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〔084〕 日本への渦巻くいらだちや不信 飛び交うあざけりや怪しい情報
【2006/04/11】

 中国各地で行われた反日デモから1年が過ぎ、今年は何も起こらなかったと、日本のマスコミは伝える。

 「だが、さまざまな手段が使える時代になっただけに、自分たちの身の丈にあった方法で日本批判が今後も繰り返され続ける」

 昨年、上海で起きた反日デモをつぶさに取材した現地夕刊紙の記者は、こう語る。

 「当局は反日デモを教訓として、民衆を押さえ込むために規制をかけ始めている。インターネットのサイト登録制も、その一つだ。しかし、こうした強権的な対応には強い反発があり、規制をかいくぐる穴を見つけ出そうとする若者たちは多い。『猪都笑了(豚がみんな笑った)』がその一例だ」

 「猪都笑了」は昨年末あたりから注目を集め、今も複数のホームページ転載され、すぐに見つけることができる。単行道と名乗るグループが歌う。

 「北京人が砂埃が多いと言った。内モンゴル人は笑った」「内モンゴル人が(内モンゴル自治区は)面積が大きいと言った。新疆人は笑った」「新疆人が民族が多いと言った。雲南人は笑った」というように、中国各地の特徴を互いに自慢あるいは揶揄する。

 だが、後半から歌詞の様相がかなりシニカルになる。「広東人が金持ちが多いと言った。香港人は笑った」「香港人が愛人が多いと言った。台湾人は笑った」といった歌詞に移り、最後はこういうオチで締めくくられる。

 「小日本人(クソ日本人)が私は人間と言った。世界中の豚がみんな笑った」

 途中、「我打西瓦賽有那拉」(中国語発音で、「私はさようなら」)といった歌詞も登場する。あきらかに日本人を批判する歌で、掲示板では「小日本就是猪」(クソ日本人こそ豚だ)といった書き込みが相次いでいた。

 また、日系企業職員たちによる中国での「淫蕩醜態」現場だという写真が、インターネット上にばらまかれてもいる。

 全裸になったホステスたちと戯れる男たちに対して「人神共憤!」だと怒り、具体的な企業名が記されている。ネット上にはその日系企業を厳しく批判する書き込みが続き、不買運動を呼びかける者もあった。

 しかし、その写真の人物が日本人かどうかは、かなり疑わしい。個室での宴会風景は日本人が行う宴会とは様子が違うように見える。風体からも、日本人とは考えにくい。

 現地紙記者は、写真の人物の体に彫られている入れ墨に注目し、「入れ墨の場所や模様から見て、日本人ではなく中国人だ」と推測。

 公安に問い合わせると、日本人だと考える職員もいたが、中国人ではないかとする意見が大半だった。だが、確たる証拠はない。真相は不明だ。ただし、「日本人による中国での“淫蕩醜態”現場に踏み込んだ職員もいて、あり得ないことはない」という話も出た。

 真偽を確かめようがない情報が記者のもとにもかなり寄せられ、情報戦になりつつあるという。

 もとはといえば、「猪都笑了」や日系企業職員だとする写真のばらまきも、小泉首相を始めとする日本政府の対中強硬策に対する反発だと考える中国人は多い。

 「当局の規制強化でデモの再発は押さえ込まれているが、中国人の日本に対する批判は一過性のものではない。きっかけさえあれば、再び反日行動が起きる可能性は否定できない。現に、安倍晋三官房長官や麻生太郎外相の強硬発言は中国人に強い刺激を与えていて、小泉退陣後の彼らの発言や行動には、大きな関心が寄せられるだろう。少なくとも、中国のマスコミは注視している」

 上海総領事館には、今も反日デモの跡が残る。現在、中国で生活する元中国人は、それを見る日本人、中国人の両方の気持ちがわかるとして、こういう。

 「修理が進められず、うやむやのままの状態を良しとする中国人がいる。日本人は中国政府や上海市の対応にいらだち募らせている。いったんヒビが入った両国の関係は、一般の人の間でも直っていない。深いところで互いに不信感は渦巻いている。あざけったり確かめようもない写真をばらまくのは、中国人側のいらだちの表れだだが、それに拍手喝采する中国人は少なくない」


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