BAN プレスリリース 2015年12月17日
悪名高い中国の電子廃棄物の町
  ついに輸入のドアを閉める

監視NGOs グイユでの浄化の努力を称賛 しかし新たな行き先を警告

情報源:BAN Press Release, December 17, 2015
Seattle,Washington; Guiyu,Guangdong Province, China
Infamous Chinese e-Waste Town Finally Closes Doors to Imports
Watchdog Groups Applaud Clean-up Efforts at Guiyu, Warn of New Destinations
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訳:安間 武 (化学物質問題市民研究会)
http://www.ne.jp/asahi/kagaku/pico/
掲載日:2015年12月24日
このページへのリンク:
http://www.ne.jp/asahi/kagaku/pico/basel/BAN/151217_Guiyu_Finally_Closes_Doors_to_Imports.html


【2015年12月17日 ワシントン州シアトル;広東省グイユ】2001年に初めて中国のグイユに世界的な電子廃棄物投棄場所を発見した環境監視団体バーゼル・アクション・ネットワーク(BAN)は、広東自然保護協会とともに先週、現地を訪問し、中国政府が最終的に非公式な電子廃棄物リサイクルの操業に関して厳格な管理を行うために新たな工業団地に移動させ、また外国の電子廃棄物のグイユ地域への送り込みを禁止したことを確認した。

 本年12月1日現在、地域当局の命令により、全ての電子廃棄物に関する作業所は、15億元(2億3,300万ドル(約280億円))をかけて造られた大きな工業団地(グイユ循環経済産業パーク)に移動させられた。さらに、その工業団地に送られてくる全ての電子廃棄物は一か所の受け取り場に到着しなくてはならず、そこで外国の電子廃棄物の受け入れを止めるための審査が行われる。中国は長らく電子廃棄物の輸入を禁止してきたが、現在までグイユ地域では適切に実施されたことはなかった。

 14年前に初めてグイユでにおける違法な輸入と恐ろしい汚染を明らかにして以来、BAN と他団体は、地球規模の有害電子廃棄物貿易を終わらせるために、そしてグイユで見つけたような汚い非公式なリサイクルを終わらせるために、根気よくキャンペーンを実施してきた。BANはこの問題を国連のバーゼル条約に、中国政府とアメリカ政府に、そして政府が行動を起こさないので最終的にはヨーロッパと北アメリカの電子機器リサイクル産業に訴えた。

 ”今回のグイユでの措置は、10年以上前から約束されていたことであり、ついにそれを直接見るということは全く感慨深いことである”と、BAN 代表のジム・パケットは述べた。”我々は、浄化作業が始まり、多く人々の努力がグイユ周辺の生物と環境における現実の改善として実を結ぼうとしているとに安堵している。しかし、どのくらい時間がかかるのか、どのくらいダメージを受けているのか、そして将来の懸念を考えれば、祝い気分も半減する。廃棄物の源を絶たなければ、中国政府の強制執行により追い払われたグイユの廃棄物は、単純に新たな行き先を見つけるだけである”。

 グイユへの膨大な量の電子廃棄物の輸出と出稼ぎ労働者により実施される危険で極めて高い汚染をもたらす裏庭でのリサイクル作業を2001年に初めて記録したのはパケットのカメラであった。これらの発見は、2002年2月に報告書とビデオ・フィルム”Exporting Harm: The High-Tech Trashing of Asia (日本語版 DVD:危害の輸出:アジアで処分されるハイテクごみ)(訳注1)”の中で発表された。その時以来、BAN は定期的にグイユを訪れ、その様子を観察した。2008年にもパケットは、 CBS の 60 Minutes のスタッフとともに、テレビ番組”The Wasteland”を記録するために訪れたが、この番組はかつて制作された 60 Minutes の中で最も評価の高いものであった。2013年の彼の最後の訪問時にもやはり膨大な輸入廃棄物と汚染作業の増大が見られた。

 BAN はまた、分析のための土壌と水をグイユで初めて採取し、そこでの広範な汚染を明らかにした。今日、科学者らはさらに、汚い電子廃棄物リサイクルの子どもたちの健康を含む深刻な有害影響を断言している。最近の研究が、例えばグイユの子どもたちの血中鉛の大変なレベルを示している。最近の改善にもかかわらず、重金属は不滅なので、土壌と地下水は厳しい汚染状態が続くと予測される。

 中国の電子廃棄物活動家であり、広東自然保護協会の設立者で代表のライ・ユンは、最近のパケットの訪問に同行した。彼の新たな組織は環境教育に焦点を当てている。

 ”私は子どもたちに話しかけ、グイユの物語を聞かせ、環境がいったん汚染されると数世紀にわたり重金属や残留性化学物質により汚染され続けることを伝えている。グイユは、中国が現在取り組んでいる汚染との闘いは、最初の場所での汚染を防ぐことが最善であるということを教えている”。

 報告によれば、グイユの推定 5,000 の作業場の閉鎖は11月に本格的に開始された。先週、パケットとライ・ユンはグイユのリサイクル街を観察したが、すべての作業場は閉鎖されており、わずかな電子廃棄物の堆積が裏庭や脇道に放置されているだけであった。つい数か月前には数百人の女性が電子回路基板を加熱しながら座っていた狭い作業場の後ろにあった煙突も切り倒され、穴にはセメントが詰め込まれていた。大きな赤い横断幕が道路をわたって掲示され、工業団地に移らない人には高額の罰金が課せられ、電気は止められることを警告していた。

 彼らの工業団地への訪問は発表されていなかったにもかかわらず、パケットとライ・ユは公的訪問の待遇を受け、工業団地のディレクターと話をした。彼らは受け入れ場所で電子廃棄物の受付状態を検証し、工業団地内の新たな作業場のいくつかを訪問することを許可された。工業団地の創設は重要な第一歩であるように見えるが、活動家の彼らは、グイユで採用されていた基本的な有害技術は変わっていないことを確認した。排気ガスは排気フード通じて煙突に導かれ、放出前に集塵器を通るが、電子回路基板の手動での大量の加熱処理は以前のままである。

 また、現在の工業団地における電子廃棄物の量は最近グイユで観察された量ほど多くないということは注目に値する。このことは疑問を投げかける。”一体どこにそれらは行ったのか?”。 最後に、もっと大きな疑問がぼんやりと浮かんでくる。もしグイユがもはや電子廃棄物取引の大量の流れにとって許される行先ではないのなら、”先進国から輸入される廃棄物はどこに行き着くのか?

 ”我々は、有害廃棄物の輸入禁止をついに実施し、市民と環境を電子廃棄物の汚染から保護し始めた中国政府の行動を称賛する”と、パケットは述べた。”しかし、アメリカのような国が有害廃棄物の輸出を罰則なしに許す限り、コストの外部化と危害は新たな場所で起こり続けるであろうことを我々は恐れる。中国は今、彼らの側でこの不法な取引を管理するよう試みる責任を負っている。輸出国側も同じことをすべき時である”。

さらなる情報についての連絡先:
Jim Puckett, Executive Director of BaselAction Network
Phone:+1206-652-5555 e-Mail:jpuckett@ban.org
Lai Yun, Executive Director of the Society of Canton Nature Conservation
Phone:+85269505595 e-Mail:laiyun2000@gmail.com


訳注1:グイユにおける電子廃棄物リサイクルに関する報告


化学物質問題市民研究会
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