TopPage  Back


(03/7/14作成)
(16/11/25追記)


 フォーレのレクイエムの「ラッター版」で知られるイギリスの作曲家/指揮者のジョン・ラッター(1945-)は、幅広い分野に於いて、数多くの合唱作品を発表しています。宗教曲の代表作といえるのが、1985年に作られたこの「レクイエム」です。まるでフォーレの作品のように、数年前に亡くなった父親のために個人的な動機(委嘱されたのではなくという意味)で書かれた曲です。それにもかかわらず、出版されるやいなや各地で演奏の機会が持たれるという、大ヒット曲となってしまいました。もちろん、日本の合唱団でも幾度となく取り上げられていますし、CDも、この種のものにしては数多くリリースされています。20世紀後半に作られたものの中で、最良の「レクイエム」であることは間違いないでしょう。テキストの構成は、フォーレやデュリュフレが取った形を一部踏襲し、さらに英語による「詩編」などを盛り込むというユニークなものになっています。
 編成は、多くの打楽器を含む室内オーケストラの伴奏に、混声合唱とソプラノソロが加わります。後に、オーケストラパートを、小編成のアンサンブル(オルガンと6つの楽器)に書き換えた版も作られました。
1.Requiem aeternam
一瞬無調っぽい導入がありますが、基本的には懐かしい響き。メインテーマの、夢見るようなキャッチーなメロディーには、誰しも惹きつけられることでしょう。
2.Out of the deep
詩編130番(深き淵より)がテキスト。チェロのオブリガートで始まり、スピリチュアルズ(黒人霊歌)のテイストに支配されています。
3.Pie Jesu
ソプラノによる、心にしみるソロが聴きものです。この楽章だけ単独に「癒し系」ピースとして演奏されることがよくあります。明らかにフォーレ、デュリュフレの流れの曲。
4.Sanctus
グロッケンなどのにぎやかな打楽器による導入部。これもデュリュフレの曲と似た雰囲気を持っていて、派手に盛り上がります。
5.Agnus Dei
やや暗めの雰囲気をたたえた楽章。英語のテキスト(埋葬のサーヴィス)がア・カペラで挿入されます。後半のフルートと合唱の応答は聴きもの。
6.The Lord is my shepherd
詩編23番(主は我が羊飼い)がテキスト。オーボエのオブリガートが美しいのどかな楽章です。
7.Lux aeterna
前半はソプラノソロによって「埋葬のサーヴィス」が歌われます。静謐な「Lux aeterna」が盛り上がったかと思うと、1曲目のテーマが感動的に再現されます。

■入手可能な全てのCD


上段ブックレット:英独版

下段ブックレット:英語版


ジョン・ラッター/
ケンブリッジ・シンガーズ
シティ・オブ・ロンドン・シンフォニア
(COLLEGIUM/Rec:1986)
作曲者自身による演奏。
「癒し」的な側面が強調されている。
ティモシー・シーリッグ/
タートル・クリーク・コラール
ダラス女声合唱団
(REFERENCE REC./Rec:July 1993)
※アンサンブル版
300人という大合唱による、
ちょっと変わったアプローチ。
ソロも朗々たるもの。
スティーヴン・レイトン/
ポリフォニー
ボーンマス・シンフォニエッタ
(HYPERION/Rec:January 1997)
完璧な合唱。おそらく現時点で
最高の演奏といえる。
ソプラノ・ソロがリリカル過ぎるか。
スティーヴン・クロウベリー/
ケンブリッジ・キングス・カレッジ聖歌隊
シティ・オブ・ロンドン・シンフォニア
(EMI/Rec:July 1997)
少年による女声パートは
やや不安定だが、
この曲の「厳しい」一面が聴ける。
ティモシー・ブラウン/
ケンブリッジ・クレア・カレッジ聖歌隊
(NAXOS/Rec:July 2002)
※アンサンブル版
パートの線は細いが、
全体のハーモニーは美しい。
シンプルでコンパクトな演奏。
ジョン・ラッター/
ケンブリッジ・シンガーズ
アウロラ・オーケストラ
(COLLEGIUM:July 2016)
作曲家自身の指揮による
30年ぶりの再録音。
録音も演奏も格段のリニューアル。
ソプラノ・ソロが素晴らしい。


 TopPage  Back

Enquete