BAN 有害廃棄物ニュース 2006年1月6日
退役フランス航空母艦クレマンソー号
アスベストでインドに死をもたらす恐れ


情報源:BAN Toxic Trade News / 6 January 2006
French ship brings fear of death
by Meghdoot Sharon, CNN-IBN (India)
http://www.ban.org/ban_news/060106_brings_fear.html

訳:安間 武 (化学物質問題市民研究会
掲載日:2006年1月14日
このページへのリンク:
http://www.ne.jp/asahi/kagaku/pico/basel/BAN/06_01_06_Clemenceau.html



【2006年1月6日 グジャラート/インド】最後の航海を終た船を解体するために40,000人以上の人々が働くインド、グジャラート州のアラン船舶解体場で、警報ベルが鳴っている。
 有毒廃棄物で汚染されたフランスの航空母艦クレマンソー号は世界最大の船舶解体場に向かっている。この船はまた250トン以上のアスベストで汚染されている。

 インドの環境大臣はクレマンソー号は引き返すことはないと述べており、この件は既に最高裁の有害廃棄物に関する委員会に付託されている。クレマンソー号の運命を決定するためにムンバイで会議を開いている同委員会は、この船がインド水域に入ることは望ましくないと感じている。この船を解体することをフランス政府と契約した会社の担当者もまた最高裁委員会に出席の予定である。

 今まで、この船の有毒物質は除去されていると主張していたフランス政府は、この船はアスベストと有毒廃棄物を含んでいることを最終的に認めた。

 グリーンピース・インドやアスベスト禁止フォーラムからの人々を含む環境活動家らは、インドは有害廃棄物に関する法規制が緩いので絶好の廃棄物捨て場であるとみなされていると抗議している。
 ”この船は有毒物質の汚染除去が適切になされておらず、我々はこの船をインドに来させてはならない”−とグリンピースのキャンペイナー、ラマパティ・クマールは述べている。
 抗議の理由のひとつは、この船の汚染除去の仕事を請け負ったフランスの会社が、この船は有毒廃棄物で汚染されていることを確認したことである。

 この船の汚染除去をすることになっていたフランスの会社、テクノピュア社はわずか70トンのアスベストを除去しただけである。
 テクノピュア社の責任者らは、この船の汚染除去の責務を共有することになっていたインドの会社が約束を守らないのなら、このプロジェクトから手を引くと述べている。
 ”70トンのアスベストを除去したが、この船にはまだ500トン以上のアスベストがある”−とテクノピュア社のプロジェクトマネージャー、エリック・ボードンは述べた。
 この件は、クレマンソー号を呼び戻すためにフランス最高裁にも告訴されている。
 ちなみに、アスベストの使用と製造は、フランスを含むヨーロッパのいくつかの国々で禁止されている。

 クレマンソー号が来るということで解体場では通常の労働生活が混乱に陥っているが、それは直ぐにこの解体場に廃棄されるであろう廃棄物の影響について人々が懸念しているからである。
アーマダバード(訳注:インド西部グジャラート州都) に拠点を持つ腫瘍専門医学者チラ・デサリ博士は、アスベストは発がん性物質であり、長期に曝露するとアスベスト肺になるので、人々の不安と怒りはもっともである−と述べている。
 ”アスベスト肺は、肺の容量を小さくする。そのような疾病で直ぐには死なないが、時には最も痛ましい中皮腫と呼ばれる肺がんを引き起こす”−と同博士は述べている。”

 CNN-IBNの記者は、この化学物質の粒子を吸い込んで引き起こされるアスベスト肺に罹ったために、人生が最悪なものに変わってしまった人々に会った。

 66歳のマンガバイ・パテルはアスベスト肺と戦っており、呼吸困難に陥った後、個人病院に収容されている。
 トレント電力AEC社の元労働者であるパテルは、国立労働衛生研究所(NIOH)でアスベスト肺であると診断されている。
 ”トレント電力AEC社で、我々は大量のアスベストを断熱材として配管に施工してきた。我々は作業中に防護具を与えられず、その結果は今の私の身体が示す通りである”−と彼は述べている。
 マンガバイのように、アスベストの影響を受けた人が他にもたくさんいるが、彼らのほとんどはAEC発電所、又はディグビジャイ・セメント産業で働いていた人々である。

 これらのプラントは、アーマダバードのサバルマティ地域にある。この病気は非常に過酷であり、病人は数メートル歩いただけで休まなくてはならない。息が苦しくなるのである。
 元AEC電力の労働者ナラヤンプラサド・マーラは、”私はAEC電力で25年間働いたが、私が会社をやめるかなり前からアスベスト肺に罹っていたと診断された”−と述べている。
 ”しかし、病状はだんだん悪くなり、最近は息をするのも困難になってきた。今では息が苦しくて数歩も歩けなくなった”−と彼は付け加えた。

 他にもつらい話がある。アスベスト肺患者の未亡人、カランジは、”夫はセメント会社で働いていたが2年前に死亡した。私には小さな男の子と女の子がいるが、私達は食べていくことができない。”


クレマンソー号についてはバーゼル・アクション・ネットワーク(BAN) の下記報告書が詳しく述べている。
France's Export of Decommissioned Aircraft Carrier Clemenceau in Violation of International, and National Law / Prepared by Basel Action Network, 12 January 2006


化学物質問題市民研究会
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