オーディオ日記 第26章 さらなる高みへ(その11) 2011年3月30日


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クロックジェネレータを我が家のシステムに加えた評価方法を頭の中でどのようなケース設定にすべきか、いろいろと考えてみた。 DACの変更による音の変化 を差し引かねばならないので、まずはEM-DAC 4399 Octの単体の音を少し聴き込んで慣れておかねばならない。そうしないと、DACの変更による影響の引っ張られてしまうことになる。外部クロックの供給の判断に際しては、あまりにもいろいろなバリエーションが考えられるので、多少限定したケースに絞って比較試聴すべきであろう。具体的には、クロック入力可能なデバイス(DDC、DEQ、DAC)には全体に供給する、しないで判断することとし、個別の機器単位でのクロック供給の有無の比較試聴しない方針とした(ケースがありすぎて比較試聴はちょっと無理)。これは、おそらく個別にコントロールすることは無いであろう、との理由による。また、クロック周波数については多彩な設定が可能であるが、DACへはマスタークロックとして192Kを入力(DACでは192Kへアップサンプリング)し、DDC(ここでまず96Kに変換させている)、DEQにはOCXの機能であるマスタークロックの2分の1(OCX上ではWC/2)という設定を行って、クロック同期された96Kを供給する。各機器には個別のBNCケーブルで接続する、などなど。とまあ、そんなことをつらつらと通勤電車の往復であれこれと暇つぶしにプランを練っていた次第である。

さて、茫洋としたプランに基づき、肝心の比較試聴である。パッと聴きの差を表現すれば、外部クロックを入力すると、音色がやや薄くなる印象である。従来の状態だと表現が難しいが音が濃いようにも感じる。音色の薄さは音像を少し小さく感じること、音が前後や上下(これも正しい表現か微妙であるが)に広がることに起因する。はっきりしていることは、従来デジタル再生がアナログに勝てないと感じていた部分(音が塊になってしまうような部分やある種の押し付けがましい感じ)がなく、とてもスムーズで柔らかく自然に感じる点である。この辺りが音色の薄い、濃い、の表現につながる印象となっている。当方の好みとしてやはり「同期したクロックの供給を行った」音に軍配が上がる。差が感じられないかもしれない、などと当初消極的に考えていたが、これは大きな間違いであった。デジタル関連のプロ用機器を連携させる際にはクロック同期が不可欠、と云われていることが実感として検証できたと思っている。

本日比較試聴に使用した当方の定番の音楽ソース毎に、少し寸評を加えてみようと思う。ESOTERIC K-03とEM-DAC 4399Q2の組み合わせを評価した際の音源と重複するが、やはり自分のリファレンスとなる曲であるので、ご容赦願いたい。なお、いずれにしてもEM-DAC 4399 Octという素晴らしい(自分にとってはQ2を越える)DACがあってこその評価であることを為念付け加える。

1.サンサーンス、クリスマスオラトリオ
(ドレスデンフィルハーモニー CAPRICCIO 10216)
まずはプレリュード。仄暗い教会の中のような荘厳な雰囲気の中で静かに弦が奏でられる、とても好きな曲である。教会の天井の高さが実感として感じられ、心地良い。次はデュオ、これは圧巻である。ソプラノとバリトンの声が空間に煌めくように、こだまするように乱舞する様は筆に尽くし難く、絶句する。そして、フィナーレはオーケストラと合唱の短くはあるが爆発である。正に「魂が洗われるがの如く」であり、オーディオの幸せを改めて感じる。

2.モーツアルト、バイオリンソナタ第34番
(アルテュール・グリュミオー PHCP-9764 )
このアンダンテカンタービレはモーツアルト中でも最上位にランクされるほど大好きな曲。 敢えて云えば、この曲の中に人生そのものが感じられる、素晴らしい曲である。ホールの響きとバイオリン、ピアノのボディの響きと実在感が渾然となり、不思議なことにこの演奏に「熱」も感じられるほど。楽曲自体は枯淡の境地そのものなのであるのに。

3.モーツアルト、弦楽ディベルティメント(KV334からAdagio)
いゃあ、演奏のスケール感がまるで違う。良いのかどうかは微妙であるが、演奏時の楽団員が出す、バックグラウンドノイズが手に取るようにも判ってしまう。しかし、音楽全体が浮き立つようになり、これは結構楽しい。

4.リンダロンシュタット、「Dedicated to the one I love」より
Baby I Love YouとBrahms's Lullaby
まず、Baby I Love Youであるが、冒頭のハープがおやっと思うほど小ぶりな音像でスタートする。リンダのボーカルは全く肥大せず、空気感に包まれたバックコーラスとの対比の中にくっきりと浮かぶ。うむむ、これは、これは。何と幸せな。
次にBrahms's Lullaby、冒頭の弦が夢のように漂う。この感覚は表現できない。まるで白い霧の中を彷徨い歩いているような気分になる。嗚呼、我がオーディオは一体何処まで行ってしまうのか、それとも辿り着いたのか、、、呻くような自分がそこに見えてくる。

5.中島みゆき、アナログレコードの寒水魚より「歌姫」
(注記)当方はDEQ(デジタルイコライザ)により マルチアンプシステム の周波数補正を行っていることもあり、アナログ再生おいても、デジタル機器の支配下にあり、AD変換とDA変換を必要としている。このため、AD変換部にOCXから96Kを供給し、DACへはCDの場合と同じ192Kのマスタークロックの供給を行う設定としている。

元々優秀な音源であることは間違いなのであるが、この構成で聴く歌の伸びやかさと透明感溢れる雰囲気は一体何処から来るのであろうか、思わず自問自答してしまう。これがアナログの魅力であり、アナログマスターの音に近づいた証拠なのであろうか。などと思うほどの音である。そうであれば、AD変換も96Kではなく、192Kでやらなければ駄目だ!まだ次がある。そして、AD変換を192Kでやるなら、DEQも現用機は96Kまでの対応なので、それも手当てしなければならない、となる。これはいったい正気の沙汰か?


歩き続ければひとつの峰に到達する。そしてそこにはそれまでに費やした一歩一歩の努力に報いてくれる景色が待っている。けれど、その先にまた頂(いただき)が見えてくる。けれど、あれは本当に頂上なのか。さても近くて遠きオーディオ道探求の細道かな。


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