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〔081〕 誰もが取り調べ段階で、拷問の被害者となる危険性
【2006/01/29】

  しばらく前から、中国国内でパソコンや携帯電話のメールにある写真が添付され送信されていた。全国的な広がりというものではなく、ごく一部の人々、あるいは北京や上海など都市部だけのことではないかと推測されていた。

 その添付写真が、数ヶ月前、こちらにも送信されてきた。中国公安の被疑者取り調べ時における拷問の実態を撮影したものとされる。

 中国では拷問は日常化しているという報告が、アムネスティ・インターナショナルや国境なき記者団を始めとしていくつもなされている。刑事事件の被疑者、民主化要求の活動家、宗教団体のメンバー、さらに民工と呼ばれる出稼ぎ労働者や農民らが言われなき罪状で拘束され、拷問による自白を強いられるどころか虐殺されるケースもあり、拷問は警察署や労働改造所と呼ばれる国の施設で組織的に行われていると言われてきた。

 昨年末には、人権弾圧や拷問調査を目的に訪中した国連人権委員会が、中国国内各地の刑務所や収容施設で拷問が行われていると記者会見で述べ、中国政府に改善を求めた。

 この中で、受刑者に飲料水や食事の供与を止めたり、電流が流れるこん棒を使って苦痛を与えるなど、さまざまな拷問が行われていると明らかにされた。送信されてきた拷問の実態だとされる写真は、この報告を裏付けるような内容の写真だ。

 上半身裸の男性を床に仰向けに寝かせるため複数の公安職員が足で男の体を踏みつけ、大量の水を無理やり飲ませる。後ろ手に縛られた女性の口にぼろ布をくわえさせる。手錠をかけた男性の足をこん棒で渡してつり上げる。スタンガンを顔に押しつけられる老婆などが写っていた。

 しかしいくつかの疑問点が感じられた。写真があまりにも鮮明すぎる。このため、現地紙の中国人記者に写真を見てもらった。記者も同様の疑問を感じたと言う。

 「公安職員の制服は本物に見える。建物内部の様子や人の顔つきなどから推測するに、農村部ではないか。一番の疑問は、隠し撮りといった代物ではない点だ。公安職員が撮影したかのようで、かえって不自然さを感じる。もし本物だとしても、こういった写真が外部に流出することは考えにくい」

 その後、調べてみると、欧米で出回っている中国の拷問だとされる写真に酷似していることが判明した。

 その記者は「この写真における拷問が本物と断定するわけにはいかないが、中国では被疑者の基本的人権が保障されていないことは確かだ」と伝えてきた。

 「犯罪を処罰するという名目で、被疑者の訴訟権利に対する人権無視がはなはだしい。国家権力を最優先させる意向が根強いからだ」
 こう語るのは、政治犯として服役したことがある人物だ。

 「嫌疑を認めるよう、取調中に何度も公安職員から殴られた。一番の苦痛は、自分の言い分をまったく聞いてくれなかったことだ」

   過去、仕事柄、被疑者取り調べの現場を目撃したことがあるという記者は、こう言う。
 「社会の秩序維持を目的に、捜査機関には強大な権限が与えられている一方で、被疑者の権利への考慮がなされていない」と言う。このため、「中国では、誰もが取り調べ段階で、拷問の被害者となり得る危険性が排除されていない」

 拷問写真が出回る一方で、奇妙な写真も最近、散らばっている。死刑執行直前、死刑囚が公安職員にひげを剃ってもらい、笑顔を浮かべて礼を述べる写真などだ。


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