#421 モントリオールでキャッシュレスに挑戦

2019/07/16

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 キャッシュレス化が課題となっている日本を離れて、海外のキャッシュレス事情を体験してみるシリーズ第2弾。第1弾のパリに続き、このたび、モントリオールに出張する機会を得たので、そこでも現金なしでどれだけできるかやってみた。

 米ドル(USD)やユーロ(EUR)ならともかく、カナダドル(CAD)あたりになると、流通量が限られるせいか、日本で日本円から両替するとなると売買手数料が結構な金額になる。従ってCADでの決済は、現地でクレジットカードのキャッシングにより現金を入手するか、もっと言えばクレジットカードで支払った方がお得である。

 モントリオールへは、成田発着のエアカナダによる直行便が毎日飛ぶようになった。今回はありがたくその直行便で行くことができたが、直行でも12時間以上かかるから長旅には違いない。

 空港から市街へ行くには、STN社の747バスを使うのが便利である。今回の出張は現地わずか2泊という弾丸出張なのだが、幸いこのバスを含めて、地下鉄や市街のバスが滞在中の3日間乗り放題のチケットが19.50CADで売っているので、そちらを購入する。チケットは自動販売機からクレジットカードであっさり購入できた。

 バスと地下鉄を乗り継いで、市街に出たらまずは予約しておいたホテルにチェックインする。担当の人にいろんな設備の使い方を教えてもらったあと、その場で宿泊代の精算をお願いされる。どうやって決済するのかと思ったら、担当のおばちゃんはやおらポケットから、1辺が3cmくらい、厚さ1cmくらいの白いプラスチックの直方体に、イヤホンジャックがついている道具を手持ちのスマホにつないだ。

 直方体の1辺には、クレジットカードの磁気ストライプを読み取る溝がついており、私のクレジットカードをその溝にスワイプすると、認証されたようで、画面に指でサインしろという。サインをして、そのあと私のメールアドレスを入れると、そのメールアドレスに領収書メールが来て、これで決済終了だとのこと。あとで調べてみたら、Square Readerという道具らしい。スマホ一つあればクレジットカードの決済もできてしまうというわけで、キャッシュレスもここまで進歩しているのかと感心してしまう。

 ともあれ無事にホテルに入ることができたので、早速街に繰り出してみる。ホテルから少し歩いたところには、セント・ローレンス川に面した旧港があり、観覧車をはじめとして遊園地みたいな雰囲気になっている。遊園地のアトラクションにしろその辺の出店にしろ、ちゃんとクレジットカードでも支払いができるようになっている。

 クレジットカード読み取り端末は、パリで見たのと同じような感じ。手前側からクレジットカードを差し込むと、まず英語かフランス語かを聞かれる。モントリオールは北米のパリと言われるくらい、英語よりもフランス語の方が多い街である。言語を選択すると決済金額が出るので、了解をすると、数字4桁のPINを入力するように言われる。PINを入れたら認証が始まり、無事に認証されれば、レシートが出てくるという次第。基本的にはこれらの動作を客にやらせるから、店員の側としては小銭のやりとりをするよりもはるかに楽でよい。

 そんなわけで、期間が短かったこともあり、大して買い物もしていないのであるが、とりあえず回ったところでクレジットカードで支払えなかったところは一つもなく、結局、出張期間中一度も現金を扱うことなく、完全にキャッシュレスで済ませてしまった。

 たった一つ困ったことは、ホテルを後にするときに置くべきチップである。彼の地では、チェックアウトの時にベッドサイドにチップとして小銭を置くのが習慣らしいのだが、これだけのために小銭を用意するのも面倒だし、さりとて何も置いて行かないのも気が引ける。しょうがないので、「キャッシュレスだったので小銭の持ち合わせがないけど、かわりに日本の硬貨をいくらかおいて行くから記念に取っておいてください」という書き置きと日本のコインを残して部屋を後にした。外国のコインに興味のない人にはガラクタでしかないけれど、実は日本の5円や50円のように、穴あきコインというのは世界では珍しい部類なので、その辺がわかってくれるといいのだけれど。また5円(御縁)がありますようにということで。


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