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〔095〕 書き換えられた原稿 「50年ぶり」の大雪だけが大混乱の原因か
【2008/02/15】

 日本ではそれほど詳細に報道されてこなかった、中国中西部を中心とする春節のための帰省客の足止め騒ぎ。

 アメリカCNNは記者が頻繁に広東省広州駅前でレポートし、実際に丸1日、内陸部に向かう超満員の汽車に乗り込むなどして詳しく報道してきた。一時期、駅前の帰省客は80万人に達したと伝えられ、圧死者も出た。

 中国国内、さらに日本や欧米での報道は、交通機関が大幅に乱れた原因を 「50年ぶりの大雪」と伝えてきた。だが、この報道内容には中国政府の圧力があったと証言する者がいる。上海で最大の発行部数となる現地紙記者だ。

 大雪は当初、取材した記者が「十数年ぶり」と書き出稿された。社上層部もそれを認めた。

 「ところが、ある時期から『十数年ぶり』が『50年ぶり』と一方的に書き換えられ、『暴力的雪』といった表現まで付け加えられるようになった。この間の経緯について、我々に詳細な説明はいっさいない」

 正当な理由の説明がなく、原稿が一方的に改められる場合、国家新聞出版総署や共産党中央宣伝部など、中国国内で新聞や出版物、テレビなどの監視を行う機関が関わってくるのが通例とされる。

 「50年ぶりの大雪という自然災害を直接的な原因としなければ、政府や党の責任が問われると判断したのだろう」と、記者仲間の間では話された。

 一年に一度、中国人にとっては家族とともに一緒に過ごすもっとも重要な春節。南部からの帰省客の圧倒的多数は、貴州省や四川省といった内陸部から広東省など豊かな沿海部に働きに出てきた民工だ。それだけに、彼らはなんとしても帰省しようとして、駅前で待ち続けた。

 中国政府も、中国人の価値観を知るだけに必死だった。温家宝首相は広州駅に駆け付けた。胡錦濤国家主席は対応を協議する緊急会合を招集、さらに山西省の大同炭鉱を視察するなどして、関係機関に一致団結して早急に対応するよう指示を出す政府や党の姿勢を見せつけた。

 しかし、中国メディア関係者には、「いつものように、必死さは自己保身のためとしか見えなかった」

 事実、上からの号令がでたものの、現場では混乱を極めた。広州駅など主な駅では乗車券の販売が止められ、すでに切符を購入して者にも帰省断念を要求した。

 東莞市で電子部品の組立を行っている湖南省出身の女子工員、丁さんは工場を通して切符を購入していた。ところが「工場長から帰省を諦めるように」と告げられ、里帰りが出来なかった。

 さらに、上海の浦東飛行場では国際線の搭乗客にも影響が出た。欠航となったジャンボ機の搭乗客に対し、航空会社が飛行場とホテルの間に乗客を乗せるために用意したバスはわずかに1台。しかも、乗客を集めた時刻から3時間ほど遅れて、バスが到着するというありさま。この間、説明はほとんどなかった。

 「今回の混乱は、中国の緊急時の対応が不完全なことを露呈させた」と、交通部門の職員は認めていたという。しかし、こうした声を記事にすることはできなかったと、先の記者は言う。

 その一方で、マスメディアでは政府や党の対応ぶりが称えられ、その結果インターネットの掲示板に、報道内容を真に受けた人物らが「温家宝総理、人民的好総理」「人民子弟兵為人民」「感動!」といった言葉をいくつも寄せた。さらに、少数民族が援助金の寄付を行ったとする美談までも持ち出されてきた。

 「『因天気原因、旅客列車停運』といった、公共交通機関混乱の原因を天候とする張り紙を貼って、事態の収拾を図ろうとやっきになった政府や党だが、現場を取材して判明したのは今回の混乱は明らかに人災の可能性が高い」と、記者は伝えてきた。

 いったん問題が生じると、たちまちパニック状態に陥る。そして、自分のメンツを守るため、責任を他人になすりつけ、解決策を放棄してしまう。その結果、混乱をさらに深めてしまうというのが、中国人の最大の欠陥の一つだ。政府や党も例外ではない。

 エネルギー供給、農作物への影響などにより、今後、社会生活や経済活動にも深刻な影響を及ぼすことが予測される。

「国家の指導者が大衆の前に表れ、やさしげな言葉をかけても、真の解決には結びつかない。すべての原因や悲惨な状態を悪天候だけに押しつけ、問題の先送りをしただけで、結局、何の進展もみられなかった」と、上海の記者は政府や党の無策ぶりを批判した。

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