オーディオ日記 第34章 ブレークスルー(その8) 2014年7月14日


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DEQ2496にかわるデジタルイコライザとしてfoobar2000の31バンドのイコライザDSPを 試して きた。イコライザとしての効果はしっかり得られるのだが、音は多少ぱりっとした感じになることはやはり拭えない。クラシックをメインに天上気分で居眠りすることを至上としている当方にとっては及第点はつけられても求めるベストサウンドには届かず、少し悶々としている。

音楽再生ソフトとしてはBug Headでアップサンプリングと24bit化した音(Bug HeadのSound Optimizer OptionはQuaintである)が現在の自分にとっては唯一無二なのだが、これを凌駕することはこのfoobar2000+DSPモジュール構成ではできていない。Bug Headであろうとfoobar2000であろうと同じPC上のソフトウエア処理なので、PCの性能や電源の問題ではなく、DSP処理における演算ロジックそのもの、あるいはSinc補間処理の違いに起因するものと推察している。さて、それでは我が家のリスニングルームにおける周波数補正の課題に他のアプローチ方法があるだろうか。一から考え直してみても、一番手軽なのはデジタルイコライザーであることは論を待たない。ただし、その音質に納得できないことがそもそもの始まりなので、堂々巡りをしてしまう。(ある特定の帯域だけを持ち上げたいのだが、デジイコでは実際はその持ち上げたい帯域だけ除いて全体のレベルを下げることになるという仕組が好ましいとは思っていないこともあり、それが精神衛生上でもひとつのマイナス評価の遠因になってしまっているかもしれないのだが)

一方で、マルチアンプの4way化について最終判断が出来ず悶々としている状況でもあるので、ここは何とかブレークスルーしたいのだ。mid bassユニットを加えた4way化と3wayでは前者が周波数特性の平坦さで勝り、後者が音色の一体感という観点で勝っていると判断している。それ故、現状は高次のスロープ特性を使用した3wayを常用としていることから多少悩みつつも脱却できないのだが、今まで試してきた4wayへのチャレンジをこの低域補正の領域に使えないだろうか、とふと思い当たった。

我が家のリスニングルームの根源的問題だと思い込んでいる70~80Hz付近の落ち込みであるが、サブスピーカーであるELAC BS403を 計測する とリスニングポイントでも意外なほどフラットであり、特に低域は100Hzあたりにバスレフの効果を利用していると思われる適度な膨らみがあり、これが音楽を楽しませるような周波数特性ともなっている。この辺りはメーカーの音作りの上手さだと思うのだが、この周波数特性がELAC BS403で出せるのであれば、そもそも部屋の影響はあるにしてもメインシステムのウーファー側の問題もあるのではないだろうか。もちろんエンクロージャーとの相関もあるものと思うのだが。もしそうだとすれば、イコライザーなどで強制的に低域を補正する方向が結果としてベストではないのかもしれない。となるとこの不足する特定帯域の増強にはサブウーファーという選択肢が浮上してくる訳だ。実際のところ不足しているのは70Hzを中心として63~80Hz辺り。この帯域だけを増強できないだろうか。一般的なサブウーファーではクロスオーバー周波数以下の帯域は全部出てくる製品仕様がほとんどである。我が家のシステムでは50Hz以下はしっかりと出ていることもあり、それでは却って50Hz以下の帯域はだぶついた状態になりかねないという危惧がある。そこで考えついたのが、変則的な4wayとしてデジチャンでスーパーローのチャネルを設定し、受け持たせる帯域を我が家で足りない周波数帯域だけとする方法だ。この考え方であれば、メインの3wayはデジイコもイコライザDSPも通す必要がない。そして不足している帯域を4チャネル目のスーパーローチャネルで「その帯域だけ補う」というあまり聞いたことの無い?前代未聞?の方式だ。

本格的に対応するには、サブウーファーあるいは相応のユニットを仕入れないければならないのだろうが、まずはこのアイデアが実用になるものか、実験してみることが手っ取り早い。すぐに用意できるのはサブスピーカとして使用しているELAC BS403あるいはPC部屋のヤマハのパワードスピーカなのだが、手早くやるために元々リスニングルームにあるELAC BS403を使用してみることとした。このBS403は2wayでウーファーは150mmしかないので、ちゃんと低域が出せるのか?という疑問が無い訳ではないのだが、計測した限りでは50Hz 以下はともかく、80~100Hzあたりのレスポンスはしっかりと出ている。(当然このサイズでバスレフの効果を使っているので、低音の質としてはベストとは云えないと思うが)

とにかく思い立ったら実験するのが早い。このスーパーローを加えるという4way構成もデジチャンのおかげでさくっと環境が整う。受け持たせる帯域はまず50~100Hzとして両端は-48dB/Octのスロープ特性とする。出力レベルは先の4wayのトライでmid low帯域とした時に調整したものがあるのでそれと同じにする。まずは単体でShort Sign Sweepの音出しをしてみるが、いかにもサブウーファらしいム~ンとした音にはならないような出音となる。これなら低域がちゃんと入っているソースでもあまり大音量にしなければ破綻しないかもしれない。Omni Micで単体チャネル、4way状態、オリジナルの3way構成と計測するが受け持たせる帯域があまりにも狭いせいか、はっきりとそれと判るレスポンスの違いが計測できない。計測時の暗騒音のせいもあると思うのだが。何だろう、、、、これは失敗かもと不安が頭をよぎる。

計測だけがすべてのメジャメントではないので、音楽を聴きながら調整することにした。ちょっとどきどき。クラシック系の音楽から聴き始めたが、およよ~結構音楽に充実感、安定感がある。低域が増強されたと明確にわかるような効果ではなく、音楽のバランスがどっしりと落ち着いたような感じでこれは何だか好感触である。オケ、合唱、オルガン、チェロやコントラバスなど一連の音楽を聴くが、総じて印象が良くなる。ことさら低域が強くなったような感じはない。また、心配していた低域の質感の劣化もほぼ感じない。多少受け持ち周波数帯域を上下させてみたが、それほど顕著な差は感じられないものの、最初の50~100Hzの設定が一番しっくりとくるようだ。受け持ち帯域を多少変えても微妙な差はあまり出てこない感じなのだ。

オルガンやベースなど低域のたっぷりしているソースではこのスーパーロー担当のアンプの出力メータがかなりしっかりと動くので、何となく頼もしい気にはなる。ロック系の音楽ではビンビン動く(当然なのだが)し、低域の音圧も出る。エレキベースやバスドラなどの音も心配していたブーミーな感じにはならず良いと感じだ。オフにするとちょっとパワー感が無くなって音楽が寂しくなる。ということはこれは案外成功なのかも、、、

ちょっと音量を落とし目にした時も音楽の充実感、立体感が感じられるので「大音量」前提でなくとも音楽を楽しめるというメリットもあるようだ。なお、全体のバランスに関しては、中域(SUP-T11の受け持ち)を結果として+1.0dBとした。低域のしっかりした支えがあるので、これにより音楽の総合的なプレゼンスが上がるように感じる。150mmという小さな口径にも係わらず、BS403は健闘していると云わねばなるまい。150mmウーファーで素晴らしい音(低音も)を出している ケンさん のケースもあるので、口径のサイズで悲観することはなさそうだ。ELACの150mm AXRコーンウーファ自体の実力もそこそこあるものと思う。

また、レイアウトとして高域のユニット(PT-R9)はメインスピーカ上部からBS403の上部に移動させた。この方が耳の高さに近づく、という理由である。それでも神経質な方向には行かず、むしろ音の鮮度感が上がって好ましい方向になる。

こんな方法で補正を行うやり方は例も無さそうだし、多分邪道なのかもしれない。が、デジイコ方式と比すれば明らかに好感の持てる音楽になると感じている。つまるところデジイコ(あるいはデジイコDSP)は僅かながらであっても差を感じてしまうのだ。

考え方は単純と云える。不足している部分を無理やり補正するのではなく、他のスピーカーで「ちょっと足す」だけなのだ。サブウーファーの導入という手も今までに考えなかった訳ではないが設置場所などの問題から導入には至っていなかった。本来的にメインのは3way構成だけでこのような音楽再生を実現できれば良いのだが、完全無欠ではなくやはりどこかに欠点はある。

デジタル領域での補正が自分にとって納得できる結果が得られるならそれが一番良いのだが、現実はなかなか一筋縄ではいかないみたいだ。今回の方式にも問題や欠点はある。本格的対応には相応のユニットもしくはサブウーファーが必要になってしまうこと、何よりマルチアンプの仕掛けがさらに大きくなってしまう。だが、音楽はこうあって欲しい、という方向に向かってくれる。それが結局は一番大きい訳だ。

なお、こんな実験が簡単にできてしまうのは兎にも角にもデジチャンのおかげである。デジチャンに変更したことによって、デジチャンの後段で音量調節を行うための「マルチチャネル用マスターボリューム」という未解決の悩みを抱えることになってしまったが、機能としてのメリットは計り知れないものがデジチャンにはあると改めて思う。今回のアイデアも実験もデジチャンがあって始めて成り立つものだ。多様、多彩な使い方ができることは本当にありがたい。


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