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〔092〕 見かけだおしの住宅が増加 住民の不満がつのる中国の住宅事情
【2007/09/02】

 生鮮食品や生活用品などの中国産に有害物質が含まれていることが世界的規模で発覚したことについて、ようやく知られるようになったかというのが、中国人や中国に関わる人々の反応だ。過去、日本では大きな問題が発生しなかったことから、中国製品の内実についてほとんど報道されてこなかった。

 しかし中国では、中国産粉ミルクを飲んだ乳幼児の失明などが、新聞やテレビ、噂などで伝えられ、日々、警戒する中国人は少なくなかった。日本から中国へ行くたびに、頼まれて日本産粉ミルクを持って行くことは珍しいことではない。来日した中国人が、自分のため、あるいは友人に頼まれたとして日本製浄水器を買い込んでいくのも、いまではありふれた光景だ。

 最近では、飲食店で使われる容器の汚れなどに、敏感に反応する人も増加。80年代、用心深い中国人は消毒用アルコールを含ませた綿を持ち歩き、外食の時に箸や皿などを拭いていたが、それを思い出させるほど神経質になっている人もいる。

 しかし中国人を悩ますのは食品や製品だけではない。右肩上がりの経済成長を象徴するとして取り上げられることが多い住宅についても、日々、悩まされている人は少なくない。

 建設されて2年ほどしか経たない建物が崩壊したという報道があった。設計がいいかげんな欠陥住宅で手抜き工事もあったと伝えられる。だが、ここまでの大事にいたらなくても、あからさまな手抜き工事による被害は少なくない。

 建坪250平米ほどの2階建て新築住宅を約2500万円で購入した上海に住む楊さんは、入居2ヶ月目頃から雨漏りに悩まされてきた。


(写真=瀟洒な欧風住宅に見えるが、実際に生活してみると不具合が多く、住民からの不満は大きい)

 「施工業者に連絡するとすぐに来てくれ、修繕に取りかかってくれたことはありがたい。しかしその後も、雨が降れば以前と同じように、窓から雨漏りがする。3回ほど修繕してもらったが、結局、なおらない」と、楊さんは嘆く。

 上海市中心部であれば一戸建て住宅に住むことは不可能なだけに、郊外に住宅を見つけた。中国の新築住宅は、内装が施されていない「スケルトンタイプ」で売り出されるのが一般的だ。そのため、住宅購入者は住宅購入後に内装会社に発注する必要がある。

 この時、手抜き工事が行われないか、あるいは偽物の部品を使われないよう工事を見張る必要がある。こうした現状を突いて、上海では松下電工など日本企業が施行に乗り出し、業績を伸ばし始めている。

 「建売業者は内装工事に問題があるとして、言い出してきた。内装業者は建売業者に非があると言って互いに謝罪せず、ただ突っぱねるだけで、解決の糸口さえ見つからない」と、楊さんは言う。

 「この一連のやりとりは、中国産の品質問題が起きたにもかかわらず、中国側が謝罪しないどころか原因を追求しない姿勢に通じる」と、住宅欠陥問題を追及する「新民晩報」の記者は言う。中国のやり方は外国に対して強硬に出るだけではなく、国内においても同様の方法で責任のありかをあやふやにしようとする。

 「自分で自分の身を守るしかない」と、楊さんはなかばあきらめかけ、口コミで聞いた評判の良い施工業者に変えるつもりだという。

 楊さんが住む建て売り住宅地域には、同様の家屋が50棟ほど並ぶ。しかし実際に住んでいる人は数少ない。ほとんど人が投資目的で購入したためだ。だが、完成直後から壁や床のコンクリートがひび割れしだした。規格外のコンクリート材料が使われ、強度が足りないのでは住人たちは疑っている。

 外壁などのペンキは素人目にも、熟練したプロの仕事ではないとわかるある塗り方が目につく。柱に壁のペンキがはみ出すように塗られたりして、おざなりな仕事だということが一目でわかる。

 楊さんの向かい側に家を持つ住人は、「業者は安全よりも採算重視。これでは資産価値が下がるだけ、早急に売り抜けるつもりだ」といって、転売先を探している。

 しかしこれは一戸建て住宅だけの問題ではない。上海、北京などを中心とする都市部に林立し始めている高層住宅にも、さまざまな問題がある。北京の北側、オリンピックのメイン会場に近いあたりには、新築の高層住宅の建設ラッシュが続く。そこに、1年前に完成したばかりの高級マンションがある。20階建て、一室200平米で、全室南向き。

 これだけの広さの部屋に住むだけに、住人はインテリアや家具、調度品にもカネをかけている。14階に住む友人の部屋には60インチの薄型テレビ、農村部で買い込んできた清や明の時代の家具、チベット産のベッド、高級システム・キッチンが備え付けられる。夜ともなれば、北京の夜景が楽しめる。かつて一緒にアメリカを旅行した時を思い出し、話がはずんだ。

 しかし、ここでも喜んでばかりはいられない現実がある。ベランダに出ようとしたときのこと。天井までの赤い窓を開けたとたん、上から窓枠を固定するボルトが落ちてきた。長さ約15センチほど。モンキーレンチで戻そうとしても空回りするだけ。穴に差し込んでいたという状態だったことが判明した。

 すぐに業者に連絡して修理を依頼したが、やって来たのは農民工と呼ばれる農村からの出稼ぎ労働者2人。彼らに熟練した技術があるはずもなく、結局、2時間くらいかけても修理できなかった。

 日本では、見た目の変化、きらびやかさで、中国の発展ぶりが語られるが、実はその内実となるとかなり怪しい。無秩序のまま急速に市場経済へ突入し、カネがすべてという拝金主義がまん延してきた。

 「業者のモラルは著しく低下している」と、マンションに住む呉さんは言う。

 日本でも耐震偽装が平然と行われていたように、こうした問題はけっして中国、あるいは中国人だけの特質ではない。しかし中国の場合、一般市民を悩ますのは問題解決への糸口がなかなか見つけられないことだ。

 「関係機関に訴えても、迅速な対応どころか、まともに相手にしてもらえない。業者との癒着で、消費者保護の姿勢がまったくない」と、上海の楊さんは憤慨する。一方、今年8月、湖南省で完成間近の橋が崩壊するという事故が発生した。このニュースを知って、北京の呉さんは高層住宅に住む怖さを実感し、引越することを考え始めた。

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