オーディオ日記 第57章 道の向こうへ(その21)2024年 7月17日


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音を進化させたい:

我が家のオーディオの音もある程度は熟成の域に達することが出来たのではないかと思いつつも、この先へと続いていく夢をまだまだ見ていたい。先に更新したデジチャン(Accuphase DF-75)については、機能的にもっとあれこれできたら、、、と思いながらもその音については納得していると云えばよいだろうか。内部演算処理の高精度化(40bitから64bit)やDACチップの差異だけではないブラッシュアップも行われているのだと思う(長き期間にわたって製品の音を向上させ続けるメーカーは信頼に足るし、その姿勢は素晴らしい)。導入から半月程度は今までの設定を踏襲してほぼ同様に聴いてきたが、ある程度エージングも進んだと思われ音の自然さと音色の濃さについて充分に評価できるし、全体的に音楽そのものの充実度が高まったようにも感じている(音の密度感との関係もあるかもしれないが既にDF-65は手元に無いので厳密な比較はできないけれど)。

そこで、今後はクロスオーバー周波数の選択可能範囲の拡充を受けて新たな設定を探り、従来の音の延長にある「熟成」ということだけではなく、音そのものを「進化」させたい、と考えている。

この我が家の音を進化させるという具体的な方法であるが、まずは4way構成において中低域、中高域、高域という三つの領域における周波数バランスを先に少し紹介した「 ターゲットカーブ 」を更に厳密に実現するように調整すること。次に(リスニングポイントにおける)左右の周波数バランスを徹底的に統一すること。これは我が家の部屋ならびにスピーカーの配置が(家庭内での力学?もあり)王道的なものにはできていない、という背景があって壁面の影響などもできれば改善したいということにも通じる。そして、一番重要なポイントとしては低域の補正である。

低域については15インチウーファー( SONY SUP-L11 )をこよなく愛しており、現状概ね300Hz以下の帯域を担当させている。口径の大きさから100Hz以下で使う方も多いかもしれないが、このユニットにボーカル帯域まで関与させたいという想いがある。やはり声の魅力を引き出してくれるユニットなのだ、、、しかしながら、低域は不可避的に部屋の影響をより多く受けてしまうので、40~300Hzをリスポジフラットにすることは素の状態では残念ながら難しいという現実がある。

そこで、当方の採りうる手段であるが、この低域の補正に「デジタルイコライザ」を使用して、フラット化と左右バランスの改善を図ろうというもの。デジタル音源が中心であること、既にデジチャンでDSP処理の恩恵にあずかっていることから心理的な抵抗はほぼ無いのだが、やはりこれを実践するためには(音への影響が少ないことは必須として)若干の条件もある。

ひとつには192KHz/24bitの音源に対応していなければならない。さらにはきめ細かな調整機能を有していること、また(当然ながらであるが)左右独立の調整はMUST条件。アイデアとして浮かぶのはアキュフェーズのボイシングイコライザと呼ばれる機器(DG-68など)であるが、高価格でもあるので、実験としてはちょっともったいない気もしてしまう。また、機能的にはグラフィックイコライザであるので、当方としてパラメトリックイコライザ機能の方が望ましいと考えている。

そんなこんなから、候補としているのは Eversolo DMP-A6 のデジタルイコライザ機能を使うこと。Eversolo DMP-A8/A6 MasterEditionの二機種は国内販売代理店ができたこともあって(広告も行き届き)かなりの人気にもなっているようなのだが、この多機能なネットワークストリーマー(現時点ではストリーミングプロセッサーと呼ぶほうが相応しい気もする)には強力なデジタルイコライザ機能が実装されているので、まずそれを利用してみようと考えた。

今回の主役はデジチャンよりDMP-A6かもしれない:
Eversolo DMP-A6 Accuphase DF-75

このクラスのプライシング設定の機器でここまで充実したデジイコ機能を持っているものは寡聞にして存じ上げない。設定に関わる操作性については専用機的なものには多少劣る点あるが、使いたいと思う機能は網羅されている。(グラフィックイコライザ機能についてはプリセット周波数が15ポイントなのであまり評価は出来ないが)パラメトリックイコライザ機能についてはほぼ至れり尽くせりの機能となっている。音に関しても今迄のテストにて特段の劣化は感じられないので実用に耐えるものと思う。

(参考)Eversolol DMP-A6に実装されているパラメトリックイコライザ機能の詳細
・192KHz/24bit音源対応(注記)、但しDSD音源は除く。左右チャンネルの独立調整可
・周波数は任意に設定できる(ポイント数は10)
・Q(肩特性)が木目細かく設定可
・フィルターはピーク、ノッチ、ハイ(ロー)シェルフ、ハイ(ロー)パス、バンドパス、オールパスから選択可
・全体のゲインコントロール(個々の設定周波数の増強、減衰とは別に)
・左右バランスコントロール
(注記)EQ処理の内部演算自体は48Kで行われていると思われる。

(2024年8月24日追記)EQ機能に関してDMP-A6とA8には差異があるので留意する必要がある。
1.A6はデジタル出力に関してもEQ処理が適用されるが、A8はアナログ出力への適用のみ
2.A6はソフトウエア処理によりデジタル入出力とも192Kまでの対応であるが、A8は DSPチップ処理 にて行うため、この制約から48Kにダウンサンプルされての対応となる。
(上記にA6の内部演算処理は48Kと記載したが、 Forumの情報 から192Kでの処理に訂正する) (追記終わり)

このパラメトリックイコライザ機能を駆使して、概ね300Hz以下の帯域の補正を行い音を追い込んでみようというものであるが、このためにはリスニングポイントに於ける周波数レスポンスの測定を同時に行うことが必須である。聴感だけでこの対応を完結できる自信は当方には全く無い。実際の測定作業としてはOMNI MIC V2を使用して左右それぞれの低域のレスポンスを細かいレベルにて把握、それに対して測定を継続しながら(手動で)補正を掛けていく、というもの。実際のレスポンスの状況を見ながら、リモコンアプリ(Eversolo Control)で設定を弄れるし、仕上げにはリスニングポジションに座った状態でこのリモコンアプリにて好みに微調整すれば良いので、総合的な使い勝手も悪くない。まぁ、自動調整できる機器の方が楽チンではあろうけれど、基本低域しか弄らないので、補正を最小限にできる、というメリットもあろうかと。

もちろん音楽を聴くに際して、トータルに見て何でもかんでもフラットがベターとは思っていないが、途中経過としては340Hz以上はターゲットカーブに準じた周波数レスポンスをデジチャンによって実現、さらには340Hz以下のピーク、ディップ、左右のアンバランスをこのパラメトリックイコライザ機能を使うことによって補正したので、ある意味では本来望ましい普遍的な音になったと思う。「洗練された音」なのかどうかは主観の分かれるところかもしれないが、やはり結果として音楽の表現がかなり好ましくなる。

(注記)Eversolo DMP-A6からはUSB出力でMUTEC MC-3+USBへ、そこからDF-75という経路設定としている。ベリ三兄弟は音の純度に対して敏感なのだがイコライザ関与による音のマイナス面は感じていない。絶対値としてはゼロではないと思うが結果として改善効果が上回っているのだろう。

(参考)パライコ設定画面:(USB出力にのみEQを有効化)
Eversolo DMP-A6 Equalizer Setting

まだ一通りの測定、補正に関わる実験が終わった段階なので現状がベストな音かどうか判然とはしない。だが、冒頭に述べたように従来からの延長上にある音をブラッシュアップさせたものとはちょっと違うかも、、、という期待値が大いに残る音にはなってくれていて、この先にもしかしたら更なる「幸せの音」があるのではと予感させてくれるのだ。このようなアプローチが新しいデジチャンの導入に伴う我が家の音の「進化」の最初のステップとなってくれればこんなにうれしいことはない。

(雑感)
この手のネットワークストリーマ乃至はストリーミングプロセッサーは今後益々機能が拡充されていくものと予想する。基本的なストリーミング機能の枠を超えて、プリアンプ的な使い方やプロセッサーパワーを活かしてのイコライザ機能などのDSP処理(Diracなども)の拡充等々。現にEversolo DMP-A8はこの路線を突き進んでいると思う。そう考えてみると、やはり専用のデジタルイコライザ機器などを導入する必要性は薄れていくだろう。従来の筐体の枠組みでネットワークストリーマ(やDAC)、プリアンプにイコライザなどを別々に購入する必要も無くなる訳だ。パワフルなオールインワン機器がデジチャン、パワーアンプの前段に在りさえすれば良い、、、多分そういう方向に時代は動いているのだと思う。

DMP-A8外観と内部レイアウト:(デジタルパススルー機能があればこちらも欲しいかも)
Eversolo DMP-A8 Eversolo DMP-A8


                 DF-75 Bliesma M74B構成の設定値(Memory5) / 2024年7月16日
項目 帯域 備考
Low Mid-Low Mid-High High
使用スピーカー
ユニット
- SONY
SUP-L11
(Experimental)
BeW-16
Bliesma
M74B
Scan Speak
D2908
-
能率
能率(90dB基準相対差)
dB 97.0 (+7.0) 87.5 (-2.5) 97.0 (+7.0) 92.0 (+2.0)
定格値
DF-75の
出力設定
dB +1.8 +1.0 +1.2 +4.2
マスターボリューム
アッテネーション
dB -9.0 -2.0 -3.0 -0.0
各チャネル毎の設定
パワーアンプでの
GAIN調整
dB 0 0 -12.0 -12.0
 
スピーカーの
想定出力レベル
dB 89.8 86.5 83.2 84.2
合成での
出力概算値
クロスオーバー
周波数
Hz
340
340

770
770

3000
6500

High Pass

Low Pass
スロープ特性
設定
dB/oct flat-12 12-12 12-12 6-flat
DF-75 DELAY
設定
cm -19.0 +22.0 +21.0 +20.0 相対位置と
測定ベース
極性 - Norm Rev Norm Norm  
DF-75 DELAY COMP
(Delay自動補正)
- ON 自動補正する
DF-75デジタル出力
(Full Level保護)
- OFF 保護しない

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