オーディオ日記 第49章 終わりの始まり(その2)2020年4月12日


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minim server on Symphonic-MPD:

音楽プレーヤの姿は如何にあるべきか? ちょっと大層な書き出しではある。このところ、Symphonic-MPDのラズパイ4版(現状ベータ)を軸にいろいろな構成での実験を続けてきた。充分なLinuxスキルが当方にある訳ではないので、開発者のパパリウスさんのご支援ならびにアドバイスをいただきながらである。

当方がPCオーディオに関して信条としてきたことは、「音質」、「操作性」、「安定性」という三本柱。Symphonic-MPDラズパイ4版はベータ版として細部の詰めが行われており、今後更なる音質の磨き上げも行われる由。ここ一年近くPCオーディオの一つとしてラズパイというプラットフォームに注目、いろいろと試してきたが、現段階でも音質に関してSymphonic-MPDは相当の高みにあると感じている。

自らも若干反省するところではあるが、音質を求めるあまりPC構成の機能分割等による2台、3台のPC環境にもチャレンジしてきた。そこにはそれなりの音質向上も認められるものの、安定性を損なう罠もあり、またそもそも構成を組み上げるにあたってPC廻りのスキルが不可欠になる。こうなると音楽再生を楽しむツールからPC弄りのような趣味(これ自体を否定するものではないが)になってしまい、ある意味での本末転倒、トラブルが起これば七転八倒という騒ぎにもなる。

もちろん、超廉価なラズパイであっても高価なネットワークオーディオ機器の音を凌駕したいと思っているのでそれも狙いつつ、音楽再生ツールとしての原点としてはどうあれば良いのか、ということを考え始めた。先の三本柱に加えて、「汎用性」や「単純さ、手軽さ」というものもあるのではないだろうか、、、と。

世の多くのネットワークオーディオ環境は「ネットワークオーディオ機器(PCオーディオを含む)」と「音源サーバー(NASを代表として)」の組み合わせとなることが多い。もちろん、PC単体で音楽再生プレーヤとPC内蔵音源による環境というものある。

当方のこだわりとしては、音楽再生操作(選曲、再生指示・停止)などは基本タブレット端末(iPAD miniを愛用)で行う極楽環境(操作性)なので、PCのモニターに向かい、マウスで選曲する等々の選択肢はない(乍らリスニングであればこれでも良いのだが)のでこれは除いている。

Symphonic-MPDのバックグラウンドとなるMPD(Music Player Daemon)について立ち返ってみると、このMPDは極めて多様な環境、構成、使い方にも対応できるような柔軟なソフトウエアであるし、歴史も長い。そこで、Symphonic-MPDの持っているMPDに対する高音質のサウンドエンジンをベースに、MPD自体の持つ「汎用性」や「手軽さ」を実現すれば、ラズパイ自体の廉価で取っ付き易いというアドバンテージを活かして、更なる利用者の拡大にも繋がるのではないだろうか、と考えている。

ひとつのアプローチが「汎用性」としてのUPnP化(DLNA/OpenHome対応)である。これによりSymphonic-MPDのサウンドエンジンをメディアレンダラーとして使用することが可能となる。JPLAY FEMTOやlightMPDなど、また多くのLinux系音楽再生用ディストリビューションがこれをサポートしている。UPnP化によって、多様なメディアサーバーとの接続が容易、適宜選択可能となるという大きな利点もある。(レンダラー切り替えによる比較試聴というオーディオ的楽しみも、、、)

もうひとつは、「単純さ、手軽さ」という意味で、ラズパイ1台にて完結する構成である。既に世のオーディオファイルの方々の多くはNAS(ならびにそれに匹敵する機器)をお持ちであるとは思うのだが、NASがなくても大丈夫、シンプルにラズパイオーディオを始められる、というメリットはあると思う。音源はラズパイ上のマイクロSDカードに置くというスタイルも可能なのだが、音源の維持管理や保存量を考えると、外付けUSBドライブ(HDDでもSSDでも)が便利だと思う。

当方もそうなのだが、ラズパイオーディオに取り組む内に、知らず知らずラズパイの台数が増殖してしまっている。そのようなラズパイのサブシステム化、あるいは有効利用という観点も、ラズパイ一台で完結できる構成であれば考え易い。もちろんこの汎用性確保あるいは単純構成化ということによる音質低下という懸念も皆無ではない。だが、Symphonic-MPDの高音質サウンドエンジンの威力がここでも発揮され、遜色の無い音が聴ける。

「汎用性」については、 upmpdcliのインストール とその環境設定により可能となる。「単純さ、手軽さ」については、外付けUSB HDD等で実現できる。更にはSymhonic-MPD自体をメディアサーバー化してしまう(minim serverをインストール、手順は後述)ことにより、一台でメディアレンダラー、メディアサーバーの両方を具備できる。またメディアサーバーの切り替えによって当然ながら、NASなどの他のメディアサーバーの音源も聴けるし、メディアレンダラーとして例えばiPADを選択すれば、iPADから(ヘッドフォンを推奨するが)このラズパイ上の音源を聴くこともできる。これらの構成については未だベータであることで試験的な部分もあるが、基本の機能は既にSymphonic-MPDに組み込んでいただいてあるので、シンプルにインストールし、環境設定することによって利用可能となる。

当方のオーディオ仲間でもラズパイオーディを楽しんでおられる方が増えている。達人級の方は電源、ノイズ対策、クロック換装、LANケーブル4線化などなど音質向上策にも余念が無く(廉価なラズパイには分不相応かも?)、またその成果もしっかりと音として享受できるので、取り組み甲斐はあるし、何よりもデジタルトランスポートとして既に揺るぎないポジションを獲得していると云って良いと思う。まだの方は是非是非チャレンジしてみていただきたい。

(参考)minim serverセットアップ手順(2020年4月26日改訂:Symphonic-MPD V1.0.0b12環境)

1.USB HDD/SSD廻りの準備
  音源となるUSBデバイスを接続、マウントできるようにする。
  音源はこの作業全体を行う前にコピーしておくこと。

(注記)Raspbian Busterベースの手順であるが、 こちら を参考に。sambaやntfs-3gのインストールなどは不要。ただし、Symphonic-MPDでは音質優先のため、USBポートがデフォルトでは閉じられているので「/etc/rc.local」を編集して、USBポートを開放する必要がある。また、4GBメモリのモデルの場合、 現時点ではメモリを3Gまでに制限する必要があるので、config.txtに「total_mem=3072」と追記しておく。 なお、USB3.0で使いたい場合は、 こちら を参照。

2.minim serverのインストールとセットアップ

(0)minim serverの稼働に必要なjavaをインストールする 
  #app install openjdk  (JAVA環境が既にインストール可能となっている)

(1)minim serverインストールの事前準備

  #mkdir /home/pi
  #mkdir /usr/lib/systemd/system
  #ln -s /opt/jdk/bin/java /usr/local/bin/java

(2)minim serverのダウンロードとインストール(tarでの展開のみ)
  #cd /home/pi
  #wget http://jminim.com/abra/MinimServer-0.8.5.2-linux-arm64.tar.gz
  #tar xf MinimServer-0.8.5.2-linux-arm64.tar.gz

(3)mimim serverのセットアップ
 *cd /home/pi  の状態のままで良い。(minim serverコマンド入力はすべてこの状態で)

  #minimserver/bin/setup

 *以下のようにGUI環境ではないが良いか? と聞かれるが、「y」と入力する。
  また、自動起動を使うか? と聞かれるが、「y」と入力する。

MinimServer desktop integration is not available
MinimServer automatic startup is disabled

Do you want to change these settings (y/n)?
Enable automatic startup for MinimServer (y/n)?

(2020年5月19日追記)
ここまでの作業が終了したらsystemdに登録されて自動起動が可能となっているので、以下の(4)、(5)をスキップして一旦「reboot」して良い。ただし、音源ディレクトリの指定が未完なので、再起動後minim watchからその設定を行った上で音源の初回scanを行うこと。また、minim serverの停止や自動起動の停止は「systemctl stop minimserver」、「systemctl disable minimserver」でそれぞれ可能となっているので、そちらで行うことを推奨する。なお、 minim watchはこちらからダウンロードできる(追記終わり)

(4)minim serverの初回起動
  #minimserver/bin/startc

 *初回起動時は「音源ディレクトリ」を指定するように求められるので、USB SSD上に作成した音源フォルダーのパスをここで入力しても良い(後からも設定可能。これで基本、使えるようになる)
  /USBSSD/Music  (ここでの応答例)

(注記)これでminim serverは稼働状態となっているので、メディアコントローラあるいはminim watch(こちらが楽)で為念確認しておく。稼働が確認できたら、「exit」を入力し一旦停止させる。(Teratermなどのsshツールを閉じてもminim serverは停止)

(5)minim serverのバックグラウンドデーモン化
  #minimserver/bin/startd
  #minimserver/bin/stopall (バックグラウンドデーモン状態を停止させるコマンド、必要時に使用)

(注記)ブート時に自動起動させる場合は下記のコマンドを入力して環境設定しておく。
  #systemctl enable minimserver.service

 (参考)minim serverの制御コマンド詳細は こちら に掲載されているので適宜ご参照。

(その他の重要な参考情報)
minim serverはデフォルト設定が「startupscan true」となっているため、このままでは起動の度に音源を読み込むので、音源が大量の場合は特に塩梅が悪い。この場合はWindows PCなどに「minim watch」をインストール(推奨)して、propertyを開き「startupscan false」という設定に変えて置くことをお薦めする。


                 4way構成の設定備忘録(2020年4月4日更新)設定値
項目 帯域 備考
Low Mid Mid-High High
使用スピーカー
ユニット
- Sony
SUP-L11
Sony
SUP-T11
Accuton
C51-286
Scan Speak
D2908
-
スピーカーの
能率(相対差)
dB 97 (+4) 110 (+17) 93 (+0) 93 (+0)
定格値
DF-65の
出力設定
dB +1.2 -10.0* +1.7 +4.5
*DF-65 Att ON
マスターボリューム
アッテネーション
dB -3.0 -3.0 -6.0 -3.0
各チャネル毎の設定
パワーアンプでの
GAIN調整
dB -6.0 -12.0 -6.0 -12.0
 
スピーカーの
想定出力レベル
dB 89.2 85.0 82.7 82.5
合成での
出力概算値
クロスオーバー
周波数
Hz pass

710
710

1600
1600

2500
4000

pass
Low Pass

High Pass
スロープ特性
設定
dB/oct flat-48 48-48 24-24 24-flat Low Pass
High Pass
DF-55 DELAY
設定
cm -7.0 -36.0 +28.5 +32.0 相対位置と
測定ベース
極性 - Norm Norm Norm Norm  
DF-55 DELAY COMP
(Delay自動補正)
- ON 自動補正する
DF-55デジタル出力
(Full Level保護)
- OFF 保護しない

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