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[問題 3] ウラン-235の核分裂でできた原子は、放射能を持っています。放射能を持ったヨウ素原子〔ヨウ素-131)から放出される放射線の強さは、8日で半分になり、16日で4分の1になります。時間とともに 放射線が弱くなるわけですが、この時ヨウ素131はどのように変化していると思いますか。
  予 想
   ア. 放射能のないヨウ素原子になる。
   イ. 別の原子になる。
   ウ. その他


原子核の変化

 放射能をもったヨウ素原子(ヨウ素-131)は放射線を出して、放射能をもたないキセノン(Xe)という原子に変わります。
   ヨウ素の原子核は、 陽子:53個、中性子:78個・・・質量数131
   キセノンの原子核は、陽子:54個、中性子:77個・・・質量数131 です。

 ヨウ素-131とキセノン(Xe〕の原子核を比べると、質量数は同じですが陽子と中性子の数が1個づつ違います。キセノンでは陽子が1個多いかわりに、中性子が1個少なくなっています。
 ヨウ素-131にあった中性子の1つが陽子に変わった結果、キセノン原子ができたわけです。「陽子と電子が結合すると中性子になる」と前のページで書きましたが、ヨウ素-131がキセノン原子に変わるときは、1個の「中性子が分解して陽子と電子になる」変化が起きたわけです。

 新しくできた陽子は、原子核の中に残るのでヨウ素原子がキセノン原子に変わるのですが、中性子からできた電子は原子の外に飛びだします。この電子が、ヨウ素-131から出る放射線の1つです。



[問題 4] 原子力発電所の事故により放射能で汚染された地域で作られた食品に、放射能を持ったセシウム(55Cs〕という原子が含まれていることが分かり、輸入が禁止されたりしています。放射能をもったセシウム原子の質量数は137です。

 セシウム-137も放射線を出して、放射能が少しづつ弱くなりますが、ヨウ素-131と同じように別の原子に変わるのでしょうか?セシウム原子の中性子の1つが、陽子と電子に変わると陽子の数が56個のバリウム(Ba〕という原子になります。
  予 想
   ア. 同じ変化が起こる。〔バリウム原子になる)
   イ. 別の変化が起こる。(        )
 


 6ページの原子の表を見て下さい。原子番号56のバリウム(Ba)の原子記号の下に、138(72)、137(11)という数字が書かれています。この数字は、放射能をもたないバリウム原子の質量数と、自然界での存在割合〔%〕を示しています。「質量数138のバリウムが72%、137のものが11%ある」と読み取って下さい。

 72 + 11 = 83(%)ですが、残りの17%は質量数が136 以下のバリウム原子です。〔5種類もあります)

 セシウム-137の中性子の1個が陽子に変わると、陽子の数が56の原子;バリウムになります。質量数137のバリウムは放射能をもたない安定な原子なので、それ以上の変化は起こりません。



[練習問題 1] ウラン-235の核分裂でできる原子にクリプトン〔原子番号36)という原子があります。放射能を持ったクリプトンは、質量数が85です。
 クリプトン-85でも1個の中性子が陽子と電子になる変化が起こります。 クリプトン-85からできる原子の名前を、原子の表で探してみましょう。

 クリプトン原子より陽子が1個多い原子は、原子番号37のルビジウム(Rb)です。

[練習問題 2] ストロンチウムという原子があります。原子番号38で原子の表ではカルシウムの下にあります。カルシウムによく似た性質を持った原子なので、人の体の中に入ると骨などに蓄積されると考えられています。ウランの核分裂では、放射能を持ったストロンチウム〔質量数90〕が出来ます。ストロンチウム-90では、2個の中性子が2個の陽子に変わります。このときできる放射能を持たない原子を原子の表で確かめてみましょう。

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