BAN 有害廃棄物ニュース 2006年9月28日
コートジボワールの有毒タンカー
エストニアにより捜査される


情報源:Toxic Trade News / 28 September 2006
Ivory Coast Toxic Tanker Impounded by Estonia
by Environment News Service
http://www.ban.org/ban_news/2006/060928_toxic_tanker.html

訳:安間 武 (化学物質問題市民研究会)
http://www.ne.jp/asahi/kagaku/pico/
掲載日:2006年10月2日
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http://www.ne.jp/asahi/kagaku/pico/basel/BAN/06_09_28_impounded_by_estonia.html


グリーンピースの北極日の出号が
プロボ・コアロ号を3日間阻止
cChristian Aslund/Greenpeace
【2006年9月28日 パルディィスキ、エストニア】 エストニア当局は、アフリカ西海岸コートジボワールで死者8人、要加療者75,000人以上を引き起こしたコートジボワール有害廃棄物スキャンダルの核心であるオイルタンカーを捜査した。28日にエストニアのパルディスキ港に立ち寄った欧州連合(EU)環境委員長スタブロス・ディマスは、オランダがチャータしたタンカーの行為を非難し、EU加盟国は有害廃棄物の輸出を禁止する法律を厳格に執行するよう促した。

 ”ヨーロッパからの有害廃棄物がコートジボワールに送られ、そのように多くの人々に被害を及ぼし、環境を損なったことは衝撃的なことである”とディマスは述べた。

 この事件は、”明らかにヨーロッパ及び国際的な法律に違反しており、大変な結果をもたらした”とディマスは述べ、EU加盟諸国は、”このような犯罪事件は放置されることはなく、将来繰り返されることがないこと”を確実にするよう促した。

 エストニア当局は27日(水)に同船をパナマ船籍の同船の乗組員が当局の許可なしにパルディスキ港に廃棄物を投棄しようとした疑いで捜査した。

 エストニア検察当局の声明によれば、同船の捜査におけるテストで”環境的に危険な有害化学物質”の痕跡が検出された。プロボ・コアラ号と呼ばれる同船は必要な捜査が終わるまで同港に係留されるであろうと同声明は述べている。

 同船の捜査は、コートジボワール政府の有害廃棄物スキャンダル捜査を指揮する判事とグリーンピースの要求で行われ、グリーンピースは27日(水)パルディスキ港でプロボコアラ号の退路を自身の船で塞いだ。

 エストニア当局は彼らの捜査はコートジボワールの捜査とは関係ないと述べた。オランダ当局もまた、7月に同船がアムステルダム港で廃棄物を降ろそうとした疑いで捜査している。

 有害廃棄物スキャンダルは、同タンカーが400トンの石油化学系廃棄物をコートジボワールの都市アビジャンに投棄した2週間後の9月初旬に初めて明らかにされた。
 ガソリン、水、及び洗浄ソーダの混合物からなる廃棄物が8月19日にアビジャンに陸揚げされ、人口密集地帯に散在する野積みのゴミ捨て場に投棄された。廃棄物からのガスにより、子ども4人を含む8人が死亡し、75,000人以上の人々が嘔吐、吐き気、及び鼻血を含む胃腸及び呼吸器系の障害で治療を必要とした。

 トラフィグラ社は廃棄物のほとんどはガソリン残渣と洗浄ソーダであったと主張しているが、同船の捜査でのテストによれば、卵の腐ったような臭いのする有毒ガスである硫化水素が含まれていた。

 この惨事に関連してトラフィグラ社の2人がコートジボワール当局によって逮捕された。同社は不法行為を認めておらず、港湾当局に届けており、廃棄物を合法的に処分することをコートジボワールの会社と法的に契約したと主張している。コートジボワールの会社の所有者2人もまた、6人の通関業務担当官とともに、逮捕された。

 この有害廃棄物事件でコートジボワールの首相は32人の閣僚の辞職に追い込まれ、市内は政府の同事件の対処に抗議する人々により閉鎖された。怒りの群集はアビジャン港湾ディレクターの自宅を放火し、同国の交通省を襲撃した。フランスの会社が約10日前から投棄廃棄物の回収作業を開始し、廃棄物はフランスで処分するために来月フランスに送られることになっている。

 コートジボワールの要求により国連環境計画(UNEP)はまた、有害廃棄物が不法に輸出されていたかも知れないとする報告書を調査中である。

 バーゼル条約として知られる1989年の国際有害廃棄物条約の下に、有害廃棄物を輸出する国は輸入国から事前に、廃棄物の内容とあて先の詳細を記す許可書とともに、書面による許可を得なくてはならない。

 もしその廃棄物が不法に輸出されていたなら、輸出者はその廃棄物を回収し、損害補償と浄化作業に要した費用を支払う義務がある。

 しかし、同条約は南極以外の場所には廃棄物を輸出することを禁じておらず、同条約に加盟するいくつかの団体はこの条約は十分ではないとすぐに確信した。1995年、先進国から先進国以外の国に廃棄物を輸出することを禁じる同条約の修正案が確立された。この禁止令は、たとえリサイクリング用であっても、有害廃棄物の輸出を禁止する。

 この修正案は、欧州連合では実施されているが、世界的には発効されていない。アメリカ、カナダ、オーストラリアのような富める国を含んで、この禁止令に反対する多くの国がこの条約に批准していない(訳注:日本も批准していない)。インド、パキスタン、バングラディシュ、フィリピン、そしてコートジボワールもまたこの禁止令を承認していない。

 環境擁護推進者らは、アビジャンの出来事は、バーゼル条約は第3世界での廃棄物の投棄を食い止めることができなかった悲しむべき出来事として記憶に残るものであると述べている。

 今度こそ、必要性が高まるこの禁止令を国際法として発効させることに同意すべき時である”とバーゼル・アクション・ネットワーク(BAN)の有害廃棄物専門家ジム・パケットは述べた。”今年の11月に初めてアフリカで開催されるバーゼル会議において、禁止令の実現を阻むための言い訳はできない。”

 BANはまた、オランダ政府に同条約に対する責任を受け入れるよう要求した。有害廃棄物の移動を監視するジム・パケットは、オランダ当局が誤ってトラフィグラ社が疑わしい廃棄物をプロボ・コアラ号に積み込むことを許可し、他の目的地へ出港させ、最終的にアビジャンに輸出したと述べた。

 ”アフリカで起きたこの悲劇は、もしオランダが職務を全うし、トラフィグラ社の犯罪的意図を早くに止めさせていれば、防ぐことができたということは事実である”とパケットは述べた。”幸いなことにトラフィグラ社はオランダの会社であり、オランダ政府がこのスキャンダルに関与した関係団体の役割を明らかにしつつ、断固とした法的措置を通じてトラフィグラ社を裁判にかけることが望まれる。”


訳注:関連情報

BAN 有害廃棄物ニュース 2006年9月15日 コートジボワールの有害廃棄物投棄の謎は深まる 硫化水素が原因か?(当研究会訳)

BAN 有害廃棄物ニュース 2006年9月8日 プレスリリース 世界各地で有害廃棄物の不法投棄 国際法の早急な執行が求められる(当研究会訳)



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