#426 メキシコシティでキャッシュレスに挑戦

2019/12/13

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 海外でのキャッシュレス事情を体験するシリーズ第3弾。パリモントリオールに続き、今回はメキシコシティである

 メキシコシティへは成田からの直行便があり、今回は幸い、往復ともANAの直行便を使うことができた。乗り継ぎによる余計な時間や手続きがないのはありがたいが、行きは12時間半、帰りは14時間半という長時間フライトである。

 メキシコシティ国際空港の出口を通ると、まず目につくのはいくつも並んでいる両替所である。基本的には米ドルとの交換レートが書いてあり、日本円との交換も可能である。ただし日本円の場合は米ドルに比べるとレートが極めて悪いので(ちなみに日本の両替所で交換する場合は更に悪い)、日本で米ドルに交換して持っていくのが良いだろう。

 それに比べると数は少ないが、クレジットカードのキャッシングができるATMもある。実際には現金を入手するなら両替よりもこちらをお勧めする。引き出す金額によらず一定の手数料がかかるものの、キャッシングの利息を加えても、現金による両替の手数料に比べればはるかに割安であるからである。

 メキシコの通貨はメキシコ・ペソ(MXN)であるが、なぜか値段の表記は$記号が使われていて、一瞬、米ドル(USD)表記なのかと思ってしまう。1USD=約19MXN(2019年末現在)くらいの違いがあるし、実際に米ドルが流通しているわけではないので、間違えることはないのだが。

 空港からはメトロバスという、道路の専用レーンを使ったバスが走っている。通常のバスが2台か3台分接続したような乗り物で、停留所はさながら鉄道駅のようであり、ちょうど鉄道とバスを足して2で割ったような公共交通機関である。メキシコシティの中心部を縦横に走っており、料金も廉価で、専用のプリペイドカードを使って乗り降りするようになっている(現金は使えない)。ただ、宿泊するホテルはこのメトロバスの最寄りにはなく、またメトロバスはあくまで生活の足という感じなので、大きなスーツケースを持った旅行者が使えるという風情ではない。また、車内ではスリの被害もたびたびあるということである。

 メトロバス以外の手段となるとタクシーということになるが、このタクシーにもいくつか種類がある。最も数多くみられるリブレというタクシーは、廉価である一方、まれに強盗被害に遭うと言ったこともあるとか聞くので、安全第一を旨とするのであれば、空港専用タクシーを使うことになる。空港出口から右に曲がっていくとカウンターがあり、そこで行き先を告げれば料金を提示してくれる。支払い(クレジットカード可)をして入手したレシートを持ってタクシー乗り場に行けば、乗車するタクシーを案内してくれ、目的地まで運んでくれるという次第。

 宿泊したホテルではもちろんクレジットカードが使えたが、前もって宿泊料金よりも多めの金額をデポジットするように言われる。デポジットした金額からは、宿泊費のほか、滞在中のレストランでの食事やルームサービスなどの料金を差し引き、チェックアウトの際に残金を精算するという仕組みである。

 今回の出張では、朝から晩まで結構長く拘束された上に、ホテルの周囲にお金を使えるようなお店もあまりなくて、結果的にはキャッシュレスを体験できるような買い物の機会があまりなかった。通常のお店ではクレジットカードは使えるものの、出店みたいなところだとさすがに現金決済ということになってしまう。

 日本では10月からの消費税増税に合わせて、キャッシュレス決済による消費者還元プログラムが始まったところだが、クレジットカードのほかに、いくつものプリペイドカードやスマホ決済手段が乱立し、以前にも増してカオスな状況になっている。コンビニなどで「これらのカードが使えます」というステッカーを見ると、その種類の多さに目眩がする思いである。コンビニの店員さんはあれだけの決済手段によく対応しているものだと思う。

 メキシコはまだ銀行口座保有率が4割程度と低く、そのようなプリペイドカードやスマホ決済がまだ普及している様子ではなかった。メキシコのキャッシュレス事情が今後どうなっていくのかはわからないが、日本みたいなキャッシュレス・カオスな国にならないことをひそかに願う次第である。


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