音を進化させたい(その2):
機器が若干でも変わり、またその結果に多少なりとも納得できると、しばらくはそれで満足するのだが、やがて「ならばもっと良い音を」という気持ちが生まれてきてしまうのはもういつものことで最早仕方の無いことなのだろうか、、、それがオーディオファイルの性というものなのかもしれないのだけれど。
クロスオーバー周波数が微妙なレベルで調整できるようになったことに加え、低域をパラメトリックイコライザで補正した音は音楽再生における安定感という観点で評価できると思うのだが、ベターよりベストを、という気持ちが抑えられなくなるのだ。もちろん、今までの経験から「ベスト」という最適解にたどり着く事は至難であることは充分理解しているのだが、それでももう少しもう少し、とチャレンジしてみたくなる。
従来のリスポジにおいて微調整を加えるステップをいろいろとやってみて、この過程で改めて思いが至ったのは、「リスニングポジション固定」での調整では気持ち的にも補正に頼ってしまうことになりがち、という点。リスポジに位置的な制約がある場合は仕方の無い面もあるが、ある程度の自由度があるのなら、まずは「低域が一番気持ち良く鳴る」という場所を再度特定し、そこからの調整の方が良さげなんじゃないかと。
これ自体はある種当たり前の様な気もするが、習慣のように「いつもの」リスニングポジションを定めてしまっているでの、まずはこれを否定して、即ち白紙の状態からトライしてみよう考えてみた訳だ。今まで積み上げたものを放棄する感もあって多少不安もあるのだが、ブレークスルーを望むなら敢えてこの方法でやってみる必要があるだろう。
マイクを持って距離を測りながら前後左右にウロウロしながら記録と感想のメモをとる。部屋の中の相対的な位置によって低域のレスポンスは当然ながら変化し、山谷の状態も変わる訳だが、感覚としては100~150Hz辺りが谷となるような場所で音楽を聴くと美味しくない。この周波数のレンジは絶対的なものとして客観化することはどうにも難しいが、山となる場所の方がどうも良い感じである。常識的に考えれば、なるべく山谷の少ない場所がいいはずなのだが、、、
(注記)低域の測定は実際のところ案外と難しく、正確な位置や距離とレスポンスとの関係はシミュレーション結果も参考とした方がベターと思う。
測定マイクの上にレーザー距離計を載せて実測:
谷の位置では音圧の不足感があるので、バランスをとろうとして低域のレベルを上げることになってしまうのだが、これが多分弊害となるのではないだろうか。音楽としての力感、エネルギーはやはり低域にあって、それを単にレベル調整で補おうとすると却って他の周波数帯域へ混濁感をもたらすことになる。従って多少山となる場所にてバランスを取るように低域を抑えて使うという手法がもしかしたら合理的なのではないかとの仮説である。
もちろん、1ミリだの数ミリだのという調整は困難だし、実際聴いている方の頭も動くので、まぁ5cm程度の位置に収まればよしとする感じである。我が家の左右のスピーカーの間隔は2.6m。正三角形の頂点をリスポジと想定する場合は左右のスピーカーを結んだ仮想的な底辺からは2.2mとなる。今まではこの基準でリスポジ設定としてきたが、ここから40cm後方の位置が低域の充実感があるように思われる場所である(左右の各スピーカーまでの距離は2.6mから3.1mへと伸びる)。またこれに合わせてクロスオーバー周波数を見直して最適化を図る。
仮置きのリスポジ位置で再生と粗調整を行ってみるが、充実感という観点で悪くはなく上記の仮説もあながち間違ってはいないかも。さて、その上で求めるポイントは音楽への没入感と心地良さである。大音量に依存せずとも満足できるようにこの点を高めたいと思う(無いものねだりかもしれないが、、、)。
最終的には測定ではなく、音楽を聴いての評価、微調整をすることになるのだが、ここも音源に依存する部分が大なのでジレンマもあって別の次元の難しさは残る。完璧と思える音源は極めて少ないけれど良い音源であればある程、音源の評価なのか、システムからの出音の評価なのか、ここが判然とはせず明確には切り分けられない。良い音源はシステムの欠点を隠してしまう傾向にある。周波数特性も一定の枠に収まっていれば音楽の再生にはあまり相関関係が無いのかもしれないと思うこともあるが、一方で音の質感、品位という点は極めて大事だとも思う。雑味は極力排除されねばならないのだ。結果として好きな音源がもうこれ以上は無い、という位に鳴って欲しいと思うけれど、全ての音源をカバーするまでの普遍性はまだまだ獲得できてはいない、、、
音の視点で云えば、純度、濃さ、厚み、実在感、、、そういうものが音楽の満足度の上で重要なんじゃないかと思う。機器を揃える、買い換えるということだけでは幸せにはなれず、今ある装置(吟味は必要だが)からどのように音楽を引き出すか、この点こそがオーディオの真髄なんじゃないだろうか。自分としては機器の評価や比較(差があることは否めない)ということ自体にはあまり意味を感じていなくて、トータルな視点で手持ちの機器の能力を発揮させてあげるように育てる(熟成させる、進化させる)こと。究極的には部屋が音楽で満たされて絶妙の空間表現となり、そしてそれが自分にとって「幸せの音」になっていれば、、、このことがやはり目標であり目指すべきものだと考えている。
DF-75 Bliesma M74B構成の設定値(Memory5) / 2024年8月1日
項目 |
帯域 |
備考 |
Low |
Mid-Low |
Mid-High |
High |
使用スピーカー ユニット |
- |
SONY SUP-L11 |
(Experimental) BeW-16 |
Bliesma M74B |
Scan Speak D2908 |
- |
能率 能率(90dB基準相対差) |
dB |
97.0 (+7.0) |
87.5 (-2.5) |
97.0 (+7.0) |
92.0 (+2.0) |
|
DF-75の 出力設定 |
dB |
+0.0 |
+1.0 |
+1.2 |
+3.9 |
|
マスターボリューム アッテネーション |
dB |
-9.0 |
-2.0 |
-3.0 |
-0.0 |
|
パワーアンプでの GAIN調整 |
dB |
0 |
0 |
-12.0 |
-12.0 |
|
スピーカーの 想定出力レベル |
dB |
88.0 |
86.5 |
83.2 |
83.9 |
|
クロスオーバー 周波数 |
Hz |
~ 300 |
300 ~ 680 |
700 ~ 3200 |
6100 ~ |
High Pass ~ Low Pass |
スロープ特性 設定 |
dB/oct |
flat-12 |
12-12 |
12-12 |
6-flat |
|
DF-75 DELAY 設定 |
cm |
-19.0 |
+22.0 |
+21.0 |
+20.0 |
相対位置と 測定ベース |
極性 |
- |
Norm |
Rev |
Norm |
Norm |
|
DF-75 DELAY COMP (Delay自動補正) |
- |
ON |
自動補正する |
DF-75デジタル出力 (Full Level保護) |
- |
OFF |
保護しない |
|