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Toshiyuki Kikuchi Climbing School& Guide
このルート!

このコーナーには、当スクールでよく講習会を行なう岩場から、よく講習を行なう推薦ルートを紹介しました。個人的な好みも大分ありますが、どれもクライミングの面白さを本当に伝えてくれる秀逸ルートばかりです。
皆さんもぜひ、目標にしてみてください。
小川山妹岩「龍の子太郎」2p、5.8

 小川山と言うとよく「日本のフリークライミングの故郷」と形容されますが、その理由は、ここにクラックが数多くあることによります。「クラック」というと、今はちょっと変わった人の登るもの、という印象が強いのですが、1980年前後の日本にフリークライミングが入ってきた当初は、こちらの方が主流でした。というのは、クラックはボルトを使わずナチュラル・プロテクションで登れるからで、それが「岩に手を加えず、自然のままで登る」フリークライミングの理想に適っていたからです。
 さて、そうしたクラックを学ぶに最適なのが、このルートです。まず適度な傾斜の中で、クラック・クライミングの基本である「ハンドジャミング」と、「フットジャミング」、さらに中間部より上では「レイバック」を体験することができます。いずれも高度な技術は必要ないものの、それをしなければ登れない、というところが、このルートの持ち味です。
 さらに2ピッチ目はやや長いクラックに、ナチュラル・プロテクションのなんたるかを学ぶことができます。所々カムが利かず、ランナウトする、も、ナチュ・プロのひとつの原則、ということもぜひ理解いただきたいところです。
 その他、ハンドジャムの練習には「カサブランカ」5.10a、ナチュ・プロの練習には「愛情物語」5.7 を、よく登っています。



小川山屋根岩2峰「セレクション」6p、5.9(バリエーション含む)

 廻り目平からも大きく望まれる屋根岩2峰南壁を、右縁から回り込むように登る、大人気マルチピッチルートです。
 このルートの持ち味は、そのロケーションもさることながら、やはり多彩な技術が必要とされることで、下部のスラブ、チムニー、中間部のクラック〜スラブ、上部のナチュ・プロでの○○が縮みあがるようなトラバース、そして最後の(ここはバリエーションになりますが)厳しいハンドジャムクラック、と、引きもきりません。まさに小川山のエッセンスがすべて詰まったルートと言ってもよいでしょう。
 しかし、最近悲しいのは、こうしたルートに、「有名ルートだから」という理由だけで、ろくな練習もせずに来る人たちが多いことです(私もこのルートを「岳人」に大々的に紹介した手前、小川山に対して非常に申し訳なく思っています)。ひどい人になると、アブミまで持ってきている人もいます。
 確かにクライミングは人それぞれに好きな手段で行なえば良いものではあるでしょう。しかし、それでもここは小川山です。「自然を人為的に自分のところに引き下げてくるのではなくて、自分をそこまで高めていく」というフリークライミングの文化が、育まれ、大切に維持されてきた場所です。結果的に上手く登れないこともあるかもしれませんが、少なくとも山に対して、そのような態度は決して忘れてはならないものでしょう。当スクールも、技術以上にそうした「態度」をこそ皆さんに伝えようと願って指導を行なっています。そしてそうして誠実に山に接してこそ、あの2峰頂上からの素晴らしい眺めも心に染み込んでくるような気がします。



小川山屋根岩3峰「RCC神奈川ルート」4p、5.8

 やはり屋根岩の南に張り出した岩稜を登るものですが、隣の2峰と比べて、こちらは一段とワイルドです。特に2〜3ピッチ目は傾斜は強いわりにプロテクションがナチュラルでしかも悪く、おまけに岩もやや脆くて、緊張感抜群です。「こんなのがフリークライミング?」と思われる方もいるかもしれませんが、私の中では、これこそ、フリークライミングです。恐怖に打ち勝ちつつ、自然をそのままの状態で、それに即して、自分の手足だけで登る。おまけに3ピッチ目チムニーでは「奮闘的」というエッセンスまで加わって、もう最高です。
 肩からの最終ピッチは、「岳人」でも以前紹介された正面壁ダイレクト(?)が面白い。やさしいけれども自分でルートファインディングとプロテクションを設置しつつ登る楽しみは、このような高みだとさらに増幅します。頂上からの眺めも、他人に教えたくないほど、素晴らしいものです。

(ただやはり残念なのは、最近、このルートの2〜3ピッチ目に必要のない余分なボルトが打たれてしまったことです。これはフリークライミングの楽しみを殺ぐだけでなく、この文化を大いに傷つけているものです。できればぜひ外していただきたい。ボルトはレモンルートの理解不能な箇所にもあり、これらがなければ、3峰は本当に素晴らしい岩場になるのですが・・・)。





湯河原幕岩「正面壁bRルート」

 休日賑わう茅ヶ崎ロックから遠く(?)離れた正面壁にある大クラシックルートです。
 グレードは『関東周辺の岩場』(白山書房刊)によると5.9だけれど、ちょっと厳しいかな? 今の感覚なら10aでも良いでしょう(その昔は5.8とされていたんですよ!)。というのは力的には決して厳しくないものの、核心部でジャミングやレイバックを微妙に使い分けなければならず、おまけにプロテクションも、ほとんどナチュラル! ときているからです。さらにルートファインディングが、これまた絶妙。いやあ、昔の人はよくこんなルートを作っていたものだなと、感心することしきりです。力の量ではなく、技術の多彩さ、使い分けの見事さ。クライミングが面白いと感じるのは、まさにこうした時です。クライミングって、ただ難しさを追及するだけでなく、いろいろ頭で考えて、自然の中に「見出していくこと」が大切なんだな、と、今更ながらに考えさせられるルートです。




城山南壁「三日月ハングルート」

 マルチピッチで有名な城山南壁にある、比較的クラシックなルートです。最近のエキスカーションやバトルランナーが人気でこちらはいまいちですが、内容的には私は最も面白いと思います。それはやはり、あの三日月ハングをダイレクトに超えていくというライン採り、そしてなにより、内容の多彩さでしょう。ルートは斜上バンドから先、ボルダリング的な核心、足が中を踏んでいるような微妙なスラブ、高度感抜群の大胆なハングと続き、単調な部分はひとつもありません。グレード5.9ながら「あんな所を越えてくの?」というロケーションも最高です(核心の2P目は10cです)。ボルトも打ちかえられたので安心して楽しめる、私の城山南壁一押しルートです。