オーディオ日記 第34章 ブレークスルー(その10) 2014年9月19日


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4wayマルチアンプシステムへの試行錯誤が結果として 3way+oneというスタイル に落ち着き、これはこれでさらに熟成をさせていかなければならないが、同時並行的にデジタル入力系も見直していきたいと考えている。3way+oneの方式が今の自分にとってとてもいい感じに仕上がってきているのであるが、デジタルとアナログを比すれば音質的な観点からは不思議なのだがアナログ(もちろんソースにもよる)に軍配を上げざるを得ないのだ。同じ楽曲であってもマスタリングや(アナログでは)カッティングの過程の違いによって微妙な差が出るものとは認識しているが、やはり我が家においてはアナログのアドバンテージが存在する。単にアナログ礼賛をするつもりはなく、アナログの 天国と地獄 もそれなりに経験しているのだが。

優れた楽器というものは人類が過去からの淘汰を続け、今に至るまで営々と築きあげた大きな財産であり、その音色が人々を酔わせ魂を震わせるのだ。オーディオであってもその楽器が持っている固有の音色とオーラの片鱗が感じ取れなければならないと思う。生に比してオーディオのビハインドはアナログとかデジタルとかの問題に係わらず残念ながら多々あると思うのだが、44.1KHz/16bitの音源の再生ではそれをより強く思うことがしばしばある。

オーディオシステムの評価は音源(曲、演奏、録音の三拍子が揃ったものを基本として)によって当然ながら変わる。敢えて云えばシステム(+部屋)と音源の相性というものも皆無ではないと思う。我が家にてアナログにアドバンテージを感じる部分は、この音源の差という根源的な部分で不可避なのか、それともフォーマット(LPとかPCM、DSDとかいう部分)に起因するものなのか、これは永遠の課題なのかもしれない。一方で我が家のシステムの「デジタル系の弱さ」というものも間違いなくあると思っている。今後これをもう少し煮詰めて行きたいのだ。デジタル再生ではCDトランスポート(DP-90)を使う機会は現状ほとんど無く、PCオーディオが利便性の観点からも中心となっており、これはもはや代え難い。PCオーディオのメインは再生専用WindowsマシンによるBug Headで、サブがALIX3D2によるVoyageMPDである。いずれもUSB DDCとしてJAVS X-DDCを経由してデジチャンに直接デジタル信号を送り込んでいる。JAVS X-DDCはXMOSベースのUSBインターフェースであり、その汎用性(特にLinuxとの相性)と音質を評価して使っている。また、USBケーブルは電源線を廃した自作の30cm程度のもの。

(注記)X-DDCの後継となる2機種(X-DDC Plus、 X-DDC Reserve )においてはいずれも電源線を廃したUSBケーブルでは認識されないような仕様になってしまっている。販売代理店でもこの仕様変更の詳細は不明とのこと。

デジタルの送り込み部分について、現状のこの構成は何とか一応の合格点ではあると思うが、さらにステップアップできないかいろいろと模索してみたい。つらつらと考えるに大きく分けてもいくつかのアプローチ方法がある。

1.PCオーディオで(やり残していることを含めて)現状の構成で練り上げるとすれば

(1)USBケーブル(の変更)
    より短いケーブル
    線材の吟味、シールド吟味

(2)USB拡張ボードの利用
    マザーボード直のUSBポートではなく、PCIE(+別給電方式)によるUSBポートの使用

(3)電源(主としてDDCへの給電)
    アナログ電源(あるいは出川式電源など)

(4)再生ソフトウエアの選択
    Bug Headを超える再生ソフトウエア(があれば)

2.機器の変更を考えるとすれば(現時点では妄想レベル)

(1)USBインターフェースデバイスの変更
    これには二つの方向性が考えられる
    ・USB DDCとしてPCMのデジタルアウトに限定するもの
    ・USB DACとしてPCMtoDSD変換やD/A変換まで行うもの
    (ソフトウエアでDSD変換するものチップレベルでDSD変換するものの二通りがあるが、デジチャンへはアナログ入力となる)

(2)USB以外のオーディオインターフェースを使用(MacOS環境が中心でD/A変換まで行われる)
    ・FireWire
    ・Thunderbolt 

3.PCオーディオ以外の範疇としては

(1)DSD対応、あるいはPCMtoDSD対応の機器への変更(例として)
    ・SFORZART DSP-05(率直に云えば高価だが欲しい機器でもある)
    ・SONY HAP-Z1ES
などが候補になろう。これらの機器はDA変換まで行ったのち、デジチャンへのアナログ入力の構成とならざるを得ないので、USB DACへの変更と同じ課題を含んでいる。

上記のアプローチ方法を別の視点で整理すると、
1.デジチャンにPCMデジタル信号のまま入力する
2.デジチャンに前段でDA変換を行ったアナログ信号を入力する
という分類もできる。実はこの観点は我が家にとっては大きな方向性の分岐点でもある。デジチャンの導入において、デジタルソースはPCM信号のまま入力することに軍配が上がっているのだが、この選択に対して変更となる可能性もあるのだ。今までの我が家での経験ではデジタルソースをアナログ信号に換え、さらにデジチャンでA/D変換、D/A変換を加えることのメリットを見出せていない。しかし一方で、この方式によるマルチチャンネルシステムの音量調節に大きな課題を抱えることにもなってしまった。(未だに根本解決はしていない課題)

今回のチャレンジの前段のアナログ優位かもという点、これは「デジチャンにアナログ信号」を入力している訳だ。それでも優位が認識されるということは、余分なA/D変換、D/A変換があったとしても、アナログ信号のレベルで充分優位性が担保されていれば、デジチャンでの変換の部分はネグレクトすることが出来るのかもしれない、と思う部分もある。大いなる自己矛盾!

従い、これはもう一段深堀して試していく必要がある、、、そう考えざるを得ないのだ。

もちろん上記に挙げたようにいろいろなアプローチ方法が考えられるので一朝一夕には答えは出ないであろう。しかし、やってみなければ結論は出ない、という信条からすれば、やらざるを得ない。

手始めにスタートしたことは以下の通り。
試行錯誤1.機器の試聴
  ・HDDプレーヤー(SONY HAP-Z1ES)
  ・ネットワークプレーヤー(MARANTZ NA-11S1)
試行錯誤2.USBケーブルをあれこれと試す (PCからDDCへの送り出しの重要な部分との認識から)
試行錯誤3.USB拡張ボードを試す

まず試行錯誤1.について言及すると、久々に秋葉原に出向き、古くからあるオーディオ店にて試聴させていただいたが、いずれも残念な結果に終わってしまった。これは必ずしも当該機器の問題ではなく、(おそらく)それを試聴するシステム全体の音が求める水準に達していないのだ。この点は(往年の秋葉原を知っているものにとっては)ちょっと寂しいのであるが、やはり自宅にてしっかりと聴き込まねば正当な評価できないと思う。従ってこれはひとまずペンディングとした。(SFORZATO DSP-05は是非とも聴きたい機器なのだが機会なく未試聴)

試行錯誤2.のPCからDDCへ送り出すUSBケーブルの実験である。世の中にはかなり高価なオーディオ用と銘打った製品も存在するが、評価の高いケーブルを単純に購入する前にいろいろと試してみる価値はあると思っている。音に影響があると思われるのは、線材(OFCとか銀線とか)やシールド方法など、また単純に長さの問題もある。コネクターのメッキなども影響あるかもしれない。従来は30cm程度の自作USBケーブル(電源線を廃したもの)を使ってきているが、これを究極的に短くしたらどうなるか、まずは実験してみよう。

いろいろと探してみると、世の中には、
1.15cmのUSBケーブル 
2.ケーブルレスUSBコネクタ(コネクタAとBが一体化しているもの)

などちゃんと存在している。もちろんそれぞれの存在理由があるものと思うが、今回は15cmという極短のUSBケーブルを2本調達し、電源線のあり、無しで従来のケーブルと比較してみようと思う。ケーブルレスのUSBコネクタも面白そうだが、これは基板レベルで連結するような目的のものだろうか、電源線を廃することが出来ないので、これは別途とした。なお、せっかくの比較なので、いろいろと取り混ぜてみることに。実験環境はVoyageMPD シンさんバージョン(ALIX3D2ベース)、音源は44.1KHz/16bitアップサンプリング無し。

1.15cmのUSBケーブル(電源線無しのもの)
2.15cmのUSBケーブル(電源線あり)
3.30cmのUSBケーブル(電源線無しの自作ケーブル、従来使ってきたもの)
4.90cmのUSBケーブル(電源線無し)
5.90cmのUSB3.0ケーブル(電源線あり)  (注記)JAVS X-DDCはUSB3.0のコネクタ装備

(注記)実験に使用した15cmUSBケーブルは HOSA製 オーディオインターフェース用ケーブル。
   手前が電源線(赤)をカットしたもの


答えは比較的簡単に出た。90cmのもの(4と5)は鮮度感の不足と所謂デジタル臭が感じられて好ましいとは思えない。30cm(3)でまあまあ合格かなとなるが、やはり音の気配には質感的な不満も僅かながら残っている。15cmでは音の輪郭がよりスムーズになったような気がする。ただし、電源線の有無については有意差を感じることはほとんどできなかった。総じて短いものの方が好ましいというごく単純な結果だ。なお、15cmの長さにおいて電源線の有無を判別できると思っていたので自分的にはちょっとショックでもある、、、実際に聴くことによる現実は必ずしも理論的なこととして頭の中で考えていることと一致しないという典型例かもしれない。

世のオーディオ用USBケーブルをググってみると30cm辺りが一番短いか。もっと短いものもあってもよいと思うのだが、探し方が悪いのかも。実は拙宅の各種ケーブル類はほとんどが銀素材である。銀線が自分にとっては好ましく感じられるのだ。この観点からオーディオ用USBケーブルでも銀素材を探すとちょっと驚くくらい高額である。高くても音さえ良ければ異存は無いのだが、今回の実験からはとにかく短い方がより好ましいので、15cm~20cm程度を探すが、見つからない。最低でも30cmからである。それも種類はかなり少ない。以前にどこぞの雑誌の付録で20cmのものがあったようなのだが、、、これは今更手には入らないだろう。

30cmの長さで妥協するとすれば、 WireworldのStalight7 辺りだろうか。しかし電源線を簡単にカットできるような構造ではなさそうだ。オヤイデのContinentalというUSBケーブルも銀線ということで食指が動くのであるが、最短でも60cmなのでターゲットには入り難い。となるとやはり銀線ベースの15cm長の自作ということになるか?現状の30cmを15cmにカットしてしまうという手もあるかも。 いずれにしても15cmの長さがプラシーボでないことを確認するためにはもう少し聴き込む必要もあるので、新たな調達・製作については少し間をおいて考えることにしよう。たがしかし、この15cmの長さになったとて、冒頭にあげたようなアナログを越える音にはならないのだ。次はDDCに対する電源を試さねばなるまいとも思っているのだが、一方で、PCオーディオにおけるUSBインターフェース(USB Audio Class 2.0)というのは何らかの限界があるのかもしれないという気もする。MACの世界ではFirewireがあるし、新しいThunderboltというより高速仕様のオーディオインターフェースも出始めている。また、USBを使用せずにPCから直接PCM信号を出力するような仕組み(PCIなど)も従来からある。ネットワークオーディオ製品などでは基板から直接PCM信号を取り出す構造がほとんどである。確かにUSBインターフェースはPCオーディオにおいてとても手軽に利用できるものであるが、音により拘るのであればこの辺りはもう少し視野を広げて研究してみないといけないのかもしれない、と改めて思う。

そこで、試行錯誤3.のUSB拡張ボードを使用した実験を行ってみた。USB拡張ボードにはいくつかの種類があるが、PCIEでUSB3.0をサポートしているもの、拡張ボードに専用の電源(SATA電源)を使用するものという前提で購入した。

実験用にインストールした USB 拡張ボード

基本的にマザーボード上のUSBポートと拡張ボードのUSBポートで音に差が出るという根拠はほとんど無いのだが、USB Audio Class2.0に対して充分な速度アドバンテージを持つUSB3.0チップの性能であることと、マザーボードからの給電ではなくパワーサプライからの直接的給電という二点で何らかの音の差が生じるのではないかと素人レベルで考えた。少なくともより安定的にかつ電源ノイズの少ない信号を送り出せるのでは?という推測である。ただし、拡張ボードへの給電の本来の目的はUSB3.0では2.0に比してより大きな電力の供給ということであり、そもそも電源線をカットしているUSBケーブルを使っているので、論理的に考えれば、あまり意味がないこととも思う。PCオーディオの世界でこの観点に注目し製品を送り出している会社は当方の知る限り SOtM くらいか。ただし、ここの製品はUSB2.0までの規格である。また、Bug Headの開発者もUSB拡張ボードを使用することのメリットに言及している。今回テストしたUSB拡張ボードはオーディオ用という訳ではなくとても廉価のもの。お遊び実験には手軽だし、これで何らかの効果が感じられれば儲けものというスタンスである。

この実験はPCベースとなるので、Windows環境下再生ソフトはBug Head 3.37で行った。Quaintの設定で88.2KHz/24bitへのアップサンプリングを行っている。
(注記)現在Bug Head 3.73が最新でさらに新しいベータもあるようだが、この最新版は従来バージョンと音の印象が結構変わってきており、より鮮度の高い音になったように思う。3.37は比すれば落ち着いた感じで今のところこのバージョンを愛用している。

さて実験結果であるが、これは好ましいと感じた。ボリューム位置は変わらないのに不思議に音圧感があり帯域的にも上下方向にも広がったのではと思わせる。とにかくUSBポートを差し替えれば簡単に比較試聴ができるので、試聴用ソースを何度も繰り返して聴く。総じて同じ印象となる。一方でBug Head3.73に変えて聴くと鮮烈感が強まるような気がして、居眠りしながらMozartを聴くという当方の指向とは外れてくるようにも感じた。この辺りは音源と聴き方、好みの差なのかもしれないが、こちらの方が良いと思う人も多いかもしれない。いずれにせよこのUSB拡張ボードの存在意義は充分にあり我が家のシステムでは定位置となった。

拙い遊びの範疇の実験ではあるが、オーディオ趣味とは面白いものであると改めて思う。


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