#417 パリでキャッシュレスに挑戦

2019/03/13

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 日本は諸外国に比べてキャッシュレスが進んでいないなどと言われている。確かに街中で食事をして、支払う段になってクレジットカードや電子マネーで支払おうとしても、現金しかダメなんですというところは東京でも結構あったりする。では実際のところ外国ではどうなのだろうかということで、出張でパリに行った際に、現金無しでどこまで支払えるかというのを試してみることにした。

 結論から言うと「現金なしでも何とかなるが、不便な場合も多々ある」という感じである。

 まず交通機関。パリ周辺は鉄道やバスなどがほぼ市営になっており、券売機もすべてクレジットカードが使えるようになっている。一番安い一回券1.90EURを1枚買うのでも、クレジットカードで問題ない。むしろお札が使えない券売機が多いので、クレジットカードや硬貨がないと往生してしまう。なお、2021年には大幅な改修が行われ、紙の切符は使われなくなりカードやスマホでの決済に完全に移行するようである。

 次に支払う機会が多いのは飲食関係である。だいたいどこのレストランでもブーランジェリー(パン屋)でも、クレジットカード決済の機械は置いてある。一般に食べ物は高いがパンだけは安いパリでは、クロワッサンもバゲットも1EUR少々で買うことができる。クロワッサン1個買うのにもクレジットカードで何ら問題ない。

 もっとも商店やカフェテリアで、5EUR以下だと現金で払ってくれと言われたことが2回ほどあった。本当はクレジットカード会社との契約上、少額であることを理由に決済を拒むことはしてはいけないはずなのだが、フランス語で文句を言うこともできないので、大人しく現金で支払う。

 クレジットカードを使う場合、お店にあるのはICカード対応の小型端末である。大抵は自分でカードを差し込んで暗証番号を入力して、機械が決済可否を照会して、OKであればレシートが出る、という具合になるわけだが、この一連の作業にはどうしても30秒くらいはかかってしまう。混雑しているカフェテリアなどでいちいちこれをやっていたら決済が滞ってしまうということもあり、お金を渡してお釣りをもらう方が早くて便利、という場面は何度かあった。

 考えてみれば、クレジットカードというのは基本的にそれ1枚で信用額までの高額決済が可能であるからこそ、他人に簡単に使われてしまわないように最低限のセキュリティとしてこういう手数を踏んでいるわけであって、持っている人が何の認証もなく使えてしまうようでは、紛失盗難にあった時の損害が大変なことになってしまう。ピッとかざして使えてしまうSuicaなどの電子マネーは、だからこそチャージ金額に上限が設けられているわけである。利便性を高めようとすればセキュリティがおろそかになってしまうのはいかんともしがたい。

 それはともかくとして、旅行者という立場で言えば、とりあえずいくらであってもカード1枚でOK、というのは確かに楽である。フランス語で金額を言われてもなかなかすぐにはわからないし、EURのコインも使い慣れていないので、とりあえず足りそうなお札を出して小銭をじゃらじゃらもらう、ということになってしまいがちである。カード決済ならちゃんと決済する金額を表示してもらえるし、レシートも必ず出て来る。

 今回私が使ったのはVISAデビット機能つきのキャッシュカードで、これだと決済のたびに自分の預金から引き落とされ、その結果がメールで通知される。EURの残高がない場合でも、1EURあたり数銭程度のわずかな手数料でもって都度円から外貨に両替して決済してくれる。現金だと日本の両替所で両替しても、EURの場合4%くらいの手数料がかかるから、カード決済の方がお得でもある。

 そんなわけで、1週間の滞在で現金を使ったのは90EUR程度であったが、がんばればもっと少ない金額であっても何とかできたかも知れない。もっとも、現金が全く無ければそれはそれで不安になってしまうのは、私が現金主義の日本で暮らしているからなのだろうか。


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