BAN プレスリリース 2006年2月15日
クレマンソー号 国際法と環境正義の勝利
”幽霊退役空母” どの国も廃船をアジアに棄ててはならない


情報源:BAN Press Release / 15 February 2006
Clemenceau: A Victory for the International Law and Environmental Justice
"Ghost Fleet" Ships of any Nation Must Not be Dumped in Asia
http://www.ban.org/ban_news/060215_victory.html

訳:安間 武 (化学物質問題市民研究会
掲載日:2006年2月16日
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http://www.ne.jp/asahi/kagaku/pico/basel/BAN/06_02_15_Clemenceau.html



 【2006年2月15日ワシントン州シアトル】 有害物質取引を監視する世界的環境団体バーゼル・アクション・ネットワーク(BAN)は、フランス大統領ジャック・シラクが、数百トンの有害なアスベストや禁止されている化学物質PCB類を含んだ退役空母クレマンソー号を解体のためにインドに輸出することを中止すると発表したことを大いに歓迎する。シラク大統領の決定は、世界中の人権団体と環境団体を結ぶ大規模なコンピュータ世代の連携キャンペーンの成果であり、フランス高等行政法廷が最終的に活動家らに同意し、クレマンソー号が実際にバーゼル条約の対象となる有害廃棄物であるとして、インド西部のグジャラート州に輸出することは中止すべきであると裁定した時に、最高潮に達した。

 2003年に、アメリカがPCB類を含んだ有害な退役戦艦を輸出することを中止するよう求めて訴訟を起こしたBANは、有害廃棄物の国境を越える移動及びその処分の規制に関するバーゼル条約に基づき、同船を回収するよう主張した。最近、世界的な海運業界やアメリカ、フランス、インドなどの諸国は、有害廃棄物の開発途上国への輸出に関するバーゼル条約による禁止と管理を船舶に適用することについて、同条約がそうべきと裁定しているにもかかわらず、否定してきた。アメリカは、大量の有害物質を積んだままの数百隻の退役”幽霊戦艦”を保有しており、事前に有害物質の除去、或いは国内での解体を行わずに、スクラップのためにどこかに輸出することを求めている。

 ”フランスは最後には、地球市民としての自身の国際的な責務の現実に直面して、引きずられ、蹴飛ばされ、そして悲鳴を上げさせられたが、世界の他の国々に対するメッセージは非常に明確である−自分の有害廃棄物は自分で責任を持て!”−とBANのジム・パケットは述べた。”167カ国によって合意されたバーゼル条約は、廃船は開発途上国に解体のために輸出される場合には、まず事前に輸出国で汚染除去がなされなくてはならないことを求めている。超大国と海運業界が、あたかも法と環境正義の全ての原則よりも上位にあるように振舞うことは最早許されない”−と彼は述べた。

 数千トンの燃料残渣、アスベスト、PCB類、その他の有害物質を含んだ数千隻の軍用及び商用の船舶が数年後の解体を待っている。近年、解体された船舶がバングラディシュ、パキスタン、及びインドのような南アジア諸国の海岸に廃棄されているが、そこでは貧しい労働者らが悲惨な労働条件下で働き、がんを引き起こす化学物質に曝露している。一方、BANによれば、世界の海運業界は適切にこの問題に対応しておらず、むしろその責任は解体施設を改善すべき開発途上国にあると主張している。これらの国々は労働者と環境の適切な保護を実施せず、海運業界は利益を最大限得るために安くて汚い選択を享受するので、廃船の輸出は開発途上国に移行しているとBANは指摘している。

 BANは、昨年、国際海事機関(IMO)で立ち上げられた船舶解体に関する新たな条約を作るための取組が、国際海運業界のたっての頼みでバーゼル条約よりもはるかに生ぬるい規制になるようにされたと非難した。

”汚染者が支払わず、その代わりに実際のコストを地球上で最もひどい状況の最も貧しい人々に押し付けるというのは古典的なやり方である。これらの労働者たちは、やがて自らの命で支払うことを余儀なくされる”−とパケットは述べた。”バーゼル条約はこの不道徳なやり方に対しNOと言う。国際海事機関(IMO)は大国と産業界が私服を肥やすためにこの画期的な原則をスクラップとすることを許してはならない。”


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