2001年11月 〜晩秋ドライブ〜

彩りの終わりに
紅葉も終わりに 忙しいふりをして
季節の移ろいを気づかない。
樹々の色づく一番美しい時期を見損ない、
秋が逝く。
もっときれいだったのに、わたしたち。
樹々が囁く。
はらはらと葉を落としながら、
いつまでもそこに
鮮やかにとどまりたいと願う。
しがみついていても、
次の年の若芽の邪魔をするだけなのに。

遥かな山なみ
遠い山なみ すっかり冬支度を整え、
後は白くお化粧するだけの遠くの山々。
半分葉を落とした里の木々。
まだ緑色をした草たち。
確実に移って行く
時間の風景画の中で、
冷たくなった風を我慢しながら、
どこまでも連なる山なみを追う。
その山なみの
はるか彼方の海を追う。
その海を越えて
鳥たちは旅をしてくるのだろう。

冬のはじめの遊園地
だれもいない遊園地 ひとけの途絶えた遊園地。
駐車場の白線ばかりが
整然と並ぶ。
観覧車も目隠しをされ、
来年まで一休み。
今年はいったいどれくらいの
ドラマを眺めてきただろう。
子らの歓声と、
恋人たちの囁きと、
少し疲れた大人のため息と。
ゆっくりゆっくり回りながら、
ひとときの夢の箱となってくれた。
春まで目を閉じ、
そうしてまたゆったりと
回り始めるのだろう。
さまざまな息吹とともに。

林檎の木
林檎の木 南に育ったせいで、
リンゴが実るところは
見たことがなかった。
道端の林檎園を見つ
け思わず見上げる。
ほとんど収穫は終わっていたけれど、
まだたわわに実をつけ、
明るい陽の中で輝く木もある。
おひさまと仲良くしたしるしに
真っ赤な頬をして
誇らしげに胸をはる。
摘み取られるのを待つばかりの、
手の中にすっぽりとおさまりそうな
赤い宝石にしばし見とれながら、
なぜか
古里のみかん山に思いを馳せた。