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〔093〕 語り始められた中国死刑囚の実像 死刑判決の多さに根強い反発
【2007/10/26】

 「死刑大国」と批判をあびる中国、アムネスティ・インターナショナルは2006年だけで1010人が処刑されたと推測する。だが、未確認ながら、実数はこの数倍にのぼるという報告もある。

 人治国家から脱却できないだけに、「収」か「放」といったその時々の政治、社会情勢に影響され、政治的意図によって死刑判決の数がかなり左右されている。第2次天安門事件後の締め付けにより、1990年代には年間1万人を超える処刑が行われ、刑務所では死刑囚を刑執行まで拘束する戒具が不足した。死刑執行前に喉をかき切られ声を出させないようにしたといった悲惨な実情が受刑者からもたらされたこともある。

 死刑執行数が明確でないのは、中国政府が国家機密として公式統計を発表していないためだ。だが、死刑囚や刑務所に関する情報となると意外にもかなり明らかにされている。

 1997年には劉青氏の『在中国的一個静寂角落(中国のさみしい片隅において)』(邦題『チャイナ・プリズン  中国獄中見聞録』)で、刑務所、受刑者、死刑囚の実態が赤裸々に描かれた。

 劉氏は1979年に『探索』の主宰者、魏京生氏の救援活動や民主の壁の活動に参加しという理由だけで投獄され、11年間、獄中生活を強いられた。

 当時、中国の死刑執行は見せしめの公開処刑とし、後ろ手に縛られたまま銃殺されることが多かった。距離を置かずに銃弾を発射するため、死刑囚の頭部や顔は砕け散る。そんな無惨な写真が現地の新聞や雑誌のほか、インターネットでもしばしば公開されてきた。

 しかし外国からの批判を受け、1980年代半ばに入ってから公開処刑の集会を禁止した。だが、90年代に入ると公開処刑が復活し、外国人には目撃されない内陸部などでこっそり行われいると明かす上海の記者がいた。

 しかし数年前から、死刑執行方法が薬物注射に変更されはじめ、「死刑執行車」と呼ばれる車内で行われるようになった。小型バスのような死刑執行車で最初の処刑が行われたのは2004年2月、貴州省遵義市であったと、中国共産党の機関紙『人民日報』のインターネット版は伝えている。

 地元紙『貴州都市報』の記事を引用し、特別に調合された薬物により死刑囚の呼吸器と心臓を衰弱させるため、「減少罪犯的痛苦」(苦痛は少なくなる)。執行はわずか2分ほどで終了するという。しかも、執行車の価格は約60万元(900万円ほど)とも記している。

 他の新聞では、執行用ベッドや監視装置など車内の様子を写した写真、車内に死刑囚が乗り込むときの様子さえ公開されている。

 そして最近では、死刑執行直前の死刑囚の心情をまとめた本が中国で出版された。歓鏡聴氏の『我為死囚写遺書』だ。直訳すれば、「死刑囚のための遺書代筆」となる。

 その歓氏に連絡を取ると、汚職で逮捕されたが模範囚と認められ、小説好きということで死刑囚の遺言を聞き取る任務を与えられた語った。1996年秋から1年半、四川省重慶で服役し、この間に聞き取りした死刑囚の数は130人におよんだ。4日に一人の割合で刑が執行されたことになる。

 麻薬の売買や強盗殺人などで死刑判決が下された受刑者が登場し、刑務所の管理制度や内部の様子、刑執行直前の死刑囚の心情などが書き記されている。

 歓氏は「中国各紙からさまざま取材を受けてきた」と言い、「反響の大きさに驚いている」と付け加えた。この時、「刑執行前夜、トランプで遊んでいた死刑囚が、相手の死刑囚がインチキをしたといって怒り喧嘩になった」といった、本には書かれていないエピソードも語った。

 「中国では非常に珍しいケースで、この本への反響の大きさには、死刑判決の多さに対する反発がある」と現地紙記者は指摘し、「死刑執行車の導入は死刑判決の数をより増加させる」と懸念する。

 こうした声に対し、2007年に死刑執行の「承認件」を最高人民法院(最高裁)だけに与えて、死刑判決の適用を厳格したことで死刑判決は減少したと、『人民日報』は反論する。しかしその根拠となるデータはやはり公表されていない。

 人権に対する改善は遅々として進まず、弁護士への弾圧さえ強まり、形だけの裁判は依然として多いという批判は消えない。中国では、贈収賄、脱税、横領といった経済犯でさえ死刑が適用されている。死刑反対を唱える中国の法律学者の中には、少なくとも経済犯罪への死刑適用は避けるべきだと提言しているが、訴えが取り上げられたことはない。

 歓氏同様に、1年ほど服役したことのある男性は、「死刑判決がでるとすぐに処刑されるが、この中には無実だと主張し続けながら刑を執行された人物が少なからずいて、房内でも話題になることが多かった」と言い、「中国では一方的な裁判で泣き寝入りする人が少なくない」と述べている。

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