オーディオ日記 第42章 枯淡の境地を目指し(その14)2018年8月22日


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音が少しでも良くなるかもしれない、という朧げな期待の元にPCオーディオ周りの整備として、 NASの排除HUBの排除 を実施し、併せてJPLAY Dual PCにおけるControl PC~Audio PC間のネットワーク設定の見直しも実施してきた。足掻くほどに若干でも音が良くなった気分がしてしまうのは人間心理としてはやむを得ないことかもしれない。

だが、いつも思うことは、微妙な音の変化が絶対値として「良い音」の方向への変化なのか、それを見極めることは容易くないし、冷静、客観的な観察・評価が不可欠だということ。しばらくはこの構成の上流で音楽を聴き続けてみようと考えている。

そこで、お次はアンプ周りの使い方の再考である。アンプやケーブル類というのは音が変わる、変わるはずがない、という論争も過去から今に至るまであり、もちろん結果としてオーディオの音は全て違うのだが、真の要因はどこにある何なのか、ということを突き詰めるのは困難でもある。アンプに関して云えば、ひとつの要素としてダンピングファクターというものがあり、これがスピーカーに対する「駆動力」であって、結果としてスピーカーの挙動が変わる(故に音も変わる)、という見方もある。これ自体は物理的、電気的にも真だと思うが、音の(特に低域)の出方は確かに変わるのであるが、これがそのまま音の「良否」を定めるものとも云い切れない、、、

現状のアンプ構成に変えてから、数ヶ月が経過し、新規導入したアンプもミントコンディションになってきた(?)かな、ということで、スピーカーユニットの組み合わせを改めて考えてみた。当初の目論見は、「4wayマルチアンプ+完全左右独立バイアンプ」というものであるが、これを実施していないので、ここから手を付けてみることとした。もちろん、以前の構成で行っていたBTL接続による低域駆動ということも頭の中にはあるのだが、上記のダンピングファクターのことを考える(BTL接続にするとダンピングファクターは低下するので)と、現状の希望は低域のマッシブさや量感を求める方向ではないので、通常の2ch駆動で行ってみようと。また、使用しているパワーアンプのダンピングファクターの違い(P-4200は500、A-35は200;メーカー公称値)があるので、それも考慮している。

組み替えた後のアンプと受け持ち帯域の構成は以下の通り。

P-4200 低域、中低域 X 2
A-35  中高域、高域 X 2

機器の配置は変更していない:


P-4200とA-35のペアーを左チャネル用、右チャネル用と分けて使用するシンメトリカル構成である。これは左右のアンプを分けるモノラルアンプ構成を意識して疑似的に真似ているもの。P-4200の導入当初はアンプの音色の観点から中低域の駆動にA-35を使用してきた経緯があるが、これを変更した。ダンピングファクターの大きい方をより低域側に使ってみようという試みでもある。A-35で高域、中高域を担当させる場合、スピーカーユニットの能率差が極めて大きい(高域ユニット93dB、中高域ユニット110dB)ため、アンプのGAINは-12dBの設定とし、マルチチャネルアッテネータで中高域を-10dB、DF-65の出力レベルで高域を+7dBとしてやっと全体の音量レベルが整う。このため、ちょっと難しい面も出るかな、と若干の危惧があったのだが、それぞれの機器の機能と性能のお陰で結果として何とかまとまった音になってくれた。

このような構成にすると、アンプから左右のスピーカーユニットへのケーブリングが短くできるというメリットもある。ただし、デジチャン~アンプ~スピーカーの結線については確認しながら慎重に行う必要がある(間違えればユニットを飛ばす)ので、ケーブルの色分けとタグ付けはしっかりと行い対策としている。なお、現状はスピーカーケーブルに対する追加のシールドや防振対策は実施していないので、この構成での音をじっくりと確認した上で改めて実施しようと目論んでいる。

結果としての現状の音であるが、高域感がしっかりあって小音量でも音楽の実在感が好ましく、また音数の多いオーケストラなどの音源においてもディテールの表現、総奏における音楽提示において余裕と落ち着きがあるなど(自己満足的ではあるが)納得感があるようにも思う。また空間における個々の楽器の定位も多少ではあるがより明確になってきたように感じられて、現時点では概ねこの構成変更は評価できそうである。

(閑話休題)

パソコンをベースにながら的に音楽を聴き始めたのはもう随分と昔になる。その頃に比せばPCオーディオ全体は飛躍的な音の進歩と使い勝手の進歩があって、厳密に考えれば「オーディオ機器」とは云い難い機器であることも充分承知なのだが、この環境を手放すことは当方にとっては最早難しくなりつつある。新しいいろいろなチャレンジが簡単にできることも大きな利点であるし、汎用的なパーツによるお手頃コストというのも捨てがたいものがある。また多様な音質向上施策というものもネットを中心に力強く共有されている。また、純粋にPC環境のCPUやマザーボードを利用した上でのオーディオ「的」な製品もまだまだ限られてはいるが出始めている。

このような中で最近思っていることはOS環境をどのように考えていくべきなのか、多くのPCオーディオユーザーはWindowsあるいはMac OSベースであることは想像に難くない。あとは少数のLinux派か。もちろん、PCそのものを多様な用途に汎用的に使う上においては、このようなOS環境の選択が妥当であると思う。だが、音に拘り究極的なものを目指そうとすれば、専用機化し、汎用的なパソコン利用から離れていくことも実体である。当方のJPLAY環境、VoyageMPD環境も結果として専用機として使っている。このような使い方において、汎用目的のOSが望ましいのか?と考えれば、これに関しては即断で「否」と云える。多くのWindows環境のPCオーディオユーザーが無駄な機能の排除、所謂「プロセスカット」にも勤しんでいるのだ。これはこれで趣味の分野としても成り立つ。だが、思う。この強力な処理能力を持つPC環境を最初から「音楽再生だけ」に特化したOSで稼動させること、あるいはOSをもすっ飛ばして専用ソフトウエアで稼動させる、ということが広がらないだろうか。シングルボード環境に近いハードウエア(かってのALIXや最近のラズパイの流れ)ではOSをLinuxとして使うものの、相応に専用機化することも可能になっている。

一般のPCユーザーが見様見真似でプロセスカットしたところで、それなりに意義はあるのだが結果としての音質向上に結びつくとは限らないので、全ては音楽再生の為だけの機能に限定させる、というアプローチがあっても良いように思うのだ。もちろん、開発の手間暇を考えれば、全ての機能を手作りすることは効率が悪いので、OSの機能を一部流用することはあってもいいと思う。この観点から考えれば、OSとしてのLinuxの機能を利用をしつつ、高品質音楽再生に特化したLinuxディストリビューションという方法はとてもリーズナブルと思うのだが、むしろこの路線は現状国内では広がりを見せていないように感じる。

世のネットワークオーディオ機器は組み込みタイプのLinuxベースで構成されていることを考えれば、あながち間違った方向ではないはず、、、音楽再生に特化したディストリビューション(Linuxであるかどうかは問わず)をダウンロードして、インストールすれば、ハイそれで終り、高品質の音楽再生「専用」環境が構築されます、というお手軽さもあって良いはず。もちろん機器と一体化されたオールインワンでも構わない。一方でUSBインターフェースをサウンドデバイスの駆動に使用していればデバイスドライバーの問題にも直面してしまう。もちろん汎用的なUSB Audio Class 2.0のサポートであっても良いのだが、それでだけでは物足りない。従って、このような専用機では、本来的にはその一歩先を見据えたインターフェースを実装する必要はあろう。観念的には「Music over IP」あるいは「Audio over IP」とも云うべき仕組みで、世には随分前からVoice over IPという技術があるし、昨今ではDanteやそれに類するインターフェースが多々ある。

そのような機器、環境をあれこれと夢見ており、標準化、一本化によって普及するにはまだ時間が掛かるかもしれないが。冷静に考えても空論ではなくいずれ出てくると信じているだが、当方の年齢と「耳の衰え」に対して間に合うタイミングになるのかどうか、、、最早それほど時間的な猶予は無いようにも思えてくる今日この頃である。


4way構成の設定備忘録(2018年8月22日更新)
項目 帯域 備考
Low Mid-Low Mid-High High
使用スピーカー
ユニット
- Sony
SUP-L11
FPS
2030M3P1R
Sony
SUP-T11
Scan Speak
D2908
-
スピーカーの
能率(相対差)
dB 97 (+7) 90 (0) 110 (+20) 93 (+3)
定格値
DF-55の
出力設定
dB 0.0 0.0 +2.0 +7.0
Analog Att
OFF
マスターボリューム
アッテネーション
dB -4.0 0.00 -10.0 -0.0
各チャネル毎の設定
パワーアンプでの
GAIN調整
dB 0.0 0.0 -12.0 -12.0
 
スピーカーの
想定出力レベル
dB 93.0 90.0 90.0 88.0
合成での
出力概算値
クロスオーバー
周波数
Hz pass

200
200

800
800

4000
4000

pass
Low Pass

High Pass
スロープ特性
設定
dB/oct flat-48 96-48 96-48 48-flat Low Pass
High Pass
DF-55 DELAY
設定
cm -12.0 +25.0 -40.0 +25.0 相対位置と
測定ベース
極性 - Norm Norm Norm Norm VoyageMPD
環境下
DF-55 DELAY COMP
(Delay自動補正)
- ON 自動補正する
DF-55デジタル出力
(Full Level保護)
- OFF 保護しない


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