オーディオ日記 第57章 道の向こうへ(その15)2024年 5月27日


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concave vs convex:

前回 の話題としたMarten Coltrane Quintetに搭載されている「Convex Carbon」の中低域ユニットの形状が何とも魅力的である。Marten社は自社では(推測の範囲であるが)ユニットを生産しておらず基本的にOEM調達なのでどこかにベースとなるユニットがあるのでは? そう思っていろいろと検索をしてみたが、「これだ!」という単体ユニットの情報にはたどり着けなかった。

MorelにはConvex(凸型)形状のCarbon振動版を持つ車載用のユニットがあるのだが、詳細に見ると多少Carbon振動板の作りが異なるようにも思えるのでMorelのユニットが原器となっている訳ではなく、おそらく別物だろうと思う。となると、、、?

BliesmaにはConvex形状(一般的にはドーム型と呼ばれる)を持つミッドバスユニット(Bliesma M142A)があって、このユニットも素晴らしいのだが振動板はアルミマグネシゥム合金である。Bliesmaではこれと同サイズのユニットでベリリウム振動板を搭載した(今となっては幻の) Bliesma M142B の開発計画があったのだが、ほぼ唯一のベリリウム箔製造会社であるMaterion社からの供給が制限されてしまうことになった事情(この辺りについては、昨年 ここ に掲載した)から実現には至っていない、というとても残念な経緯がある。

Bliesam M142A:左端はユニットの背面(画像はHiFiCompassより借用したもの)
Bliesma M142A
(注記)このユニットの詳細な紹介とその辺りの事情が HiFiCompass に掲載されているのでご参考まで。

ベリリウム振動板が搭載されたBliesma M142Bが今後もし登場するようであれば「万難を排して」手に入れたいユニットである。従ってCarbon振動板のユニットはSecond Bestということにはなるのだが、Marten Coltrane Quintetに搭載されているミッドバスユニットの形状は極めてBliesma M142Aに類似しているようにも思えてくる。勘繰りではあるのだが、ベリリウムが使えなくなってしまったことから、新たにカーボンを採用したユニットに設計変更したのではないか? じっと眺めているとどうにもそのように考えてしまうのだ。だが、いずれにしても単体ユニットとしては発表されていないし、Marten社がColtrane Quintet用に特注したものであれば、こちらもそう簡単には調達できることにはならないだろう(ハードルが高い程欲求は募るものだが)。

スピーカーユニットのコーン形状は「Concave(凹型)」であることがある程度の口径を持つユニットでは一般的であり、「Convex(凸型)」はツィータユニット等では多くみられる。これは振動板を駆動するボイスコイルや磁気回路の設計ならびに製造のし易さ(コスト)等も絡んでいると思われる。理想的なConvex振動板ではボイスコイルが振動板の口径とほぼ同等であるため必然的に磁気回路に対する要求仕様が異なってくる。Concave型では振動板口径より小さいボイスコイル径によって振動板全体を駆動することが殆どなので、どうしても振動板の外周部にはたわみがおきてしまう。このたわみにを抑えるために強靭な素材が模索される訳なのだが完璧とまで云える素材はない。

Convex(凸型)振動板の駆動には磁気ギャップの観点も含めて所謂リング型マグネットという形状が望ましいのだが、口径=ボイスコイルに見合う大きさの磁気回路の設計、製造の精度ならびにコスト的なハードルが上がってしまうことになる。Accuton社がCELLユニットというリング型の磁気回路を持つユニットを生産しており、そのユニットの優秀さは改めて語るまでも無い。同社の振動板は逆ドーム型なので範疇で捉えればConcave型と云える。なお、リング型磁気回路のアドバンテージは背面の磁気回路によって振動板後方の空気の流れが制限されない、という点が非常に大きい。上記左端の背面の画像をご覧いただければ一目瞭然と思う。

(注記)Bliesmaの創業者は元はAccutonの設計エンジニアだったそうで、CELLユニットとの類似点は多い。代表的なミッドバスユニットしては Accuton C186-990 があるが、パッと見で外観もかなり似ていると思う。

中低域のユニットとして使える16cm級あるいはそれ以上の口径のスピーカーユニットという観点で見ても、Bliesma社のユニットもかなり稀有なものと思うのだが、Concave(凹型)とConvex(凸型)によって実際の音の差は如何ほどだろうか。形状が凹凸どちらであっても、外観以外には大差は無いようにも思えるかもしれない。

だが、音を球面波として空気中に伝播させる仕組みから考えれば、半円のConvex型の形状の振動板である方がより自然であると思えるし、実際にポーラーパターン上のアドバンテージが(実測上も)見られる。所謂指向性が鋭くなりがちな高域ユニットにおいて、Convex(ドーム型)が採用されることが多い、ということにも通ずる。

あれこれ考えると、やはり当方としては、「Convex Beryllium」の中低域用スピーカーユニットが欲しくなる。現在使用中の一般的な形状であるConcave型ベリリウムユニットの調達も幸運で入手できたことを考えるとやはりこの要望は無いものねだりではないかとは思えるし、我慢することもまた必要とは思う。ただ、振動板の素材を同一なものにする、という今までのコンセプトに加えて、更に振動板の形状もConvex(凸型)で揃える、ということは抗い難いほどに何とも魅力的に思えてしまうのだ。

Marten Coltrane Quintetを眺めていると、やはり振動板形状ひとつであっても音の向上に繋がることが期待されるんじゃないかと、その妄想は日々エスカレートしてしまう、、、


                 Blisma M74B用4way構成の設定値(2024年4月16日)
項目 帯域 備考
Low Mid-Low Mid-High High
使用スピーカー
ユニット
- SONY
SUP-L11
(Experimental)
BeW-16
Bliesma
M74B
Scan Speak
D2908
-
能率
能率(90dB基準相対差)
dB 97.0 (+7.0) 87.5 (-2.5) 97.0 (+7.0) 92.0 (+2.0)
定格値
DF-65の
出力設定
dB +1.0 +1.2 +0.7 +3.7
マスターボリューム
アッテネーション
dB -9.0 -2.0 -3.0 -0.0
各チャネル毎の設定
パワーアンプでの
GAIN調整
dB 0 0 -12.0 -12.0
 
スピーカーの
想定出力レベル
dB 89.0 86.7 82.7 83.7
合成での
出力概算値
クロスオーバー
周波数
Hz
315
315

800
800

2800
6300

High Pass

Low Pass
スロープ特性
設定
dB/oct flat-12 12-12 12-6 6-flat
DF-65 DELAY
設定
cm -19.0 +22.0 +20.0 +19.5 相対位置と
測定ベース
極性 - Norm Rev Norm Norm  
DF-65 DELAY COMP
(Delay自動補正)
- ON 自動補正する
DF-65デジタル出力
(Full Level保護)
- OFF 保護しない

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