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多発性硬化症について

多発性硬化症とは、中枢性脱髄疾患であり、さまざまな神経症状が再発と寛解を繰り返すものである。神経はビニールのカバーに覆われた電線のような形をしており、このビニールの絶縁体部分が障害を受けてしまう病気なのである。
症状はさまざまであり、ミエリンがどこで壊されてしまうか、によって異なる。その中でも運動麻痺、視力障害、失調症、企図振戦、病的反射などがよく見られる症状である。特に日本人は目の症状が多く出る。疲労しやすく再発と寛解を繰り返すものの、予後は悪くない。しかし、生活のQOLという意味では苦しんでいる患者さんが多いのが現状である。では、どうして発症するのだろうか??

区切り

これはまだわからないことがいっぱいである。
しかし、わからない中でも自分の中の”ミエリン”という自己蛋白を、自分の身体が敵であると勘違いして攻撃してしまう、と考えられている。一種の自己免疫疾患であると考えられているのである。
では、治療はどうするか??
完治させる、というのは現段階では難しい。要するに、根治療法はまだわかっていない。現在使われている療法として以下の方法がある。
急性期のステロイド療法(炎症を抑える)、再発、進行を抑えるインターフェロンβ療法と免疫抑制剤を用いる治療法、そのほか、対症療法として痛みを抑えたりツッパリを抑えたりするという方法もとられている。
ステロイド剤は使用期間、量によって副作用が違ってくるが、ムーンフェイス、精神症状などが副作用として出てくる。
免疫抑制剤は免疫系の正常細胞まで抑えてしまうため、感染しやすくなったり肝機能、腎機能に障害が出たり、出血しやすくなったりすることがある。
ではインターフェロンβによるものはどんな治療法であろうか。
インターフェロンβは、細胞に直接作用していくもので、再発を抑制する効果が見られる。基本的に多発性硬化症はTh1系が活性化してしまう病気であるため、この活性化を抑える方法がないか、ということで開発されたのである。多発性硬化症では自分自身の蛋白・ミエリン、に反応する病原性T細胞が増えてしまうので(Th1系である)、この病原性T細胞軍を弱らせてしまおう、というのがインターフェロンβによる治療法の根本的な考え方である。この治療は非常に効果がある反面、逆に増悪させてしまう場合がある。
そのひとつの例がDevic病である。これは多発性硬化症の中のひとつの病気で、視神経脊髄炎といわれるものであり、日本人に比較的多く見られる。このタイプでは視神経障害を起こす原因抗体と考えられている、抗AQP4抗体(自己抗体)が陽性になることがある。この抗体陽性例でインターフェロンβが増悪してしまう例が多くみられるようである。
インターフェロンはα、β、γともに細胞に直接作用するものであり、病原性T細胞を弱らせる一方、正常なT細胞にも反応する。自己抗体は自分のT細胞で逆に産生されないように抑えられているのであるが、インターフェロンはその正常細胞にも反応してしまう。視神経脊髄炎の場合、なぜインターフェロンβが逆に増悪させる結果になるかは明らかにはなっていないが、私は・・・抗AQP4抗体(自己抗体)を制御しているT細胞にも反応してしまってこの抑制が効かなくなり、どんどん病原性の抗体ができる??のではないかと考えている。膠原病を併発している場合にもこの増悪例が見られるのも同じ理由ではないだろうか。それによって逆に病気は増悪するのではないだろうか。
インターフェロンβは確かに自己のミエリンに対して反応してしまうT細胞をやっつけて多発性硬化症の再発を少なくする治療薬である。
しかし、時と場合によっては使い方に気をつけないといけないのではないか、というのが基礎医学者である私の目から見た感想である。ミエリンによるさまざまな症状と、抗AQP4抗体による症状をひとつの多発性硬化症としてまとめてしまってよいのか、もしくは別の病気と捉えるか、その辺は現段階では明らかになっていない。しかし、特に膠原病などを一緒に併発している場合や視神経脊髄炎を起こしている場合、それの原因である抗体がインターフェロンによって逆に増加してしまうことが考えられる。したがって、現段階ではこれらの病気に対する対処を分けて考えるほうが良いのかもしれない。
選択的に病原性細胞にのみインターフェロンを反応させるのが難しい現在、ここはひとつの研究要素になるのではないだろうか。基礎医学者の出番かもしれない・・・・

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