第3回定期総会特集号
弁護士 藤田 温久
先日、私は、和牛商法 (利息・利益を付して和牛売却後に返還するとして和牛を購入・肥育する資金を預託させる悪徳商法)の被害者Hから依頼を受け、業者Tに賠償請求を行いました。ところが、業者Tは破産申立をして債務を免れようとしました。悪質な計画倒産と推測されます。
本件では、他の和牛商法事件と異なり、業者Tが購入したと称する牛M号が特定されていたため、インターネットによりM号の肥育業者の連絡先を調べ、肥育業者が業者Tを知らないことをつきとめていましたので、業者Tを詐欺罪で警視庁に告訴しました。
ところが、警視庁の担当官は、他に重大消費者被害事件を3件も抱えておりどうしても捜査に着手できないとして告訴を取り下げて欲しいと言うばかりでした。私が、告訴受理を拒否すると問題を大きくするしかないと申し向けても「上から言われた方が捜査できるかもしれない」と言う有様でした。そこで、やむなく、東京地検に告訴し直したところ、東京地検の担当官も「忙しくて捜査できない。警視庁へ告訴してくれ。」と言うので「たらい回しにするのか。告訴権の否定だ」と抗議すると「必ず捜査するように一筆書きます。」と言うので、再度警視庁に告訴し直しました。すると、最初の警視庁の担当官から「結局、私が捜査することになりました。」との電話があったのです。その後、急速に捜査は進み、被害者Hは救済されました。
しかし、悪徳商法の加害者・被害者を捜査してもらうのに、こんなに苦労しなければならないのはなぜでしょうか。警察は、こんな明白な詐欺容疑者に対する告訴さえ受理しないようにしているのに、「犯罪検挙率」が急速に低下しているのはなぜでしょうか。
消費者被害など国民に密着した事件を担当する部門には予算と人員を回さず、相変わらず警備公安に偏重した警察の体制に改革のメスが入っていない結果ではないでしょうか。
相変わらず、警察は「不祥事」と「犯罪」の汚濁にまみれ続けているにも拘わらず、国民へ目を向けた改革に手をつけず、逆に警察の権限を拡大する各種法律の成立に血道を上げています。
私たち警察見張番の役割は、益々大きいと言わねばならないと思います。善意の警察官に報いるためにも、今年度も、頑張りましょう。
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