聴いた、観た、買った ---淡々と音喰らう日々。
2002.05
★は借りた新着、☆は新規購入。
今回論評したディスクなど:
チャイコVc協by諏訪内@ガラ1990 / Dick Lee: Singapop
◆CDタイトル前などのマーク(◆)はそのレビュー項目自身へのダイレクトリンクになっています。
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◆ チャイコフスキー『ヴァイオリン協奏曲 ニ長調』 諏訪内晶子@チャイコフスキー・コンクール・ガラ1990 (収録CD: Classical Dreams, Teldec 4509-95213-2, 1994. 2CDs)★
チャイコは何であれ「キレイに感傷的に」弾くことがわりと当たり前だった時代というのは、そんなに昔ではないと思う。高2の秋(1982)の室内楽の定演で弦セレを演ったとき、フィナーレの舞曲をできるだけヴァルガーに仕上げたとはいえ、それはそれでもまだ、ダンスになりきるという心構えには程遠かった気がする。それに当時チャイコと言えば、少しスカしたクラシック系の少年少女たちは「おセンチ」というレッテルを貼って見向きもしなかったのだ(今でもかな?)。
なので、1990年、まだ17か18の諏訪内晶子がこの演奏をしてることにひっくり返ってしまうのだ。この年齢だから、多分「研究の結果」とか「知識に基づいて」そうした、という演奏ではない。もっと感覚的、直感的な部分。断片的な知識や情報に、それと直接は関係のない彼女自身の経験やイマジネーションを掛け合わせた結果として出てきた「野性的な舞踊」。そういう風に考えなくても、この遠慮なくアクセル踏み込みっぱなしの終楽章は上出来なのだが、そう考えると益々それが奇跡的瞬間のように思えてしまう。西欧的な、という、イメージの「憑き物」が落ちた、剥き出しのスラブ人チャイコフスキー、ストンプ。
◆ Dick Lee: "Singapop" (For Life, 1996)☆
多少の違和感を感じつつも結局目が離せないでいるDick Leeなので、途中欠けてるアイテムを集めつつあり、これもその一つ(あとYear of The Monkeyだったかがあれば完璧なのだが)。最近はあらゆる店の棚から消えてるので入手しにくいことこの上ない。
このアルバム、1つ前の"Secret Island"が内省的・非アジア的な作りだったのと対照的にまたアジア的エッセンスの導入ではじけてるのかと期待したが、予想に反して手堅い職人ポップス路線(もっとも、日本プロデュースで某番組タイアップの"Good Earth"はちょっとコマーシャル過ぎて頂けなかったが)。出だしの'Big Island'から快調に得意のコーラスワークを聴かせ、トラディショナル系の曲を料理する手さばきも相変わらず巧み。でも特筆すべきは'Space Disco', 'Sunset', 'Singapore Nights'などに見る、70年代ポップス再生術だろう。Dick自身の類いまれなボーカルの才能あってのこともあるが、慎重で破綻ないアレンジ、音作り、全てが楽曲のかすかな翳りを生かしつつ、90年代ならではのスムーズを指向する。その意味において次作DL Project名義の"Transit Lounge"につながる線上にある作品とも言える。
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