなる被害にさらされていると感じさせられたと述べた。

 2015年、コートジボワール政府は全ての投棄場所浄化を完了したと発表した。同政府の要求で、国連環境計画(UNEP)は、それらの浄化を確認するために2016年に投棄場所の環境的審査を実施した。

 UNEP は、同年末までに審査の結果と勧告を発表することになっている。同政府もまた最近、投棄によって最も影響をうけた村のひとつで被害者の健康を調べるためのプロセスを立ち上げた。

 専門家らは、これらの取り組みを歓迎したが、コートジボワール当局と国際的コミュニティは、長期的な健康影響のための無料の医療措置と環境的脅威への予防的措置を含んで、全ての被害者らとその家族の健康の権利と健康な環境への権利を守るための効果的な措置をとるよう促した。

 専門家の構成は、コートジボワールにおける人権の状態に関する独立専門家モハメド・アヤト; 有害物質と廃棄物の環境的に適切な管理と処分の人権への影響に関する特別報告者バスクト・ツンカク; 食物への権利に関する特別報告者ヒラル・エルバー; 健康への権利に関する特別報告者ダイニウス・プラス; 安全な水と衛生施設に関する特別報告者レオ・ヘラー; 人権と多国籍企業及びその他のビジネス企業に関する作業部会の現在の議長パベル・スルヤンズィガである。

 独立専門家又は特別報告者は、特定の人権テーマに関し無償で検証し報告するためにジュネーブの国連人権協議会により任命される。.

訳注:当研究会が紹介した関連記事


化学物質問題市民研究会
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