[作曲・出版の経過] [「ラッター版」とネクトゥー/ドラージュ版との違い] [第3稿の校訂]
この曲を大きな編成で演奏することに対する違和感は、長い間演奏者からも聴衆からも投げかけられていました。しかし「第2稿」の自筆譜は失われてしまったため、実際に演奏することは不可能でした。ところが、最近になって、残された資料をもとにオリジナルの形を再現しようという試みがなされています。
◇ラッター版
イギリスの作曲者で指揮者のジョン・ラッターという人が、1984年に発表しました。同じ年にアメリカのヒンショー・ミュージックとイギリスのオクスフォード・ユニヴァーシティ・プレスから出版すると同時に、彼自身の指揮でイギリスのレーベル、コニファーにレコーディングを行っています。ちなみに、彼自身も素晴らしい「レクイエム」を作っています。
ラッター版の表紙
◇ネクトゥー・ドラージュ版
フォーレ研究の第一人者として世界的に著名なジャン=ミシェル・ネクトゥーと、指揮者のロジェ・ドラージュが共同で復元しました。これは、1988年のレクイエム初演100周年記念の演奏会で披露され、1994年には奇しくもかつて「第3稿」を出版したのと同じアメル社から出版されました。
ネクトゥー・ドラージュ版の表紙
※校訂者の表記について
CDの国内盤などには、「ラッター」については「ラター」、「ドラージュ」については「ドゥラージュ」等の表記がなされているものもありますが、このトーク内ではそれらは採用しておりません。特に「ドゥラージュ」については、その表記が使われているCDのクォリティの低さを倣うことがないよう、意識して「ドラージュ」にこだわってみました。