オーディオ日記 第36章 歩き来た道の果て(その9) 2015年12月11日


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4wayはすっかり馴染んできて、デジチャンの設定を弄ることも既にほとんどなく、DSD音源などを中心に「音楽を聴くこと」を楽しんでいる。

ただ、それだけで終わらないのがこのオーディオという趣味なのかもしれない。音の出口の方がまとまってくると今度は入り口の方をいじりたくなるのである。まず改めて試してみたいと思っていたのがMCカートリッジ。現在我が家にはあるのは VMカートリッジ のみで、MCおよびMMカートリッジは持っていない。過去にはMCカートリッジに随分と投資してきており、経験的にも緻密な再生を求めるのであればやはりMCカートリッジに優位性があるのは承知しているが、不注意による針折れその他の事故が多くて泣かされ続け、ある時期からは使い易くて安定しているVMカートリッジでずっと妥協してきた。 昨今アナログディスを所持しているDSD音源を若干ながら入手したこともあって、両者の比較なども始めているのだが、元々アナログ再生環境は ほどほどのもの しか持っておらずもう少しブラッシュアップした上でDSD音源との比較したいと思ったことが発端である。アナログディスク再生と云えば、当方にとっての第一人者は師匠と仰ぐ milonさん である。先般オフ会にて訪問した際、MCカートリッジを試してみたいのですが、、、とご相談申し上げたところ、スペシャル品(究極の魔改造品とも思える)であるMCカートリッジとアナログディスクプレーヤをお貸しいただけることとなった。

まずはカートリッジのみ当方のアナログディスクプレーヤに装着。喜び勇んで試聴する。

MCカートリッジ、やっぱり良い。音の鮮度とリアリティが明確に提示される。そして音楽が優しい。ある部分DSD再生よりも良い! と感じる。 これは一体何故か?思わず自問する。

お借りしたMCカートリッジは以下の2点。

1.SONY XL-MC5
2.DENON DL-103

ただし、いずれもスタンダードなものではなく、ボディに対するスペシャルな改造が行われ、超々ジュラルミンのハウジングを身に纏っている。このボディ改造の音質への貢献度は非常に高いと感じる。が、普通に出来るようなレベルの改造ではない。まさに職人技と呼べる一品である。さらに FIDELIX の密着タイプのカートリッジコネクタを装備しておりこれも相当効果があるものと思う。

左:DENOL-DL103   右:SONY XL-MC5 


VMカートリッジは中庸なところもあるのだが、そこそこ聴かせてくれる安定感と万能さもある。比すれば、これらのカートリッジは音の次元が少し違う。一皮剥けたような音に変化する。これを聴いてしまうと戻れないとも感じる。特に空芯コイルタイプのMCカートリッジであるSONY XL-MC5では女性の声の自然な感じ、そして自然でありながらしっかりと切れ込んでくる音には本当に魅了される。音の質感はPCオーディオによるDSD再生では再現できない領域だとも感じる。しかし、なぜアナログの方が音が良い(と感じる)のか? これはまたしばし悩むところでもある。

次にプレーヤーを交換して実験。こちらも魔改造のプレーヤ(PIONEER PL-25E)である。ベルトドライブ用DCモーターの交換とターンテーブル用のシャフトの口径を細くする加工が行われている。さらにターンテーブルにも丸秘の技が施されており、これを電池駆動するというもの。超重量級のプレーヤとはある種対極にあるようにも感じる。ここで再現される音楽は我が家でのアナログ再考の必要性を強く迫るような悩ましさ、、、

乾電池で駆動するPIONEER PL-25E


音源として所持しているアナログディスクの全体を見渡せば、満足できる録音状態のディスク割合のはそれほど多くはない、という事実も一方にある。平均的なソースの質としてはDSDの方がやはり上だと思う。ただし、DSD音源は私見では70~80点レベルに留まってしまうのに対して、アナログは(うまく再生できた時は)90点を越えるような音を聴かせてくれることがあるのだ。この難しさと良い音を聴かせてくれた時のイメージがアナログディスクを何とかしたい、という方向にさらに向かわせてしまうのかもしれない。

アナログを再度探求してみる必要がある。一方で、デジタルはフォーマットや音源の課題というよりも、おそらくは当方のPCオーディオ自体にまだまだ改善の余地があるものと考える。アナログと合わせてこちらもブラッシュアップを考えていかねばならないだろう。やはり平穏に過ごせない、というのもまたオーディオ趣味のひとつの宿命なのだろうか。

低域についての実験:  

さて、もうひとつのテーマである。 我が家の従来からの課題なのだが、80Hzあたりに若干の凹みがあって、いまひとつ重心の低さが感じられず、特にオケでは物足りなく感じることがある。これに対して、外付けのデジイコで低域チャネルだけを補正してみよう、と思い立って挑戦してみたが、デジイコでの処理遅延が良く判らない(調整スキルのせいだと思うが)こともあり、これはという程の効果も感じられず一旦ストップしてしまっている。本来的にはデジチャンに各チャネル毎のイコライザ機能が包含されていれば全く問題ない話で、世のデジチャンはほぼそのような機能構成となっているのだが、我が家のデジチャン(DF-55)には何故かこの機能が無いのだ。(これは機能や性能上の制約というよりも別にデジイコ製品を持っていることによるメーカーのマーケティング上の理由が大きいのかもしれない)

低域に厚みをつけることに関して、他に何らかのアプローチができないだろうか、と考えている中で、ふと思い出したのが、昔仕入れた一応プロ用(?)の機械。本来はエンハンサー・エキサイターとよばれる機器で、これににBass Processorなるものがついている。何やら原理は不明であるが、強いて云えば低域のサブ・ハーモニクスを増強するものらしい。トーンコントロール的な役割とも云えるか。昔、映画を見る際に効果があるかなと思い導入したもの。

さて、これはアナログ機器なのでタイムアライメントへの影響はおそらくほぼ無いと考え、ディレイ設定などは全く変更せずそのまま接続してみた。ただし内容的にはあまり高級なものではないので効果の程は未知数ながら、この機器を低域チャネルにのみ入れてみるのである。質感のダウンがもしかしたら起こるかもしれないが、低域は250Hzのクロスオーバー周波数なので、あんまり影響は無いかな、などと多少楽観的に考えてみながら実験(=遊び)と割り切ってやってみた。 

さて、試聴開始。お~、思った以上に「効き目」があり、そこそこ低域に増強感・充実感が出てくる。これは面白い! 音楽の重心がより明確になるような感触がある。サブ・ハーモニクスの成分が多すぎるとまさに低域のトーンコントロールを入れたような感じにもなるので、程々が肝要みたいであるが、低域のスパイスとして考えてみるとこれは結構面白い効果があると再認識した次第。音楽の骨格を下支えしているというか、ある種音楽の構造的な部分が明確になってくるようで、オケが気持ち良く鳴ってくれていると感じる。これは我が家のシステムの欠点を補ってくれるようで存外に良い。

一方で低域の質とのトレードオフもあると思うので、これはもう少し比較実験を続けてみたい。今のところ音質的に気にかかるような点は顕著には感じられず、パルシブな低音、持続する低音にもそれなりの効果があるので、音楽ジャンルに対する制約もそれほど無さそうだ。ただ、一種の「加工」とも云えるのでそのあたりの是非はあるかもしれない。


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