オーディオ日記 第31章 夢の中へ(その17) 2012年12月25日


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いつもアナログディスクの再生には天国と地獄があると思っているのだが、今回もそうだった。

カートリッジは永年オーディオテクニカのAT-ML170、AT-160ML、AT-150MLXといういずれもVM型のものを愛用している。MC型が嫌いな訳ではないが、幾多の針折れにより結構泣かされて続けて来たので、ラフに使えるVM型に何となく安心感があった。しかし、一番気に入っているAT-ML170は時代の流れによりもう10年以上前に交換針の入手が出来なくなってしまい、所有している2本の針を後生大事にしてきた。常用としては交換針が入手可能なAT-150MLXを使用しているのであるが、久々にこのAT-ML170でアナログディスクを聴いていたところ、音楽再生中に何やら聴くに堪えないノイズが入るようになった。針先に大きなゴミがついてしまったかなと思い再生を中断。針先を確認。何と、カンチレバーが半折れ状態になってしまっている! 通常のプレイバック中カンチレバーが折れる、ということはあまり経験がなかったが(不用意な作業や強引な針先清掃が事故の大半)、完全に折れて取れてしまった状態ではないが、何しろ1990年代後半辺りに購入した針である。ボロンカンチレバーといっても寿命もあるのかもしれない。残されたもう一本の針はこれより古いもの。こちらは大分針先が擦り減ってしまっているものなので、本気モードでの再生には向かない。気に入っているカートリッジも針先がなければどうすることも出来ない。これにはしょげた、、、

となると、新たなカートリッジを考えねばならない。この際改めてMC型とするか? ただ、最近は中古のレコード (それも格安のPOPSや懐メロ・フォークなど) を購入して楽しんでいる(懐かしんでいる?)レベルなので、ハイエンドに類する高額・高級品は当方にとっては正に猫に小判であろうと思う。さりとてMM型でこれは欲しい、という製品は恨めしいことに最近はあまり存在していない。

いや待てよ。オーディオテクニカで確か昨年辺りにサファイヤカンチレバーの50周年限定モデルがあったような。でも、限定モデルであればとっくに売り切れか、、、しょげつつインターネットで探してみると、あれれ、限定モデルと云いながら、あちこちでまだ売られているではないか。いや、本当はAT-ML170の交換針が欲しいんだ!こっちを売ってくれよぅ。けれどアナログディスクは一握りのファンを残して衰退のご時世なので仕方ない、AT-150ANVとやらに挑戦してみるとするか。

左から購入年代順にAT-160ML、AT-ML170、AT-150MLX、AT-150ANV:


同じようなVM型なのであるが、やはり音にはそれぞれに個性がある。AT-160MLとAT-150MLXは軽針圧タイプ(標準1.25g)で共通して比較的元気の良い輪郭のはっきりした音がして、POPS系などにはぴったりと思う。AT-ML170は比すれば針圧も少し重くしっとりとした音でクラシックなどはこちらの雰囲気の方が当方には好みである。なお、早速調達したAT-150ANVを試してみたが、AT-ML170と針圧も同じくらいのレベル(標準1.5g)であり、音も近いように感じる。これは、何とも幸いこの上ないことである。あるいは「針の無い」地獄に仏とも云って良いのかも知れぬ。ただし、AT-150ANVの針はAT-ML170との互換性は無い。AT-150MLXとAT-160MLに対しては一見した限りだが形状的にも互換性がありそうである(現状未確認だが)。無くならぬ内に交換針(サファイヤカンチレバーのものなので、こちらも限定品らしい)を手配しておく必要があるかもしれない。

AT-150ANVの音をうまく表現するのは難しいが、徹底的に共振を抑えている設計の効果か「静けさ」を感じる。ざわっとした感じはまるでしない。それでいて音の芯や充実感があり、ピアノの打鍵もぴんぴんと立ち上がってくるし何より音色が丸くならずチャーミングである。ただし、鮮鋭に切れ込むような音ではないので、VM型の傾向ではあるやも知れぬ。1960年代のボーカル系のディスクも再生してみたが、アナログディスクのノイズも心なしか控えめになり、古い録音であっても声の存在感・密度感がしっかりと感じられて好ましい。



しょげたところが起点となったアナログディスク環境の補強であったが、結果としてはほっとしたものとなった。アナログは神経を使うところも多くベストな再生は結構難しいが、やはりこれはこれで楽しいものである。


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