BAN 有害廃棄物ニュース 2006年9月8日 プレスリリース
世界各地で有害廃棄物の不法投棄
国際法の早急な執行が求められる


情報源:Toxic Trade News / 8 September 2006
Press Release
Global Outbreak of Toxic Waste Dumping Demands Immediate Enforcement of International Law
http://www.ban.org/ban_news/2006/060908_global_outbreak.html

訳:安間 武 (化学物質問題市民研究会)
http://www.ne.jp/asahi/kagaku/pico/
掲載日:2006年9月14日
このページへのリンク:
http://www.ne.jp/asahi/kagaku/pico/basel/BAN/06_09_08_toxic_waste_dumping.html


 【2006年9月8日シアトル】 世界の有害廃棄物取引を監視するバーゼル・アクション・ネットワーク(BAN)は本日、有害廃棄物の国際的取引による人権侵害と環境汚染を管理し禁止するために1990年代に制定された国際法の速やかな実施と執行を要求した。
 BANによれば、西アフリカのコートジボワール(象牙海岸)での最近の廃棄物不法投棄事件で現在までに3人が死亡し1500人が入院し、この事件のために2日前にアビジャン(コートジボワールの最大都市、旧首都)の内閣が総辞職したが、このことは有害廃棄物貿易の蔓延の復活を警告する事件のひとつの事例である。(訳注1

 今月には残渣油を積んだ船が不法にフィリピンに輸出され、アジアやアフリカの港は裕福な先進国からの古いコンピュータ、モニター、携帯電話、その他古くなった電子機器のような有害な電子廃棄物を積んだ船で日常的に溢れている。これらの電子廃棄物の多くは作業者や環境を危険にさらす原始的なリサイクル作業のためにこれらの諸国に廃棄又は送られているだけである。

 同じ様に廃船が、インド、パキスタン、及びバングラディシュなど南アジアでの劣悪で汚れたリサイクル作業のために輸出されている。先週、インド政府によって発表された最近の調査は、インドの船舶解体現場では労働者6人に1人が船の構造物中に含まれる有害なアスベストの吸入が原因で石綿症に罹っていることを明らかにした。

 ”これは前から起きていることである”−と17年間、有害廃棄物取引を監視しているバーゼル・アクション・ネットワークのジム・パケットは述べた。”このことは1988年(訳注:バーゼル条約が採択された1989年の前年の意味)の再来のように見えるが、実際には、現在はその当時より有害廃棄物による死亡と疾病はもっと悪化していることを示す証拠がたくさんある。皮肉なことに、現在はそのような地球規模の不法投棄を管理し禁止する国際的なルールがあるのに、これらの法のきちんとした実施と執行が十分ではない。”

 バーゼル条約は1989年に採択されたが、それは主にアフリカでの不法投棄事件や特に悪名高い1987年のナイジェリアでのココ海岸不法投棄の企てが引き金となった。しかし、そのような輸出の管理を求める最初のバーゼル条約は、大きな利益を生み従って汚職の温床となる有害廃棄物取引を管理するためにはあまりにも弱すぎると多くの諸国によりみなされた。
 そのために、1995年に加盟国/機関はバーゼル禁止令(Basel Ban Amendment)−OECD/EU諸国から世界の他の国への有害廃棄物の全面禁止−の決議が採択された(訳注2)。

 しかし、このバーゼル禁止令はEUによって実施されているが、世界的には未だに正式に発効されておらず、皮肉なことに現在、自国の労働者や環境の健康が有害廃棄物によって深刻な影響を受けている諸国の多くが批准していない。それらの諸国には、インド、パキスタン、バングラディシュ、フィリピン、そしてコートジボワールが含まれる。アメリカ、カナダ、オーストラリア、韓国のようないくつかの諸国は、はっきりと世界禁止に反対している(訳注:日本政府も反対している。)。人口当たり最も多くの有害廃棄物を生成しているアメリカが最悪なのは、バーゼル禁止令だけでなく、最初のバーゼル条約の批准すらしていないということである。

 さらに、海運業界や携帯電話産業のような産業側は近年、”修理のための輸出であると称して”有害物質を含む古い船や有害電子機器の適用免除を主張してバーゼル条約の抜け道を考え出し、同条約の土台を損ねようと試みてきた。
 産業側は、非常にしばしば、環境管理費を自国で負担せずに外部化ようとしている。実際、廃棄物取引の経済的な推進力はかつてよりもはるかに大きくなっている。先進諸国では有害廃棄物の処理費用は上昇しているので、貧しい国々はかつてないほど廃棄物取引を必死になって求め、その結果、裕福な国はこの問題から逃れることができ、利益が上がり、ますます裕福にる。

 ”残念なことに、利益のために貧しい人々を害することが容易なら、不道徳な業者やビジネスはそうするであろう”−とジム・パケットは述べた。”バーゼル条約とバーゼル禁止令が制定されたのは、先進国からの廃棄物が開発途上国に押し付けられることを防ぐためである。今は、ど全ての国々がこれらのルールを執行し、この環境的不正義をこれを最後に止めべき時である。”

 詳細についての連絡
 Jim Puckett, Basel Action Network, +1 (206) 652.5555 (office), +1 (206) 354-0391 (cell)
 Sarah Westervelt, Basel Action Network, +1 (206) 652.5555 (office)


訳注1
BBC News - 7 September 2006 / Ivorian cabinet quits over waste
(BBC ニュース 2006年9月7日/コートジボアールの国際的な廃棄物不法投棄による災害−多数の被害者 内閣は総辞職)

TerraDaily / Agence France-Presse. 12 September 2006 / Chronology of events in Ivory Coast's toxic waste scandal
(テラデイリー/エージェンス・フランス2006年9月7日/象牙海岸有害廃棄物事件の経緯)
  • 8月19日:アビジャンの17ヶ所で有毒スラッジが投棄された。
  • 9月4日:2週間前に投棄された有害化学物質廃棄物からのガスを吸入して人々が病気になり何人かは重症。政府は有害廃棄物がアビジャンの数ヶ所で投棄されたことを認めた。
  • 9月5日:少女二人が呼吸器系障害で死亡。
  • 9月6日:事件に対する職務怠慢を理由に内閣総辞職。死者3人、被害者1,500人に拡大。
    プロボ・コアラ所有のギリシャの会社は、同船がオランダ・ベースの石油取引会社トラフィグラにチャーターされ、アビジャンで有害廃棄物を投棄したことを認めたが、両社はこの投棄をコートジボアールの会社に委託したので合法であるとして責任を否定した。
    グリーンピースは有機物質と非常に有毒成分を含む残渣油400トンが400万人が住む同市周辺10か所で投棄されたと述べた。
    アビジャンの港湾当局は、約531トンの有毒化学物質を投棄することを許可したとて運輸省を非難した。
  • 9月8日:フランスの専門家らが問題解決のために現地着。
  • 9月9日:被害者数5,000人に拡大。
  • 9月11日:死者5人、被害者5,000人に拡大。
  • 9月12日:死者6人、被害者約9,000人に拡大。
  • 7人がこの事件で逮捕、国連が支援のために専門家を派遣。
  • その後、死者は増大して10人
訳注2
バーゼル禁止令 決議 II/12の解説(当研究会訳)
バーゼル禁止令 決議 III/1の解説(当研究会訳)



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