27.Jan.03 Caserta - Teatro Comunale
昨夜は、バラシの途中で抜けて私もSも今日の荷物を作る為にカンパニーと一緒にホテルに着いた。ホテルの部屋へ向かう廊下は濃い目の緑の絨毯に同じ色の壁でずっと其処に立っていると頭がおかしくなりそうなパラノイアなデザインであった。イタリア人のセンスは時々理解しがたい物がある。部屋は綺麗で居心地は良かったが、居られるのは4時間程。荷造りを終え、シャワーを浴び寝たのが1時半頃、5時45分にホテルを出て、7時10分の飛行機でナポリへ飛んだ。
ナポリに8時20分に着いたが、劇場からの迎えの姿が見えず、サンドラが何度電話しても全く連絡も取れず、やむなくタクシーで劇場に向かう。高速を使うとは云えホンの30分位の距離だそうで10時前には着くかな、と思ったらカゼルタの街に入ってから劇場が見つからなくてグルグル回っていた。やっと辿り着いた時に気付いたら、数分前に其処は通っていた。然し街並みに対して溶け込みすぎていて目に付きにくい、もう少し劇場としての主張が欲しい所である。
『イタリアは 書けども尽きぬ ネタの泉』
カゼルタでは何時もと違ってここだけの現地スタッフにここだけの機材なので心配していたが、照明については概ね仕込んであって、Sは助かったし、希望の色もそこそこ来ていたので喜んでいた。
が、然し、But、音響は目が点になった。CDプレーヤーが1台有るだけである。私のリクエストは、CDプレーヤー2台とMDプレーヤー1台で有る。「CD×1&MD×1」でも「CD×2」でもやってやれない事はないが、これからディスクをコピーしたり、新しくCDを焼いたりは余りしたくない(勿論コンピュータも生のCD-Rも持って来てはいるが、最終手段のつもりである)。兎に角サンドラを通じて再リクエストすると「持ってくるので暫く待て」という。まあ待つしか有るまい。
写真左上から舞台から客席を見た所、同じく舞台から客席下手側、客席後方から舞台を観た所(立っている人を見ていただけば狭さが分かると思います)、劇場正面から街を見た所(此処は出口のみで観客は上手側から入場する)、写真下の段左から総ての座席に紋章が付いている、チケットブース横にあったポスター(手書きで公演日が変更されている)、劇場入口、一寸離れると街何見馴染んでいて劇場とは分かり難い
この劇場は今回のTour、今迄で一番狭い。舞台間口4間!奥行き4間弱!勿論の事、上下共に袖に飛び込めば其処は壁である。袖に入って壁まで5尺足らずである。
この舞踊団の重要な売り物にアクロバットがある。この舞台で何時ものつもりでやったりすると着地するのは袖の中、ヘタをすると舞台から落ちたり、壁に突っ込んだりしかねない。大変危険である。第一只並んだりするのだって狭っ苦しそうだ。
等と心配しつつ、今日は場合に因っては因ってしまいそうな気配なので「どうやったら1台のCDプレーヤーで2台でやっているのと同じようにやれるか」等と考えつつ昼食に行った。本日はSと2人だけで「パスタならあそこ」と現地照明さんのお薦めの店に入った。今日のお薦めの店で今日のお薦めグリーンピースのパスタを食べた。私は、Sと違う所を指差したつもりであったが同じ物が来た。味は兎も角パスタの形は違う形の物が来る筈だったんだがなあ。私たちと店員の会話は、電車の車掌の安全確認と同じ指差し確認である。それで間違いがあっては、事故の元なので気を付けて頂きたい。安全第一は世界共通ではないのか?
等と考えている所へMDプレーヤーを持って音響さんがやってきた。正確には「MDプレーヤーだけ持ってやって来た」。何と繋ぐ為のケーブルさえ持っていない。改めて(シラクサから来た少年が老けた様な小柄な)男に“My
Request”を伝えるとイタリア語で「聞いてない」(多分)と言って、「誰某に話してくる」(多分)といって、照明のチーフらしき人の処に行って何か話した後、客席に組んであった音響卓をバラして私に「卓は何処に組むんだ」(多分)とイタリア語で聞いてきた。場所など全く選択の余地はない。私は上手前方のドアの奥を選んだ。舞台がよく見えないが仕様がない。困った事になるかも知れないが、其処なら取り敢えず総ての切っ掛けは見える筈なので其処に仕込んで貰った。多分CDプレーヤーは何とかしてくれるだろう、と思ったがケーブルすら持ってこない奴である、再びサンドラに訴えた。「本当に何とかしても、全く!」
結局もう1台のCDプレーヤーが劇場にやってきたのは、開場30分前という切羽詰まった頃であった。しかもディスコ用のスクラッチをする為のターンテーブルが上面に付いたタイプである。CD再生中に誰かが触ったらどうしてくれるんだ、全く。(3時半頃サンドラに「CDプレーヤーは何時来るんだ?」と聞いたら「今ソレントへ行っているので4時過ぎになる」とこきよった。「帰れ!ソレントへ」などと叫びたい気分になった)
照明も喜んで許りは居られなかった。細かく云えば矢張り色々あった。ここでは1つだけ書いておきます。「Thunder」で使うストロボに若干の問題があった。消えないのだ。なあんと調光卓に繋いでからと云うもの点きっぱなしなのだ。勿論点きっぱなしと言ってもストロボですからパカパカ点滅してるんですけどね。Fullの明るさではなくションボリと言った暗さではあるがずっーーーとパカパカしている。舞台が明るい時も暗い時も富める時も病める時もパカパカしっぱなしで『我此処有』と御主張を止めない。カスミで隠したので殆どの客は誰も気付かなかったと思うが、舞台にいると物凄く気になった。
そんなこんなで何となく気重な状態で本番を迎えた。
群舞等は2列を3列にして幅を狭くしたり、色々遣り繰りして狭い舞台に合わせて始めた本番であった。この舞踊団はエライ!と思ったのは劇場に合わせてフォーメーションを変更せざるを得ない時にすぐ対応する事だ。然し今日は一寸狭すぎたか、一寸動きに勢いが欠けた様にも感じられた。然し勢いが何時ものままでは客席に飛び込んだり、壁に激突したりするので仕様がない、と云う気もする。客席の反応も今迄ではクールな方である。最終的には大きな拍手を頂いたが、色々な要因も有ろうがクールな観客であった様に思う。
そして私は又やってしまった。3敗目である。
“引退間近か?”東スポ風に書けば『INU 引退!! 間近か?』である。
困った事になるかも知れない、と思いつつ“I have no choise”が困った事になってしまった。ダンサーも普通の劇場なら何時も通りハケられるが、此処ではハケた後の対処に困ってしまうので、ハケる場所が後の対処の為一番奥の袖に変わった。これでハケる前の切っ掛けのポーズが私から見えない所に行ってしまった。しかもその前の振りから見えない所に行ってしまったので、私は「何処で踊っているんだろう?何処に行ってしまったんだろう?」と思っていたら、とっくに切っ掛けは通り過ぎていた。舞台監督と音響を兼ねているのに、場当たりで確認しておくべき事をチャンと確認しておかなかった為に、やってしまった。御免なさい。
然し親方株もまだ買ってないし、どうしようか?引退