オーディオ日記 第60章 音楽に抱かれて眠りたい(その6)2025年10月28日


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SONY SUP-T11構成の調整:

ベリ三兄弟とSONY SUP-L11の4way構成による音が何とか上手く調整できたと前回記載したが、この設定をトランスファーして、SONY SUP-T11によるもうひとつの構成のブラッシュアップを図ってみた。前回のポイントは低域と中低域のクロスオーバーを見直して180Hzから235Hzへ変更したことが主要ポイントであるが、その後中高域、高域に関して微調整を加えた結果自分としても納得の音となった。

となると、中高域にSONY SUP-T11を使用する構成においても、もう一段詰めてみたくなるのは人情であろう。こちらの構成はベリ三兄弟とSONY SUP-L11の4wayから中高域をSONY SUP-T11が受け持つように(Bliesma M74Bから)入れ替えるもの。従って、低域と中低域の設定はそのまま踏襲する。ただし、単に中高域ユニットの変更に伴って出力レベルの差をアジャストするだけでは美味しい音になったとは云えないのでそこを調整のポイントとしてしっかりと詰めた。

低域のSUP-L11は4way構成で常時稼働、中高域担当のSUP-T11はBliesma M74Bと適宜交代して稼働:
SONY SUP-L11 SONY SUP-T11

このSONY SUP-L11とSUP-T11というユニットは2002年に導入したものなので、以来もう23年が経過したことになる。このふたつのユニットによるボーカル再生を聴いて惚れ込み、我が家に迎え入れたいと思った時は既に生産が終了していたのだが、中古の出物を辛抱強く待って手に入れた。当時の パンフレット等 によれば1995年までは生産、販売をしていたようで、生産終了となった時期は明確には把握できていないがおそらく90年代後半だと思う。従い我が家にあるユニットの推定年齢はおそらく30歳前後ではないだろうか。

入手してからずっと鳴らし続けているがそのタフさと安定感には絶大な信頼を寄せており、今なおビンテージ品の類とはならずに日々の音楽を奏でてくれている。ボーカルの再生に於いては2wayだけの構成でも素晴らしいのだが、多種多様な音源の再生を目指した場合、2wayでは多少のもどかしさもあって、その点が結果として4way構成へと発展させていく原動力ともなった。

さて、低域と中低域のクロスオーバー周波数を235Hzに変更した上で、高域側の微調整も実施しての実聴であるが、うまく設定できたようでやはり何ともボーカルが自然。これはベリ三兄弟とは微妙に肌触りが違うような気もする。そのポイントは声の再現性。人間の耳は人の声を認識し聞き分ける能力は極めて高いと思う。音にこだわるようなことがなくても人の声は的確に聞き分けらる。単なる会話でなくても、電話の場合や周りの騒音で多少聞き取り難くても誤ることなくその人の声であると認識できる。これは意識せずとも普段の会話等によって行われる子供の頃からの長期間の耳および脳の訓練の成果なのかもしれない。(その観点から云えば訓練を積んでいないこともあるので当方は楽器そのものの音の優劣は明確には聴き分けられない)

SONY SUP-T11に中高域を受け持たせた構成では人間の声の機微というのか微細、微妙なものが聴き取れる(気がする)のだ。つまり駄耳であっても極自然な人間の声と認識できているのかもしれない。改めて考えてみると、これも何か不思議な様な気もしてくる。特性的にはベリ三兄弟に比して明確に異なる部分が存在している訳ではない。測定しても周波数レスポンスはほぼ同じなのでここからでは具体的な差を指摘することは難しい。

ホーンによる能率、指向性、質感やS/Nの違い、なんだろうか、とも思うのだがそれだけではうまく説明ができない。ボーカルの無い音源ではほぼ同等と思えるくらいには調整は出来たようにも思うのだが、声のパートに於いては、「何らかの差異」があると脳が認識してしまう。

これはつまるところ(極単純に考えれば)、それがユニットの違いによる音の差、ということなんだろうと納得する部分も無くはない。あるいはベリ三兄弟においてはまだ調整の詰めが足りていないのか、と思ってしまう部分も顔を出す。だが、ベリ三兄弟の音自体にこれと指摘できる不足感や難点がある訳ではない。そう思えるように調整してきた。それでも尚、声の表現の(多くの人にとっては僅かかもしれないのだが)差異を認めざるを得ないのだ。それ故にSONY SUP-T11構成のアドバンテージがここには存在する。異なるユニットの構成である以上「全く同じ音」となることは無い、と常識的にも?思えるし、同じ音となってしまうことを望んでいる訳でもないのだけれど、、、

シンプルに考えれば、それぞれのユニットが生まれた時から持っているはずの能力、そして長所となるべき点を的確に引き出して本来のパフォーマンスがしっかりと発揮できるように設定してあげる、ということが一番の根源的な調整ポイントなんだろうと思う。

改めて振り返ってみると、ボーカルの再生に惚れ込んでこのユニットを導入したことは、長い年月を経て今に至っていることからも結果として間違った選択では無かった。後に 製作 していただいた工芸品のようなエンクロージャと円形ホーンを纏い今や我が家の「家宝」そのものとなっている。

エンクロージャと円形ホーンが 揃った日 (2012年10月)の記念写真:

New Enclosure 04


現在ではとても貴重なものとなったSONYのユニットだし、ベリ三兄弟と勝手に呼んでいる構成もベリリウム振動板を持つ三種のユニットを揃えられたこと自体が奇跡のようにも思える。これらの二つの構成で日々音楽を聴けることはオーディオファイルとしてこれ以上無い喜びである。




          4way設定値(SUP-T11構成:Memory2) / 2025年10月28日
項目 帯域 備考
Low Mid-Low Mid-High High
使用スピーカー
ユニット
- SONY
SUP-L11
(Experimental)
BeW-16
SONY
SUP-T11
Scan Speak
D2908
-
能率
(90dB基準相対差)
dB 97.0
(+7.0)
87.5
(-2.5)
110.0
(+20.0)
92.0
(+2.0)
定格値
DF-75の
出力設定
dB +0.5 +0.7/+1.2 -9.5* +2.5
*-10dB ATT On
マスターボリューム
アッテネーション
dB -9.0 -0.0 -0.0 -0.0
各チャネル毎の設定
パワーアンプ
GAIN
dB 0 0 -12.0 -12.0
 
想定合成
出力レベル
dB 88.5 87.2/87.7 88.5 82.5
(計算上の
出力レベル)
クロスオーバー
周波数
Hz
235
235

470
500

4470
5470

High Pass

Low Pass
スロープ特性
設定
dB/oct flat-24 24-12 12-24 24-flat
DF-75 DELAY
設定
cm -23.0 +21.0 -50.0 +11.0 相対位置と
測定ベース
極性 - Norm Norm Rev Rev  
DF-75 DELAY COMP
(Delay自動補正)
- ON 自動補正する
DF-75デジタル出力
(Full Level保護)
- OFF 保護しない

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